goo blog サービス終了のお知らせ 

市民アートシアター 演劇情報ブログ

北海道士別市の演劇鑑賞団体「超訳でシェイクスピアを学ぶ会」改め「市民アートシアター」の情報ブログです.

【過去の上演記録】 2009年8月 超訳「ペリクリーズ」

2010年06月30日 | 楠美津香・シェイクスピア

楠美津香ひとりシェイクスピア8度目の士別公演。

「ペリクリーズ」は古代ギリシャの地方君主・ペリクリーズの「そんなばかな!」と叫びたいほど波乱万丈で「ありえな~い!」と喚きたくなるほど奇跡的ハッピーエンドを迎えるハイテンション・ミラクル人生ドラマ!

この作品はロマンス劇に分類される観た後にハッピーな気分で帰れる作品なんですが…いやぁ、おもしろい作品です。

美津香さんの一発キャラの最高峰ともいうべき、一瞬だけ登場のフィロテンちゃんにハートを射抜かれ、新キャラの欽ちゃんにじわじわ笑い殺されそうになった者多数(笑)
ペリクリーズを見た後、士別の主催仲間たちの間では「海賊ごっこ」が流行りました。
海賊もチョイキャラでしたけど、あのバカっぽさは、あとをひきましたねぇw

美津香さんの演じるキャラはどれも面白くて、ついマネしちゃうんですよね。
みなさんは、美津香さんのシェイクスピアを見た後についつい口調が移っちゃう、なんてことありませんか?
私はときどき無意識に水谷になったり田中になってしまいます。

【過去の上演記録】 2009年1月 超訳「アントニーとクレオパトラ」

2010年06月29日 | 楠美津香・シェイクスピア
楠美津香ひとりシェイクスピア7度目の士別公演。

シェイクスピア作品は知らなくてもクレオパトラを知らない人はいないだろうってほどの歴史的有名人を題材にした悲劇です…が、かなり笑えます、この作品。

クレオパトラの、人の話を聞かない自分勝手な女っぷりとアントニーの腑抜けっぷりが、ただの歴史劇でなく、人と人の物語として成立していて面白みが増しています。

一見、マジメに愛だの恋だの国だの名誉だのを声高に主張してみたり、嘆き悲しんでみたりしていますが、クレオパトラはそれが大げさすぎて喜劇になっちゃうんですね。
同じ登場人物たちから道化役者と揶揄されてしまうくらいで。

シリアスを追及しすぎてギャグになる、これは美津香さんの超訳シェイクスピアにはもってこいの作品です(笑)

美津香さんは悲劇を悲劇としての体面を保ったまま、コメディにしちゃう天才ですからね。悲劇「アントニーとクレオパトラ」をいかに喜劇的に見せて笑わせてくれるか・・・それが見所です(笑)

そういえば国際シェイクスピアフェスティバルの出演に、とある偉い先生が美津香さんの「アントニーとクレオパトラ」を推薦してくださったそうです。
理由は「下世話でHな作品に仕上がってるから」(爆)

えー、つまりですね、
シェイクスピア作品というもの、これを劇団がやるとどうしても格調高く作っちゃうんですが、当時のシェイクスピアはこれを大衆が楽しむための下世話でHな芝居として作ったそうなんですよね、研究者によると。だから下世話でHな解釈で作り上げた楠美津香の「アントニーとクレオパトラ」こそが本物の「アントニーとクレオパトラ」だ!っていうのが推薦理由なんだそうです。


たぶん、シェイクスピアって日本における歌舞伎とか狂言みたいなものなんしょうね。
本来は大衆向けの簡単に楽しめる芝居だったんだけど、時代がたつに連れて古典にされちゃって、なんとなく難しそうな敷居の高いものになっちゃった、みたいな。

狂言だって、歌舞伎だって、見てみるとかなり単純に面白いものばかりなんですよ。
そう思うのは私が演劇が好きな芝居オタクだから、っていうわけじゃなくて、私の友人で芝居はチームナックスしか見たことないよ、って友達がいましてね、その友人を無理やりシネマ歌舞伎・野田版ネズミ小僧に連れていったんですよ。その友人がはじめは「私、つまんないと寝ちゃうよ、マジで寝るよ!」と言いながら映画館に行ったんですけど、いざはじまるともう勘三郎さんの演技に笑いっぱなしで、歌舞伎ってこんなに面白かったんだね!とホントにビックリしてましたから。

