佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

真夜中の雨音

2024-05-22 11:42:07 | 日記

嫌いになって、別れたわけじゃ
ないんだ。ふたりの見つめる先
にある「理想」が、いつの間に
か大きく、食い違ってしまって
いたんだね。彼女は安定を求め、
俺は飛躍を求めた。

お互いに、相手の変化を受け入れ
られなかったんだと思う。
そんなあのひとの言葉が、今は
まったく違った意味を持って、
迫ってくる。

「嫌いになって別れたわけじゃ
ない」。その言葉がわたしに、
尖ったナイフの切っ先を突きつ
けてくる。

「運命の出会いが」が、昔の彼
女との再会だったとしたら・・・・。

嫉妬、猜疑の心、不信感、自己嫌悪。
打ち消しても打ち消しても、膨らん
でいくばかりの「どろんこいかだ」。
醜い灰色の塊を、わたしは身のうち
に抱え込んでいた。

この「どろんこいかだ」を浮き上が
らせ、澄みきった心を取り戻すため
には、どうしてもあのひとの声が、
必要だと思った。

ぜひ電話で話しを聞かせて、と、
LINEに書いて送った。
そばにいて欲しいと願うだけでは
なくて、わたしは、もしもあの
ひとがわたしを必要としている
のでれば、そばにいてあげたいと
思っていた。

父が亡くなった日、あのひとが
わたしにしてくれたことを、わ
たしもしてあげたかった。
LINEの最後には、こう書いた。
「わたしにも話したいことがあり
ます」と。

夏以来、会社で、いやな出来事が
積み重なっていた。あのひとには
そのたびに話しを聞いてもらい、
そのたびに慰められ、元気づけら
れてきた。

けれど、つい最近、追い打ちをかけ
るように、理不尽で不条理なことが
起こった。わたしはそれに巻き込ま
れ、もみくちゃにされ、窮地に立た
されていた。問題は悪性腫瘍のよう
に増殖し、もうわたしの手に負えな
い状態になっていた。

会社を辞めようと、考え始めていた。
会社を辞めて、アメリカへ――――。
そのことを、あのひとに相談したか
った。

LINEを送って、一週間待った。
返事は届かなかった。

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