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還暦おやじの洋楽日記

Seventh Sojourn / The Moody Blues

「無人島レコード」なんてベタな話があって、「あなたが無人島に行くならどんなレコードを持っていきますか?」という意味なのだが、もし自分が10枚選べと言われたらきっとこのアルバムは入っちゃうだろうなあ。そのぐらい大好きで思い出深いアルバム。
ムーディーブルースを初めて聴いたのは「The Story In Your Eyes」、その次が「I'm Just a Singer」で、悪くはなかったけど当時はあんまりピンと来なかった。初めてピンと来たのは、彼等が初来日するというのでFM局の彼等を特集した番組の中でオンエアされた「Isn't Life Strange(神秘な世界)」。クラシカルで叙情的な曲調に一発で虜になって、レコード屋に走ったものだった。

1. Lost in a Lost World
2. New Horizons
3. For My Lady
4. Isn't Life Strange
5. You and Me
6. The Land of Make-Believe
7. When You're a Free Man
8. I'm Just a Singer (In a Rock and Roll Band)

前作「Every Good Boy Deserves Favour(童夢)」は幻想的で美しいジャケットでも有名だが、本作でフィル・トラヴァースが描いたのは無機質で荒涼たる大地の風景。でも両開きジャケットを開くと粋な趣向が施されホッとする仕掛け。
ペシミスティックなマイク・ピンダー作「Lost in a Lost World」で重苦しく幕が開くが、次のジャスティン・ヘイワード作「New Horizons」は一転してゆったりと明るく伸びやかなナンバー。最初に聴いたときはそうでもなかったが、月日を重ねるごとにこの曲の良さがわかってきた。軽快な「For My Lady」を経てジョン・ロッジ作「Isn't Life Strange」へ。瑞々しいストリングスの音色に導かれ、内省的ながら人生や愛といった普遍的なテーマが肯定的かつドラマティックに歌い上げられる名曲。僕は彼等の最高傑作だと思うのだけど、世間の評価はそれほどでもないのが残念。「You and Me」は彼等の来日に合わせて日本でのみシングルカットされた曲。「The Land of Make-Believe」は後年、別のグループの同名異曲がヒットしたようだが、こちらは静かに始まり徐々に盛り上がるヘイワード節。再びピンダーの陰鬱な「When You're a Free Man」が続いた後、ストレートなロックンロールナンバー「I'm Just a Singer」で締め括り。
親しみやすいメロディとアルバム全体を貫く叙情性に魅かれ、旧作も買い漁って、コンサート会場に行ったのは45年前のちょうど今頃。ライブではスタジオ盤のような幽玄・雄大な彼等の世界を再現できず、出来はそれほどでもなかったが、今もなお唯一となる彼等の日本公演に立ち会えたのは貴重な体験だった。

2008年の再発盤では以下のボーナストラックが追加された。特に「Isn't Life Strange」のオリジナルバージョンは前奏や間奏が長い掘り出し物だったが、曲としての完成度を考えるとアルバム収録に際してそれらがカットされたのは理解できる。

(2008 Bonus Tracks)
9. Isn't Life Strange (original version)
10.You and Me (Beckthorns backing track)
11.Lost in a Lost World (instrumental demo)
12.Island (previously unreleased)

アルバムがリリースされた1972年当時、「Nights in White Satin(サテンの夜)」がリバイバルで大ヒットしたこともあり、このアルバムは彼等にとって初の全米1位に輝いた。現在、ムーディーブルースの代表作と言えば「Days of Future Passed」「Every Good Boy Deserves Favour」あたりが一般的には挙げられるが、バンドとしての成熟期を迎えた彼等が、ちょっと肩の力を抜いて作ったのであろうこのアルバムの味わいに僕はずっと魅了され続けて、今に至っている。

(かみ)
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