鈴北岳、御池岳 すずきただけ、おいけだけ
山行日 2016年11月5日
標高 1182m、1247m
登山口 鞍掛トンネル三重県いなべ市側
下山口 いなべ市側コグルミ谷ルート
駐車場 鞍掛トンネルいなべ市側(無料)、(参考…鞍掛トンネル滋賀県側にも駐車場と登山口あり)
トイレ なし
水場 コグルミ谷「長命水」
メンバー ピオーネ、むらくも
御池岳は鞍掛峠の南方にあって、峠から尾根どおしに歩いて1時間20分で鈴北岳へ、そこからドリーネの点在するカルスト地帯を25分も歩けば丸山とも呼ばれている御池岳山頂に着くことが出来る。
山頂は展望がないので南にある天狗の鼻を経てボタンブチへ行けば、鈴鹿山脈を遠くまで眺めることが出来る。
石灰岩の点在するカルスト台地は昔は一面笹原だったようだが、現在は一面背の低いシダに覆われていて景色もよく歩きよい。
前日に歩いた御在所岳の南には昔には盗賊で有名な難所の鈴鹿峠があって歴史の時が刻まれているが、鞍掛峠も相当に古くからの歴史があって、鞍掛という名称の由来が858年、惟喬親王が京の追ってから逃れ、この峠で馬の鞍を外して休んだ地だといわれている。
古くは竜華峠とも呼ばれていたようだ。
田中澄江著書「花の百名山」には次のように書かれている。
鈴鹿の山地には縄文時代の遺跡が多いそうだけれど、日本列島を東半分と西半分にわけ、東南に伊勢湾と西北に敦賀湾の深い窪みを持つこの日本の中枢部には、そもそもこの国土が海面に現出したときから、多くの人がかくれ住んだのではないかと思う。
…
伏木貞三氏の「近江の峠」によれば、平均一千メートルの高度を持つ鈴鹿山脈を、近江から伊勢へと抜けてゆく鞍掛越えは、鎌倉時代から近江商人にとっては重要な道となっていた。
伊勢にもこの峠を峠を通ってゆき、参詣の帰りには、大君ヶ畑の延寿招福の多賀神社に詣ったという。
…
鞍掛峠には鞍掛地蔵さんが安置されている。
前夜、御在所岳麓の湯の山温泉に浸かり、お酒をおいしくいただいた。
広間ではグランドゴルフのサークル会による宴会が催されていた。
この日はいなべ市でゴルフ大会を済ませたあと、温泉に浸かり、カラオケで宴会だ。
翌日もゴルフ大会がある。
遅くまで楽しそうに歌ってはしゃべくる。
浴場で「どこからおいでたんえ」「四国からやで」「ホーホー」と感心していた私より少し先輩らしきおじさんも仲間だった。
賑やかな声は、途中までは覚えているが、子守歌のようにしてやがてぐっすり眠った。
早朝にもう一度温泉に浸かり、すっきりしゃっきり。
今日の山は鞍掛峠からコグルミ谷までをくるりと周回し、休憩含めて5時間余りの行程。
ゆっくり朝食をとり宿を後にした。
いなべ市側の306号線を滋賀県へ向けて走る。
今日も青空が広がっている。
途中、道沿いには藤原岳への登山口標識があった。
標高625mにある鞍掛トンネルは過去(2012年)に崩落し2年間通行止めだったが、再び滋賀県側の法面が崩落し、昨年暮れから全面通行止めとなっている。
三重県ー滋賀県への通行はできず、また工事期間はいまのところ未定だ。
コクルミ谷登山口を確認後1kmほど先にあるトンネル手前の鞍掛峠登山口へ移動した。
R306号線鞍掛トンネル三重県側登山口 入口
登山口にある広い駐車場は満車状態で、道にあふれていたが、運よく一台分空いていて停めることが出来た。
