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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第40話 丞相の大望

2019-09-16 12:10:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ
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※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
 
 第40話 丞相の大望 
 
貴妃キ・ヤンは 宮外でタンギセの私兵に取り囲まれる
無残に殺された母の敵を討とうとするキ・ヤン!
タンギセもまた 激しい怒りの炎を燃やしキ・ヤンを殺そうとする!
 
『あの時 貢女のお前を殺さなかったのは一生の不覚だった!』
『お前に私が殺せるものか!』
 
※貢女:高麗(コリョ)が元への貢ぎ物とした女性
 
その時!
知らせを受けたワン・ユが現れ 私兵を倒していく
タンギセは 深手を負いながらもその場から逃走した
 
難を逃れた貴妃キ・ヤンは ワン・ユから鉱山には手掛かりがないと聞かされる
しかし 鉱山の村で子供たちが歌っていた歌詞が気になるのだという
子供たちの間で ずっと歌い継がれてきた不思議な歌詞の歌が
その村でしか歌われていないというのも妙な話だった
 
一方丞相ペガンは 初夜に失敗したバヤンフトのもとに
 
『キ・ヤンを甘く見過ぎていました』
『あの者は 皇帝ばかりか後宮をすべて牛耳っている
まずは皇室資金の権限を奪うのだ』
『皇室資金は軍費に使い 何も残っていないとか』
『資金は私が調達する 権限を奪うのだ!』
 
将軍タルタルは 貴妃キ・ヤンに向かって臆面もなく秘密資金の話を切り出す
なぜ貴妃が秘密資金に関心を持つのか聞かれ 戸惑いを隠せないキ・ヤン
 
『なぜ私に疑いを持つのですか』
『この宮中で 秘密資金に関心を持つのは貴妃様しかいない
その理由を ご本人の口から直接伺いたい』
『皇室の財務を担当する身であれば 国庫を潤したいのは当然でしょう』
『調べたいのであればいつでもご命令を 協力は惜しみません』
 
腹の探り合いをしながら 決して隙を見せない2人
ペガンの側近でありながら タルタルが唯一その力を認めるキ・ヤン
そしてキ・ヤンもまた ペガン以上にタルタルを脅威と感じていた
 
新たな皇后として 側室たちに威厳を示そうとするバヤンフト
しかし キ・ヤンからの命令でなければ 返事すらしない側室たち
バヤンフトは 寛容な皇后であることを印象付けるかのように
今後 朝礼の仕切りはすべて貴妃キ・ヤンに任せると宣言する
 
『皇后様 なぜあのようなことを仰ったのですか』
『あの者が… 私を睨みつけるので 怖くなったのだ』
『睨みつけた… のですか?』
『あの者が怖くてたまらない! もう私には無理かもしれない
皆にのけ者にされて… あの者が望むなら皇后の座を差し出すしかない…!』
 
ソ尚宮は 怯えるバヤンフトに ただ事ではない事態だと皇太后のもとへ!
何も貴妃キ・ヤンと 直接闘う必要はないと ほくそ笑むバヤンフト
こうして無力な立場を嘆いてさえいれば 自分に代わり皇太后が動く…

ワン・ユは 歌詞の解読に集中していた
タンギセの行方が分からないままであり
ヨンビスは キ・ヤンとの協力に腹を立て まったく顔を見せない

ヨム・ビョンスは 深手を負ったタンギセを匿っていたが
大捜索のせいで身動きが取れなくなっていた
チョチャムは さっさとタンギセを始末して逃げようと持ち掛ける
しかしビョンスは 秘密資金の手掛かりをつかむまでは生かしておくという

ヨンビスは メバクの会合で“頭”の前にひざまずいていた
仮面をつけた“頭”は タンギセの行方については把握していないという
そして タンギセは生かしておけと命じていく
これまで メバクを陰で率いてきたヨンビスが 神妙にひざまずく相手
メバクを率いる“頭”の存在が そこにあった

