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むらくも

四国の山歩き

御池岳…鈴鹿山脈

2016-11-14 | その他<四国外の山>

鈴北岳、御池岳          すずきただけ、おいけだけ



山行日          2016年11月5日
標高           1182m、1247m
登山口          鞍掛トンネル三重県いなべ市側
下山口          いなべ市側コグルミ谷ルート
駐車場          鞍掛トンネルいなべ市側(無料)、(参考…鞍掛トンネル滋賀県側にも駐車場と登山口あり)
トイレ          なし
水場           コグルミ谷「長命水」
メンバー         ピオーネ、むらくも



御池岳は鞍掛峠の南方にあって、峠から尾根どおしに歩いて1時間20分で鈴北岳へ、そこからドリーネの点在するカルスト地帯を25分も歩けば丸山とも呼ばれている御池岳山頂に着くことが出来る。
山頂は展望がないので南にある天狗の鼻を経てボタンブチへ行けば、鈴鹿山脈を遠くまで眺めることが出来る。
石灰岩の点在するカルスト台地は昔は一面笹原だったようだが、現在は一面背の低いシダに覆われていて景色もよく歩きよい。

前日に歩いた御在所岳の南には昔には盗賊で有名な難所の鈴鹿峠があって歴史の時が刻まれているが、鞍掛峠も相当に古くからの歴史があって、鞍掛という名称の由来が858年、惟喬親王が京の追ってから逃れ、この峠で馬の鞍を外して休んだ地だといわれている。
古くは竜華峠とも呼ばれていたようだ。

田中澄江著書「花の百名山」には次のように書かれている。
鈴鹿の山地には縄文時代の遺跡が多いそうだけれど、日本列島を東半分と西半分にわけ、東南に伊勢湾と西北に敦賀湾の深い窪みを持つこの日本の中枢部には、そもそもこの国土が海面に現出したときから、多くの人がかくれ住んだのではないかと思う。
  …
伏木貞三氏の「近江の峠」によれば、平均一千メートルの高度を持つ鈴鹿山脈を、近江から伊勢へと抜けてゆく鞍掛越えは、鎌倉時代から近江商人にとっては重要な道となっていた。
伊勢にもこの峠を峠を通ってゆき、参詣の帰りには、大君ヶ畑の延寿招福の多賀神社に詣ったという。
  …
鞍掛峠には鞍掛地蔵さんが安置されている。



前夜、御在所岳麓の湯の山温泉に浸かり、お酒をおいしくいただいた。
広間ではグランドゴルフのサークル会による宴会が催されていた。
この日はいなべ市でゴルフ大会を済ませたあと、温泉に浸かり、カラオケで宴会だ。
翌日もゴルフ大会がある。
遅くまで楽しそうに歌ってはしゃべくる。
浴場で「どこからおいでたんえ」「四国からやで」「ホーホー」と感心していた私より少し先輩らしきおじさんも仲間だった。
賑やかな声は、途中までは覚えているが、子守歌のようにしてやがてぐっすり眠った。

早朝にもう一度温泉に浸かり、すっきりしゃっきり。
今日の山は鞍掛峠からコグルミ谷までをくるりと周回し、休憩含めて5時間余りの行程。
ゆっくり朝食をとり宿を後にした。

いなべ市側の306号線を滋賀県へ向けて走る。
今日も青空が広がっている。
途中、道沿いには藤原岳への登山口標識があった。
標高625mにある鞍掛トンネルは過去(2012年)に崩落し2年間通行止めだったが、再び滋賀県側の法面が崩落し、昨年暮れから全面通行止めとなっている。
三重県ー滋賀県への通行はできず、また工事期間はいまのところ未定だ。

コクルミ谷登山口を確認後1kmほど先にあるトンネル手前の鞍掛峠登山口へ移動した。


R306号線鞍掛トンネル三重県側登山口         入口
登山口にある広い駐車場は満車状態で、道にあふれていたが、運よく一台分空いていて停めることが出来た。
先ほど対向車にすれ違ったので、その方が出たあとだろう。
時刻は9時30分、その方はずいぶんと早い下山だったようだ。
今日も快晴、駐車場から右へ下るようにしてついている登山道、登山口のポストに届け出を投函し出発。


    鈴北岳への尾根                鞍掛峠への登山道
20分ほど登ったところで、一人の男性に出会った。
まだ薄暗いコグルミ谷を6時に出発して、周回してきたとのこと。
前日の御在所岳で少し吹いていた風は今日はなく、ヤッケは必要なかった。


       鞍掛地蔵                   鉄塔
標準タイム20分のところを30分かかって峠に出る。
尾根の反対側には滋賀県側への道が続いており、傍には鞍掛地蔵尊の祠があった。
祠の中を覗いてみると赤い頭巾と前掛けをしたお地蔵さんが石の台座の上に座っていて、小さくて可愛い顔が、にっこり微笑んでいて、傍に鹿の角が置かれていてる。
あっちに散らばりこっちに塊り、お賽銭はお賽銭なりに個性を主張し合っていて、地蔵さんの回りはおもしろい光景だった。

一見どこにもある普通の登山道だが、伊勢から近江あるいは京都へ、京都から伊勢あるいは駿河や江戸へ、鈴鹿峠や箱根越えほどではないにしても、この峠をいったいどれだけの古の人たちが越えていったことだろう。


        1056m峰                 林床
峠から鈴北岳への尾根道は緩やかで歩きやすく、遊歩道のような雰囲気だ。
前方からソロの若い男性が降りてくる。
トレラン用の小さく軽いザックを背負っており、あっという間に走り抜けていった。


