新月のサソリ

空想・幻想・詩・たまにリアル。
孤独に沈みたい。光に癒やされたい。
ふと浮かぶ思い。そんな色々。

星の形

2024-08-28 05:55:55 | Short Short

その日、五芒星を額に刻んだ小山羊が木漏れ日を避けるように、藪の中へ隠れてしまったんだ。カナリアが歌い続けて小山羊はやっと戻ってきたけど、額の星は六芒星になっていた。

とうとうキミに旅立つ時がきたんだね。
ならボクのカナリアを連れて行くといい。きっとキミの力になってくれるよ。
ボクは彼女を小山羊の背中にそっと乗せた。ボクたちは少し見つめ合って、キミははじめて笑ったね。

じゃあ、と去って行く後ろ姿に、ボクは声をかけなかった。
キミが振り返らないのを知っていたから、ボクも黙って見送ったんだ。
少し風の力を借りはしたけれど。

カナリアがずっと額の星を讃えて歌い続けてくれるさ。
彼女は六芒星のメロディを歌ってる。星々がキミの行く道を明るく示すように。

どうかキミの探し物が見つかりますように。
ボクはキミの星の形を忘れない。旅を終えたカナリアがボクの枝に戻って来るとき、きっとまたキミと会わせてくれるだろう。

ボクらはみんな同じ風の音を聞いていたね。
キミは今夜、ボクの木陰に抱かれる夢を見てくれるかい。