キ・ヤンとの戦いで左目に深手を負ったタンギセは 激痛にのたうち回る
父ヨンチョルから 秘密資金と丞相の座 その全てを受け継ぐはずであった
数々の叱責を受ける日々 初めて一族の嫡男として認めてもらえた
そう思った矢先 貴妃キ・ヤンによって 何もかも奪われてしまったのだ

一方 皇帝タファンは

一向に姿を見せないキ・ヤンに 焦りと苛立ちをあらわにする
この日は 侍従コルタさえ 呼んでもすぐには現れない
常にタファンのそばで使えるコルタが 断りもなく姿を隠すとは…

しばらくして コルタが慌てた様子で駆けつける
怠けおって!と叱責し タファンは すぐに影絵の催しを準備せよと命ずる
相変わらず キ・ヤンの機嫌を取ろうとするタファンに
今は 皇帝としての威厳を示すべきと諫言するコルタ
しかし結局は 命じられたままに動くしかない

興徳殿では

ソ尚宮の知らせに憤慨した皇太后が 皇室の帳簿と印章を渡せと凄む
貴妃キ・ヤンは 命じられたままに渡すしかない
すべてが誤解であり 皇后バヤンフトこそが策士だと訴えても
今の皇太后に聞く耳などあるはずもない
キ・ヤンからすべての権限を奪うことは 皇太后にとっても好都合なのである

『今後は側室としての分をわきまえ 皇后の命令に従うのだ よいな!』
『承知いたしました 皇太后様』

今のキ・ヤンに 後宮の権限争いをする気はない
空の金庫を管理する皇室の帳簿など 持っていても無意味だった

『空の金庫を管理して皇后が満足なら それもよい
私はこの隠し部屋を 秘密資金で満たすことに集中できる』

そこへ 侍従コルタが影絵の催しへの招待に現れる
何とも悠長な皇帝の招きに 不快感をあらわにするキ・ヤン

宦官ブルファに説得され 渋々皇帝のもとへ向かうと
向こうから 皇后の行列が…
帳簿と印章を手に入れ 満足そうに微笑むバヤンフト

『皇太后から話は聞きました そなたを困らせたのでは?』
『いいえ お気にすることはありません』
『何て心の広いことを』

『ここにいたのか?』

そこへ皇帝タファンが現れ 真っ先にキ・ヤンの手を取った
自分もここにいるのだと 何度も声をかけるバヤンフト
しかしタファンは まるで皇后がそこにいないかのように無視した
早くしないと始まってしまう! と キ・ヤンを急かし立ち去ろうとするタファン

『あの…陛下 何か催しものでもあるのですか?』
『そなたには関係のないことだ 知ろうとするな!』

せっかくの影絵なので皇后様もご一緒に… と促すキ・ヤン
しかしタファンは 2人きりで観たいから用意させたのだと言い切る

『そんなに観たければ2回演じさせるゆえ 私たちの後で観ればよい!』

バヤンフトの顔から みるみる笑顔が消える
お付きの者たちも凍りついた表情で 立ち去る2人を見送った
皇后として最大の屈辱を受けたというのに 怒りさえ面に出さないバヤンフト
これがタナシルリだったら烈火のごとく怒り狂い 2人の背中に罵声を浴びせ
影絵の催しにたとえ呼ばれてなかろうと 意地でも乱入していただろう
ソ尚宮は バヤンフトの真意をつかめず戸惑うばかりだった

やがて影絵の催しが始まり タファンはキ・ヤンの手を握りしめ満足そうに微笑む
真っ直ぐに前を向き 見入る様子のキ・ヤンは まったく別のことを考えていた
鉱山の村の子供たちが歌う 不思議な歌詞の意味を…

気づくと 影絵の演目をまったく観ずに タファンがずっとキ・ヤンを見つめている
意味のない時間に 焦りさえ感じるキ・ヤンだったが…
ふと 影絵の動きに目をやり ハッとする

影絵の催しが終わると タファンは キ・ヤンを食事に招いた
しかし 食事が終わっても お茶を楽しむ時間でも キ・ヤンは上の空だった
さすがにしびれを切らしたタファンが 耐えかねて声を荒げる…!

