楓荘日記

米女優サンドラ・ブロックの情報を中心に、洋画、日米ドラマ、本など、思いつくまま書いていきます。

宇宙なんか大嫌い

2013-12-16 05:24:39 | 映画感想

 「ゼロ・グラビティ」 - ようやく日本公開されましたので、感想を書きます。感想にいくまでが長くなったので、流し読みをしてください。

原題: "Gravity"

ジャンル: スペース・スリラー

監督: アルフォンソ・キュアロン(「天国の口、終りの楽園」「トゥモロー・ワールド」)

製作: アルフォンソ・キュアロン、デイビッド・ヘイマン(「ハリー・ポッター」シリーズ)

脚本: アルフォンソ・キュアロン/ホナス・キュアロン

出演: サンドラ・ブロック/ジョージ・クルーニー

上映時間: 91分

配給: ワーナー・ブラザース映画

公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/#/home

ストーリー: シャトル「エクスプローラー号」の船外でハッブル望遠鏡の修理中、宇宙ゴミの連鎖反応により、シャトルが破壊され、ミッション・スペシャリストのライアン・ストーン博士とシャトルのコマンダー、マット・コワルスキーだけが生き残る。2人は地球に帰還するために、国際宇宙ステーション(ISS)を目指す。そして1人なったライアンを次々に襲う危機。果たしてライアンは地球に戻れるのか?

これは公開初日に行った映画館の大きなパネル。

 サンディーの映画で、これほど不安だった作品はありません。もちろん、公開されて反応を知るまではどんな映画もある程度は不安なものですが、サンディー作品の場合、だいたいにおいて批評家からはあまり評価されず、それでも全米興収はそこそこの成功を収めることがほとんどだったので、「シャッフル」や「ウルトラILOVEYOU」のように実際に観れるまで、「どこがそんなにひどいんだろう」と思うことがあるぐらいでした。

 "Gravity"というタイトルを私が初めて知ったのは、2010年の、あの時期です。その時は、アンジェリーナ・ジョリーがいったん降板していて、またオファーを受けたけれどやはり断った、というような話で、主役選考が難航しているという話でした。いろんな名前が上がるなか、サンディーの名前も出ました。その時は、けっこうすぐに代理人が否定。次に、「ブラック・スワン」で高評価を受けたナタリー・ポートマンに監督から直々にオファーが出たと報道され、これで決まりだろうと思ったら、ナタリーも断ったとの報道。その時はスケジュールの都合という理由でしたが、たぶんおめでたのせいでしょうね。そして、WBは興収が見込める俳優としてサンディーを強く推しているという情報が出て、その後は、はっきり決まったという話も出ないまま、また、今度はサンディー側から否定もされないまま、やがてロバート・ダウニー・Jr.が降板し、ジョージ・クルーニーが決定。その頃には、サンディーは出るんだろうなと思いつつも、よく分からない状況が続きましたが、2011年2月のオスカーのレッドカーペットのインタビューで、サンディーが自ら、「ものうる」はNYで、"Gravity"はロンドンで撮影する、と言ったのを聞いて、やっとはっきり分かりました。そして、そこから不安の日々が・・・。

 私の当時の不安: a)共演者との絡みで本領を発揮するタイプなのに、ほとんど一人芝居となるとどうなるのか。 b)VFX重視のため、演技が大げさになってしまわないか。 c)メキシコ人のキュアロンとの相性はどうか ← この不安は、「イルマーレ」のアグレスティ監督とあまり相性がよくなさそうだったため、国は違いますが、同じラテン系監督ということで心配だったのです。 そして、どうしても映画を作りたいキュアロン監督が、不承不承でWBの推すサンディーを受け入れたのではないかという疑いを勝手に持っていました。実際のところ、キュアロンがサンディーを説得に行っているので、そういうことはなかったわけですが。 d) サンディーの出演作では破格の製作費で、しかも、ストーリーは地味そう。どうやって利益を出すんだ? というう不安。キャストが2人で、ほぼ一人芝居となれば、失敗の責任はサンディーに大きくのしかかります。