         尾根道                   苔
標高1000mほどの平らな尾根ですと、普通は笹が茂っててもおかしくないと思うが、ない。



尾根の東方向には藤原町の奥に養老山地がまったく凸凹のない姿で横たわっている。
あまりにものっぺりしすぎていて、最高峰の笙ヶ岳(標高908m)がどこにあるのかさえわからない。
香川と徳島に横たわる阿讃山脈でさえ、もう少し特徴がある。
尾張名古屋はこの向こう側だ。



歩いてきた道を振り返ってみた。
左には霊仙山、右奥遠くには花の名山伊吹山が頭だけが浮かび、一番右端手前に鞍掛峠から続く三国岳がちょこなんと座っている。


    鈴北岳への尾根広い                 鈴北岳
ババオネだ。
間違った、馬鹿尾根を妻が歩く。
日に透け、緑色に輝いているのは一面の苔だ。

11時10分、標高1182mの鈴北岳に到着した。
登山口で出会ったソロ女性も座って休憩していて、鈴ヶ岳方面から5~6人ほどのグループがこっちへ向かってきていた。
鈴ヶ岳は滋賀県側にあり、北西尾根の登山道を下ると306号線沿いの大君ヶ畑(おじがはた)へ通じている。



このあたりが日本庭園と云われているところだろうか?


   天狗岩と藤原岳の頭                  元池へ


    
鈴北岳山頂で休んでいた女性がかがみこんで熱心に写真を撮っている。
奇麗な苔、近寄せて撮ると、ミニチュアの世界だ。
                            


         元池                    石灰岩
日本庭園方向へ歩き、十字路を右に折れてドリーネの元池へ立ち寄る。
この山域一帯はカルスト台地であり、石灰岩がごろごろ転がっていたり、雨で浸食されたあとの窪地に出来たドリーネという池が点在する。
複数のドリーネがつながったものをウバーレ、広大な窪地をポリエというらしい。
何語だろう?
ドリャとかアカンタレとかウバワレタとかポリスめとかは日本語に間違いないのだが。

鍾乳洞はこのドリーネやウバーレの下に存在するらしいのですが、この山域にそれが存在するかどうか?


                   元池から十字路へ
元池周辺には他にも興味深いドリーネがあるらしいのですが、元来た道へと引き返す。


       カルスト台地            御池岳への日本庭園地帯①

      日本庭園地帯②            日本庭園地帯③
標高が1100mにもなると、紅葉が終盤の様子でしたが、まだまだ十分にきれいです。


      御池岳(丸山)                竜ヶ岳遠望
真ノ池を過ぎ、12:10鈴鹿山脈最高峰の御池岳にたどり着いた。
山頂ではたくさんの人が休憩中で、そそくさと逃げるようにして石灰岩のゴロゴロ転がる尾根を南へと下る。


                    天狗の鼻
山頂から10分ほどで天狗の鼻がある展望のよい突先に出てきた。
天狗の突き出た鼻と思われる石灰岩の岩を入れて、ボタンブチを撮ってみた。
ここから眺めるボタンブチはなんの変哲もないこんもりした丘だったが…。(画面左)
右奥に竜ヶ岳、さらに右奥には昨日登った御在所岳から眺めた釈迦ヶ岳が空の色に溶け込みそうにしてなんとか写っている。

ボタンブチの向こうにT字尾根へと続く尾根が緩やかに下っていた。


    丸山~奥の平尾根方面              ヒメフウロ
食事をするならボタンブチと決めていたので、移動。


                  ボタンブチと石灰岩
言葉は要らない。


               テーブルランド斜面の紅葉
歩いてみたくなる光景が広がっている。


                T字尾根とゴロ谷
過去に遭難事故のあったT字尾根とゴロ谷が眼前にあり、そのゴロ谷は中央あたり手前の真下。
T字尾根を左に辿ると君ヶ畑登山口があり、右に辿ると御池川に架かる御池橋の登山口に出る。
御池橋登山口から北に鈴ヶ岳へ登り、ぐるりっと回って、テーブルランドから君ヶ畑登山口へ、もしくはもう少し東への土倉岳からノタノ坂を経て君ヶ畑登山口へと周回することができるようだ。
いい尾根だ。
すらりとした背の高いソロの男性がやってきて、T字尾根と鈴鹿山脈縦走の説明をしてくれた。
登山用具や姿からも山屋さんそのもので、藤原岳から縦走してきたとのこと。
山頂は混んでたよと説明すると、そそくさと誰もいないテーブルランド方面の林へと消えていった。
人混みが嫌いな様子だった。


                   天狗の鼻
食後のコーヒーを飲みながら、天狗の鼻を眺める。


            釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳遠望
山並みがグチャグチャと重なるようにして渓谷が広がっている。


    奥の平へ向かう登山者たち        奥の平の丸い頂
奥の平へ向かった。


                御在所岳、雨乞岳方面
「悠久の今」
一つの風景はいつも同じ色ではない。
病気や心配ごとなどがあるときは、灰色に見える。
希望に満ちているときは光輝いて見える。
人生いろいろ、しかし、山での景色はいつも癒され、元気が出る。


二人の男性が座って景色を楽しんでいる。
彼らの視線の先には藤原岳への尾根が横たわっていた。
鉄塔の建っているところが頭蛇ヶ原、天狗岩へと続いて、右端の端正な三角な頂きが藤原岳。
山と高原地図によると藤原岳からここまで2時間55分と書かれていたが、わたしだともう少し、4時間弱かな。
左奥には養老山地の山並み、見えていないがその奥陰には木曽川の水が流れ込む伊勢湾が広がっている。


        奥の平                御池岳(丸山)
鹿避けネットの施された奥の平へ立ち寄り、尾根伝いに御池岳へ戻る。


      コグルミ谷への下り                苔
13:20、下山開始。
御池岳山頂から南東にちょい下って、北東へ振る。


        9合目付近                  三色モミジ
林床をシマリスが走った。
ちょろっと走っては立ち止まり、こちらを振り向く。
妻に教えたが、リスの色が落ち葉に溶け込んでいて見つけることができない。
チョロッピタッ、チョロチョロッピタッ!
カメラを構える暇がなかった。
四国の山で見かけたリスは、体全体がこげ茶色のニホンリスばかりで、シマリスを見たのは初めてだった。


