自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

久しぶりの児童文学 『いとの森の家』

2015-06-04 05:49:22 | 児童文学
今年の初めに、kindleを購入した。


電子書籍を読める端末。


本箱に残しておくほどではないものはkindleで、と、結構使い勝手が良くて愛用している。


でも、本を読むというのは、紙のにおいやページをめくるあの感触を含めた楽しみがある。


やっぱり、本を読むには、紙の本がいい。


できれば、気持ちの良い森や、静かな田舎町で、柔らかい風に吹かれながらページをめくる、そんな風に時間を過ごしくなる。


子ども未来の、のりんこから、すすめられた本。


『 いとの森の家 』 東 直子


小学校4年生で転向した加奈子。


集団登校で行く学校までの雨に濡れた道のりに、田んぼから飛び出した大量のカエルたちをよけながら歩く。


そんなシーンから始まるお話。


おまけにそのカエルたち、車のタイヤにつぶされて 「 道一面にしきつめられていた 」 のだから、少々気味悪い。


始まりは、インパクトがあるけれど、お話は、もちろんホラーでもなんでもない。


淡々とつづられた加奈子ちゃんの田舎暮らしのほのぼのするお話。


これと言った事件が起きるわけでもなく、問題が起きるわけでもない。


友達と森の中に入ったり、神社に行ったり、ホタル狩りをしたり、海に行ったり、雪の上を走り回ったり。


ただただあたたかなお話で、最初は物足りなかったのに、なんだかほっとしてしまう。


そのあたたかさを確かなものにする、おハルさんというおばあさんが、このお話には欠かせない。


ふと 『 西の魔女が死んだ 』 に登場するおばあちゃんを思い出した。


あのおばあちゃんも、そういえば 「 丁寧に暮らして 」 いた。


作者のあとがきによると、このおハルさんは、実在した女性らしい。


「 死刑囚の母 」 と呼ばれ、福岡の受刑者を慰問し、たくさんの手紙をかわし、引き取り手のない遺骨を自ら荼毘に付すことまでしていたらしい。


おハルさんの笑顔や、優しさだけじゃなく、その後ろ側にある深い悲しみも、このお話の中にそっとしのばせてある。


最近の自分の生きるスピードが、あまりにも早すぎて、このお話に触れて、ようやく自分を取り戻せたような気がする。


加奈子が見た、風に揺れるすすきの原が目に浮かぶ。




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