『そんなにまで皇后になれなかったことが不満なのか? 私を嫌いになったと?!』
『陛下 そうではありません』
『では何だ! 何が不満でそんな態度なのだ!』

懇願する表情から 悲しみの表情に そして憂いの表情はやがて怒りの表情に…!
そこへ侍従コルタが現れ 大明殿で丞相ペガンが謁見を求めていると報告する
やっと解放されるという安堵感で 静かに席を立つキ・ヤン
その背中を 鋭い視線で睨みつけるタファンであった

大明殿

玉座の前で跪くこともせず 剣を抜いて仁王立ちになるペガン
そして いつまでもキ・ヤンなどに惑わさせてはならないと言い放つ

『あの世から ヨンチョルが笑っております陛下!』
『惑わされるとは何て言い草だ! そなたもヨンチョルのように私を脅すのか!』

ここで話題を変えるペガン
イル・ハン国やチャガタイ・ハン国 そして高麗(コリョ)を征服するのが夢だと…!

※イル・ハン国:現在のイランを中心とするモンゴル帝国の地方政権
※チャガタイ・ハン国:チンギス・ハーンの次男が建国した遊牧国家

『征服戦争をするというのか? そんな莫大な資金など無理であろう!』
『ヨンチョルの秘密資金を探しています!』
『何?』
『丞相になったのは私利私欲ではなく すべては陛下のためなのです!』

ここで初めて跪くペガン
大元帝国の威厳を世界に知らしめる 大望を持っていただきたいと!

丞相ペガンは ヨンチョルの秘密資金捜索に 皇帝を担ぎ出した
征服戦争という大義名分を掲げ 皇帝をその気にさせたのだ
これを知ったキ・ヤンは 危機感に表情を強張らせる
ペガンが先に秘密資金を手に入れれば またしても高麗(コリョ)が危機に陥る…!

キ・ヤンは 影絵の最中に閃いたことを 一刻も早く形にしたかった
鉱山の村の子供たちが歌っていた歌詞の中に出て来る言葉
“八八王”
“八”と“王”を組み合わせ 紙に“全”と書いてみる
そして紙の上下を反転させ もうひとつの“八”を書き入れると…
“八八王”の言葉は “金”という文字になった…!

やはり 歌詞の中に秘密資金の在りかが隠されていた!
キ・ヤンは 直ちにワン・ユとヨンビスを呼びつける
互いに自分だけが呼ばれたと思っていた二人は 鉢合わせになり驚く
秘密資金の在りかを記した書面を渡され 戸惑いを隠せないワン・ユ
側近のパン・シヌたちも 困惑の表情で顔を見合わせる

貴妃キ・ヤンとワン・ユが手を組むことを ヨンビスは快く思っていない
それを承知しているキ・ヤンは ヨンビスの反応を観察している
ワン・ユは 秘密資金の在りかを見つけたからには手を組むしかないのだと言い放つ…!

ヨンビスは すぐさまペガンに接触し 秘密資金の情報で取引をしたいと…!
メバク商団の大都支部を掌握したいという野心を語り 協力を持ち掛けたのだ
まずはメバクの大都支部壊滅 そして宮中からの注文はすべてヨンビスの商団に
確かな証文の証に 必ず玉璽を押すことが条件だという

取引成立までは 簡単に秘密資金の在りかを明かさないヨンビス
秘密資金を狙っている者は 他にもいるのだと…!
玉璽を押した証文など容易いが 問題は 全貌が見えないメバク壊滅だ
ヨンビスは メバクの組織図が記された帳簿を渡す
そして 組織の隠れ家のいずれかに タンギセが匿われているとほのめかす!

