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十一月披講

       兼題 「湯豆腐」(湯やっこ)
          「小春」「小春日和」「小春日」「小六月」

  天   カフェオーレじゃないの君は冬帽子   雅田如
珈琲店で いつもとは違う彼のオーダー 季節がめぐって 新しい冬帽子のせい?
光り明るいカフェテラスでの若い二人の会話「サラダ記念日」が俳句の世界に(変竹)

  天    深夜便イブモンタンの枯葉舞ふ       粒石
深夜便を運転していると枯葉が舞っている。枯葉は夜でも休みなく舞っている事に気付かされるが、思い浮かぶのはシャンソンの枯葉、哀愁のある歌が伝わってきて、夜を走る道をイルミネーションで飾るかの様です(模楽宙)

  天    小春日や生死一如のいまを生く    変竹
小春日の中で穏やかでありながらきっぱりと、死を意識しつつ生きている潔さを感じます(里楽乃)

  天   小春日や生死一如の今を生く    変竹
古希を迎える頃になると誰しも己の生死について、それぞれの思いを抱くようになる、必然のことだ。となれば今日のこの一日を如何に過ごすことが問題となる。、下五に吟者の凛とした意志が感じられる(粒石)

  天   小春日や生死の一如今を生く    変竹
季語がぴったり。人生の過去現在未来、今が一番幸せ。悟りか、霊的解放か、無我か、人生格ありたい(雅田如)

  地    小春日や生死一如のいまを生く    変竹
生と死はセットのようなもの。たった一度の生をどのように生きるのか。短い時間でも何かを成す事と、長い時間漫然と生きるのとは価値が違う。達成感は生きていることの証であり、更なる飛躍でもある。時間などは脇におき、精進あるのみ(模楽宙)

  地   もういいよ落葉がオニの子味方する  里楽乃
振り返ると 誰の姿も見えない 誰もいない 夕刻せまり 急に不安がつのる
ひとり取り残された不安に はらはらと包むように優しく木の葉が語りかける(変竹)

  地   もういいよ落葉がオニの子味方する   里楽乃
「もういいかい」「まあだだよ」「もういいかい」「もういいよ」公園の夕暮れどき、子供たちの声がこだます。下五で季語のイメージがどんどん広がる。昨今の子供たちの環境を考えると、愕然とする(雅田如)

  地   深夜便イブモンタンの枯葉舞ふ    粒石
セピア色の並木道、トレンチコートの襟をたて少し足早に歩き去る後を枯葉が追うように舞う。まるで部屋に残してきたあの彼女が後を追いかけて来るかのように。 シャンソン良いですね(里楽乃)

  地   待ち合わせ場所の優しき銀杏落葉     雅田如
逢頼の嬉しさが中七に垣間見られる。この句から”待ち人来たらず”なんて不逞な想像は許されない(粒石)

  人   待ち合わせ場所の優しき銀杏落葉    雅田如
もしかしたら待ち合わせ時間はとうにすぎているのかも?でも金色の銀杏落葉が一緒に待ってくれると不思議と寂しくない。風に吹かれる音も優しく包んでくれる(里楽乃)

  人  湯豆腐にハフハフ夫は好好爺     里楽乃
なんとも微笑ましい風情ではないか。日常のさりげない暮らしの中で見事に咲いた合歓の花だ(粒石)

  人  湯豆腐や約束反故に慣らされし     摸楽宙    
季語との相性がいいですね。湯にたゆたゆと浮き沈みする、豆腐を見ていると怒りがどうでもよくなる。不条理なことだが・・・・・(雅田如)

  人   私小説のプロローグのごと小春かな    雅田如
小説を読み始める時は、ある種の期待感が有るが、私小説の場合はもっと気楽にその世界へ入れるものです。季語の小春がピッタリです(模楽宙)

  人   亡き母のくだんの訓ちちろ鳴く      粒石
ひょっとして 母堂が逝ってまだ間もないのか カクシャクと生き眠るが如くに
聞き流してきた 母のさとしがしみじみ滲みる コオロギの声をたんたんと聴く(変竹)

  佳作  亡き母のくだんの訓ちちろ鳴く     粒石
本年母が旅立ち、この思いが強い、季語がその思いを膨らませてくれる。亡くなって初めて母に感謝している自分が恥かしい次第なり(雅田如)

  佳作  亡き母のくだんの訓ちちろ鳴く      粒石
母親に教わったことは、大人になっても身に染み付いているものです。涼しくなってちちろの鳴く声を聞くと、みように侘しく、一層昔のことを思いださせられるものです(模楽宙)

