名もない医師…S

2018-11-22 22:32:35 | 
怯える心の私の前に現れたのは…若く可愛い女医だった

エッ…この子が主治医⁈…まさか…

その女医?は自信なさげなか細い声でSですと名のった…

紹介医からの検査結果を見て「ガンですね。でも初期です」

これからの諸検査のスケジュールの話しが有って…

患部の細胞診が始まった…

なんだかモゾモゾやってる…

でもその時の私の頭の中は…又ガンになってしまった…

この7年間の生活が走馬灯の様に頭の中を駆け巡り…

一生懸命生きてきたのに…なんで…なんで…

なんて…今にも泣き出しそうな思いを抑えて目をつむり横たわっていた

痛いッ!…?…さっきから何回も針さして…痛いんですけど…?

そこにS女医のか細い甘えた声で「せんせ〜い」…⁇
目を閉じていてもわかる男性の手…⁇?

そういえば…後ろに中年のおじさんがいた…

「ハイ、終わりましたよ」…おじさんは言った

「では、来週PET検査の後で又ここに来てください」…女医…

この日は正直、頭の中はそれどころでは無くて…
後日少し冷静になって来て…

うん?…あの女医はなに?あのおじさんはだれ?

そして次の診察日までに私の出した結論は…

「そうか!研修医ね!外来から研修を重ねていくんだね…おじさんは指導医ね、きっと…
大きな病院だから手術は別の医師がして…グループで治療が行われているのね!
仕方ないな…女医さんとはボランティアの気持ちで接しましょう…
本当の主治医とはいつ会えるのかな?」

なんて…勝手解釈してしまったことが…悲劇の始まりとなった

その後…二人体制によるエコー検査…見落としを防ぐ為らしいが…若い男性技師二人…何故か途中で吹き出しそうになり笑いを抑えるのに苦労した

次にマンモ…痛いッ!痛いッ!と叫ばないと耐えられない痛さ!勿論外に聞こえない程度に叫びましたが…1週間前の痛みがまだ残っていたカンジ

そしてPET検査…半日仕事的な…痛みは無いけれど…
待ち時間を含めて時間がかかる…

X線も取ったかなぁ〜⁈…

この段階での診断は…12ミリの乳がんⅠa 他臓器、リンパ節転移無し

その時の私の気持ちは…起こってしまったことはもう考えても仕方ない
乳がんの初期…転移が無いことが不幸中の幸い!
傷跡も小さく痛みも軽いらしい…前を向いて頑張ろう…だった

MRI検査で造影剤のアレルギーで小さな湿疹が腕に出た
看護士に呼ばれて女医が来た
アレルギーを抑える薬を処方

外来の化学療法室に移動してそこで注射を受けた

その部屋は明るく広く…市民病院のそれとは比では無い…ガン専門病院のそれだった

抗がん剤だけはもう二度としたく無いという気持ちを抱えて見渡していた

異変が起きたのはその直後だった…
異常な寒気に襲われて…体をさすりながら耐えたが普通じゃ無い…

真夏8月…私は病院の外に出て熱気の中15分くらい体をさすりながら寒気に耐えた
少しましになった…

飲み薬も1週間分出てたので…不安は大きくなりもう一度化学療法室に戻って事情を説明した

女医が来た…

その頃には寒気もかなり薄らいで来ていた

結論…何故こうなったのかは未だにわからない
処方された薬が注射と同じ成分だとかで…「クスリはのまないでください」…それだけが女医の結論だった

本来なら…私の性格なら…次の診察日、MRI検査の結果を聞く日…どうして異常な寒気に襲われたか聞くんですけど…
それどころではなかった!

女医の都合で診察日が2週間後になりもう9月も半ば…痛みを感じてから町医者、紹介医、検査の数々…3ヶ月を過ぎようとしていた

その間何度もその不安は口にしたが…
「乳がんは進行が遅いので大丈夫です」と女医

私もPET検査で異常無し…PET検査はガン発見検査の最高峰と思い込んでいたので…
この女医が言っているのでは無い!本当の主治医も診ての結論だ!

