むらくも

四国の山歩き

天狗塚…徳島県

2011-08-17 | 剣山系

ミツコバ(牛ノ背三角点)、天狗塚    みつこば、てんぐづか



標高                  1757.1m、1812m
登山日                 2011年8月13日
登山口                 東祖谷西山林道堰堤
下山口                    〃   土捨て場
駐車場                 林道路肩
トイレ                 なし
水場                  堰堤上の沢

メンバー                ピオーネ、むらくも




いい歳こいたおっさんになるといろんな症状が出てくる。
先ず第一が、朝のトイレがやたらと長くなり、若いときのようにシャキッと終わらない。
本人は終わったかなと思いつつも、いや、なんだかまだだな、つい煙草を吸う人は一本吸い付けたりするが、吸わない奴はコーヒーかお茶をトイレの中で飲みたくなる。

第二が朝目覚めても、「あ~、よく寝たな~」という声は出ない。
それどころか目覚めても体がだるくて起きたくない、乳酸が体から出ていって無くて、延々とお疲れモードなのだ。

第三が瞬時の記憶喪失、今テレビで見たタレントなどの名前や地名などは直ぐ忘れてしまう。
これは大事だぞ、記憶しておこうと思っても、5分も経てば完璧に忘れてしまい、思い出せない。
部屋から部屋へと足を運んだのはいいが、わし、何をしにきたのかな?
その場で立ちすくむことしきり、ところがこの程度ならまだいい方らしい。
何かをするために足を動かしたが、何かも思い出せないどころか、はたと考えることもなく、そのまま台所でコーヒーを入れて、目の前にあった新聞を読んだりして過ごしてしまう。

第四が自分がいかに年老いてきたかを誰彼となく、吹聴するようになる。
最近老眼がやたらと進んだよとか、やっぱり歳には勝てないよなとか。

第五がそのくせに「まだまだおれは若い、頑張るぞ、な~に、若いモンにはまだ負けておれん、うっしー、今日もジョギングだ~っ!山だ~っ!、北アルプス縦走だ~っ!」とやけに張り切る。

第六に、山に登って山頂にヒーフーいいながら、もう限界に近いくせに、まだまだ歩けるぞみたいな虚勢を張って、同じく山頂にいる方と和気藹々とおしゃべりを楽しむ一方で、過去の山行の栄光を語り始める。
たまたま、同じ山を歩いた方となら、なおさらのように力強く熱い思いで語らう。

ふむふむ、全部が全部でないにしても、大方が自分に当てはまっているから不思議だ。
いよいよおっさん化からジジイ化へと踏み込みつつある今日この頃、如何お過ごしでしょうかと自分自身に問いたくなる。

というわけで、今日もおっさん丸出しのわたしとおばちゃん化しつつある(正確には「している」)妻とが、久しぶりの天狗塚に行くことにしました。



おっさんのわたしは軟弱な萎え萎えの足とは裏腹に計画は勇ましい。
堰堤から登って、三嶺じゃ~、そのくせ、途中で降りるルートをしっかり頭に描いている。
一つは牛ノ背北尾根、もう一つは天狗峠から西山登山口、そして西熊山北尾根、三嶺から降りることなど声だけでトンと計画にはない。
そして、車で走る大歩危小歩危ラインの美しい吉野川の早朝の景色を眺めながら、頭の中ではきっちりと、牛ノ背北尾根が一番いいやな~などと決め込んでしまっているから、大したモンだ。
横に乗っている妻には、今日は折角だから地蔵の頭へ行って、お地蔵さんを拝んでこようなと、もっともらしい伏線を張っている。