  佳作  冠雪の便りに友の四角文字       粒石
北国の友は「不器用に 寡黙に」生きている 毎年 律儀な冠雪の季節便り
雪の国鉄駅舎 別れてからもう何年 実直な四角文字の彼に 会いに行くか(変竹)

  佳作   冠雪の便りに友の四角文字       粒石
旧友の毎年くれる冬の便り。人柄そのままの角張った文字。積もる話は山ほどある。今年こそ会いに行ってみようか(里楽乃)

  佳作  湯豆腐にハフハフ夫は好好爺     里楽乃
湯豆腐の中は意外と冷めにくい。うっかりすると思わぬ程に苦労する。お年寄りは、あせらずに気をつけよう(模楽宙)

  佳作  湯豆腐にハフハフ夫は好好爺     里楽乃
夫婦二人がかこむ冬夜の食卓 もちろんふたりは 好々爺の年代に少し遠い
はふはふ夫に その事を告げる事はしない ただ微笑み優しく見つめる女房(変竹)  

  佳作  湯豆腐や約束反故に慣らされし   摸楽宙
日かげにひそと咲く花 そんな女が 湯豆腐を拵えて 旦那を待っている
奴の 好きな「万太郎句」辞世に湯とうふを詠んだ 万太郎ワールドが彷彿(変竹)

  佳作  湯豆腐を若狭塗りにてはさみをり    摸楽宙
まっ白な湯とうふを 色彩あざやかな若狭の塗箸で掬う きらびやかな鍋風景
でもまぁしかし 漆塗りの箸で豆腐を挟むのは 結構な努力が要るだろうなぁ(変竹)

  佳作  湯豆腐のうんちく語り時流る     摸楽宙
気の置けない同士が湯豆腐を肴にして四方山話に興じている姿が彷彿とする。何とも楽しい雰囲気だ(粒石)

  佳作  湯豆腐やしがらみ絶ちて旅の空     摸楽宙
日常の煩雑から解放された旅の空、湯豆腐で一献とくれば至福の夕だ(粒石)

  佳作  遊郭の湯島の里の湯豆腐や    変竹
久保田万太郎が登場しそうな情景。日暮里に1軒あったのは覚えているが、上五の場所で風情ががらりと変わる世界だ。湯豆腐屋の暖簾が寒風にはためいている(雅田如)

  佳作  小春日には柾目正しき下駄択び    粒石
小春日は「文化」の香りがただよう そこには折目正しい一面もまたある
年輪キッチリ 柾目下駄を足下に 柔らか陽ざしの中を 背すじ伸ばして(変竹)

  佳作   好きなんですかほんとうに納豆汁    雅田如
この句を読んだとき、思わず肩の力が抜け笑ってしまいました。念押しして好きか聞きたくなる納豆汁 、何も汁にしなくても..…?(里楽乃)

  佳作   偕老といわれて久し草紅葉      粒石
たくさんの時を共に過ごした夫婦が、旅先だろうか一面の草紅葉を見下ろしている。そこには言葉などなく、通じるお互いを労る気持ちが穏やかな夫婦の姿が素敵だと思いました(里楽乃)

  佳作   もういいよ落葉がオニの子味方する    里楽乃
子供の頃、鬼ごっこをする時はこういう言葉で遊んだものだが、今思うと、童話の世界で遊んでいた気がする。昔なつかしい句です(模楽宙)

  佳作  愛染明王ふんぬか愛か木の実降る    変竹
季語の存在感がこの句を成功させていると思う。木の実が大地に落ちて、土に戻り、愛と怒りの悟りを成就させてくれる。凄い句だ(雅田如)

        次回兼題   「冬帝」  「水鳥」(浮寝鳥、浮鳥、水禽)
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十一月投句