これを受け 皇帝タファンのもとへ急ぐペガン!
ヨンビスの要求をのみ 情報を得るためには 皇帝の同意が必要であった
事態を察知したキ・ヤンは 急いでワン・ユに知らせよと命じる

同じ時 ワン・ユはマクセンを呼びつけ 大量の交鈔が入ったいくつもの箱を見せていた

『こ、こ、こ、これが全部交鈔?!!!』
『落ち着け これらは全部偽物だ』
『何だって?!』
『メバクの支部から奪ったものだ』

これを鉱山の村に運ぶことが マクセンに与えられた役目だった
するとそこへ ヨンビスが裏切ったとの知らせが…!
ワン・ユはムソンたちに メバクの者たちを残さず捕えろと命じていく!!
そして パン・シヌを従えペガンの屋敷に向かい タンギセを見つけたと報告する!

『商団に匿われていたようだ 別動隊がメバクを捕えに向かっている』
『どこからその情報を得たのだ!』

ワン・ユが差し出したのは ヨンビスがペガンに提示したのと同じ帳簿だ

一方 メバクの隠れ家から脱出を試みるタンギセだったが
根こそぎ捕えられたはずの隠れ家に ヨンビスの一団を見かけ息をひそめる
なぜあの者だけが捕えられずに悠々と歩いているのか…

ヨム・ビョンスとタンギセが尾行すると ヨンビスは密かにペガンと会っている…!

玉璽入りの証文を受け取ったヨンビスは 秘密資金が鉱山の村に隠されていると明かす
錫を採取する作業場の 納屋の中に秘密資金が隠されていると!!!

これを立ち聞きしたタンギセは 決してペガンには渡さないと激怒する
それには 何としてもここから脱出しなければと!

各自が情報に踊らされ 一触即発の動きを見せようとする中
貴妃キ・ヤンは 興徳殿の隠し部屋にいた
秘密資金の在りかは鉱山の村ではないと聞かされ 困惑するイ尚宮
興徳殿にヨンビスを呼び入れたあの日…

「そなたに “裏切り者”を演じてもらいたい」
「その分け前として 大都支部の掌握と宮中への納入を独占できると?」
「承知してくれるか?」

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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第39話 秘密資金

2019-09-16 10:08:22 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

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1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第39話 秘密資金 

 

『私に協力を求めるなら…

キ・ヤン様も 高麗(コリョ)のためになることをなさらねば』

 

ワン・ユの求めに応えるように キ・ヤンは高麗(コリョ)王への返書を渡す

そして 必ずやヨンチョルの秘密資金を探し出し 高みに昇り詰めると誓う

過去の想いが再燃したのではない

今の状況で我が子を守るには ワン・ユと手を組むしか道はないのだ

 

一方 皇帝タファンは 何としてもヤンを皇后の座に… と気を揉んでいた

丞相ペガンの姪を娶るつもりなど さらさら無いのだと訴えるタファン

キ・ヤンはそれをたしなめ 今はペガン丞相と対立してはならないと諭す

 

『あの者の働きがあってこそ ヨンチョルを倒せたのは事実』

『では ペガンの姪を娶れと?!』

『正攻法で勝たねばなりません』

『しかし… ペガンは皇太后と組んだのだぞ』

『一日も早く私を貴妃に そして興徳殿に住まわせてください

アユを守るためには 皇后にも負けない地位に就かねば』

 

同じ時

 

キ・ヤンに協力するというワン・ユの報告に ヨンビスが猛反対していた

皇帝の子を産んだヤンが 我が子を守るために何をするか分からないと…!

