自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

さぶの被災地からのアートセラピーレポート-6 「約束」

2011-04-04 07:00:05 | さぶの被災地からのアートセラピーレポート
さぶが、福島に戻りました。


そしてさっそく避難所へ。


数日間いなかっただけなのに、さぶのスペースがイキイキとしています。


自宅に戻って、夜中に書き上げたレポートです。


*文中に出てくる「クエストのぬり絵」は、アートセラピストの竹柴恵里さんが高齢者向けに特別に描いたものです。



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2011年4月4日 3:20


福島に戻りました。


東京へ行ったり

福島へ行ったり



どちらが私の場所?

と悩む時もありましたが、最近は両方が私の場所だと思えるようになりました。


どちらも私の帰る場所です。



なので『戻った』『帰った』という表現は福島でも東京でも、両方で使っていきたいと思います。


ではでは…

今日の避難所での報告をさせて頂きます。


何やら私、かしこまってます。

そして今、大変眠い状態です。


稚拙な文章ではありますが、そこは皆さんの大いなる広い心で、お許し下さいませ。




ジリリリリ…


アラームが一分おきに鳴ります。

朝、6時に起きて福島へと帰ります。

夜型の私にはキツいのですが何とか起きれました。



那須塩原まで新幹線で行き、そこから郡山までバスです。


席は満席でぎゅうぎゅうです。


子供も何人かいて、賑やか…。


とても眠れません。 一時間とちょっとの間の辛抱です。


郡山に着きました。


100均に寄り、落書き帳などを買いました。


そこからまた車で50分。。

到着です。

時間は午後一時。


来るだけでも、東京からとなると、やたらと疲れます。



それとは反対に心は穏やかです。



『こんにちは』


いつも通り子供たちのところへ向かいます。

マットの上を見ると、凄い有り様。


箱から溢れ出したクレヨンや紙。


折り紙も。


沢山折ってくれていた様です。



『さぶちゃーん!』



子供たちが笑顔で駆け寄ってきます。


思いっきりハグします。


嬉しい瞬間です。


今日は何人かお出かけしているとの事。

おなじみの三年生の女の子、キカンボ君、チューリップ君、お笑い担当君、ムードメーカ的な彼らは今日はいません。

四歳のアイドル的な存在のお花ちゃんと、オシャマな新一年生の女の子、繊細な絵を描いてくれる四年生の男の子…


今日はこんなメンバーです。


ま、まず、


片付けなければ!

ふと、マットの隣に目をやれば、小さな机がありました。

ダンボールで作った机です。

三年生の女の子が作ったようです。






お勉強してた後があります。

学校ごっこをした後もあります。

小さな学校と小さな先生です。

子供達の意欲を感じました。



今日は、《大人の塗り絵》をクエストから頂いたので、それを出して行きました。


といっても二時間くらい出さずに様子を見ていたのですが…


片付け中、中学生の女の子と私くらいの女性の方がいてくれて(ありがたいです)子供たちの相手をしてくれています。


みんなでプリキュアやミッキーの絵を描いていました。


今日は本当に穏やかです。みんな絵に夢中です。


繊細な四年生の男の子、(マイルド君と名付けましょう。)


