自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

引き出しの中の宇宙

2014-03-20 07:26:12 | 児童文学
小さいころボクは、人と話すのが苦手だった。


どうしてなのかはわからないけど、誰かとしゃべるのは苦手で、


「カズはおとなしくていい子」と言われることが多かった。


別におとなしくしていたいわけじゃなくて、どうやってしゃべったらいいのかわからなかった。


ボクを知っている人が聞いたら、「うそでしょ」ってきっと言われると思うけど、きっと何かのきっかけでそれを超えたんだと思う。


思えば小さいころの苦手って、誰にでも一つや二つあって、ほんの些細なことをきっかけに超えていることって結構あるような気がする。


この本を読んで、そんな小さいころのことを思い出していた。


『小さな小さな海』 岩瀬成子


前回初めてこの人の作品を読んだ後に、何冊か購入しておいた内の一冊。


今回の挿絵は、長谷川修平。


あの『はせがわくんきらいや』の、作家。


彼の絵は、素朴で好きだ。


ダイレクトに伝わってくる。





今回の物語は、なんでもできるのに、どういうわけだかわからないけど、水だけが嫌いな よしろうクン。


小学2年のよしろうは、プールの日はおなかが痛くなる。


そして、みんなが着替えはじめる時には、保健室に行くことになる。


自分でもなぜだかわからないけど、しくしくと痛む。


何度目かの保健室に、もう一人男の子、こうじくんが入ってくる。


どうやら、こうじは、体育の時間が苦手らしい。


なわとびが苦手で、かけっこが苦手。


そういったことは大得意のよしろうは、帰り道の公園でこうじくんと遊びながら、それを克服させてあげる。


ある日、こうじがよしろうを家に誘う。


そして2階の奥の物置にある、黒いどっしりしたたんすの前に連れて行く。



「びっくりしても、大きい声を出してはだめだよ」


と言って、あけた引き出しには、おどろいたことに海があった。


ほんものの小さな海。


明るい陽射しを受けて、キラキラしていて、白い泡を立てて波が打ち寄せる。


そこに、二人の子供が来て、よく見るとひとりがこうじくんで、もうひとりが、なんとよしろう。


海を怖がっている、よしろうを、ほんもののよしろうが思わず、「がんばれ」と声をかける。。。。。。。


物語は、このもう一つの世界の海と、物置の部屋でつながっていく。


よしろうは苦手だった水を克服しました、なんて単純な結末じゃあないけど、小さな一歩が始まっていく。


子どもって、本当に小さなきっかけで何かを超えていく。


きっと、大人のボクたちだって同じはず。


眼の前の大きな壁も、繰り返しの失敗も、どこかの引き出しをあけてあげることで、超えていけるのかもしれない。






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