6.工具損傷と工具寿命
6.1 工具損傷と工具寿命の関係
6.1.1 工具寿命の種類
磨耗[wear]---漸進的
チッピング[chipping]
欠損,破損[fracture]
剥離[flaking]
亀裂[cracking]
刃先の塑性変形(plastic deformation]
6.1.2 工具寿命の判定基準
化学的な工具磨耗
・すくい面磨耗[face wear]
・送り面磨耗[flank wear]
寿命判定基準[ISO]
(1)高速度鋼工具[High-speed steel tool]
()完全切削不能
()逃げ面磨耗のゾーンBが均一に磨耗 ・・・平均磨耗幅 VB=0.3mm
()ゾーンBの磨耗が不規則で著しく、溝状を呈する場合・・・最大磨耗幅 VBmax=0.6mm
(2)超硬工具[sintered carbide tool]の場合
()逃げ面磨耗のゾーンB磨耗幅が均一 VB=0.3mm
()ゾーンBが不均一な磨耗 VBmax=0.6mm
()すくい面磨耗最大幅 KT=0.06+0.3f[mm] f:送り[mm/rev]
(3)セラミック工具[ceramic tool]の場合
()ゾーンBの均一な磨耗のとき VB=0.3mm
()ゾーンBが不均一磨耗 VBmax=0.6mm
(4)仕上げ削り[finish cut]の場合
切削仕上げ面あらさが1,1.6,2.5,4,6.3,10μmRaに達したとき
6.1.3 寿命曲線と寿命方程式
テーラー(Tayler)の寿命曲線[tool life curve]
→方程式の形で表したものがテーラーの寿命方程式[tool life equation]
6.2 工具磨耗の機構
・機械的機構
・物理・化学的機構
6.2.1 機械的機構
機械的すべり磨耗[mechanical abrasion]
被削材のかたさはマクロで工具材より軟
ミクロでは硬い粒子(Al2O3,SiO2,セメンタイト,SiC等)が
砥粒の働きをして工具面が磨耗
6.2.2 物理・化学的機構
高速の切削において活性の強い極圧添加剤(塩素,硫黄)を含む切削油剤を使用
→切削熱により温度上昇
→前切れ刃の逃げ面に発生する溝状の磨耗,境界磨耗[greeve wear]
→酸化により生ずる
熱拡散[thermal diffusion]
Cの拡散
溶着[welding],凝着[adhesion]
溶着した被削材が剥がれる
→転移形[transfer type]の磨耗発生
6.2.3 工具寿命に及ぼす切削温度の影響
切削温速度が比較的低い状態(切削条件がゆるやか)
→逃げ面磨耗量は切削速度/送り量にかかわらず一定
比較的高い場合の磨耗
→exp(-E/Kθ)の関数に支配
6.3 工具材の影響
6.3.1 工具材の相対的かたさ
工具材のかたさは被削材のかたさの4倍以上必要
工具材が高い切削温度のもとで十分な相対的かたさを維持できるかどうか
6.3.2 工具材の靭性
高温かたさが高いものほど靭性[toughness]に劣る
6.3.3 被削材に対するアフィニティ(親和性)
工具材の高温かたさが高く、靭性に富んでいても、
被削材との化学的アフィニティが強ければ拡散磨耗や金属溶着による
転移形の磨耗が起こりやすくなる
6.4 被削材の影響
6.4.1 被削材の磨耗性
ミクロのかたい粒子が被削材に介在→工具を機械的に磨耗
6.4.2 被削材の強度
一般に被削材の強度:大→工具寿命:短
熱処理の有無でかたさは同じでも工具寿命は異なる
6.4.3 被削材の延性
延性:大→切りくず生成における切削歪みが大きくなる→切削温度:高
6.4.4 被削材のKwρwCw 被削材の熱的パラメータ
Kw:熱伝導率
ρw:密度
Cw:比熱
切削温度は(KwρwCw)^0.5 に反比例
KwρwCw:小ほど切削温度:高 →工具寿命:短
6.4.6 被削材の加工硬化性
工具の切ればが鋭利、切り込みや送り量が十分大きい場合は気にならない
逆だと難しくなる
6.5 刃先形状の影響
6.5.1 すくい角
すくい角:増→ひずみ減少(切れ刃が良化)
→切削温度が低下 など工具寿命が長くなる
工具寿命から見て最適のすくい角が存在
※工具材の靭性低下→小さい値
旋削の場合
・高速度工具:25~30°
・超硬工具:5~10°
6.5.2 逃げ角
通常5~6° これ以上大きくしても工具寿命に差は出ない
大きすぎるとチッピングや欠損を起こしやすくなる
6.5.3 切れ刃角
アプローチ角[approach angle] ※横切れ刃角とも言う
工具寿命に特に影響する
※特に温度に敏感な工具材において
6.5.4 すくい角切りくず接触長さ
ランド幅[widh of land]
ランド幅と送り量の比が1~2の範囲で工具寿命が最大
6.5.5 コーナ半径[corner radius]
高速度鋼工具→熱的
超硬工具,セラミック工具→力学的 に寿命を支配
6.6 切削速度、送り量および切込みの影響
VT^n = const T=工具寿命
f:送り量、a:切込み
切削容積 v=VfaT
T=kV^(-α)f^(-β)a^(-γ)
送り量が非常に小 f<0.1mm/rev →かえって寿命:短
6.7 切削油剤の影響
切削油剤
・潤滑作用
・冷却作用 ・・・比較的低速の加工のみ
6.8 工具寿命試験と工具寿命の変動
統計的に処理するのが妥当
ex. 工具寿命の平均値Tm
工具交換時間の対数値(logTm-2σ)となるよう時間を決めてやる
→97%以上の確率で工具交換まで寿命がもつ
6.1 工具損傷と工具寿命の関係