 

『どうしてもあの女と組むなら こっちは手を切らせてもらう!!!』

 

激怒して出ていくヨンビスに 側近たちが何とか取り成そうとするが

元と交易を続けるためにも 皇室との繋がりは必要だというワン・ユ

パン・シヌは それならば丞相ペガンの姪が皇后の座に… と呟く

 

『アユルシリダラ皇子が皇太子になるのだ 皇后に媚びる必要もない』

『それじゃあ マハ皇子はどうなるので?』

 

チョンバギの失言に シヌがギロリと睨みつける

マハ皇子が ヤンと自分との子であることを ワン・ユは知る由もない

 

庭園を歩くワン・ユの前に マハ皇子が現れる

大はしゃぎの皇子を 軽々と抱き上げるワン・ユ

皇子様を抱くなんて… と眉をひそめるシヌ

その様子を見た皇太后が マハの懐きように驚く

(それはそうだ…)と心の中で頷くシヌだった

紛れもなく マハ皇子はワン・ユの息子なのだから… と

 

一方 雑用係に格下げされたソ尚宮とヨン尚宮は

イ・ホンダンから厳しい扱いを受け 屈辱に耐えていた

 

(キ・ヤンが貴妃になれば ホンダンもイ尚宮に?!)

(それでも耐えるのだ 何としても生き延びねば…!

こうしてじっと耐えていれば 必ずや好機が巡ってくる)

 

たとえキ・ヤンが皇后になれなくとも 皇帝からの寵愛を受け

息子アユルシリダラもまた 一心に愛情を受け育っている

そのアユ皇子の食事に 何者かが毒を盛った…!

 

粥を作った女官らは 鞭で打たれ尋問された

駆けつけたタファンは怒りをあらわにし 生ぬるい!と叫ぶ

地下牢で拷問せよとの皇命に キ・ヤンが待ったをかける

 

どう考えても 女官ごときが企てられる悪事ではない

ヤンは ソ尚宮とヨン尚宮を捕えさせた

 

『そういえば… タナシルリもよく毒を操っていたな』

 

怯える2人を容赦なく鞭打つキ・ヤン!

そこへ皇太后が現れ 2人を解放し傷の手当てをと命じた

 

『陛下の婚礼も近いというのに 騒ぎを起こすでない!』

『息子に毒を盛られたのです 黙ってはいられません!』

『騒ぎを起こさなくては解決出来ない?まずは皇室の平和を考えよ』

 

丞相ペガンの姪 バヤンフトの皇后教育は順調だった

周囲の思惑や争いごとを除けば バヤンフトは実に皇后に相応しかった

もちろん 皇后候補はバヤンフトだけではない

しかし皇太后は 何としてもペガンの姪を皇后にと推すのだった

 

『皇后が決まれば キ・ヤンを貴妃にし 興徳殿に住まわせます』

『興徳殿に住むのは 第2皇后ですよ 貴妃になど…』

『キ・ヤンは貴妃になりますが 待遇は皇后と同等に!』

 

皇太后は キ・ヤンをギロリと睨みつけた

ヤンは視線を外し 無表情のまま

 

『そなた 皇帝を焚きつけたな? 興徳殿をくれと?』

『私にはその資格がありますし 権利もあります』

 

皇太后が激高する前に タファンが口を挟む

 

『この者は多くの犠牲を払って尽くしてくれた

何もせぬ者が皇后になるのに この者に資格がないとは言わせません

そもそも皇太后様の許しは必要ない 私は皇帝なのですから!』

 

キ・ヤンは 宦官ブルファに命じ興徳殿の警備を強化させる

また イ・ホンダンを昇格させイ尚宮に

また女官は すべて高麗(コリョ)出身者にと命じていく

 

『それと… 興徳殿を改修し“隠し部屋”を作ってほしい』

『“隠し部屋”を どうなさるので?』

『ヨンチョルの秘密資金を隠さねばならない』

 

アユ皇子に毒を盛った犯人は まだ見つかっていなかった

しかしキ・ヤンは 犯人捜しよりもまず 息子を守る対策を急がせた

 

一方皇太后は ソ尚宮とヨン尚宮を 新たな皇后のお付きにと命じた

ペガンと結託したとはいえ 常に動向を探る必要があった

いよいよソ尚宮の言う“好機”が訪れたのである!

