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吹く風ネット

酔っ払いブギ6

2002年7月15日
 最近また酔っ払いおいちゃんが来ている。
このおいちゃんは夏になると必ず店に涼みに来る。そして、酒を飲み、他のお客さんを威嚇したり、店員に絡んだりしている。
 一昨日は、お客さんが警察に通報したらしく、警察から事情聴取を受けていた。
 昨日は昨日で、店内でタバコを吸ったらしく、店長からつまみ出された。
 相変わらず大活躍しているようだ。

 夕方、おいちゃんの声がした。
「なんか、こらぁ!!」「きさま殺すぞ!! などと言っている。
 また始まった。
 おいちゃんが怒鳴っている所に言ってみると、そこには若いカップルがいた。どうもその二人に絡んでいるようだ。
「おいちゃん、何騒ぎよるんね」
「騒いでなんかないわい!」
「今、怒鳴りよったろうがね」
「普通にしゃべりよっただけたい」
「じゃあ、『殺すぞ!』とか言いなさんな。この二人に迷惑やろ」
「迷惑なんかかけてない」
「じゃあ、若い人の邪魔しなさんな。静かに座っとき」
「おう」
 その後もしばらくしゃべっていたようだが、そのうち静かになった。

 さて、閉店時間になった。
 閉店準備をしに、出入口のところに行ってみると、まだおいちゃんがいた。爆睡しているようだ。
 ぼくと店長代理は、おいちゃんを追い出しにかかった。
「おいちゃん、起きり。もう時間よ」
 おいちゃんは知らん顔して寝ていた。
「あんたがおるけ、店が閉められんやろうがね」
 ぼくがおいちゃんの上半身を起こそうとすると、おいちゃんは起こされまいとして力を入れている。
「何ね、起きとるんやないね。早く出てくれんかねぇ。時間なんやけ」
 するとおいちゃんは、壁を「バン!!」と力いっぱい叩いた。そして、また寝た。
「おいちゃん、おいちゃん」
 今度は死んだふりである。
「おいちゃん、いい加減にしときよ。そんなことするけ、新聞に『死んだふりをする』とか書かれるやろ」
おいちゃんは「死んだふりなんかしてないわい」と言いながら、起き上がった。
「もう時間よ」
「馬鹿じゃないんやけ、わかっとるわい!!」と、地下足袋のホックをはめだした。しかし、そのまま固まってしまった。
 ぼくが「また警察が来るよ」と言うと、おいちゃんは「何も悪いことしてないわい」と言う。そしてまた寝た。

 しかたがないので、店長代理と二人で、おいちゃんを担いで外に出すことにした。が、体が小さいくせにに、このおいちゃんは重い。まるで『子泣きじじい』である。途中まで担いで、そこに下ろしてしまった。
 それでもおいちゃんは寝たふりをしている。また担ごうとすると、おいちゃんは目を覚まし、「一人で歩いていく。よけいなことするな」と言う。
 そのままフラフラしながら、おいちゃんは店の外に出て行った。

 台風の影響か、外はパラパラと雨が降っていた。おいちゃんは、これからどうするんだろうか?また自転車で、〇〇署に行って死んだふりをするのだろうか。
 それを聞こうと思ったが、おいちゃんはそのまま自転車で立ち去っていった。


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