6.1.1 工具寿命の種類
磨耗[wear]---漸進的
チッピング[chipping]
欠損,破損[fracture]
剥離[flaking]
亀裂[cracking]
刃先の塑性変形(plastic deformation]
6.1.2 工具寿命の判定基準
化学的な工具磨耗
・すくい面磨耗[face wear]
・送り面磨耗[flank wear]
寿命判定基準[ISO]
(1)高速度鋼工具[High-speed steel tool]
()完全切削不能
()逃げ面磨耗のゾーンBが均一に磨耗 ・・・平均磨耗幅 VB=0.3mm
()ゾーンBの磨耗が不規則で著しく、溝状を呈する場合・・・最大磨耗幅 VBmax=0.6mm
(2)超硬工具[sintered carbide tool]の場合
()逃げ面磨耗のゾーンB磨耗幅が均一 VB=0.3mm
()ゾーンBが不均一な磨耗 VBmax=0.6mm
()すくい面磨耗最大幅 KT=0.06+0.3f[mm] f:送り[mm/rev]
(3)セラミック工具[ceramic tool]の場合
()ゾーンBの均一な磨耗のとき VB=0.3mm
()ゾーンBが不均一磨耗 VBmax=0.6mm
(4)仕上げ削り[finish cut]の場合
切削仕上げ面あらさが1,1.6,2.5,4,6.3,10μmRaに達したとき
6.1.3 寿命曲線と寿命方程式
テーラー(Tayler)の寿命曲線[tool life curve]
→方程式の形で表したものがテーラーの寿命方程式[tool life equation]
6.2 工具磨耗の機構
・機械的機構
・物理・化学的機構
6.2.1 機械的機構
機械的すべり磨耗[mechanical abrasion]
被削材のかたさはマクロで工具材より軟
ミクロでは硬い粒子(Al2O3,SiO2,セメンタイト,SiC等)が
砥粒の働きをして工具面が磨耗
6.2.2 物理・化学的機構
高速の切削において活性の強い極圧添加剤(塩素,硫黄)を含む切削油剤を使用
→切削熱により温度上昇
→前切れ刃の逃げ面に発生する溝状の磨耗,境界磨耗[greeve wear]
→酸化により生ずる
熱拡散[thermal diffusion]
Cの拡散
溶着[welding],凝着[adhesion]
溶着した被削材が剥がれる
→転移形[transfer type]の磨耗発生
6.2.3 工具寿命に及ぼす切削温度の影響
切削温速度が比較的低い状態(切削条件がゆるやか)
→逃げ面磨耗量は切削速度/送り量にかかわらず一定
比較的高い場合の磨耗
→exp(-E/Kθ)の関数に支配
6.3 工具材の影響
6.3.1 工具材の相対的かたさ
工具材のかたさは被削材のかたさの4倍以上必要
工具材が高い切削温度のもとで十分な相対的かたさを維持できるかどうか
6.3.2 工具材の靭性
高温かたさが高いものほど靭性[toughness]に劣る
6.3.3 被削材に対するアフィニティ(親和性)
工具材の高温かたさが高く、靭性に富んでいても、
被削材との化学的アフィニティが強ければ拡散磨耗や金属溶着による
転移形の磨耗が起こりやすくなる
6.4 被削材の影響
6.4.1 被削材の磨耗性
ミクロのかたい粒子が被削材に介在→工具を機械的に磨耗
6.4.2 被削材の強度
一般に被削材の強度:大→工具寿命:短
熱処理の有無でかたさは同じでも工具寿命は異なる
6.4.3 被削材の延性
延性:大→切りくず生成における切削歪みが大きくなる→切削温度:高
6.4.4 被削材のKwρwCw 被削材の熱的パラメータ
Kw:熱伝導率
ρw:密度
Cw:比熱
切削温度は(KwρwCw)^0.5 に反比例
KwρwCw:小ほど切削温度:高 →工具寿命:短
6.4.6 被削材の加工硬化性
工具の切ればが鋭利、切り込みや送り量が十分大きい場合は気にならない
逆だと難しくなる
6.5 刃先形状の影響
6.5.1 すくい角
すくい角:増→ひずみ減少(切れ刃が良化)
→切削温度が低下 など工具寿命が長くなる
工具寿命から見て最適のすくい角が存在
※工具材の靭性低下→小さい値
旋削の場合
・高速度工具:25~30°
・超硬工具:5~10°
6.5.2 逃げ角
通常5~6° これ以上大きくしても工具寿命に差は出ない
大きすぎるとチッピングや欠損を起こしやすくなる
6.5.3 切れ刃角
アプローチ角[approach angle] ※横切れ刃角とも言う
工具寿命に特に影響する
※特に温度に敏感な工具材において
6.5.4 すくい角切りくず接触長さ
ランド幅[widh of land]
ランド幅と送り量の比が1~2の範囲で工具寿命が最大
6.5.5 コーナ半径[corner radius]
高速度鋼工具→熱的
超硬工具,セラミック工具→力学的 に寿命を支配
6.6 切削速度、送り量および切込みの影響
VT^n = const T=工具寿命
f:送り量、a:切込み
切削容積 v=VfaT
T=kV^(-α)f^(-β)a^(-γ)
送り量が非常に小 f<0.1mm/rev →かえって寿命:短
6.7 切削油剤の影響
切削油剤
・潤滑作用
・冷却作用 ・・・比較的低速の加工のみ
6.8 工具寿命試験と工具寿命の変動
統計的に処理するのが妥当
ex. 工具寿命の平均値Tm
工具交換時間の対数値(logTm-2σ)となるよう時間を決めてやる
→97%以上の確率で工具交換まで寿命がもつ
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