鶏林日記・ののまるのチラシの裏

基本的に日常の備忘録ですが、住んでいる場所が場所なのでちょっとだけ刺激的です。

中国四千年の歴史の味ですかw

2005-10-13 | 雑感
今日早朝に流れたニュース。

世界最古の麺、中国・青海省の遺跡で発見

なんですか中国の遺跡からはラーメンが見つかるのですかそんなもんどうやって見つけたんですかさすが中国四千年の歴史ですか

詳しくはこちらの記事を読んでいただきたいのだが、お椀の底に麺の残骸と見られるものがくっついていたのが見つかった、ということである。
確かにこの写真を見ると、麺のようだ。

ただ、このニュースを見聞しても、いろいろ疑問が浮かんでくる。
まず実際に麺のようなものが作れたのかということである。
麺が発案されるまでには、いろんな段階がある。

1、穀物を粉にする技術(穀物をすりつぶす道具)の成立
石臼、すり臼またはそれに準じるもので、穀物を粉にする技術がなければ、まず麺の原料である「粉」ができない。
これについては中東の9000年ぐらい前の遺跡から、石皿に穀物を入れて石でもってすりつぶしたと見られる遺物が出ているそうなので、我々が想像するような「石臼」を想定しなくてもできそうである(ちなみに日本でも縄文時代の遺跡から木の実などをすりつぶすのに使われた道具が出土している)。ちなみに粉引き臼ができるのは2000年ぐらい前のことであるらしい。

2、粉を整形して食べる
穀物を粉にしても、それをどうやって食べるかという問題がある。
これも例えば小麦粉ならば「水を入れてこねて丸めて調理する」というのが発達する。小麦はグルテンがあるので水を入れてこねるとよくまとまる。あとは焼くなりゆでるなりすれば簡単に食べられる。
(この丸めたのをうっかり放置して、その結果発酵を起こせば、生地がふくれて食べやすくなり味わいもまし、パンや饅頭へと発達する。炊いた米が発酵してなれずしとなり寿司に発達し、ゆでた豆が発酵して味噌や納豆になり、牛乳が発酵してヨーグルトやチーズになるのと同じ筋道である。発酵マンセー!!と言いたいが、それだけ昔からうっかり者がいたからこそ発酵食品ができたとも言えるw)

3、粉を細長くして麺にする
ここに到るのが一番の困難ではないのか??
そもそも小麦は粉にすることこそ骨が折れるが、あとはこねて丸めて焼いたりゆでたり蒸したりすれば十分食べられるものになる。この小麦粉のこねたものを薄くして、中に肉や野菜を入れれば餃子や焼売になる。
そんな小麦粉のかたまりを「細長く加工する」という発想がどこから出てきたのか?
現在我々が考えるような「薄く平らにのばして細長く切る」という麺の作り方がいきなり出てくるとは考えにくい。
むしろ「丸めて食べていたものをもっと早く火を通して食べるために引っ張って伸ばしてみた
→「もっと細長く伸ばしてみた
→「そうやって食べてみたら早く火が通るだけじゃなくて案外うまかった
→「そのうち意識的に細く作ろうと、薄く伸ばしてから切って作るようになった
こういう筋道ではないだろうか。
団子汁のように小麦粉を丸めてから引っ張って伸ばして作る料理があったり、ラーメン(拉麺の方ねw)や素麺のように引っ張って作る麺が存在することも、この推測を補強するものだと思う。
じっさい、麺の博物館でも、引っ張って作る麺の製法を「単純な製法」と紹介していて、一方で切って作る麺製法は意外と新しく唐以降のものと紹介されている。

で、上のリンクや日清食品の食文化アカデミーにある麺の歴史系統図を見ればわかるように、今までの考え方では中国の麺は紀元前後、今から2000年前にできたと考えられていた。
ところが今回の発見は、その歴史を2000年さらに遡らせるものである。
(´・ ∀ ・`)ヘーと感心する一方で、詳細を読んでいくとますます工エエェェ(´ Д `)ェェエエ工と言いたくなる内容もある。
「長さ50センチ、直径0.3センチ」
「麺は一般的な小麦でなく、アワキビで作られている」
3ミリというと乾麺ではうどんくらいの太さ。生の状態ならばもう少し太いだろう。もしこれを原始的な「引き延ばし」で作ったとしたら、かなりの技術、今の手延べラーメンを作るような技術が必要だ。
しかもグルテンでつなぐ小麦でなく、アワとキビでできているということは、澱粉を糊化してつないだ麺だと考えられる。
発見者は「現代のラーメンと酷似している」としているが、麺の質や加工法はむしろ冷麺やビーフン、春雨に近いものだろう。
ここで疑問が生ずる。引き延ばして作る麺は小麦のグルテンがあるからこそできるものであり、それをもたないアワやキビの生地では、そのままこねて伸ばしただけでは麺にならない。熱湯を注いでこねて澱粉を糊にした生地を作ってから、伸ばして切る熱湯に押し出して麺にするかしなければ麺の形にはならないだろう。
切り麺や押し出し麺は引き延ばし麺よりもずっと後世になってから登場した技術である。それを4000年前にあったと考えるとなると、単に麺の歴史だけでなく料理や生活道具の歴史にまでいろいろ書き換えが必要になりそうである。

だけど写真を見る限り確かに麺の形状だよなぁ。なんか特別な方法で作ったのだろうか。

今から4000年前、まだ中国は殷王朝にすらなっていない時代である。夏王朝と言いたいところだが残念ながらまだ十分に存在が確認されていない。
そんな時代に麺があったと考えるのは楽しくもあり、かつ、その何倍もいぶかしくある。

中国では先日も最古の絵文字発見というニュースが流れたばかりだし、何やら、考古学の方面からも「国威発揚」を目指すような雰囲気である。
ロケット発射といい、国民の自尊心をくすぐろうとしているのでは、と勘繰りたくなってしまう。

とりあえず、日清食品の会長が喜ぶニュースであることは確かだけど(w

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