                 標高930m付近の紅葉
やがて、ミヤマバイケイソウの群生地と思われる、花後の枯れた種の穂が立ち並ぶところを過ぎ、下っていく。


   天の平(カタクリ峠)付近       306号線沿いコグルミ谷下山口
石灰岩がゴロゴロ転がっているコグルミ谷へ出るまでの林床は、ほんに心地よく、「花の百名山」によると、春から夏にかけて様々な花が咲き、楽しめるところのようだ。
コグルミ谷の名称の由来と思われるサワグルミやヤマモミジの木も印象的だった。

下山後あらためて思ったが、カルスト台地が続くこの山は標高こそ低いが、魅力がいっぱいで素晴らしかった。
計画したときは藤原岳からの縦走は頭になかった。
山頂から山頂への所要時間はストレートで約3時間、それぞれの登山口を繋ぐには自転車で可能と思われる。
悔やまれたが、ときすでに遅し。
しかし、鈴鹿山脈の谷筋にはプルプルクネクネしたヤマヒルが棲んでるのでご用心、ブヨの類も多いそうだ。


鞍掛登山口9:30-鞍掛峠10:00-11:10鈴北岳11:15-元池11:30ー真ノ池11:40-御池岳(丸山)12:10ー12:25ボタンブチ12:50-奥ノ平13:05-御池岳13:20-カタクリ峠14:00-長命水14:20-コグルミ谷登山口14:50ー15:10鞍掛登山口


グーグルマップ(登山口などの位置がわかる地図)→こちらへ
ルートラボ(距離や時間がわかる地図)→こちらへ

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御在所岳…鈴鹿山脈

2016-11-12 | その他<四国外の山>

御在所岳       ございしょだけ


山行日        2016年11月4日
標高         1212m
駐車場        湯の山温泉バス停付近に有料あり(普通車1日800円)
            その他鈴鹿スカイライン沿いの登山口に無料有り
登山口        鈴鹿スカイライン沿い中道登山口
下山口        湯の山温泉翠明橋奥にある裏道登山口
トイレ        バス停付近、山上公園内レストランなど各施設、藤内小屋
水場         山上公園、兎の耳付近沢、藤内小屋
メンバー       ピオーネ、むらくも




琵琶湖と伊勢湾に挟まれるようにして、南北に伸びる鈴鹿山脈があり、直線距離にしておおよそ50kmある。
北には関ケ原の南西にある標高1083mの霊仙山から始まり、伊賀・甲賀市境に聳える標高693mの油日岳まで続いている(鈴鹿峠までとする説もあるが…)。
最高峰は標高1247mのカルスト台地の御池岳、第二位には1238mの雨乞岳、そして第三位は日本二百名山に選ばれている標高1212mの御在所岳がある。
因みに御池岳は田中澄江さんの著書で有名な花の百名山でもある。
参考までに鈴鹿山脈の北部には花の百名山が三山あって、御池岳の他に霊仙山、それに日本三百名山の一つである標高1144mの藤原岳は特に花の種類が多く、田中澄江さんはこの山を「花の百名山」「新・花の百名山」両著書で紹介している。

花の三山は石灰質の山だが、御在所岳は主に花崗岩から成り立っており、藤内壁はロッククライミングのメッカでもある。
麓にある湯の山温泉で一晩泊まり、鈴鹿スカイライン沿いにいくつもある登山口から好きなコースを選んで、ゆっくり周回するのはなんともいえない魅力がある。
また奇岩の多い山容と、山頂までロープウェイがついていることからも、小豆島の寒霞渓に似たところがあって、秋のこの季節はねらい目だ。
花の名山藤原岳と霊仙山は他の季節に譲ることにして、秋の遠足は紅葉の景勝地御在所岳と鈴鹿山脈最高峰の御池山の二山に絞った。



前夜、湯の山温泉西にある道の駅「菰野」で車の中で寝た。
すぐそばには近鉄湯の山線が走ってて、絶えずウンゴロカッタンコットンと煩く一晩中音を立てていたが、いつのまにかぐっすり。
朝6時前には走る電車の音がちょうど目覚まし代わりになって、何度か通ったのだろうが、頃よく目覚めさせてくれた。
布団を頭から被って寝ているまん丸顔のドッヂボールのような妻の頭をペヒリと叩き起こす。

前日に、鈴鹿スカイライン沿いを滋賀県八日市から峠を越えて走り下りてきたが、その日は祝日であったこともあって、スカイライン沿いにあるいくつかの登山口にはたくさんの車が駐車していた。
なおかつ駐車場をはみ出して延々と道路縁にも止められており、登山口から駐車地点までの長い距離の車道を歩いている人をたくさん見かけた。
紅葉シーズンのこの時期は観光客や登山者が詰掛けて、平日とはいえ油断ができない。
駐車場が満杯になってはいけない、湯の山温泉へそれ急げ。

朝焼けの御在所岳を正面に眺めながら鈴鹿スカイラインから577号線へ入って、ぐちゃぐちゃっと走ったところにバス停があって、その手前の三滝川渓流沿いにトイレのある広い駐車場があった。
有料で普通車一日800円だった。
スカイライン沿いの登山口付近には無料の駐車場があるが混んでそうだし、中道尾根と裏道を歩いての周回にはここがよさそうだ。
湯の山パーキングセンターの管理をしているお土産物屋さんに料金を払い、登山口までの道を訊いて出発。
時刻は7時50分だった。


