こじらせ女子ですが、何か?

心臓外科医との婚約を解消して以後、恋愛に臆病になっていた理穂。そんな彼女の前に今度は耳鼻科医の先生が現れて!?

永遠の少年。

2021年08月06日 | 日記

 

 あ、ちなみに今回も再び、ずっと書いてきている萩尾先生と竹宮先生の例の問題に関連した記事です(^^;)

 

 わたし、萩尾先生と竹宮先生の若かりし頃、思想的に影響を与えたと言われる増山法恵さんの本を、とりあえず一冊くらいは読んでみたいなあ……とは思ってました

 

 でも、『風と木の詩』のその後を描いたという『神の子羊』については、あんまし読む気になれなかったんですよね登場人物としてはジルベールがとりあえず好きだったので、彼が出てこないとなると、そもそも最初からあまり読む気になれなかったというか

 

 そしたら、竹宮先生の本を密林で探していた時に――『永遠の少年-英国パブリックスクール・ミステリー』という増山のりえ(のりす・はーぜ)さんの書かれた本が出てきたわけです。

 

 で、あらすじのところを見ましたらば……

 

 

 >>英国の名門パブリックスクール『セント・フィリップス』に入学した日本人留学生・利彦。親友キリアンを得て生活は順調に始まった。その頃日本から小説家で好奇心旺盛な叔母がひょっこりと訪ねて来る。ある日彼女と利彦は学内の広大な森の中で美しい少年が倒れているのを発見し助けた。これがきっかけとなり2人は学園に隠された恐ろしい秘密を探り出してゆく……。書下し学園ミステリー。

 

 

 わかりますかっ。わかりますよねっ!?キリアンの4文字を見た瞬間、わたしすぐ中古でこの本買いました。新品ではすでに買えなくなっていますし、密林さんにもあと4冊くらいしかないみたいなのですが、元の値段が610円なのに、わたしこれ、その倍の値段+送料で、約1500円くらいで買いました(^^;)

 

「おまえ、そこまでしつこく例の盗作問題に拘るつもりか……」と思われるでしょうけれども、キリアンといえば、竹宮先生と増山さんが萩尾先生に盗作疑惑をかけた、「小鳥の巣」(『ポーの一族』)に出てくる重要な登場人物――キリアン・ブルンスウィッグと同じ名前なんですから、これが興奮せずにいられますかってなもんです

 

 もっとも、増山さんの小説の中では「リヒャルト・キリアン」(17歳)という名前の登場人物で(ちなみにドイツ人)、主人公の利彦くん(17歳)が転校してきた先の英国パブリックスクール、『セント・フィリップス』の寮で監督生をしている容姿端麗、頭脳優秀な優等生だったりします。

 

 あと、彼の従弟でエーリク君という名前の、13歳の少年も登場します。もちろん、萩尾先生ファンの方はべっくらこくでしょう(笑)。「きき、キリアンに続いてエーリクだって!?」と……何故といって、エーリクといえば、『トーマの心臓』や『11月のギムナジウム』のあのエーリクしか思い浮かべることが出来ないからです。

 

 もっとも、増山さんの小説の中では、リルケの『マルテの手記』の中のエーリクと同じ……みたいに説明がしてありますし、同じようにキリアンについても、いくらでも「~~から取りました!」みたいに説明することは可能と思います。ただ、唯一増山さんの場合言い訳できないのは、萩尾先生や竹宮先生と大泉時代に深い親交があった以上、誰でも読んだ人は(萩尾先生のファンであれば)『トーマの心臓』の忘れがたい登場人物エーリクと、『ポーの一族』の「小鳥の巣」のキリアンのことを絶対思いだすよという、そうしたことなんですよね(^^;)

 

 あ、ちなみに『永遠の少年』のほうは、かなりのところオリジナリティの高い小説で、わたしも読んでいて面白かったですですから、特段盗作云々言いたいわけではまったくなく――むしろ逆に読んでいて不思議になりました。何故、重要登場人物の名前に「キリアン」という名前を与え、リルケの『マルテの手記』という断りを入れつつも、「エーリク」という名前の少年を登場させたのか。

 

 この謎(?)を解くためには、まず『永遠の少年』という小説の内容について、順に語っていく必要があると思います。あ、ちなみにネタばれ☆含みますので、これからもし読んでみようと思う方はご注意くださいませm(_ _)m

 

 英国の名門パブリックスクール、『セント・フィリップス』に転校してきた利彦くん。一応最初に断っておきますと、この角川ルビー文庫はBL文庫だったと思いますですから、利彦くんは寄宿舎のほうへやってきて早々、フローリアンという生徒に目をつけられ、自室のほうで押し倒されますが、キリアンの登場で事なきをえるという(笑)。

 

 そして、フローリアンといえば、風木に脇役で出てくる子の名前でもありますが、この場合、竹宮先生サイドのことは、特にそう問題にする必要はないのでしょう。だって、イラストのほうは竹宮先生が描いておられるわけですし(^^;)

