金管楽器は唇を振動させることによって楽器から音が出る訳ですから、身体の一部を振動させて音を出すという意味では、声帯を震わせて声を出す行為に近いといえます。唇の形、厚さ、柔らかさ、唇回りの筋肉の付き方、歯並び、口腔の広さなど、人によってさまざまなので、それらの身体的条件の違いによって、当然楽器から出る音色も違ってきます。トロンボーンの良い音とされる定義にもさまざまありますが、まぁ一般的には「倍音豊な太い音」「弱音では柔らかくしなやかな音色、強音では力強くきらびやかな音色」とかでしょうか。逆に悪い音としては、「倍音が貧弱な細い音」「こもった音」「詰まった音」「息の雑音の多い音」「パリパリ割れてしまう音」などでしょうか。
悪い音として定義づけられるような音色の場合には、レッスンで何とか改善、矯正してあげようと、アンブシュアの形、舌の使い方、口腔内のイメージ、喉の使い方、息の出し方などの説明、演奏の実演で音色改善の指導を行っているのですが、指導直後すぐに改善されるということは非常に稀です。もちろん時間をかけて指導を行えば、少しずつ良い音色へと改善されていきますが、とても長い期間を要します。音程やリズムが悪いなどの問題点は指摘直後すぐに直ることの方が多いのですが、音色が悪いということを指摘してすぐに改善されるということはまずありません。
このことからわかったことは、楽器の音色も声と同じように生まれ持ったものがあり、そう簡単に変えられるものではないのではないか、ということです。自分では悪い音であるという認識、自覚も十分あるのに、なかなか改善できない人も少なからず居り、そのような人には最近は僕も無理やり「音色を改善しましょう」という働きかけはしないようにしました。悪い音というよりも、音色も個性(個性的な音色)としてとらえても良いのではないか、と思うようになりました。
クラシック音楽では一般的に良い音とされる「倍音豊な太い音」「雑音の無い奇麗な音」である必要がありますが、ジャズ・ポピュラー音楽では、必ずしも「倍音豊な太い音」「雑音の無い綺麗な音」「美しい音」が良い音、音楽的な音という訳ではなく、曲によっては、むしろ「割れた音」「荒れた音」「ダミ声のような雑音まじりの音」などの悪い音の方が、ダイレクトに音楽的メッセージが伝わってきます。元は奇麗な音色の持ち主だけど、曲によってはあえて雑音混じりの汚れた音を出すというプレイヤーもいますし。ジャズの過去の巨匠達も「奇麗な音」というよりも圧倒的に「個性的な音色」の持ち主の方が多いように思います。
悪い音色も個性のうち。
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