   湯の山温泉バス停                   涙橋

バス停にはドテッパラと後部にかもしか号と書かれた赤いバスが停まっていて、傍らには御在所岳への道標が立てられており、登山口まで案内してくれる。

時は元禄15年10月10日、夜も明けきらぬ朝、大石内蔵助が愛人小柴太夫との別れを惜しんで涙してこの涙橋を渡ったという。
そっか、愛人がいたんだわ、うーん。
橋を渡りながら、奥さんはその頃どんな気持ちでどうしてたのかなとつい余計なことを考えてしまう。      

      古い温泉宿           表道・中道・武平峠・鎌ヶ岳分岐口
良雄(内蔵助のこと)は愛人とこの宿に泊まっておったのか!(ウソじゃ)
近くには内蔵助が立ち寄ったという大石公園があって、それを横目に道標に従ってほどなく進んだ分岐のところで登山届のポストがあった。
ポストの下には行方不明者のポスターが貼られており、9月12日、80才、登山歴10年、年50回ほど御在所岳の一般道を繰り返し歩いていたとのこと。
9月中旬は台風がいくつも発生し、お天気があまりよくなかった時期でしたが、ガスがかかって視界がよくなかったのでしょうか。
他人事とは思えませんが、日数がだいぶ経過していて心が痛みます。
妻が届書に記入して、ポストへポトン。

スカイラインへ出たところが中登山口で、道路沿い上下にそれぞれ駐車場があるが、マイクロバスが停まったりで、大勢の方たちがたむろっていた。
今日は平日だのに人気がある山です。
この様子だと、昨日(祝日)は相当な人が押し寄せてたことでしょう。
明日は土曜日、今日という日でよかったわ。


    ロープウェイ下通過            負ばれ石

植林の中を進むとすぐに自然林の急な登りになる。
20分ほどで分岐があって、右にとると裏道の日向小屋の上に出る。
ここは左へ振り尾根を辿る。
空を見上げるとまだ朝の気配を残した陽がサンサンと山に降り注ぎ、ロープウェイの小さめな赤いおもちゃのようなゴンドラが頭の上をいくつもいくつも通過して行く。

大きな負ばれ石という奇岩が現れた。
子守をするときに赤ちゃんを背中にを負ぶうというが、この石は負ぶった石よりも負ばれた石のほうが大きくて、いかにも重たそうで、負ぶった石は力負けしてそのうち倒れるんじゃないかと思う。


              ロープウェイ山上駅と御在所岳東面
空気はひんやり乾燥していて、気持ちがいい。
急峻な山肌に白い鉄塔が立ち、目にまぶしい。


                  ゴンドラと鎌ヶ岳
ゴンドラが次々と運ばれてくるその奥にはキューピーのような尖った頭の鎌ヶ岳がおいでをしているように見えたが、ちと遠くからの者なので遠慮しておくことにした。


       伊勢湾方面              850m付近
出発地点の温泉街が標高350mほどだったので、おおよそ500mほど登っただろうか、尾根筋のあちこちにある岩場からは展望がよく、遠くには伊勢湾が霞んでいて、辺りの木も一段と紅葉が鮮やかになっている。


                 地蔵岩
今年の紅葉は厳しい残暑が長く続いたことと、秋雨前線の停滞や相次ぐ台風の影響で長雨が続いたことにより、高所では芳しくない。
むしろ、これからの冷え込みにより里山や麓のほうが紅葉は期待できそうだ。


     ゴロゴロした岩場              キレット
ちょっとばかし危なっかしそうなところに差し掛かった。
昭文社などの山地図には先ほどの地蔵岩あたりと、この場所に㋖マークが入っている。
負ばれ石あたりから上は花崗岩の瘦せ地なので、ツツジ系の樹木には適していて、春には奇麗らしいのですが、ガスが発生したりすると迷いやすく危険なのだそうだ。
下りなので怖さが倍加します。
鎖がついてるのでそれを補助にしながらゆっくり慎重に下った。


       梯子              富士見台
キレットを過ぎると林にすっぽり包まれるが、春に来るとアカヤシオ(アケボノツツジ)で全山ピンク色に染まるんだとか。

歩きだしておおよそ3時間、標高おおよそ1190mの富士見岩展望台に着いた。


         東面                 東面下とロープウェイ
山頂へはもう少し上らないといけないが、とりあえず、紅葉真っ盛りの景色を眺める。
富士見台へはロープウェイの山上駅から近くて、何人もの人々が入れ替わり立ち寄っていくが、みなさん景色に心を奪われているのかシーンとして静か。


                   富士山方面遠望
ときには富士山が遠くに見える日もあるようだが、今日は生憎見えていなかった。


     中央左奥に御池岳、その右に藤原岳、右端手前に釈迦ヶ岳
鈴鹿山脈の一部である御池岳、藤原岳、釈迦ヶ岳が一望できた。
手前は国見尾根で、尾根上に白く小さく点のように並んだ奇岩(天狗岩・ゆるぎ岩)が写り込んでいる。
この尾根の手前渓側が復路に歩く裏道ルートがある。


                     朝陽台
朝暘台では大勢の人がいて、三々五々銘々に深まる秋の山を楽しんでいた。


        望湖台           鈴鹿山脈南方面(手前に長者池がある)
こちらは望湖台、琵琶湖が見えているような見えてないような、目が悪い私には厳しい。
左奥にある山は雨乞岳のようだ。
南方面には鎌ヶ岳の尖がり頭、その他の山はよくはわからない、山脈南端の油日岳は残念ながらもっと右のほうでほとんど霞んでいて見えなかった。