 

『皇太后様のためでしたら どんなことでも致します!ご命令を!!』

『まずは… 新たな皇后の信頼を得なさい』

『信頼… ですか?』

『私の手先だなどと 断じて知られぬように!』

 

タナシルリに仕えてきた2人である その言葉の意味は百も承知

悪事にかけては 最高の手足となることを 皇太后は熟知していた

 

さらに皇太后は チャン・スニョンに命じていく

“生母はキ・ヤンに殺された”

そうマハ皇子に教え込めと…!

 

タファンが皇帝として何の力もなく 丞相ヨンチョルに支配されていた頃

皇太后は キ・ヤンを救世主のように頼り崇めていた

しかし現実に 高麗(コリョ)出身のキ・ヤンが皇后になるとなれば話は違う

丞相ペガンもまた同じであった

養女にしてまでキ・ヤンを側室にし 自らも丞相となったが

高麗(コリョ)の血を受け入れることは どうしても出来なかった

 

『アユ皇子 母君は あのキ・ヤンに殺されました!

高麗(コリョ)出身のあの者が 無残に母君を殺したのですよ』

 

チャン・スニョンは 皇太后の言葉に違和感を覚える

死の直前まで悔い改めることなく 恨み言を遺して死んだタナシルリ

期せずしてその恨みを 皇太后が受け継ぐことになるとは…!

 

バヤンフトが 皇后として皆の前に現れた時 イ尚宮が蒼褪める

皇后付きの尚宮として ソ尚宮とヨン尚宮が後に続いていたのだった!

 

タファンは 皇后の手を取り玉座へ導く

真っ直ぐに前を見つめるキ・ヤンの視界にも その光景が映る

 

バヤンフトが 皇后の座に就いたその日

キ・ヤンもまた 貴妃として興徳殿の主となった

入殿した貴妃キ・ヤンは 真っ先に“隠し部屋”を確認する

 

宦官ブルファは ワン・ユからの密書を渡す

密書には 錫の鉱山へ向かうとある

ヨンチョルの秘密資金を狙っていることが露見すれば 互いに破滅だと…!

 

丞相ペガンが 秘密資金の目録を手にしたと知り

貴妃キ・ヤンは その在りかを探せとブルファに命ずる

 

その夜

 

バヤンフトは タファンとの初夜を前に緊張していた

婚礼衣装を脱ごうとせず 姿勢を正したまま待ち続ける

 

皇帝タファンは 寝所で大酒を飲み酔いつぶれる寸前であった

そして 貴妃キ・ヤンのもとへ行くと言い出す

侍従コルタは 皇后との初夜の場に行くべきだと強く進言する…!

なぜこの国の皇帝が 好きな女のもとへ行けぬのかと喚き散らすタファン

 

『それが皇帝というものです陛下!!!』

 

ふいに現れた皇太后の一喝で タファンは我に返る

何でも思い通りに出来るのが皇帝ではないと叱りつける皇太后

大義名分を優先し 時には私心を曲げて耐え忍ぶのが皇帝であると…!

 

『皇太后様は 皇帝である私のことを少しも考えてはおらぬ!』

『そうお考えなら 貴妃キ・ヤンを追い出さねば…』

『皇太后様!!!』

 

『玄宗皇帝が国を傾けたのは 楊貴妃を愛するあまりのこと

陛下こそが キ・ヤンの立場を危うくしているのです!