今日はお盆、お地蔵さんに会うのに、絶好の日だわ。

3時半起床、マックへ直行。
顎が外れそうなほど大きな口を開けて、ビッグマックを咀嚼しながら、苦いコーヒーを流し込む。
モシャモシャ、ゴクリ、運転するハンドルが微妙に揺れる。
お盆だ、四国外の車がビュンと追い抜いていく。
こちとら安全運転、前を走る落ち葉?枯れ葉?いやいや紅葉?違う、四つ葉マークの車がうちの老犬の散歩よろしくヨロヨロと走るが後ろを着いていく。
そりゃそうだ、追い越し禁止区間だ。

延々と続いていた黄色車線が一瞬、白線に変わった。
運転する妻に、それ、いまだ、唾を飛ばしながら発破と号令を掛ける。
「え~っ!」
「行け~っ!」
「………コワッ!」

なんだかんだ言いながら、朝陽に照らし出された登山口に着いた。
「お~!いい天気だ」
「日頃の行いが良いからねっ!」
堰堤ではアブがほんの少し、申し訳程度に迎えてくれたが、気にはならない程度。

早朝のひんやりした空気を胸いっぱいに吸い込みながら、堰堤右を登り始める。
沢の冷たそうな水が堰堤を越して、下の沢へと落ちていく。
堰堤上部で直角に右へと振り、林の中へと入っていくと、キツネノカミソリが木漏れ日を受けて輝いていた。




ここはヤマシャクヤクの群生地、今年もここの花を見ることは叶わなかったが、実が成っていた。
畑の跡地と杉植林の端境目を通り過ぎていく。
右手薄暗い杉林の中には造林小屋が見えていた。

踏み跡が杉の落ち葉に隠れ気味だが、植林地の中をうっすらと谷寄りへと続く。
40分弱、一汗かいた頃に大岩のある亀尻峠からの尾根道と合流する。
杉林に日が差し込み、小さな虫の羽がキラキラと妖精のように輝く。




岩陰から左手へと作業道跡があるが、これは無視して、尾根方向に上がり、右手へと回り込むようにして登っていく。
直ぐに左へと斜面を横切り、再度右に振り、尾根に乗っかる。
最近伐採されたのだろう、杉の切り株とともにピンクのテープがやたらと木に括り付けられ、ひらひらと風に揺れている。
ピンクのテープは南斜面へと続くが、無視して、尾根を追う。

しばらく植林地を我慢して歩いて行くと、やがて自然林に替わり、山毛欅などが目につくようになってくる。
やや左に切れ落ちたような斜面が続くが、尾根道そのものの勾配は平坦になり、そこを抜けると、展望の開けたモミの点在する笹原地帯。
リョウブの花が満開で、その向こうには端正な中津峰山の姿が見えている。




登山道縁にはところどころにオトギリソウとそしてツリガネニンジンがわたしたちを歓迎してくれた。
やがて、十字路に着き、左へと直角に曲がる(直進すると牛ノ背三角点へは寄らずに直接天狗塚へと行くが、踏み跡はやや薄い)。




コメツツジの群生地の中を一登りで牛ノ背三角点(ミツコバ)。
ここは景色も良く、切り立った山頂の展望とは趣が少し異なるのですが、とにかく広くて落ち着くのです。
近くに天狗塚がなくて、あの三嶺までの素晴らしい縦走路がもしなければ、牛ノ背だけの茫洋とした笹原だったら、この背で昼寝したり、食事を楽しんだり、空の雲を眺めながら一日のんびりくつろぐことでしょう。

少し休息してだだっ広い背を東へと歩きます。




ミツコバを振り返るが、一面の笹原。
天狗塚方面は生憎のガス。




落合方面も霞んでやや白っぽい。
気の早いリンドウが一輪だけ蕾を開いていた。




天狗の池とガスの晴れ間に覗かせた天狗塚。
愛媛からこられた単独男性の方と出合う。
三嶺からの周回を考えていたそうだが、少し出遅れたために天狗塚~牛ノ背に計画変更したとのこと。
先週の天狗の池はうっすらと水が張っていたが、今日はほとんど無くなっており、苔が青々としている。