         朝陽台              御在所岳山頂
山頂から朝暘台を眺める。
山頂には一等三角点が埋設されている。


      三重・滋賀県境                 スキー場
三重と滋賀の県境を跨いでヤッターと叫んでほくそ笑む妻。


        芭蕉池                こもしか君
水芭蕉の咲く芭蕉池、4月の20日ごろから5月初めにかけて、咲くとのこと。
小さな鯉が一匹泳いでいた。

山上公園にあるレストランで名物の御在所カレーうどんを頂いた。
麺は伊勢のもちもちっとしたうどんで、トッピングには豚の角煮。
豚の角煮はあまりにもふんわかとやわらかだったので、妻が間違って「麩」が載ってるわと言った。
それ豚の角煮やでと訂正したら、大声でウソと叫んだ。
お店の人が一斉にこちらへきつい軽蔑した視線を投げてきた。
慌てて、おいひーって言いなおしたわ。

レストランを出ると、ご当地ゆるキャラの「こもしか」君が、子どもたちと記念写真を撮ってご満悦。
菰野町の「こも」とカモシカの「しか」を捩ったものだそうだ。
妻がカメラを向けると、即ポーズ、かわいいね。


       国見岳                      裏道
国見峠に向かって下山開始。
下り坂で体が揺れる度に、ゲップ。
カレーうどんと豚の角煮の匂いが胃からこみあげてくる。


            藤内壁(一部)
裏道は谷へ向かって一気に下るが、右手には岩壁がそそり立っていた。
ここはクライマーたちがトレーニングに訪れる藤内壁という有名なところ。
わたしたちノーテンキ老ハイカーはおよびじゃない。
写真はたぶん、前尾根の下部を撮ったのじゃないかと思ってる。
藤内壁全体はもう少し雄大で、これは藤内壁のごく一部のようです。


         藤内沢               兎の耳
大きな岩がゴロンと転がる藤内沢へと下りてきた。
若者三人が沢を歩いているのだが、岩に比べて人が小さく、どこに写り込んでいるのかわからない。
兎の耳という奇岩に出合った。
うさぎの顔と耳に見えますね。


       藤内小屋                 藤内沢木橋
大きなごろ石のところどころに赤ペンキが施されており、それを辿って新しいトイレのある藤内小屋に着いた。
小屋の前には缶ビールやジュースの飲み物が冷たい水で冷やされている。
ロッククライミング用の道具を身につけた方が楽しそうに話をしていたりして、ここはクライマーたちの集いの場所のようです。
わたしたちも一休み、熱いコーヒーでホッと一息!


        日向小屋                 鉄橋①
この渓谷は2008年の豪雨でかなり流され荒れたようで、当時の道も消失してしまい、大きく迂回する新しい登山道が作られたようです。
新しく建て替えられた日向小屋は迂回する新しい登山道からは離れておりました。


           壺                   鉄橋②
やがて、前方にスカイラインに架かる大きな青い鉄橋が見えてきた。
登山道はY字に別れ、一方は左谷川へ下ってゆく、もう一方は上に向かっていた。
傍に道標があった。
上への道はスカイラインへ出るようだ。
左下は裏登山口への道だった。
どちらへゆくか迷って、立ち止まったところへ、スカイラインからカジュアルな服装をした女性が降りてきた。
女性の話ではスカイラインへ出ると、そこから湯の山温泉へは遠いとのこと。
一瞬スカイラインへ出ようと思ったりもしてたので、この情報はありがたかった。
スカイラインの高く見上げるように大きな橋げたの下の登山道をくぐって歩く。


   ロープウェイ山麓駅            裏道登山口
ロープウェイの下を通り、14:40、見覚えのある裏道登山口に下山した。
今夜は山上のレストランで予約した宿の温泉につかり、のんびり寛ごう。
明日は御池岳が待っている。

この山は田中澄江の「花の百名山」に次のように書かれている。
…御在所岳は麓に湯の山温泉を持ったのが不幸で、ロープウェイで運ばれた頂上付近の、遊園地化には、胸も凍るまでの衝撃を受けたが、まだまだ鈴鹿には原始の姿がいっぱいあるのではないかしら。…
山頂は公園あり、スキー場やレストランもありでまったくそのとおりでしたが、登山道沿いはまだまだ自然が残されていました。
春~初夏にかけては、アカヤシオ(アケボノツツジ)やシロヤシオ、サラサドウダン、ベニドウダン、コバノミツバツツジ、ホンシャクナゲなどが咲く花の山だそうです。
下山後の麓の湯の山温泉宿では、お湯の白い煙で曇った窓から、暖かい色をした秋の夕陽の匂いが残る御在所岳と、新名神高速道路の亀山JCTから美濃関JCTを繋ぐ建設中の橋下駄と長いアームの黄色いクレーンが見えていた。

<本日のコースタイム>
駐車地点(バス停)7:50-中道尾根登山口8:35-おばれ石9:10-朝陽台11:00-御在所岳11:30-<休憩30分>-国見峠12:40-兎の耳13:35ー13:45藤内小屋13:55-裏道下山口14:40ー14:50駐車地点(バス停)


グーグルマップ(登山口などの位置がわかる地図)→こちらへ
ルートラボ(時間、距離がわかる地図)→こちらへ

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坊ガツル・北大船山…大分県

2015-05-17 | その他<四国外の山>

北大船山                  きたたいせんざん



山行日                   2015年5月8~9日
標高                    1706m
登山口                   玖珠郡九重町田野「吉部登山口」
駐車場                   有料駐車場あり(300円と1000円)、もしくは登山口付近広い路肩
トイレ                   なし
水場                    暮雨の滝、坊ガツルキャンプ場、玖珠川源流、法華院温泉、鳴子川上流
メンバ-                  坊主さん、ピオ-ネ、むらくも