先ほど対向車にすれ違ったので、その方が出たあとだろう。
時刻は9時30分、その方はずいぶんと早い下山だったようだ。
今日も快晴、駐車場から右へ下るようにしてついている登山道、登山口のポストに届け出を投函し出発。
鈴北岳への尾根 鞍掛峠への登山道
20分ほど登ったところで、一人の男性に出会った。
まだ薄暗いコグルミ谷を6時に出発して、周回してきたとのこと。
前日の御在所岳で少し吹いていた風は今日はなく、ヤッケは必要なかった。
鞍掛地蔵 鉄塔
標準タイム20分のところを30分かかって峠に出る。
尾根の反対側には滋賀県側への道が続いており、傍には鞍掛地蔵尊の祠があった。
祠の中を覗いてみると赤い頭巾と前掛けをしたお地蔵さんが石の台座の上に座っていて、小さくて可愛い顔が、にっこり微笑んでいて、傍に鹿の角が置かれていてる。
あっちに散らばりこっちに塊り、お賽銭はお賽銭なりに個性を主張し合っていて、地蔵さんの回りはおもしろい光景だった。
一見どこにもある普通の登山道だが、伊勢から近江あるいは京都へ、京都から伊勢あるいは駿河や江戸へ、鈴鹿峠や箱根越えほどではないにしても、この峠をいったいどれだけの古の人たちが越えていったことだろう。
1056m峰 林床
峠から鈴北岳への尾根道は緩やかで歩きやすく、遊歩道のような雰囲気だ。
前方からソロの若い男性が降りてくる。
トレラン用の小さく軽いザックを背負っており、あっという間に走り抜けていった。
尾根道 苔
標高1000mほどの平らな尾根ですと、普通は笹が茂っててもおかしくないと思うが、ない。
尾根の東方向には藤原町の奥に養老山地がまったく凸凹のない姿で横たわっている。
あまりにものっぺりしすぎていて、最高峰の笙ヶ岳(標高908m)がどこにあるのかさえわからない。
香川と徳島に横たわる阿讃山脈でさえ、もう少し特徴がある。
尾張名古屋はこの向こう側だ。
歩いてきた道を振り返ってみた。
左には霊仙山、右奥遠くには花の名山伊吹山が頭だけが浮かび、一番右端手前に鞍掛峠から続く三国岳がちょこなんと座っている。
鈴北岳への尾根広い 鈴北岳
ババオネだ。
間違った、馬鹿尾根を妻が歩く。
日に透け、緑色に輝いているのは一面の苔だ。
11時10分、標高1182mの鈴北岳に到着した。
登山口で出会ったソロ女性も座って休憩していて、鈴ヶ岳方面から5~6人ほどのグループがこっちへ向かってきていた。
鈴ヶ岳は滋賀県側にあり、北西尾根の登山道を下ると306号線沿いの大君ヶ畑(おじがはた)へ通じている。
このあたりが日本庭園と云われているところだろうか?
天狗岩と藤原岳の頭 元池へ
鈴北岳山頂で休んでいた女性がかがみこんで熱心に写真を撮っている。
奇麗な苔、近寄せて撮ると、ミニチュアの世界だ。
元池 石灰岩
日本庭園方向へ歩き、十字路を右に折れてドリーネの元池へ立ち寄る。
この山域一帯はカルスト台地であり、石灰岩がごろごろ転がっていたり、雨で浸食されたあとの窪地に出来たドリーネという池が点在する。
複数のドリーネがつながったものをウバーレ、広大な窪地をポリエというらしい。
何語だろう?
ドリャとかアカンタレとかウバワレタとかポリスめとかは日本語に間違いないのだが。
鍾乳洞はこのドリーネやウバーレの下に存在するらしいのですが、この山域にそれが存在するかどうか?