天狗のドデン鼻がグッと近づく。




ところどころに咲くイブキトラノオ。
急斜面を踏ん張る。




頂上に近づいたところで牛ノ背を見おろせば…。




コメツツジの咲き残り。
山頂に咲くツリガネニンジン。




同じく山頂に咲くイブキトラノオ。
一呼吸いれてたら、一組のご夫妻が天狗峠から登ってこられた。




蝉が岩に止まってジーと鳴く。
妻がやがて到着して、この蝉の声を聞いて、「ガンバレガンバレー」と鳴いていると言う。
わたしにはジジーとだけしか聞こえない。
聞く人によって、これほどまでに鳴く声が異なって聞こえるというのも珍しいような気がするが…?




ご夫妻とお別れして天狗峠へ。




天狗塚を振り返って見た。
ここから見る天狗の南斜面は急峻だ。




視線を右手の牛の背に向けると、風貌は一変してのっぺり頭。




西山分岐。
地蔵の頭を眺める。




ガスに煙る三嶺方面。
一人の男性がお亀岩からこちらへ登ってきているのが見えた。




綱附森分岐から右に折れ、地蔵の頭へと一登り。
少し、綱附方向へと下って、お地蔵さんにご挨拶。

お地蔵さんにはなぜか心が引かれる。
ここのお地蔵さんは地蔵菩薩なのか、それとも道祖神なのか、山の神さまなのか、この位置がイザリ峠の直ぐ近くということからも道祖神のような感じではあるのですが、よくは分からない。
どちらにしても、昔から最も庶民に親しまれているお地蔵さん、いろいろとお祈りしました。




綱附森の標識のあるところまで引き返して、ここでお昼ごはんとしました。
大きめのアブがひとしきり集まってきたが、この山域ではいまだにブヨにはお目に掛かったことがない。
小型のアブは用心していないと直ぐに噛みついてくるが、大型のアブはめったやたらとは噛みつかない。
しかし、油断していると、吸血されることがあるので、そのときは痛いの痒いの腫れてしまい、こりこりしたしこりになるので要注意。
やたらと近づくものはアースで撃退した。

天狗へと下っていく。




西熊山、三嶺はやはり雲の中。




天狗へと引き返し、鼻の裾を巻いて、再び牛の背へ。




天狗の池に近寄ってみた。
獣の足跡がたくさんついている。
目で確認したが、そのうちのいくつかはシカおよびカモシカでした。




これほどのんびりと歩ける笹原は四国では他にはあまりないように思える。
もう一度ミツコバで一休みして、今度は天狗塚がはっきりと見えている。




三角点から直接笹原を北東へと下っていく。
少し先でライオン岩。




白花のツリガネニンジン。




やや向きを変えたりもしながら、基本は北北東へ一直線。
苔蒸すところもあったりするが、急斜面が多くやや歩きたくないなと思うような難儀なルートです。




小さなケルン。
野ぶどう。(訂正 ノブドウではないようです)




トモエソウ。
ヌスビトハギ。
やがて土捨て場に降り立つ。




西山林道縁には可愛らしいピンクの花が、クルマバナのようです。
やがて朝の堰堤に到着。




コオニユリ
帰り道、落合集落展望所に寄ってみました。
展望所のベンチ横に飾られていた仲の睦まじい案山子。




国の重要伝統的建造群保存地区「落合集落」
江戸中期から明治期にかけて造られた集落だそうです。
茅葺きの大きな民家が一軒。
一度、ゆっくりと、この集落の道を歩いてみたいものです。




堰堤登山口7:10-亀尻峠道合流地点7:46-9:27ミツコバ(牛ノ背三角点)9:41-10:20天狗塚10:39-西山登山口分岐10:54-11:02地蔵の頭11:49-西山登山口分岐11:56-12:38ミツコバ12:53-ライオン岩13:05-土捨て場14:10-14:35堰堤登山口


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(注)トラックログではありません、概念図です。