彼は中性的で美しい、どこか儚げな青年だった。
鈴崎聖名(せな)。俺より4つ下の24才。ベンチャー企業の社長だ。
ボブの毛先に柔らかなウェーブの金髪。身長は185センチの俺よりはちょっと低い。
そして俺は今日から彼のボディーガードだった。
俺は警備会社から二人の先輩と交替で派遣されて、鈴崎社長の火曜と水曜の出勤から帰宅までをガードすることになっていた 。
不思議なことに依頼主は社長本人ではなく社長の大叔父ということで、本人は必要を感じていない様子だった。
社長室で…社長に引き合わされた時、社長は笑顔で迎えてくれたが、その瞳は笑ってはいなかった。二人きりになりソファに向かい合って座り、俺の簡単なプロフィールに彼は目を落とした。
「海原翔真(かいはらしょうま)さん…うーん、何だか僕にはもったいない経歴だな」
「いえ、とんでもないです」
俺が否定すると彼は、
「それで、君の方は僕の経歴をどれくらいまで聞いてるの?」
俺は言葉に困った。しかし、気をつかわなくていいよ。どこまで知っているのか知りたいだけだからと言われたが、俺はこの人に… その寂しそうな微笑みに、心を鷲掴みにされた気がした…それでどうにか遠慮しながら話し始めた。
聖名は、唯一の北海道出身総理であり、昭和の総理の中でも特にカリスマ性があったと言われる「成田貞次」のただ一人の孫であること…
でも聖名の祖母の春子は…