千曲川のうた

日本一の長河千曲川。その季節の表情を詩歌とともに。
人生は俳句と釣りさ。あ、それと愛。

いたちごっこ

2013年08月10日 | 千曲川の植物
 ちょっとみるとニセアカシアのようだが、これはイタチハギ。



千曲川の河川敷でもこの頃多くなったように思われる。暗い紫色の花が上向きの穂のような形状で咲き、その花序をイタチの尾に見立てた名だというのだが本当だろうか。この花を見てイタチの尾を連想するもんだろうか。

イヌタデ、イヌサンショウ、イヌツゲ、イヌウド、イヌガラシと並べていくと、「イヌ」の意味が何となく浮かんでくる。つまり、人間に有用な植物と似ているけど役に立たない、というような感じだろう。
しかしイタチハギ、イタチグサ、イタチシダ、イタチウリ、とならべても共通性が良く分からない。



夏になると小さな莢がたくさん着いている。間違いなくマメ科の植物だ。





イタチハギを季語としている歳時記は見たことがなく、これを詠んだ例句も知らない。
動物のイタチなら冬の季語。

  振り向きつつ鼬去りたる露の畦 佐藤干城

  鼬鳴く柱の油抜けにけり    宮坂静生

  鼬傷片目に受けし緋鯉かな   茨木和生



もはや千曲川ともイタチハギとも全く関係なく、鼬文学館を。


―――― 平家物語巻第四 「鼬沙汰」 ――――

同じき五月十二日午刻ばかり鳥羽殿には鼬夥しう走り騒ぐ。法皇大きに驚かせ賜い給ひて御占形を遊ばいて近江守仲兼その時は未だ鶴蔵人にて候ひけるを御前へ召して、これ持つて安倍泰親が許へ行ききつと勘へさせて勘状を取つて参れとぞ仰せける。


―――― アナイス・ニン 「エレーナ」 ――――

 ピエールはたった一度、明るい陽光の下で彼女の肉体を眺めたことがある。コーで、それも午前中のことだった。そのとき目のあたりにした彼女の肉体の色つやの素晴らしさに、彼は狂喜したものだった。それはまさしく透き通るような白磁色で、セックスに近づくにつれてその肌は、年老いたイタチのそれのような黄金色に染まっていた。


―――― 柴田宵曲編 「奇談異聞辞典」 ――――

 鼬の火柱を立てるとて、世に妖とする事あり。いたちは夜中樹上にのぼりて焔気を起し、また地上に柱の如く煙気を発する事あり。これをいふ。


―――― 桂枝雀口演 「宿屋仇」 ――――

若い者にしてはえろう頭が禿げておるな。
御念の入りましたこってございます。こういう所に奉公しておりますと幾つ何十になりましても若いもんでございます。
左様か。名はなんと申す。
エー伊八と申します。
何じゃ、その方であるか、鶏のケツから生き血を吸うという大胆な奴は。
あれはイタチでございます。