私小説のプロローグのごと小春かな    雅田如
小春日には柾目正しき下駄択び      粒石
好きなんですかほんとうに納豆汁     雅田如
湯豆腐にハフハフ夫は好好爺       里楽乃
吸い込んでからだ一杯の小春かな     里楽乃
待ち合わせ場所の優しき銀杏落葉     雅田如
湯豆腐や竹馬の友の艶話         粒石
ペダル漕ぐ心も軽き小六月        里楽乃
湯やっこは跡を濁さず消えにけり     里楽乃
偕老といわれて久し草紅葉        粒石
もういいよ落葉がオニの子味方する    里楽乃
彼の方は庭の蜜柑も味深し        里楽乃
表情のない幸せという青写真       雅田如
湯豆腐を若狭塗りにてはさみをり     摸楽宙
湯豆腐のうんちく語り時流る       摸楽宙
湯豆腐や約束反故に慣らされし      摸楽宙
カフェオーレじゃないの君は冬帽子    雅田如
湯豆腐やしがらみ絶ちて旅の空      摸楽宙
小春日のインドの旅人手をかざす     摸楽宙
小春日や読経の袈裟にしみひとつ     摸楽宙
亡き母のくだんの訓ちちろ鳴く      粒石
山茶花やかきねのかきねの曲りかど    変竹
好きでいてほしいと描き冬に入る     雅田如
愛染明王ふんぬか愛か木の実降る     変竹
深夜便イブモンタンの枯葉舞ふ      粒石
姥捨てや語り部おりん流れ星       変竹 
冠雪の便りに友の四角文字        粒石
死を命ず茶碗静けき秋しぐれ       変竹
小春日や生死一如のいまを生く      変竹
遊郭の湯島の里の湯豆腐屋        変竹  
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十月披講

            兼題  秋の水 紫式部の実

  天   蒼天も釣人も映して秋の川    粒石
秋の川は川底が見えるほど澄んでいる。青空と釣り人。悠久の中に溶け込む様に、時間はゆっくりと過ぎてゆく(模楽宙)

  天   はんなりと嵯峨ゆくふたり白式部    摸楽宙
若い二人の京都の旅も最後の日となった。別れを惜しむように鬱蒼とした竹林が二人を包む、人力車が二人の脇をきしみながら通り過ぎたそのあとに・・こんなラブストーリーのプロローグを想像させる。リズム感が好奇心を生む句だ(雅田如)

  天   三条を着飾る大路実むらさき    摸楽宙
千年の古都 都大路は 華やぎ 煌びやかに着飾った貴婦人たちの晴れやかな姿
着飾った華やぎ 煌びやかな衣装 貴婦人たちの装い 立ち居振る舞い 秋好日(変竹)

  天   野にありて仏さがすや吾亦紅    変竹
縹渺たる晩秋の野に一人佇む己の姿を想像してしまう。理非を越えなにやら無常感の漂う句に暫し黙考(粒石)

  天   祇王寺の苔寝付かれぬ露時雨    雅田如
寝付かれぬほどたくさんの滴を受けた苔。朝靄の中鮮やかなグリーンに輝いている光景がうかびました。と同時にその光景とは裏腹の歴史の陰が物悲しく深みを感じます(里楽乃)

  地   水澄みてヴァィオリンの弦昂めたり    雅田如
ヴァィオリンのリサイタルなのか、それまで静かに奏でていた曲が、一転、高い音がホールを満たす。胸がすく様な充足感が伝わってきます(模楽宙)

  地   陶の肌憧れ触れる白式部    里楽乃
上五に魅かれてとりました。陶器には興味はありませんが、季語との取り合わせを考えると、白磁かなと想像する。妖艶な中に気品を備えた季語からの着想がすばらしい(雅田如)

  地   走り根にいくたの歴史秋しぐれ    粒石
張り巡らされた細い根の中に一本太い根。この一本踏ん張っている根に元気を与えるような「秋時雨」はいたわりの雨でしょうか(里楽乃)

  地   角乗りの水車のごとし水の秋    摸楽宙
木場の若衆が操る角材の足捌き 仕事の合間の一瞬の座興 或は新年出初の練習?
粋を誇る正月行事の角乗りもいいが 秋の空水の秋のそれは 突き抜けた爽快感(変竹)

  地   角乗りの水車のごとし水の秋    摸楽宙
且つて深川木場では日常目にする場景だった。年季の入った職人たちのあざやかな手際で材木を裁く姿は、いなせを好む江戸っ子を魅了したものだ(粒石)

  人   イスラムの戦士のごとし稲雀    雅田如
稲が実ると群なして来 鳥威で脅すと一斉に逃げるがすぐ戻る 今どきのテロ軍団
でも一方で「聖戦の戦士」を自負する彼らの一部には 信念と誇りさえあるとか?(変竹)

  人   水澄みてヴァイオリンの弦昂めたり    雅田如
澄みきった青空の下、音楽を愛する人の高揚感が伝わってきて、優雅な一刻に身を委ねたい気分に駆られる(粒石)

  人   水澄むや両生類は決意する    変竹
面白い!この季語からよくもまあ、当方は山椒魚をイメージしたが、出てくるもんだ。いつも何事にも決意がついて回るが、飛翔することを決意したのに相違ない。頑張れ!(雅田如)