 

 それはさておき、増山さんがあとがきのほうでお書きになっておられるとおり、パブリックスクールの設定などについては、増山さん自身が英国へ飛んで直に調べたというだけあって、物凄くしっかりしています。そして、あらすじのところにもあるとおり、利彦くんの小説家のおばさんというのが登場人物として重要で、このおばさん、利彦くんのパブリックスクールを見学したいと言いだし、甥の利彦くんが広い敷地内を案内していたところ……温室にて、首を絞められたと思しき状態の全裸美少年を発見します。

 

 この美少年がエーリク君で、この登場場面もそうですが、その後の登場シーンなどを読んでみても、なんとなく彼にはジルベールを思わせるところがあったりします(竹宮先生の挿絵のほうではあんまし似てないんですけどね^^;)。

 

 それで、物語の割と最初のほうで――学校の敷地内ののほうで、ある生徒が事故死しており、彼は事故ではなく自殺したのではないか……みたいな噂があったりするわけです。

 

 ハイ、おわかりですね?この温室や沼というのはともに、『ポーの一族』の「小鳥の巣」にも出てきますし、『風と木の詩』にも出てくるという意味で、重なるモチーフだったりします。普通に考えればまあ、「小説や漫画の中に温室や沼が出てくるからって、それがなんだってんだ。べつに普通のことじゃね?」というレベルのお話です。でも、こうしたことに関連して、竹宮先生と増山さんは萩尾先生に盗作疑惑をかけたわけですよね。>>「私たちは少年愛についてよく知っている。でも、あなたは知らない。なのに、男子寄宿舎ものを描いている。でも、あれは偽物だ。ああいう偽物を見せられると私たちは気分が悪くてザワザワするのよ。だから、描かないでほしい」と、そう言って……。

 

 でも、『永遠の少年』という小説に関しては、わたし自身は盗作といったようにはまったく感じませんでしたし、これはおそらく萩尾先生がお読みになってもそう思われるのではないか……といった、何かそういったような印象です。。。

 

 なんにしても、副題が『英国パブリックスクール・ミステリー』ですからね。この事故死・自殺といったように噂される生徒の一件のみならず、お話の最後のほうでエーリク少年は自殺してしまいますし、その前に利彦くん自身、サンドバッグにされてあわや沼に沈められる……といった、極めて危険な目にも遭っています。

 

 それは何故かといえば、エーリク君のいるテニスン寮という場所が関係しているというか。ちなみに利彦くんとキリアンは同じ敷地内の別の寮に所属しているわけですが、テニスン寮のほうは不良が多くて荒れているという話です。そのテニスン寮に属しているエドワードくんという少年が、風紀の乱れているその寮で悩みを抱えているらしく、利彦くんはその相談に乗ってあげたりしていたわけです。

 

 また、このことに関連してテニスン寮に乗り込んでいったところ、不良のひとりを利彦くんは投げ飛ばしてしまい……彼がサンドバッグにされて沼に沈められかけたのは、そのことに対する不良たちの報復だったのでした。

 

 ここまで読む限りにおいて(説明が下手ですみません☆^^;)、エドワードはこの不良たちにレイプされていたのではないかと思われる節があり、彼はその後転校してしまいます。また、話の印象としてエーリクという少年がこの不良たちの中心にいるのではないかとの疑いがあり、まだ13歳にして、自分の性的魔力によって彼らを支配しているのではないだろうか……とも、少しばかり想像されます。

 

 でも、エーリクが自殺してのち、あることが利彦、また彼の小説家のおばさんにはわかります。つまり、こうした事件の本当の黒幕はリヒャルト・キリアンだということが。エーリクの自殺後、キリアンは語ります。従弟の彼と、ドイツのミュンヘンで隣同士で暮らしながら、かなり昔より同性愛関係だったということを……確かに、利彦はエーリクが寝言で「キリアン、どうして愛してくれないの……」と言うのを聞いていますし、彼に突き放されたことがエーリクの自殺の原因なのだろうかと、そのキリアンの告白で納得します。

 

