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自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

父と子・・・・

2007-01-21 13:36:19 | 児童文学
以前のブログにも書いたように、ボクは、父親と一緒に生活したことがありません。
父親とのふれあい・・・といった肉体的にも精神的にも体験がないために、ボク自身が「父親」としてどのように存在していたら良いのかという参考体験がないわけです。
おまけに私に授かったのは「二人の娘」ですから、さらに困惑することは少なくありません。

最近『FLUSH』という作品を読みました。アメリカのユーモア・ミステリのベストセラー作家ということですが、カール・ハイアセンという名前は初めて聞きました。
この作品の前に『HOOT』と言うベストセラーもあるようです。

さて、この『フラッシュ』は、まさに父と息子のお話です。

ノアという主人公の男の子の視点から書かれている、大好きだけどほとほと困ってしまう正義感丸出しの「とうさん」の物語です。

場面はいきなり、そのとうさんが留置場の面会室でノアと向き合っているところから始まります。

ノアの家族はフロリダのキース諸島の「ある島」に住んでいる。
かつて隣人としてとうさんと仲の良かったダスティン・ミュールマンが、入江に不合法なやり方でカジノ船の経営を始めたことで問題が起きてきます。

糞尿を入江に垂れ流ししているという事実を知ったとうさんが、よなよなその船を沈没させてしまい、逮捕されるのですが、とうさんはまったく悪気はない。
沿岸警備隊や警察にいくらいっても聞く耳を持たなかったので、実力行使したまで、と至って自信たっぷり。

こんな類のお騒がせを今までも何度もやっている「とうさん」とボク(ノア)の心温まる冒険とミステリの物語なのです。

ボクは、単純にうらやましい。
お互いを信頼しあい、共に正義に向き合っていくなんて、とっても好きです。
こんなことは実際にはありえないとは感じながらも、そしてストーリーの展開もある程度読めてしまうけれども、正攻法の父と息子の関係に、ただただ心を打たれます。

そういえば、ロアルド・ダールにも素敵な「父と息子」の作品があります。
『チョコレート工場の秘密』も、歯医者の父と息子という関係が前提にありましたが、この『ぼくらは世界一の名コンビ~ダニィと父さんの物語』は、もっとストレートな父と息子の物語です。

ダニィと父さんは二人暮らし。生まれて4ヶ月で母親が急病で死んでしまった。
父さんの仕事は給油所兼修理工場。裏の箱馬車で二人は生活しています。
仕事は結構忙しいのだけれども、父さんはダニィを心から愛し、ダニィも父さんのことが大好き。

ある晩、ダニィがふと目を覚ますと、いるはずの父さんがいない。
「初めて父さんの秘密」を感じ取ってしまったダニィは、混乱します。
そして夜明けまで箱馬車の階段に座ったまま父さんの帰りを待つのです。

二人っきりの生活のなかで、いるはずの父さんが見当たらなくなってしまうということは、ダニィにとっての「自立」のスタートです。
自立のきっかけはいつでもこんな風に、突然やってきます。
そのときに十分な愛情がないままだと、自立はやがて孤立に変化してしまうのですけれどもね。

そして父さんは「ヘイルズの森」に行っていたことをようやく明かします。
そして、きじを密漁していることを告げます。
大好きな父さんが「キジを盗んでいる」ことを知ったダニィの心境は複雑です。

しかし、父さんには、密漁をするはっきりとした理由があるのです。そして、おじいさんもすばらしい密猟者であったことが告げられるのです。

ある晩、密漁に出かけた父さんが帰ってきません。
森の管理人に見つかってしまったら刑務所に連れて行かれることを知っているダニィは心配で仕方がありません。
ついに、車に乗り込み、前が見えないほどの運転席で車を動かし、森まで行くのです。そして・・・・

物語は、ダニィの機転やすばらしいアイディァで父さんを助けながら進んでいきます。

物語の一番最初に「父さんは、正真正銘、掛け値なしに、この世界で一番すばらしい、たのしくてわくわくする父さん」と書いてあります。

子どもに、こんな風に思われる父さん
本当に素敵ですよね。

たまたま、ここ数日タレントの風見しんごさんのお嬢さんの痛ましい事故が報道されています。彼の、インタビューや、葬儀の挨拶の言葉を聞く限り、えみるちゃんにとって「父さんは、正真正銘、掛け値なしに、この世界で一番すばらしい、たのしくてわくわくする父さん」だったことでしょう。

父親であること・・・・・
物語の中の父さんのようにはなれないでしょうね。

父親である前に、ボクがボクらしく生きることのほうが大切なんですよね。きっと。

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