
「スワロウテイル」
監督:岩井俊二
出演:三上博史、CHARA、伊藤歩、
1996年作品
<あらすじ>
"円"が世界で一番強かった時代。一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達は、街を"円都(イェン・タウン)"と呼び、日本人達は住み着いた違法労働者達を"円盗(イェン・タウン)"と呼んで卑しんだ。そんな円都に住む、円盗たちの物語である。
アゲハ(伊藤歩)は円都の娼婦だった母の死後、胸に蝶のタトゥーを付け、美しい歌を歌う娼婦グリコ(CHARA)の元に引き取られる。グリコもまた、"円"を夢見て上海から日本にやってきた円盗だった。彼女の周りにいるのも、彼女と同じように円を求めて日本にやってきた円盗達だ。グリコたちはある日、アゲハを強姦しようとしたヤクザを死なせてしまい、彼の体内から一万円札の磁気データが記録されたカセットテープを手に入れる。
彼らはデータを元に作った偽札で儲け、グリコはひょんなことから歌手としての道を歩むが…。
私は、今年の夏で、中国へ「移民」してきてちょうど10年を迎える。
目下、この10年の中国の変化と私の変化を、映像と文章、移民当時から大切にしてきた祖国の品々や、支えてくれた友の書簡などを通じて回顧する「小さな中国、大きな私-移民10年記念回顧展」の鋭意準備中である(嘘)。
この(虚)構想が浮かんだのもこの映画のせい。
「円」を求めて貪欲に異国に生きる彼らの姿に、移民当時の自分の姿に重ね合わせてしまい、前半から涙が止まらなかった。
田舎は東北の寒村(岩手)だし、首都は(東京)砂漠だし、ここで生きてくしか道がない…と、中国に渡ってきた当時から、日本への本帰国の考えを断った。
そんな私を逞しいとみんな言う。
だって逞しくないと生きていけないからこの国は。
映画の話に戻すと、この映画は、どんな境遇に置かれた人でも、どこかしら心の琴線に触れる部分のある作品だと思う。
舞台となった架空の都市「円都」の無国籍で混沌とした世界がなせる業かもしれないし、CHARAの心に響く歌声かもしれないし、三上博史のハングリーな情熱かもしれないし、アゲハの無垢で恐れを知らない瞳が心に訴えるところがあるのかもしれない。
この岩井俊二という監督は、デビュー当時から、映画マニアからありとあらゆる賞賛をされ、瞬く間にメジャーとなった若き天才であった。
確かに、岩井作品は、どの作品にも奥深いメッセージが込められているようなつくりなので、映画マニアはこぞって様々な角度から評論を試みたが、私は、アレコレ考えずに、ただただ彼の作り出す映像美を堪能したらいいんじゃないかなと思っていた。
彼の映像美を支えているのは、日本屈指の名キャメラマンと言われた篠田昇(故)。
この映画における映像の特徴は、自然光を上手く生かしていること。
だからぱっとみ、ざらざらっとした印象を受ける。
ぱきっとした、作りこんだ映像が好みの人は好きじゃないかもしれない。
確かに映画によっては、完璧で隙のないライティングをされたものが美しいと思うが、そのぶん、どこか非日常の感じがしてしまう。
暗いところは暗い、見えにくいところは見えにくい、肉眼で見ているのと同じような、同じでないような映像が、ああ、どこかでみた風景だなと人に感じさせ、ある種の「なつかしさ」を思いっきり引き出してしまう映像の力。
圧倒的な映像で心地よく心をかきみだされる素晴らしい映画です。
☆個人的な見どころ
役者の英語、中国語(上海)がびっくりするくらい上手い。しかし唯一残念な感じだったのは某江口洋介氏。何言ってるか全然わかりませんでしたYO!
今日の毒舌度:0
どうやらこれを観るために出かけた時に
告白されたようなのだが、全く気がつかなかったぜ。ふふふ。
だからこの映画の話になると、どうも
「すまない」という気分になる…。
私はよっぽど親しい間柄ではないと、男性とは一緒に映画はみないね。
最初のデートのチョイスに映画は勘弁してほしいよ。