その前の年、ぼくはデパートの配送部門でアルバイトをやっていた。お歳暮を地区ごとに振り分ける仕事だった。そんなに長くはなかったが、いろいろな友だちが出来、実に楽しい時間を過ごさせてもらった。
そのバイトはお歳暮商戦が終わるまでの契約だったため、年が明けてさっそくバイト探しをすることなった。
ところが、なかなかいいバイトが見つからない。よさそうなところは、年末で応募を締め切っていて、残っているのは漬物の訪問販売くらいなかった。それも短期だ。
とはいえ何もしないわけにはいかない。ということで、訪問販売をやってみることにした。
短期なんだし、闇雲にドアノックするような悠長なことはやってられない。そこで作戦を立て、友人知人の家に行ったり、卒業校に乗り込んだり、小中高の先生にアタックしたりと、片っ端から売り込みをかけた。
最初はあまりいい顔をされなかったが、だんだん売るコツというのがわかるようになり、飛び込みでも売れるようになった。
そのバイト中、他のお客さんを何人か紹介してくれた親切な方がいた。その人は高校時代に好きだった人のお母さんだった。実は本人に会いたさにその家に行ったのだが、お目当ての本人は不在。にも関わらず、そのお母さんは本当によくしてくれた。
その夜、ぼくは本人にお礼の電話をかけた。2年ぶりに聞く声だった。その時味わった至福感、それをぼくは歌にした。
春の夜
夜が来て 星がともる
夢から覚めた 月も色づく
なぜか人は 急ぎ足で
行きすぎる
道ばたには 小さな花が
眠たげに 目を閉じる
夜を忘れた鳥が 家を探し
飛んで行く
目の前が急に 明るくなって
夜もまるで うそな公園に
君と二人 これからずっと
暮らしていこうよ
風が吹いて 君は舞う
春に浮かれた 蝶になって
ぼくもいっしょに 羽を広げ
飛んで行こう
⇒ ♫春の夜
夢から覚めた 月も色づく
なぜか人は 急ぎ足で
行きすぎる
道ばたには 小さな花が
眠たげに 目を閉じる
夜を忘れた鳥が 家を探し
飛んで行く
目の前が急に 明るくなって
夜もまるで うそな公園に
君と二人 これからずっと
暮らしていこうよ
風が吹いて 君は舞う
春に浮かれた 蝶になって
ぼくもいっしょに 羽を広げ
飛んで行こう
⇒ ♫春の夜
44年前のこの時期だった。あの晩、外では雪が舞っていたんだけど、心はほの暖かく、まるで春のような気分になったのを憶えている。
この歌、ぼくの一番好きな歌なんです。