坊主さんのお誘いで九重坊ガツルへ出かけることになった。
コ-スは第一日目「下湯沢台-坊ガツル(法華院温泉)泊」第二日目「坊ガツル(法華院温泉)-段原-大船山-段原-北大船山-大戸越-平治岳-<北ル-ト>-下湯沢台」。
坊主さん好みの一般的でない静かなコ-スを選んでいる。
ちょっと待ってちょっと待って、ここはやっぱり長者原かもしくは牧ノ戸峠からでしょ、と言いたくなるようなル-トです。
しかし、こういう選択は坊主さんならではだし、シ-ズンをほんの少し外して静かな歩きを楽しむのも坊主さんの得意とするところで、その緻密な計画には圧倒される。
ときおり現地で余儀なく計画の変更を迫られることがあるが、そんな場合も一見アボウトなようでいて、あらかじめエスケ-プル-トや抜け道など壷を押さえている。
マニアックなル-トや、シ-ズンをちょい外すことに不満さえ抱かなければ、信頼性が極めて高い坊主さんであることには間違いない。

九州と言えば火山。
4年前の東日本大震災以来、日本列島はあちこちで地震が起きているように感じるし、火山も活発になっているのかなと思う。
昨年9月に御嶽山で水蒸気爆発が起き、死者56人、重軽傷者69人という被害を出したが、その後年内捜査は打ち切られ、現在も行方不明者6人となっている。
その後、蔵王や草津白根山、吾妻山、安達太良山、浅間山、箱根山などが火山性地震が発生し、九州では阿蘇山も。
九重山は危険ではないがレベル1で平常よりはワンランク上の活火山。
今のところ問題はなさそうです。



事前にコ-スの情報を入手しようとして「下湯沢-坊ガツル-大船山」でネット検索をかけてみた。
さっぱりヒットせず、情報がつかめないまま当日を迎えた。
ええい、ママよ、どうにかなるさ。
ところが後日、帰宅してあらためて登山口である吉部で検索をかけ直したところ、数多くのレポ-トがヒットした。
検索するには正しくは「吉部-坊ガツル-大船山」「吉部-平治岳」だった。
下湯沢ではヒットしないものだから、えらいことマニアックなル-トだなと、帰宅するまで思い込んでしまっていたのです。
情報というものは大事ですね、歩く先々で戸惑うことばかりでした。
そしてこのル-トは決してマニアックなものではなくて、ミヤマキリシマツツジの咲くシ-ズンには登山者の行列となるル-トを外したい方たちが、好んで歩く比較的静かなコ-ス。
それでもシ-ズンになると吉部登山口付近にある三カ所(無料、300円、1000円)の駐車場は1000円を除いてすぐに満杯になるそうです。

第一日目
自宅4時半出発-(待ち合わせの豊浜SAから高速)-大洲南IC-三崎港-佐賀関港-大分宮河内IC-九重IC-県道40号線
九酔渓谷を眺めながら、九重”夢”大吊橋へも寄ってみた。
621号線から吉部への林道に入り、そこからくねっと走って登山口へ。
駐車場は手前から有料1000円、次に300円、それらを横目にして通り過ぎ、登山口に一番近いところに広い路肩風の無料駐車場があった。
すでに何台かの車が止められている。
ナンバ-は北九州、福岡などでしたが、もうクルメ-の久留米やイタタタの大分もあった。
シ-ズンを外してわざわざ遠くから来るなんちゅう酔狂なのはわたしらだけでしたわ。

時刻は12:52、お昼ご飯は途中で済ませている。
睡眠も前夜に続いてフェリ-の中でグッスリとっている。
本日の天気は晴朗、さあ、登山届けを提出して、元気よく出発。

(参考)周回しての下山口は林道奥へ少し歩いて、橋を渡り、ゲ-トを超えて200mほど先右側にあって、そこは平治岳北ル-トの登山口でもある。(橋を渡って袂直ぐから右への踏み跡も登山口で、この道は踏み跡少し薄いのですが、だいぶ先で200m先の登山道と合流する)




いきなり道ぶちや林内に咲くたくさんの花に出合ましたよ。
種がたくさん付いたジロウボウエンゴサクとユキザサ。




こちらはお初の花。
少しピンク色したオウギカズラ、四国にもあるそうですがまだ出合ったことはない。
可愛いですね。

そしてニリンソウ。




これもお初のサバノオ、それもそのはず九州にしか自生しない。
チゴユリ、これは四国でもよく見かける。




真っ白なギンリョウソウ、別名ユウレイタケですがキノコではなくてれっきとした花なのですが、葉はなく替わりに小さな鱗片葉がある。
秋に咲くのがありますが、ギンリョウソウモドキもしくはアキノギンリョウソウとも言う。
根の浮き出た結構な急登に差し掛かりますが、長くは続きません。




やがて緩やかになり、登山口から1時間ほどのところで暮雨の滝の道標があるところに差し掛かります。
滝への下り口付近にはサワグルミの木があって、道標にはそこから5分くらい下ると滝に行くことができると書いている。




妻と二人で降りてみた。
幅はおおよそ15m、落差7mほどだろうか?
水を湛えた綺麗な淵があって、4本の筋になって流れ落ちている。
坊ガツル讃歌の6番に次のように唄われている。

深山紅葉(みやまもみじ)に 
   初時雨(はつしぐれ)
  暮雨滝(くらさめたき)の 水音を
   佇み聞くは 山男
  もののあわれを 知る頃ぞ

歌詞では「くらさめたき」と読まれていますが、実際には「くらぞめのたき」と読むようだ。




滝入り口に引き返した。
所要時間はわずかに往復7分だった。
サワグルミの木を見上げる。
高い梢には特徴ある互生する新緑の葉が茂り、ふりそそぐ日光を独り占めにしていた。

右写真はその傍にあったオヒョウという木の葉っぱ。
特徴のある形の葉っぱなのでよく分かる。
元々はアイヌ語のオピウという言葉から由来しているのですが、アイヌの方はこの樹皮の繊維から厚司という布を織り独自の模様の刺繍をして仕事着にしたそうです。
四国にも生えているようです。