あの者を思うのであれば 皇帝としての務めを果たすのです

皇后のもとへ! 今夜は皇后と初夜を過ごすのです!!!』

 

イ尚宮が 陛下は皇后のもとへ向かったと知らせる

貴妃キ・ヤンは アユ皇子を抱きながら 孤独に夜を過ごし

皇后バヤンフトは 酔いつぶれたタファンの寝顔を見つめ夜を明かした

 

やがて目覚めたタファンは バヤンフトに請われ髪飾りを外してやった

あのタナシルリを迎えた時と同じように 冷たく接するタファン

しかしバヤンフトは 寛容さを崩さず冷静さを失わない

 

『タナシルリは 実に激しい性格だった そなたは逆に優し過ぎる』

『どのような者なら お気に召しますか』

 

その問いには答えず タファンは侍従コルタを呼びつけ

朝食は 興徳殿で貴妃と一緒に摂ると告げた

 

『私なら大丈夫です 陛下が貴妃を大事になさるのでしたら

私も 貴妃を大事にいたしましょう 夫婦は一心同体ですもの』

 

どんな言葉も タファンの心を揺らすことは出来ない

しかし 興徳殿へ向かう途中 タファンは貴妃キ・ヤンとすれ違う

昨夜は酔いつぶれて… と言い訳するタファン

キ・ヤンは その手を冷たく振り払う!

自分だって一睡もしていない!と言い放ち 立ち去った


あまりの冷たい態度に その場の空気が凍りつく

侍従コルタは いくら貴妃とはいえ不遜過ぎると進言するが…

 

『聞いていなかったのか? ヤンは一睡もしておらぬのだ!』

 

貴妃キ・ヤンは 将軍タルタルの執務室に向かっていた

ヨンチョルの財産目録を調べているところだと 正直に話すタルタル

 

『叔父のことを… 恨んでおいででしょう』

『見捨てられた気分です 恨んでいないと言えば嘘になります』

 

キ・ヤンに 側室になるための教育をしたのはタルタルである

その意味では師弟関係にある2人 一定の距離を保ちつつ互いに正直だった

 

昨夜は 皇后が寂しく夜を過ごしたと話すキ・ヤン

タナシルリの時も そのせいで逆恨みされた経緯がある

 

『将軍から うまく取り成していただけませんか?

もう こういった争いごとに巻き込まれたくないのです』

 

それだけを伝えると キ・ヤンは去っていった

タルタルは アユ皇子が殺されかけたと その時初めて側近から聞き

まさか… と表情を曇らせた

 

皇后殿では

 

ソ尚宮が『あのキ・ヤンのせいで…』 と皇后を焚き付けている

しかし バヤンフトは タナシルリのようにうまく操れない

あまりに心が優し過ぎるせいで 邪悪な心を拒絶してしまうのか…

 

そこへ 将軍タルタルがやって来る

 

バヤンフトは 少女のような甘え声で『お兄様!』と駆け寄った

幼い時をペガンの屋敷で過ごした2人は 兄妹のように仲がいい

人払いし 皇后としてでなく しばし親しげに話したいと請うタルタル

バヤンフトは 『もちろんです!』と笑い瞳を輝かせた

 

『兄妹のように暮らしたから お前のことはよく知っている』

『ええお兄様 あの頃は本当に楽しくて…』

『二度と… あんな真似はするな』

 

バヤンフトの表情が凍りつく

兄と慕うタルタルを見上げる視線は鋭く 笑顔は一瞬で消え去った

 

『乳飲み子を毒殺だと? お前に人の心はあるのか?』

『……』

『お前は 幼い頃から誰より嫉妬深く 残忍な心を持っていた

飼っていた鳥さえ 鳴き声がうるさいと切り刻んでいた』

 

『今後は敬語を使うように!

皇后となった今 そんなお説教は聞きたくない!

ええ あの件は私の命令です ですが殺すつもりなら失敗などしない

ただ思い知らせただけ それだけですよ お兄様

皇后の私が 側室ごときに皇帝を奪われるなど有り得ない!』

 

『どうぞご自由になさればよい

しかし皇后様のせいで 我が一族に害が及べば ただでは済みません!』

 

(何を偉そうに…!)