マイルド君の温度がみんなに広がっていました。


そこに登場。


シゲルおじいちゃん


私は今だ!という感じで、大人の塗り絵を出します。



『今日はシゲルさんに良いものを持って来ました!』


シゲルさんは大きな目をもっと大きくして言います。


『おおー、こういうの好きだな!どんなのがあるの?』


子供達も興味津々です。


あれよこれよと言う間に塗り絵大会になりました。


子供達もそれぞれ、素敵に塗り始めます。


シゲルさんはいくつか自分の所へ持って行きました。



出来上がりが楽しみです。


子供達が塗り絵をしていると、あるご夫婦が立ち止まって様子を見ています。


お二人とも80歳くらいでしょうか。

奥様は車椅子で鼻に管を通しています。

旦那様は優しそうな笑顔で奥様を見守ります。


私は塗り絵を持って、紙芝居のようにしてお二人に見てもらいました。


ちょっとしたクイズ形式で…


『うど!』

『木蓮かしら?』

『ああ、これは春の山菜だね』

といった感じに。

奥様が興味を持ち、

『私も塗ろうかしら』と手を伸ばします。

隣でマイルド君が塗る様子をしばらく見て、彼に話しかけます。



旦那様は奥様の楽しそうな表情を見て席を外しましたが、たまに様子を見に戻って来ます。


マイルド君は遠慮がちに優しく色をのせていました。

パンジーの塗り絵です。


すると、奥様は車椅子から少し身を乗り出してマイルド君に言います。



『もっと強く塗ってみてもいいのよ。パンジーって見たことある?』


マイルド君は答えます。


『うん!紫とオレンジの』






そんな会話をしながら二人は一緒にパンジーを塗ります。


《ボカシ》の技法をマイルド君に教える奥様。


娘さんが絵を描くのが得意で、いつもそれを見ていたと嬉しそうに話してくれました。


マイルド君は色を強く塗り始めました。


二人とも楽しそうです。


芸術的な二人は花びら一枚の色会わせにも細かくこだわります。



完成です。




出来上がったパンジーの塗り絵をマイルド君は奥様にプレゼントします。


自分の名前を大きく、力強く書いて。


奥様は微笑みながら言います。


『私の名前も入れてちょうだいね。』


二人の作品が完成しました。


奥様とは、その後も1時間くいらいお話をしました。


知り合いに詩をかく文化人がいること、娘さんのこと、親戚の和菓子屋さんが津波の被害にあったこと、飼っているワンちゃんのこと…


沢山沢山お話をしました。


マイルド君がまた絵を書き始めました。


奥様に一生懸命絵の説明をします。


(奥様の方から積極的に質問をされていました)


恐竜が沢山いる絵です。


奥様の希望のワンちゃんもいます。ひよこもいます。





このマイルド君の絵は、前回の絵と比べると、表現が少し豊かになっていました。


イキイキとした筆圧、


動きもあって、色合いもカラフルなものです。


本人も嬉しそうな顔をしています。


そんな和やかな雰囲気の中


また

余震が起こりました。


いつもより少し強めです。


震度4くらいの強さです。



おとなしくプリキュアを見ていた女の子二人が、泣き出して私の元に駆けよります。

『地震だー!』

『やだ』

『怖いっさぶちゃん!!』

私も怖かった


でも私は二人をしっかり抱きしめました。


『大丈夫、大丈夫、さぶちゃんが側にいるからね、大丈夫!』


自分でも不思議なくらい、子供たちを守らねばと強い気持ちに駆られます。

余震は治まりました。


まだ一人の女の子は泣きやみません。


目に涙を溜めて私にぎゅっとしがみついています。


アイドルお花ちゃんのお母さんの話では、朝、大人達が地震の話をしていたそうです。


泣いている女の子は地震当時、おばあちゃんと二人きりだったそうです。


お父さんは消防士、お母さんは介護士なので二人とも家を空けていて、怖い思いをしたのだとか…


その事を思い出して泣いてしまったようです。


そんな中での余震の揺れでした。


車椅子の奥様も優しく励まします。


奥様はしばらくして旦那様の元へ帰って行かれました。

クレヨンと塗り絵を何枚か持って。



また明日、お会いしましょう!



アイドルお花ちゃんが絵本を読んでと持って来ました。


女の子二人と私との三人で寄り添って絵本を読みました。


二つのチューリップがお互いを思い、寄り添うお話です。


時計の針も5時を回り、夕食の時間になりました。


アイドルお花ちゃんのお母さんが迎えに来ました。


『さぶちゃん遊んでくれてありがとう』と言ってお母さんの元へ帰って行きました。


残った女の子は私にぎゅっとしがみついています。


私が何か話かけても、ただ頷くだけです。


一緒にアニメを見ていました。


彼女の肩をさすりながら。。


それからすぐ、彼女のお母さんが迎えに来ました。


お母さんの胸に飛び込みます。


凄く不安だったんだね。。


お母さんと手をつないで帰って行きました。


彼女は本当にオシャマでおしゃべりが上手で可愛い女の子の絵を描きます。


そんな彼女の笑顔しか見ていなかった私。


今日改めて子供達の心に受けたショックを知りました。




オシャマちゃん
明日もまた遊ぼうね!