  人   蔦紅葉からまる母校や遠い雲    粒石
♪~つたのーからまーるチャペールで~♪懐かしい学び舎の思い出は遠く、でも思いをめぐらせれば学生時代の自分がふと顔を出す。今の自分を育んでくれた場所や友達は心の中で色あせないものですね(里楽乃)

  人    走り根にいくたの歴史秋しぐれ    粒石
走り根は強い。盆栽にも出るが、形を崩すために切らなければならない。しかし、自然界の樹木は走り根によって強く大地に根付き、生命を持続している。生存競争を生き抜くことは歴史を作る事でもある(模楽宙)

  佳作  走り根にいくたの歴史秋しぐれ    粒石
クリカラ峠か 関ヶ原から遁れる森の道なのか 戦国時代 大阪から北陸への道は
騎馬軍団 兵卒 鎧武者 幾多の軍団が攻めのぼり 撤退し 敗走した歴史の道か(変竹) 

  佳作  陶の肌憧れ触れる白式部    里楽乃
白磁の壺だろうか花瓶だろうか 白く透明な色姿は女性にとっての永遠の憧れ 
軽やかで明るく 透明な色彩の奥には 古来数百年の空気と暮らしの沈静美が(変竹)

  佳作  用水路細々とゆく秋の水    里楽乃
台風襲来時には奔流となって用水路を流れた水も今は穏やかな秋の陽差しの中、何も無かったようにゆったりと流れている。単純にして奥深い田園風景は何時までも遺しておきたいものだ(粒石)

  佳作  水澄めりメール返信手際良く    摸楽宙
秋さわやかに 気分爽快 何事にもペキパキ 溜まったメールの返信もペキパキ
残暑の日々メール打つさえ億劫だったのがウソのよう 心はずむ秋の日の始まり(変竹)

  佳作   はんなりと嵯峨ゆくふたり白式部    摸楽宙
舞妓さんでしょうか?女二人旅?嵯峨野の自然の中に艶やかなふたりづれ。「はんなり」と「白式部」の組み合わせがとても合っています(里楽乃)

  佳作  水澄みて魚一瞬のシャッター音    摸楽宙
冷たく澄んだ水から一瞬跳ねた魚の勢いを心のカメラでとらえた、心のシャッター音だと読みました(里楽乃)

  佳作  水澄みて魚一瞬のシャッター音    摸楽宙
よくぞ此の一瞬を捕えた”と驚きと感嘆の言葉が口をつく。秋の清澄な川畔に佇んでいる錯覚に落いってしまう(粒石)

  佳作  水澄みて魚一瞬のシャッター音    摸楽宙
ピンと来たのは魚釣りで世界を行脚した「開高健」の髭面の顔だ。餌に飛びつく大魚の大口、飛沫が飛び散る画像。季語が研ぎ澄まされた鋭利な刃物のように感じる(雅田如)

  佳作   山茶花や白き八重歯のこぼれ笑み    雅田如
笑みを浮かべると八重歯が見えるのは、その人のチヤームポイント。
山茶花の、華やかというよりも、可憐な花に通ずるものがあります(模楽宙)

  佳作  凪の湖に映える紅葉のグラデーション   雅田如
鏡のような湖面を、紅葉の落ち葉が浮かんでいる。葉の色は変化に富み、色々な模様を織りなしてグラデーションの如し(模楽宙)

  佳作  祇王寺の苔寝付かれぬ露時雨    雅田如
平清盛が寵愛した祇王・祇女・仏御前が隠遁したことで有名な真言宗の寺院 の苔?
白露 朝露 夜露 露の玉 芋の露 露時雨 多彩華やか世界 考えたら眠れない?(変竹)

  佳作   水澄むや両生類は決意する    変竹
いつから海の生物は、陸に上がって哺乳類になったのか。今また両生類は陸上に上がるための準備をしている。決断の時は今しか無い(模楽宙)

  佳作   稲を刈るやんごとなき人その長命    変竹
「稲を刈る」という地道な作業をする人に与えられた特典が長命なのか、特別な人は地道に生きているということなのか「やんごとなき人」に興味を惹かれました(里楽乃)

  佳作  野にありて仏さがすや吾亦紅    変竹
上手い! 人生いつもそうだが土壇場では神仏にすがる。そうしなければ、この不条理の世を渡っていくことは至難のことだ。季語が生きている(雅田如)

   次回兼題   「湯豆腐」(湯やっこ)
          「小春」「小春日和」「小春日」「小春人」「小六月」いずれもOK
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