 

バヤンフトは タルタルの背中をギロリと睨みつけた

邪悪さをあらわにしていたタナシルリは まだ素直だったのかもしれない

このバヤンフトという新たな皇后に比べれば…

 

同じ時

 

貴妃キ・ヤンは ヨンチョルの財産目録を手に入れていた

今夜のうちにすべて書き写し 元の場所へ戻すようにと命じていく

するとイ尚宮が 財産目録の1冊に挟まれていた紙切れを発見した

それは ヨンチョルの屋敷の見取り図と思われる

しかし今 その屋敷に住んでいるのは丞相ペガンであった

 

ペガンは 秘密資金についての情報を何一つ掴むことが出来ないでいた

もしもタンギセが先に見つけてしまったら… と焦るペガン

そこでタルタルが 1つの方法を提案する

 

『ヨンチョルと関係が深かった メバク商団に探りを入れるのです

頭に会えば 何かしらの情報を得られるでしょう』

 

しかし 商団の者でも頭に会った者はおらず その顔さえ知らない

2人は メバクの大都支部を率いる男に接触を試みるが…

その男に いち早く会っていたのは タンギセであった

ヨンビスは 会談を手引きする下っ端に扮し同席している

まさか事実上商団を率いる者が このヨンビスとも知らず

支部の長と会談するタンギセ

 

『回りくどい話はしない 私は父上の秘密資金が欲しいのだ』

『昔お父上は 鉱山の村人を皆殺しにしました』

 

つまりは そこに秘密資金を隠したから口封じをしたということか…

長は否定も肯定もせず その事実だけを伝えた

 

タンギセの一行が退室した後 ヨンビスは長と話し合う

ヨム・ビョンスが立ち聞きしていることを承知の上で

あくまでも手下として 今後の動きについて指示を仰ぐ…!

 

ビョンスは タンギセの駒になって従う気はさらさら無かった

機を見て秘密資金を横取りするという企みに チョチャムは仰天する!

 

『タンギセは 秘密資金で傭兵を育て 謀反を起こす気だろう

奴に従えば いずれ反乱軍として捕らえられるだけだ

俺はそんな愚か者じゃないぞ 金塊でこの世の望みをすべて叶える!』

 

一方 ワン・ユは

 

鉱山に到着しマクセンから報告を受ける

タンギセとヨム・ビョンスが 突然に姿を消したのだという

しかし 金塊を発見したのではないと言い切るマクセン

金塊を運ぶとなれば 数人で事を進められるはずがないと…!

 

同じ時 貴妃キ・ヤンは

 

興徳殿の隠し部屋に引きこもり 秘密資金の情報を探っていた

皇后バヤンフトと 一夜を過ごしたタファンの行動に傷つき

今は独りになりたいと告げ 皇帝の呼び出しにも応じず距離を置いている

 

なぜ皇帝に 秘密資金のことを話さないのか… と聞く宦官ブルファ

 

『陛下は 秘密資金を国庫に組み入れようとするはず

そうなれば 私は自分を守るべき力を得られない』

 

そこへ ワン・ユから 連覚寺で会いたいとの連絡が入る

 

将軍タルタルは 秘密資金の行方について 必死に考えを巡らせる

ヨンチョルであれば どこへどう隠すのか… その心理を探っていく

容易に出し入れが可能な場所

誰にも怪しまれず隠せる場所…

 

その時タルタルは 財産目録の並びが違っていることに気づく

この宮中で 秘密資金を狙う者がいるようだと

 

その夜

 

貴妃キ・ヤンは 宦官ブルファを伴い 宮外へ出向く

その知らせを受けたタンギセが 私兵を出動させる…!

 

亡き父ヨンチョル そして弟タプジャヘ 妹タナシルリ!

一族を殺された恨みを晴らすべく キ・ヤンを包囲する!!

 

キ・ヤンもまた タンギセに対し激しい憎悪をあらわにする

あの日 我が母を無残に殺された恨みを 今こそ晴らそうと!!!

 

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