冬の朝、黒いタイツをはいて、こげ茶のお気に入りの革靴に足を通す。玄関のドアを開けて新しい空気を吸い込む時の、あの凛とした気持ち。
冷たい風も短いスカートも、鞄の重みも赤信号も、なにひとつ気にならない。
明るい清々しさと同居するものが語りかけていたことに私は気付かない。
今朝、ヒバリが高く飛んで窓の外に響く声を聞いたそのときの光景を、いつまで覚えていられるのだろうか、と。
今日、小豆を煮てあんこを作っていた。
鍋を木べらで混ぜていたら、あの冬の朝、台所の暖簾を分け何気なく挨拶を交わしたときの、あの高く響いたヒバリの声と鍋に伸びる白い手と甘い香りが綯い交ぜになって、涌きあがるように浮かんできた。
どこかでヒバリがまた高く鳴いたのは気のせいだろうか。私はなにを期待して窓の空へ振り返ったのか。
甘い香りはただぐつぐつと、織りなす景色を幾重にも。
冷たい風も短いスカートも、鞄の重みも赤信号も、なにひとつ気にならない。
明るい清々しさと同居するものが語りかけていたことに私は気付かない。
今朝、ヒバリが高く飛んで窓の外に響く声を聞いたそのときの光景を、いつまで覚えていられるのだろうか、と。
今日、小豆を煮てあんこを作っていた。
鍋を木べらで混ぜていたら、あの冬の朝、台所の暖簾を分け何気なく挨拶を交わしたときの、あの高く響いたヒバリの声と鍋に伸びる白い手と甘い香りが綯い交ぜになって、涌きあがるように浮かんできた。
どこかでヒバリがまた高く鳴いたのは気のせいだろうか。私はなにを期待して窓の空へ振り返ったのか。
甘い香りはただぐつぐつと、織りなす景色を幾重にも。