林床にクルマムグラと頭上高くハリギリの葉。
左手には樹幹の間からちらちらっと平治岳の山裾がゆったり広がっている姿が見え、わずかに気持が高揚した。




坊主さんが「この風景ええ」ポツリと呟きましたが、本当にそのとおりで、目にも心にも染み込んできます。
やがて明るい開けたところに出ましたが、そこにはハルリンドウが咲いていて、風景ががらりと変わりました。




すぐに大船山林道に合流し、右には三俣山が見え、前方には久住山、中岳、稲星山の連山がどっしり構えています。
大船山林道は鳴子川を遡るようにして久住のある南へ延びている。
道標に従い左折して坊ガツルへの道に入るが、このとき丁度一組のご夫婦が長者原方向から歩いてくる姿が見えた。
(参考)大船山林道は吉部登山口先の橋袂でゲ-トが設置されており、一般車は進入できない。




鳴子川を挟んだ前方には大船山。
左後方には平治岳、真ん中の鞍部が大戸越(うとんごし)のようですが、ここから見える大戸越からの平治岳斜面はかなりな急登のようです。




鳴子川を渡るときに生物がいないか川面をジッと目を凝らしたが、姿は見えない。
後方を振り返って見た。
小さな点になって、坊主さんと一組のご夫婦が見える。
妻は道端にしゃがみ込んで写真でも撮っているのだろう。
左の大きな斜面が三俣山の裾で、右側小さな丘と三俣山との間には九州自然歩道があって、雨ヶ池越(雨の降る季節に池ができる処)を経て長者原へと続いている。

坊ガツルキャンプ場が前方に見えてきた。
トイレや管理棟などがあって、テントが三つほど設営されている。




玖珠川源流と書かれている坊ガツルに流れる小川を渡って、木道を歩き、法華院温泉へと向かった。
木道の傍には一面にハルリンドウが咲き、妻の花への感性が最高潮に達した。




イワカガミ、サワオグルマ、その他キジムシロやオトコヨウゾメなども。




法華院温泉の方がボチボチ咲き始めましたよとおっしゃってたミヤマキリシマツツジも出迎えてくれました。
法華院温泉の上部には大きな堰堤があって、そこから滑るように流れ落ちる山水は、温泉成分を川床に白く濁らせ付着させている。




15:26、到着した法華院温泉(標高1303m)ではやや痩せ気味の若い猫が佇んでいた。




受付を済ませたあと、待ちきれずに生ビ-ルを注文。
んが~~~、一杯しかない。
済みませんと答えるスタッフの顔が坊ガツルに棲む意地の悪い妖怪ずんべら坊(目・鼻・口・眉毛なし)に見えた。
仕方ない、わたしは自動販売機の缶ビ-ルで我慢することにした。
男二人はテント(わたしはツェルト)を張り、妻は特別室付き温泉で一人ゆったり。




グビグビッ!坊主さんの飲む生ビ-ル(700円)の美味そうなこと。
わたしゃは、缶ビ-ル(400円)。
あまりにも悔しいので、持参したマッサンウィスキ-でチビリ。

ここ法華院温泉は、宿泊客以外の人も日帰り入浴が出来ます。
入浴料金500円で白い湯ノ花浮かぶ本物の温泉でした~。

あったまってシュラフに潜ると先ほどの猫がテント傍にのこのこやってきた。
スルメとおにぎりを差し出したところバクバク食べた。
よっぽどお腹が空いていたようでした。
妻がテント傍にやってきて、明日、九重山間部の天気予報は降水確率午前中70%、午後40%とのこと。
雨の中でのテントの片付けを覚悟した。

やがて夜も更けて、隣のテントでは軽い鼾が立ち、朝までグッスリ。





第二日目
午前4時半起床。
雨は昨日深夜からポツリポツリとテントに当たり音を立てていたが、今はしっかり降っている。
ツェルトの中でお湯を沸かし、インスタント味噌汁を作って、おにぎりを一個半食べる。
おにぎりの半分は昨日、猫が食べた。

カッパを着て、ツェルトなどの荷物をザックに詰め込み、6:05、取りあえず大船山登山口へ向けて出発。
わたしと坊主さんはセパレ-ツのカッパを着込み、カメラも防水。
妻はカッパのパンツを履き、上からポンチョを被る。
カメラは防水型ではないのでカバ-を着けていないザックとともにポンチョの下に。
最近、ポンチョ姿の登山者をみかけることはほとんどないが、強風でないちょっとした山歩きには便利だ。




坊ガツルキャンプ場でテント泊の方たちと挨拶を交わしながら奥にある大船山登山口へ。
後ろを振り返ると三俣山。




昨日はわずかに2時間半の行動だったし、なによりもぐっすり寝た。
登りは快調だ。
問題は足元で、黒くぬかるんだ登山道は滑りやすく歩きにくい。
標高1450mのところで立中山への分岐があった。
大船山から鉾立峠を経て中岳、久住へと縦走する道だった。
直進する。




西南西方向に中岳、久住山、星生山が見え、硫黄山だろうか、白く噴煙が上がっている。
道のあちこちに真っ白な花を咲かせたオオカメノキがあって…。




足元にはたくさんの花びらが散っていた。
モミジイチゴの白い花、雨に濡れた清楚な姿。




鉾立峠から佐渡窪方面だろうか、雲海が広がっている。
覗き込むようにして南側を眺めると、大船山の頂が見えた。




8:09、火山性の赤い石の転がる登山道を上がるとそこはミツバツチグリの花咲く段原でした。




雨は出発時よりも激しくなっており、止みそうにない。
妻は大船山に行きたそうにしていたが、展望は望めないし諦めることにした。
わたしも米窪にもう少し近寄ってみたいなという気持があったが、生憎、雲が棚引いており見えない。
またの機会にということで大戸越方面へ。
足元にはマイヅルソウの群生があって、小さな蕾がところどころに付いている。




