春から初夏、川岸を黄色に染めている花があって遠目には菜の花のように見える。だが近寄って見ると草丈はだいぶ低くて花も小さい。ハルザキヤマガラシである。春咲山辛子(または芥子)の字があてられる。稀に「山枯らし」の表記も見かけるがこれは誤り。ブドウ科の「藪枯らし」やキンポウゲ科の「田枯らし」から連想した間違いかも知れない。この草は一見してアブラナ科であることが分るので、カラシナの仲間ということで付いた名であろう。ただし辛いかどうか囓ってみる程の実証精神は私にはない。
明治期にやって来た帰化植物だということで、最近ずいぶん増えているように思える。子供の頃には見た覚えがないけれど、最近自分の記憶を信じられないので断言はできない。単に興味がなくて目に入らなかっただけという可能性がある。
近縁にヤマガラシがあり、こちらは在来種。手持の歳時記類を当ってみたがどちらも登載されておらず、例句も管見に入らなかった。
からし菜の花に春行なみだ哉 松岡青蘿
しかたなく芥子菜の句を出してみた。これはカラシと涙の洒落でまとめた作である。
長い名前は俳句に詠み難い。春の風景としてのハルザキヤマガラシは「菜の花」を思い切り広い意味にしてその中に含めるしかないだろうか。
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