 「しあわせの隠れ場所」でのオスカー受賞に関して、いろいろ言われたということもあり、大作での失敗はキャリアに大きく響く……。ああ、無難な作品に出てくれればいいのに、と思ったり。そのうち、「ものうる」の撮影を終えたサンディーは、ロンドンへと旅立ちました。

 懐かしいですね。ジョージ兄貴がルイ君につれなくされた時の写真です。(2011年6月か7月)

 そんな2人は撮影中はこんな姿に。ノーメイクのサンディーはとてもかわいらしい(笑)

 前置きが長くなりました。すみません。とにかく、サンディーは7月末にはLAに戻り、11年末には「ものうる」が公開され、映画は興行的にはコケてしまいましたが、彼女自身の演技としてはかなり高評価だったと思います。私も好きな作品ですし、演技でした。でも、"Gravity"のほうは当初の全米公開予定12年11月の延期が発表され、13年のいつになるのかがなかなか決まらず…で、またもやいろんな不安が。テスト試写での反応では決して悪くなさそうだったものの、予告編が初めて公開された時には、正直なところ、よく分かりませんでした。息遣いとか、実写の頭とCGの体のバランスが合ってなさそうとか。

 予告編の時は、なぜ宇宙服が途中で替わるんだろう? と思っていました。

 まあ、とにかくあれこれ心配していたわけです。そしてコミコンを経て、ついにヴェネチア映画祭で上映。ほぼ絶賛の批評にどれだけホッとしたか。さらに、全米公開もすばらしいダッシュで始まり、評価と興行的な成功の両方が期待以上のものになるなんて、その時点で賞をもらったようなものですよね。

 さて、長々と書いてきましたが、肝心の感想は短いです。初めて観た時の驚きというのはなかなか言葉にできません。あれこれ読んでしまう悪い癖のせいで、ストーリーのポイントになる部分は事前にだいたい知っていたのですが、それ全部が想像を超えていました。映像のすごさ、視点がサンディーの視点から外側へ、そしてまた中へ、というカメラワークのすごさは、「すごい」としか言いようがなく、茫然とするばかり。でも、ほんとに期待していなかったのがこれだけ感情移入してしまうということでした。まさか泣ける映画だとは思わなかった。

 「つかんでたのに…」

 ストーリーのシンプルさについてはいろいろ言われていますね。余計なものをそぎ落としたすばらしいストーリーだと評価する人もいますが、どちらかというと、ストーリーやセリフについてはネガティブ評価のほうが多い気がします。私はあのシンプルさがいいと思いますが、特にジョージのセリフにはちょっと作りすぎの部分があるような気がします。でも、ジョージの存在意義というのがあって、この映画のジョージ・クルーニーは、ほんとにジョージ・クルーニーだと思いましたが、普通ならマイナスになりそうなのに、この場合はプラスに働いていると思います。だから例の問題のシーンも許せるというか。

 サンディーの演技に関しては、顔の表情、目の表情、ISSに入ってからの体を張った演技はほぼ文句なし。もともと身体能力はとても高い人だろうと思っていましたが、あれだけのことをこなすまでの努力を思うと、ほんとに褒めてあげたい。セリフにしても、ひとつのセリフを分割して言わなければならなかったこともあったそうです。もちろん、いつもの癖が出たり、息遣いや悲鳴がうーん、という部分もありましたが、今回とてもよかったのは、泣くシーン。これまでのサンディーの映画でも泣くシーンはいくつも出てきますが、手で顔を覆ったり、口元を覆うことが多かった。こんなに無防備に泣くことはあまりなかった気がします。それが今回はほんとに自然でよかったと思いました。そして、感情表現が大げさにならず、極力抑えたのもよかった。

 究極の孤独。

 キュアロン監督のテーマは「再生」であり、これはメタファーとしてあちこちに出てきます。それは観る人の心境や人生の状況によって、受け止め方が違うんじゃないかと思います。鑑賞後に私の頭にずっと残ったのは映像のすごさではなく、あの短い時間の中でのストーン博士の心の旅のほうでした。驚愕、パニック、恐怖、諦め、受容、そして再び入った生存本能のスイッチ。一生の間で何度も繰り返すその心境の変化の凝縮のされ方に私は圧倒されたんだと思います。