フモトスミレ。
段原を出発して20分ほどで標高1706mの北大船山に到着。




周りには信じられないくらいにミヤマキリシマツツジが密集しています。




ツツジ越しに大船山を望みます。
キリシマツツジ咲く頃に間違いなく平日にもう一度、きっと来ますよ。




ツツジの蕾がたくさん付いているものもありました。




ほんの申し訳程度に咲いているものも。




様々なスミレが咲いているものの、わたしのささやかな知識では同定ができません。
当てずっぽうでは間違う可能性大なので、その他スミレたくさんとしといた方が無難なようです。




こちらも淡い色合いで綺麗です。
その他随分と小さなスミレもありました。
真っ赤な花のクサボケがたくさん咲いています。




大戸越への下り坂では、どろどろの地面で2度ほどぬるっと滑ってズルズルっと…カッパは泥だらけ。
9:25、大戸越に到着したものの、そこから見上げた平治岳は急斜面で、登山道はやはり柔らかい土でぬかるんでいる。
相談した結果、3人の意見が一致、雨の中、これ以上急斜面の登山道を歩くのは危険と判断してここから下山することにした。

お腹が空いてしまったので、木陰に入って軽く食事をすることにしたが、わたしは法華院で作って貰ったお昼弁当を全部たいらげた。
美味しかった~。




20分弱の休憩を取ったあと、下山開始。
ここからは下る一方なのですっかり気が楽になりましたが、雨はやはり厭なもんです。
10:05、分岐があって、直進すると坊ガツル、右に折れると大船山林道なんですが、道標には右、黄色の矢印で下山路、直進、赤い矢印で登山路、坊ガツルと記しています。
おそらく下山路方向が大船山林道への近道コ-スだろうと判断し、やや薄い踏み跡を右にとる。




いい雰囲気の下山コ-スですが、すぐに林道にでるものとの誤った思い込みがあって、分岐から30分以上も経ったのにいつまでも標高差の変わらない山の中。
疑心暗鬼になり、途中で坊主さんに地図とGPSで確かめて貰った。
間違いないとのこと。
ほとんど下ることなく前へ前へ。
途中で一カ所、滑って尻餅をついた。




10:50、やっと明瞭な尾根を下りだし、4分ほどで林道に降り立つ。
林道側から踏み跡にちょい踏み込んだところには、三段まきのテ-プ(黄色一本、赤色二本)が施されていた。
その木の枝には、小さなビニ-ル袋に入れられた指標が括りつけられており、大戸越し(うとん越し)へと書かれている。
このル-トを利用する人はあらかじめ知識がないと入口は分かり難い。
林道を右折しほんの少し歩くと、そこは広場になっていて、白い杭に「林道大船山線終点」と記されていた。
吉部登山口のちょい先にある橋の袂に施かれたバリケ-ドから、ここまでが大船山林道なのですが、ここから坊ガツルまでの林道はどうやら大船山林道の延長線ということのようです。

傍には車2台ほど止められるカ-ポ-トがあって、1台が止まっている。
この山域での希少動植物等盗採防止の監視員の方の車のようでした。

カ-ポ-トの屋根をお借りして、コ-ヒ-ブレイク。
20分ほど寛いで11:20再び歩き出すが、しばらく林道歩きが続く。
途中で盗採防止パトロ-ル中の方が乗った車に会いました。
その方、わたしを見、そして後ろから来る二人をジッと見てましたよ。
お-、わたしたち、そんな不審者じゃありませんてば。
善良な登山者でごいす。




11:38、林道から左に外れ再び登山道へと入る。
(注意)この登山道へ入る手前5分ほどの地点で右への道があるのですが、そこが当初予定していた平治岳北ル-ト林道下山口でした。
一般的にはここを登山口として利用し、平治岳から大船山へと歩く方が多いようです。




ウツギやムシカリの花が雨に打たれて綺麗でした。
この時期の花色は白が多いですね。

滝の音が聞こえてきた。
どうやら昨日見た暮雨の滝の音のようです。
鳴子川を流れるせせらぎの音を耳にしながら右岸の少し上をくねくねと歩く。
11:57、再び林道に出合が、それを横切るようにして登山道を下って行くと、12:05、分岐に差し掛かった。
左へはたくさんのテ-プが括りつけられた川への下りコ-ス。
直進の道はよく踏み込まれており下りよりくっきりはっきり明瞭。(たぶんですが、直進道のほうが歩きよく、下山地点は橋より200mほど北に位置する林道へ出るのではないかと、帰宅後日に思った)
地図やGPSで確認するのにだいぶ手間取ったが、左下への道を下った。




やがて沢に出て、バリケ-ドがあって重機が置かれた橋の袂に着いた。
バリケ-ドは一般車の大船山林道進入禁止のものだった。
林道を左折し橋を渡って、12:34、吉部登山口の駐車地点へ。

いつの間にか降っていた雨は止んでいた。
ほえ-、やれやれ、汗で濡れたシャツやパンツ、そして下着も全部着替え、さっぱりっとして車に乗り込んだ。




帰路、筌の口温泉(源泉掛け流し、200円)に寄って…。




汗を流し、冷えた体を温め、ほっこり。
温泉で甘茶のサ-ビスを受けて、えっ!これで200円?
いや-、さすがは九州本場の温泉ですな~、余は満足ですちゃ、ふふふふ-。




第一日 吉部登山口12:52-暮雨の滝13:53-大船林道合流14:35-坊ガツル15:04-15:26法華院温泉テント場
第二日 法華院温泉6:05-大船山登山口6:21-段原8:09-北大船山8:31-9:25大戸越9:43-分岐10:05-10:53大船林道11:20-登山道11:39-12:34吉部登山口


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