結局は、そんな“嫁”に取られちゃうのかよ。

周囲には家族が悲惨な人がけっこういるので
そんな話を聞く都度、
シウは家族に恵まれていると思う。

まず、家族が健康だ。
シウ両親も弟も妹も、それぞれの家族も。
シウ家族の中で大きな病気といえば
一昨年のシウのガンくらい。

仕事面でも、
一族がほとんど自営業で、
もちろん昨今の不況により、そんなにラクもしてないが、
深刻な状況でもない。
（シウ夫は“深刻な状況なんですけど・・”って言うけど）

シウの実家は、まことに平和な一族だ。

それというのも
シウ弟が本当に素敵な女の人と結婚してくれたからということに尽きる。

彼女には
シウやシウ妹が持っているような“邪悪な心”が無いし
賢くて、美人なのだ。
シウ弟が結婚式で

「ぼくは今まで人に自慢できるようなことをしたことが無いけど
　○○と結婚することが、唯一自分の人生で自慢できることです。」

と言ったのだけど
シウたちは一同、まさにその通りだと深くうなずいたものだった。
彼らが結婚して○○年、その気持ちは変わらない。


で、
世の中皆そういうものだと思っていたんだけど
最近、それは大間違いで
けっこう酷い嫁に困らされている人が多いと知った。
シウ家に○○ちゃんが来てくれたのは
本当に本当にラッキーな出来事だったようなのだな。

ま、それは置いておいて。

（前置きが長い！）


シウの近所で飲食店を営むＴ一家。

大昔から知っているんだけど
シウがこの地に嫁に来た頃、
Ｔさん夫婦はまだ小さなかわいい男の子を連れていた。

なんでも結婚して１０年、
やっとのことでできた、大事な大事な息子だということだった。
その息子は順調に育ち
東京に行って料理修業をし、
このたび、両親の飲食店を共に盛り上げるべく
東京から帰ってきた。

シウにしてみたら
あんな吹けばちりぢりになりそうな店を手伝うなんてせず
そのまま東京で店を持つくらいになるまで頑張ってほしいと思うところだが
“跡取り”が帰ってくる、なんていうのを何よりも大事にする田舎だから
そんな風に都会に行った息子が帰ってくるなんていうのは
両親にしたら大自慢らしい。

その息子はなんでも“でき婚”らしく
すでに４歳くらいになる子どもと
もちろん奥さんも連れて帰ってきた。

シウとしてはその奥さんの気持ちになっちゃうと、
こんな友人もいないような田舎に連れてこられて
悲惨さしか想像できないんですけど・・・な気分。
ほんとに気の毒だと思ってた。

しかし実際にその奥さんと会ったシウ彼が
呆れかえる事件があった。


シウ彼の繋がりで
Ｔさん親子に仕事を依頼したときのこと。
内容は料理のケータリングなんだけど
その打ち合わせでＴさん親子がシウ彼の会社に来た時のこと。

約１時間ほどの打ち合わせが終わって
シウ彼が何の気なしにＴさん親子を見送って、一緒に外に出た。
するとそこにとまっていたＴさん親子の車の後部座席に
Ｔ息子の嫁＆ちび息子と思われる姿が！
思わず
「寄ってもらえば良かったのに。車の中で待たせちゃって悪かったね。」
と、車に近寄るシウ彼。

ところが
Ｔ息子嫁はずっと車の中で反対側に顔を向け、
一度もこちらを向かなかったというのだ。

普通なら、自分の義父や夫のお得意さんでもある相手だし
そうじゃなかったとしても知人なので
挨拶もせずに車の中で待っていた非礼をわびつつ、
車から降りて挨拶すべきじゃ？
百歩譲って降りずとも、
せめて車の中から会釈くらいしたっていいんじゃないのか？

しかし無視。

ちび息子はお父さんやおじいちゃんが来たから、
車の中ではしゃいで窓に張り付いていたそうだが、
それを抑えつけながら嫁は必死に別な方に顔を向けていたとのこと。

なんで？

まったく理由が分からない。

Ｔさん親子は
「うちの嫁、恥ずかしがり屋で・・・」
なんて言っていたが
恥ずかしがり屋で人に挨拶できないなんて
幼稚園児位までにしか許されない言動じゃないのか？




シウ彼からそれを聞いたシウ。

あんなに望んで、１０年もがんばって
やっと生まれて大事に育てた息子。
それでもそんな嫁にあっさり取られちゃうんだよね・・・・と

Ｔさん夫婦が本当に気の毒になった。
この先、Ｔ家の商売が盛り上がって行くなんて
まったく思えないよ。

シウとシウ彼、２人で妙にシミジミしちゃった。