吹く風ネット

酔っぱらいブギ16(最終回)

2006年5月30日
 前に触れておいたが、酔っ払いのおいちゃんはやはり死んでいたらしい。
 凍死だったということだ。内心肝臓をやられて死んだと思っていただけに、肩すかしを食らった感じである。やはり酒飲みは酒飲みらしく、最後は肝硬変か肝臓ガンで花を飾ってもらいたかった。

 しかし散々人に迷惑をかけておいて、何の挨拶もないというのは失礼だろう。迷惑をかけた人すべてに、一言わびを入れて死ぬべきではないのか。
 ぼくも寝小便の後始末を何度もやってやったのだ。幽霊でも何でもいいから、手みやげ提げて、一言わびに来い!


2007年11月6日(当時やっていたブログの、最終回の一日前の日記です)
 このブログを書いていて、一番印象に残ったのは、酔っ払いのおいちゃんだ。
 店に来ては、お客さんにクダを巻く。冬場は店に居座ってなかなか帰ろうとしない。挙げ句の果てに寝小便だ。
 まあ、そういうのがこの人の地なら目も瞑ったのだが、実はこのおいちゃん、えらく計算高い人だった。

 寒い日や雨の降る日には、決まって警察沙汰になることをやっていた。警察署の前でさんざん悪態をつき、相手にされないとわかると死んだふりをしたりして、留置場に泊めてもらおうとする。
 また、従業員何人かで抱えて外に放り出したことがある。その時酔っ払っているはずのおいちゃんは、放り投げようとするぼくたちに向かって、静かな声で「そおっと置け」と指示したのだ。

 あとで気づいたことだが、おいちゃんの行動の半分はパフォーマンスだった。そこまで酔ってもないくせに、大袈裟に酔ったふりをしていたのだ。
 なぜそんなことをやっていたのかというと、一人で寂しかったからだ。つまり誰かに構ってもらいたかったわけだ。
 それならそういう態度でいればいい。変に我を張るもんだから誰にも相手にされなくなり、結局ああいうパフォーマンスでしか、自分の存在を示すことが出来なくなったのだ。

 おいちゃんは、すでに故人である。おそらく死んでから、自分の過ちに気づいたのではなかろうか。今頃あの世で反省していることだろう。

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