そう信じ込んでいた…

2週間空いて最後の外来になると思った日…
言いにくそうに女医
「脇に転移が疑われて生検します」…エエーッ…

そして又何度も針を刺して…また甘い声で「せんせ〜い」…女医が刺した針をそのままググッと押し込むおじさんの手…もう涙が止まらなくて…

痛かった記憶は無い…とにかく最悪の結果に溢れた涙

おじさんが「痛かった?」と聞くが、首を横に振るだけで何も言えなかった…

生検の結果が出るまで又数日…

診察室の外に出て中待合でうなだれていると…看護士が「大丈夫ですか?少し話しましょう」と別室へ招き入れてくれた

この病院のモットーは患者の立場にたって患者に寄り添う…外来の看護士はそれを徹底していて…今も救われている

私は胸につかえてる不安や不満や疑問や…全部を吐き出した…

一番知りたかったのは…受付票に記されてる主治医にはいつ会えるのかだった…

そこで看護士に言われたことは…あのおじさんが記載されていた主治医
でも私の本当の主治医は学校を卒業して2年目のS女医。
細胞診も出来ないS女医が手術もするという………

分かります…その時の私の驚き‼️

私の本性が目を覚ましました
理不尽なこの現実…

看護士にそれは絶対拒否する…
「細胞診も出来ない技術しかない人に…ガンですよ!ガン‼︎…まともに手術なんか出来るはずないじゃないですか!ましてリンパ節転移ですよ!…転移なんかしてない!乳がんは進行が遅いから大丈夫ですって言ったじゃないですか!MRI検査の後だって、あのまま家に帰ってクスリ飲んでたらどうなっていたか?…原因すら分かって無いんですよ!絶対無理ですから…どうしたらいいですか?」…一気に吐き出したら負けてられないと闘志の様なものが湧いて来て…少し興奮していました。
哀しいと言うよりムカつく!…どうしたらいいのか?急がないと…焦ってもいました

でも…転院を考えても既に3ヶ月が経過
リンパに転移しているということはそこからは早い⁈…転院してもそこから又検査漬けになって………ダメだ‼︎間に合わない‼︎転院などしている暇はない‼︎

看護士が「S先生とお話ししたらいかがでしょう。はっきり言われた方がいいです。」…

結局、自分でやるしかないらしい…
そのことにもムカつきながらも…この病院を選んだのも私!
勝手解釈して今日まで黙ってSのボランティアをしていたのも私!

でもこのまま主治医を続けさせる訳にもいかない!

看護士に1時間くらい泣いたり叫んだりしたものだから若干疲れて…S女医との話し合いを2時間くらい先にしてもらって一旦病院を出た

丁度お昼時になっていた…
少し人を避けたかった…
少し病院を離れて遠くへ行きたかった…
9月の半ば…まだ暑い中を歩いた…
入りたいお店が見つからなかった…

結局1時間近く歩いて…病院に戻った…

その間…なんで…なんで…の繰り返しで…

ガンになっただけでも大変なのに…前向きに乗り越えようと決めたのに…

不運過ぎる!…私はそんなに今まで悪いことをして来たのか!
一生懸命生きて来たじゃないか…などなど…

今はそんなこと考えませんが…病気あるあるですよね…
思っても、考えても、悔やんでも仕方ないことで頭の中がいっぱいになる…

その後1時間はS女医にどう話すか。
これからどうするか。
それを考えていると少し冷静になって来ました…

お昼ご飯を食べたかどうかは…今も思い出せませんし…S女医と話して病院を出た後のことは今も思い出せません

後から気付いたのですが…受け付けのフロアの壁一面に各科の医師の名前が古い順に記されているのですが…S女医の名前は今だに記されていません

この続きは又明日