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吹く風ネット

酔っ払いブギ13

2004年2月9日

 店長が一枚の手紙をぼくに手渡した。
 そこには、
『酔っぱらいのおじさんから、「山芋を買え」としつこくせまられました。こちらが「いりません」と言うと、大声で怒鳴り出し、子供が泣きだしました。ああいう人は出入り禁止にして下さい。店の人も、もっと強気に対応して下さい』
 とお客さんの苦情が書かれていた。
 ぼくがそれを見て、
「『強気に対応して下さい』って、今まで充分強気に対応してますよねえ。おいちゃんは、それでもやって来るわけだし。それに、おいちゃんのことを知っている人の前ならともかく、知らない人の前で、強気の対応は出来ませんよねえ」
 と言うと、店長も
「そうよねえ。知らないお客さんの目には良く映らんよねえ」
 と言う。
 これまで何度かおいちゃんを怒鳴ったり、力ずくで追い出したりしたが、それは他のお客さんがいなかったから出来たことだ。
 他のお客さんがいる時は、注意するか、それでも言うことを聞かない場合は警察を呼ぶことしか出来ない。

 夜、おいちゃんは、いつものようにベンチで寝ていた。閉店になったので起こしたのだが、なかなか起きようとしない。仕方なく、おいちゃんを店の外に引きずり出した。
 後ろから脇を抱えて引っ張ったため、首が絞まるのだろう、
「ウェー、何か、ウェー、コラッ、ウェー」
 とあえぎながら言っていた。
 外に出すと、
「コラッ!殺すぞ、コラッ!・・」
 と一人でわめきだした。しかし、誰も相手にしなかった。
 おいちゃんは、またそこで寝ころんでしまった。
 後で店長が、
「外は寒いけ、あのままだと死んでしまうやろね。110番しとこ」
 と言って、電話をかけていた。

 帰る時、ぼくはおいちゃんが寝ている横を通って行った。パトカーが来ていた。3人の警察官が対応していた。おいちゃんが動こうとしないので、困っている様子だった。
 まさか警察に向かって「殺すぞ、コラッ!」と言ってないとは思うが。


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