残りの片付けをし、帰り支度をします。

もう時計の針は6時を指します。


すると、ご飯を食べ終えた子供達が戻って来ました。


お出かけ組も帰って来たようです。


少し焦ります。


オシャマちゃんが言います。


『さぶちゃん帰っちゃイヤ』


『今日はここにいてよー』


私は何と言葉を返したらいいのか分からなくなります。


でも一人一人にしっかり伝えようという思いで言いました。


『明日また、必ず来るから、さぶちゃんと遊んでね!』


オシャマちゃんは口をつぼませ言います。『えー、何時に?』


『一時に来るよ』


オシャマちゃんは、『うん分かった!』


と言ってバイバイと手を振ってくれました。


アイドルお花ちゃんにも三年生の女の子にもみんなに挨拶して帰ってきました。



約束です。


‐約束‐

私は約束が嫌いです。
守る自信が無いから。


時間にもルーズです。
でも守る努力は極力して来ました。


けれど
この約束は、ただ純粋に守りたい。


約束について帰りの車で考えました。



約束を負担に思うと、私はいつか破ってしまうのかもしれない。
(今まで遅刻ばかりしてごめんなさい。)


けれど
そこに愛や真剣な気持ちがあれば、味わえば、貫ける気がする。



いや貫くというより

そうありたいと思うから。



繋がっている喜びを感じるから。


約束を愛おしく思ったのは初めてです。


母性なのか

何なのか

そんなものは持ち合わせてないと思っていた



言葉では言い表せないこの気持ち


近い内にアートにしてみようと思う


マイレボリューション!


今日の夕飯は天ぷらでした。

福島のふきのとうは上手い!!


ではでは


また明日ー


‐さぶ‐

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4 コメント

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ありがとう (あーみん)
2011-04-04 21:47:59
地震のあと不安や感じたことのないストレスに押しつぶされそうになってました。
毎朝、通勤の間にさぶさんのアートのレポート読んでます。
読んでるうちに、あったかくて優しい気持ちになって、今日も大切に生きようって思いながら生活することができてます。
さぶさんと会ったことないけど、ありがとうって伝えたい。

今日も病院で笑顔で患者さんと過ごせたよ。
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Unknown (さっちん)
2011-04-05 01:55:54
さぶの言葉、ひとつひとつ体にしみこんできます。ありがとう。

私の家は南相馬市で、家が流され、家族全員で、神奈川にきました。

6歳の姪っ子と甥っ子がいて、
卒園式をずっと楽しみにしていたの。
だから、2人に卒園証書をつくって、
家族だけで卒園式をしました。
体育座りをして、名前を読んで、証書を受け取って、また自分の場所に戻る。

とっても喜んでね、
何回も何回もやらされ(笑)ました。

完了って大事だなって本当におもった。

二人とも、入学することを決意したようでした。
そして明日は、別の土地で、新一年生です。


避難所での生活は、本当に先がみえない。
すごく不安だと思う。でも、
さぶのレポートを読んでると、
あったかい光が少しずつさしこんでるイメージがする。そして私たちの心にも。

ありがとね。そして一緒にがんばろ~!
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ありがとう (しばしば)
2011-04-05 06:21:40
あーみん、さっちん
コメントありがとう。
まだPCを見ることができないので、コメントは、毎回携帯のメールに送っています。
きっと喜んでいます。
沙織の照れた笑顔が思い浮かびます。
今日もニュースが来ているので、後ほどアップしますね。
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ありがとう (えり)
2011-04-05 18:22:08
私は、今は子育て中で、そのことを尊いことだと思いながらも、何もできない自分に苛立ちを感じたり、情けなく思ったり、、。
また、自分を励まして。それでいいんだ。間接的でも今私のできる最善をつくそうと毎日を試行錯誤でやっています。
このブログを読んでまた。自分にはもっとやれることがあるんじゃないか?と自問自答もしていました。

でも、私の絵が、刺激となって会話が生まれたことが、とてもとても嬉しいです。
こんな素敵な役に立ち方があったのかと。
私自身が救われた思いです。

そして、さぶさん。現地での奮闘、頭が下がります。
風邪などひきませんように。ご自愛ください。

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