 この映画に出会えてよかった。映画館で観れたことを感謝したいです。私は残念ながら、「2001年: 宇宙の旅」はDVDでしか観ていないのですが、あれを映画館で観たらきっともっと深く感じられたんじゃないかと思っています。これは私にとっては一生大事にしていきたい映画。映画館で観られるうちに、できるだけ多く観たいです。

 最後に、この映画の中でひとつだけ、まさかこんなことが!と思った点がありました。で、きっと科学的には間違いなんだろうと思ったのですが、実際はあり得ることだというのをキュアロン監督のインタビュー記事で知り、ビックリしました。まだ公開されて間もないので、それについてはいずれ、ほかの点も含めて別に書きたいと思います。

最後に、僭越ながら採点:97100  

 ちなみに私の採点基準は、レディースデー(1,000)なら観ても損はなし、というのが60点、通常料金(1,800)で観ても損はなし、というのが75点です。でも、けっこういい加減です。

 最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。プレミア報告が途中になったままですが、下書き状態では少しずつ書いています。

 とても好きなシーンのひとつ。


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4 コメント

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印象的なシーン達 (104)
2013-12-16 21:02:23
本当に誇らしい作品ですね。

楓さんもネタバレを抑えているので簡単に。
私はかねがねサンディの号泣シーンにはがっかりしてきました(笑)
イルマーレのポストで泣き崩れるシーン、微笑みをもう一度のバスルームのシーン。
割と向いてないというか。
(どうでもいいですがキスシーンも何だか似合ってないものばかりで。。)

しかし、泣くのを堪えたり、泣きそうになるまでの過程のシーンのサンディはとても好きなんです。
イルマーレの建築事務所でのシーンなんて素晴らしい。

その意味で今回のアニンガのシーンは最高に心を打たれたし、あのシーンだけでどれだけの感情の変化(希望・絶望・恐怖・諦め・喜び・孤独・・・)を表していただろうと思出だすだけで涙が出てきます。
それも本当に抑えた演技だった。

赤い靴を語るシーンも素晴らしい。
あそこはサンディでなければならなかったシーンじゃないかって思います。
このシーンで初めで「あ、サンディだ」っていい意味で思い出しましたから。
あの微笑みと前向きさは彼女にしか演じられなかったって自信があります。メリルにだって無理ですよ。

最後に最も好きな映像。
私もあの胎児ポーズは好きです。
でも最も好きなのはその直前のシーン。
宇宙服を脱ぎ、ヘッドギア?を脱ぎ去ったサンディがふわっとのけぞるシーン。
なんて美しいんだろうって神々しささえ覚えました。
2回見ましたけど本当に素晴らしい瞬間で息が止まりそうでしたね。

とまぁ私も楓さんのブログのコメントで長々と話す悪い癖が出てきたのでこのあたりで。

また来週も見に行ってきます!
割と前の方の席がやっぱり良かったですよ♪
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ハミング ()
2013-12-16 23:51:11
104さん、

ご感想、ありがとうございます。

そうなんですよね、サンディーは抑えた演技がすごくいいのに、それがあまり評価されてこなかった気がします。
アニンガとのやりとりは思いだすだけで泣けてきます。アニンガ側の映像もすごくいいですよね。

娘のことを語るとき、サンディーが何を思いながら演じていたのかを想像すると、いろんなことが浮かんできて胸がしめつけられます。

胎児の前のポーズ、私もすごく好きです。あそこから胎児の姿に移行するときの美しさ。

私もまた早く見に行けるよう、仕事を頑張らなければ!


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忙しい時間の合間を縫って (hyoutan2005)
2013-12-17 11:42:09
お薦めを受けて観てきた甲斐がありました。
サンドラだからこそ、の映画だと思いました。
出来ればもう一度観たい、と思ったし、
周囲にも絶賛おすすめ中です。

別件ですが47RONINも、あれはあれでとても楽しめました。
娯楽作品としては及第点をあげたいです。
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よかった ()
2013-12-17 11:58:26
hyoutanさん、

読んでくださって、コメントまでありがとうございます。
hyoutanさんにいろいろアドバイスしていただいたお陰でプレミアも楽しむことができました。

キアヌの映画も評判はけっこういいですよね。
私もできれば映画館で観たいと思っています。
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