 けれども、利彦くんの小説家のおばさんが暴いた真実によると、話のほうはかなり違います。リヒャルト・キリアンはミュンヘンの名家の出身で、その敷地も驚くほど広く、びっくりするようなお金持ちの家の出身だったりするわけです。リヒャルトには双子の弟(!)のミヒャエルくんがいたのですが、この弟くんは身代金目的で赤ん坊の頃に誘拐されてしまい、その後身代金の受け渡しがうまくいかなかったところ、この赤ん坊は死体で発見されてしまう。このことがきっかけでリヒャルトのお母さんは精神病になり、リヒャルトは弟のミヒャエルくんとの二人一役を演じることで――お母さんの病気が良くなるよう頑張り続けたわけです。最終的には、リヒャルトくんは自分と瓜二つの石膏像をいくつも作られ、お母さんは随分おかしくなってますから、その石膏像がミヒャエルくんだということで納得していたようです。けれども、可哀想なのはやっぱりリヒャルトくんで、この石膏像を作っていた芸術家(♂)に美少年である彼は体を触りまくられたり、何度も繰り返し犯されたりで、心にトラウマを負うことになってしまった。こうした過去と決別するためにも、リヒャルトくんはドイツから英国へ渡ってきたわけですが……この元いたミュンヘンのほうで、リヒャルトくんは従弟のエーリクくんにそうした男同士の愛を教えていたわけです(おそらくは、自分が与えられた屈辱やフラストレーションといったものを晴らすために)。心からリヒャルトくんのことを愛するエーリクくんは彼のことを追ってイギリスへやって来ます。ところがリヒャルトくんはエーリクくんを遠ざけるばかりでなく、テニスン寮の不良たちに生贄として与えていたようであり――こうしてエーリクくんは自殺してしまったと、そういったわけなのでした。。。

 

 リヒャルトくんには二面性があって、それが優等生としての顔と、エーリクくんを死に追いやったもう一つの顔としても作用していたわけですが、利彦くんの小説家のおばさんはこのあたりのことを見抜き、パブリックスクールの校長先生や神父さんなどにそのあたりのことをすでに話しています。真実を見抜かれたリヒャルトくんは彼女を殺すつもりでさえあったわけですが、彼は息子にまつわるこうした真実を知った父親の元、ドイツへと帰り、そうした専門の治療を受けることになるのでした……。

 

 

 ――というのがまあ、『永遠の少年』の大体のあらすじかなって思います。パブリックスクールや、沼や温室や双子など、『トーマの心臓』や『ポーの一族』の「小鳥の巣」と重なる部分というのか、ニアミスする部分がいくつもありつつも……わたし自身はこの小説、特段萩尾先生の漫画の盗作とも、あるいは竹宮先生の風木の盗作とも思いませんでした

 

 でも、先に書いたとおり……だったら何故、「キリアン」とか「エーリク」という名前を使ったりしたのだろう、みたいに思いますよね(^^;)このあたり、盗作でなくても萩尾先生のファンの方には容認できない部分があるでしょうし、ましてや、かつてそのことに関して盗作疑惑をかけたとなったら、尚更のことではないでしょうか。

 

 ただわたし、これはむしろ逆なのではないかと思ったんですよね。ある部分、萩尾先生の描いたパブリックスクールの出てくる漫画と竹宮先生の『風と木の詩』の合いの子(?)みたいな設定がチラホラ☆出てくるわけですが……それを無神経であるとか、何かそんなふうにはまったく感じなかったと言いますか。

 

 つまり、『永遠の少年』が発表されたのが1994年くらいで、竹宮先生と増山さんが萩尾先生に盗作疑惑をかけたのが1973年くらいですよね。その後、約20年も経って、無神経なふたりは「そーいやそんなこともあったっけ☆」くらいの感覚になっていたというより……「あの時の盗作疑惑は誤解だった。ごめんね」という、むしろ逆にそうしたメッセージさえ、わたし自身は読んでいて感じたというか。。。

 

 ちょっと説明難しいのですが(汗)、わたし、自分的に萩尾先生は竹宮先生の本は読めないでしょうけれども、この増山さんの『永遠の少年』は読んでほしいと思いましたその~、ほんとにうまく言えないのですが、萩尾先生にとっては真っ白なワンピースに黒々とついたシミが50年たった今も、顕微鏡で拡大したように見えているのかもしれません。でも、増山さんにとってはそれから20年がたってこの『永遠の少年』という小説を書いた時……「キリアン」や「エーリク」という名前を使った時点で、萩尾先生のことは頭のどこかに絶対あったと思います。そして、下手をすれば盗作みたいに言われる可能性もあるとわかっていて、あえてこうした名前を使ったんじゃないかという気がするんですよね。もう20年も昔のことだから……というより、増山さんにとってこのことは黒々した大きなシミではなく、記憶の中のほんの小さな点程度のことなのだという、わたし自身はそんなふうに感じたと言いますか。

 

 つまり、傷つけた側と傷つけられた側とでは、起きた事実の記憶のされ方が違う、みたいには、この件について色々な方が言っておられることですし、わたしもそのことに同意するのと同時――またもうひとつ、別の見方もあるんですよね。増山さん的には「えっ!?そんなこと、ほんとにずっと気にしてたの?」みたいな、感覚にズレがあって、「そんな小さなこと、モーさまてっきり忘れてるかと思ってた」というか、何かそんなところがあるのではないかと(^^;)

 

 ひどい話、「やっだー。そんなことほんとに50年も気にしてたんだー。だったらもっと早くに言ってよー。わっはっはっ」的な、そうした可能性もあるんだなということに、この小説を読んでいて初めて気づいた次第であります。。。

 

 あ、長くなったので、この話はまた次回に続きます(^^;)

 

 それではまた~!!

 

 

 

 

 


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