元池から十字路へ
元池周辺には他にも興味深いドリーネがあるらしいのですが、元来た道へと引き返す。
カルスト台地 御池岳への日本庭園地帯①
日本庭園地帯② 日本庭園地帯③
標高が1100mにもなると、紅葉が終盤の様子でしたが、まだまだ十分にきれいです。
御池岳(丸山) 竜ヶ岳遠望
真ノ池を過ぎ、12:10鈴鹿山脈最高峰の御池岳にたどり着いた。
山頂ではたくさんの人が休憩中で、そそくさと逃げるようにして石灰岩のゴロゴロ転がる尾根を南へと下る。
天狗の鼻
山頂から10分ほどで天狗の鼻がある展望のよい突先に出てきた。
天狗の突き出た鼻と思われる石灰岩の岩を入れて、ボタンブチを撮ってみた。
ここから眺めるボタンブチはなんの変哲もないこんもりした丘だったが…。(画面左)
右奥に竜ヶ岳、さらに右奥には昨日登った御在所岳から眺めた釈迦ヶ岳が空の色に溶け込みそうにしてなんとか写っている。
ボタンブチの向こうにT字尾根へと続く尾根が緩やかに下っていた。
丸山~奥の平尾根方面 ヒメフウロ
食事をするならボタンブチと決めていたので、移動。
ボタンブチと石灰岩
言葉は要らない。
テーブルランド斜面の紅葉
歩いてみたくなる光景が広がっている。
T字尾根とゴロ谷
過去に遭難事故のあったT字尾根とゴロ谷が眼前にあり、そのゴロ谷は中央あたり手前の真下。
T字尾根を左に辿ると君ヶ畑登山口があり、右に辿ると御池川に架かる御池橋の登山口に出る。
御池橋登山口から北に鈴ヶ岳へ登り、ぐるりっと回って、テーブルランドから君ヶ畑登山口へ、もしくはもう少し東への土倉岳からノタノ坂を経て君ヶ畑登山口へと周回することができるようだ。
いい尾根だ。
すらりとした背の高いソロの男性がやってきて、T字尾根と鈴鹿山脈縦走の説明をしてくれた。
登山用具や姿からも山屋さんそのもので、藤原岳から縦走してきたとのこと。
山頂は混んでたよと説明すると、そそくさと誰もいないテーブルランド方面の林へと消えていった。
人混みが嫌いな様子だった。
天狗の鼻
食後のコーヒーを飲みながら、天狗の鼻を眺める。
釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳遠望
山並みがグチャグチャと重なるようにして渓谷が広がっている。
奥の平へ向かう登山者たち 奥の平の丸い頂
奥の平へ向かった。
御在所岳、雨乞岳方面
「悠久の今」
一つの風景はいつも同じ色ではない。
病気や心配ごとなどがあるときは、灰色に見える。
希望に満ちているときは光輝いて見える。
人生いろいろ、しかし、山での景色はいつも癒され、元気が出る。
二人の男性が座って景色を楽しんでいる。
彼らの視線の先には藤原岳への尾根が横たわっていた。
鉄塔の建っているところが頭蛇ヶ原、天狗岩へと続いて、右端の端正な三角な頂きが藤原岳。
山と高原地図によると藤原岳からここまで2時間55分と書かれていたが、わたしだともう少し、4時間弱かな。
左奥には養老山地の山並み、見えていないがその奥陰には木曽川の水が流れ込む伊勢湾が広がっている。
奥の平 御池岳(丸山)
鹿避けネットの施された奥の平へ立ち寄り、尾根伝いに御池岳へ戻る。
コグルミ谷への下り 苔
13:20、下山開始。
御池岳山頂から南東にちょい下って、北東へ振る。
9合目付近 三色モミジ
林床をシマリスが走った。
ちょろっと走っては立ち止まり、こちらを振り向く。
妻に教えたが、リスの色が落ち葉に溶け込んでいて見つけることができない。
チョロッピタッ、チョロチョロッピタッ!
カメラを構える暇がなかった。
四国の山で見かけたリスは、体全体がこげ茶色のニホンリスばかりで、シマリスを見たのは初めてだった。
標高930m付近の紅葉
やがて、ミヤマバイケイソウの群生地と思われる、花後の枯れた種の穂が立ち並ぶところを過ぎ、下っていく。
天の平(カタクリ峠)付近 306号線沿いコグルミ谷下山口
石灰岩がゴロゴロ転がっているコグルミ谷へ出るまでの林床は、ほんに心地よく、「花の百名山」によると、春から夏にかけて様々な花が咲き、楽しめるところのようだ。
コグルミ谷の名称の由来と思われるサワグルミやヤマモミジの木も印象的だった。
下山後あらためて思ったが、カルスト台地が続くこの山は標高こそ低いが、魅力がいっぱいで素晴らしかった。
計画したときは藤原岳からの縦走は頭になかった。
山頂から山頂への所要時間はストレートで約3時間、それぞれの登山口を繋ぐには自転車で可能と思われる。
悔やまれたが、ときすでに遅し。
しかし、鈴鹿山脈の谷筋にはプルプルクネクネしたヤマヒルが棲んでるのでご用心、ブヨの類も多いそうだ。
鞍掛登山口9:30-鞍掛峠10:00-11:10鈴北岳11:15-元池11:30ー真ノ池11:40-御池岳(丸山)12:10ー12:25ボタンブチ12:50-奥ノ平13:05-御池岳13:20-カタクリ峠14:00-長命水14:20-コグルミ谷登山口14:50ー15:10鞍掛登山口
グーグルマップ(登山口などの位置がわかる地図)→こちらへ
ルートラボ(距離や時間がわかる地図)→こちらへ