たぶん、芝居に興味のない人にはシェイクスピアと同じで「難しくて退屈そう」っていう先入観があるんでしょうね。

でも、どちらも元は人々の娯楽のために作られた芝居ですから、ジャンルは違ってもちゃんと楽しめる内容なわけですよ。人間の悲しみや笑いとか、本質的なところはどの時代も同じなんですよね、きっと。

それを現代の天才コメディアン・楠さんが超訳してやってくれるわけだから、確実に楽しめること間違いなし!ということで、「アントニーとクレオパトラ」のみならず、ぜひとも楠美津香ひとりシェイクスピア、どの作品でもいいです。見てみてください。


【上演実行委員会参加】2008年8月『超訳・薔薇戦争』一挙上演企画

2010年06月29日 | 楠美津香・シェイクスピア

士別で「超訳・お気に召すまま」を上演した年の同じ8月。

美津香さんは旭川のシアターコアで『楠美津香ひとりシェイクスピア「超訳・薔薇戦争」』と称してイギリス薔薇戦争を題材にした歴史劇である「リチャード2世」「ヘンリー4世第一部」「ヘンリー4世第二部」「ヘンリー5世」「ヘンリー6世第1部」「ヘンリー6世第二部」「ヘンリー6世第三部」「リチャード三世」8作品を一挙上演。

「超訳でシェイクスピアを学ぶ会」も団体ぐるみで「超訳薔薇戦争」上演実行委員会に参加させていただきました。

うちのメンバーには毎晩、旭川へ通い全作品を観たツワモノがおりますが、なかなか仕事で足を運べない人間は、事前に行なわれたリハーサルを見学させていただいたりしました。
どれもすっごく面白かったですねぇ。
8作品をすべて見ることで、物語が長~~~いスパンで繋がっているのがわかって面白いです。同じキャラも出てきますしね。

観劇に足を運ぶ方も大変でしたが、なにより大変なのは1作品2~3時間の一人芝居を1晩1本で連夜演じ続けた美津香さんですな。

しかもその直前まで「お気に召すまま」で北海道をドサ周りしていたわけで…
一ヶ月の間に9本の一人芝居って…!
その記憶力たるや、天才的鉄人としか思えません。
これもひとえにシェイクスピアへの愛ゆえでしょう。

こちらも愛ある限り、応援し続けます。


シェイクスピア作品は長い間、世界中で上演されてきましたが、薔薇戦争シリーズの8作品すべてを一挙に上演とは前代未聞の快挙であると思われます。
この企画の上演実行委員会に団体として名を連ねたことを誇りに感じています。

【過去の上演記録】 2008年8月 超訳「お気に召すまま」

2010年06月29日 | 楠美津香・シェイクスピア
楠美津香ひとりシェイクスピア6度目の士別公演。

この作品ではなんとびっくり!美津香さん初の女装姿が披露されました!(笑)赤いワンピース可愛かったです。


以下、「お気に召すまま」のあらすじ紹介に代えて、当時、AIRてっしで放送した「15分でわかる超訳シェイクスピア講座」から一部引用しておきます。いわゆる放送用の構成台本ですな(笑)
発言は、は=はっしー、り=りかです。

* * * * * * * * * * * * * *


は「ロザリンドはどんなヒロインなんですか?確か男装して旅をするとか言ってましたよね、それに至る経緯なんかもお聞きした方がいいんでしょうか」

り「そうですね、そのいきさつは物語の大事なイントロダクションです。ロザリンドは元公爵の娘で、現在の公爵の姪にあたります。」

は「あ、物語の背景に、権力争いとかお家騒動とかがあるんでしたっけ」

り「そうです。現在の公爵は自分の兄を陥れて追放して自分が公爵になったんですね。それで本当はそのときにロザリンドも追放されるはずだったんですが、現在の公爵の娘で、ロザリンドのイトコにあたるシーリアととても仲が良かったため、シーリアの懇願もあって、特別に追放されずにすんで、一緒に暮らしているわけです。」

は「それはなかなか微妙な立場ですね。」

り「微妙です。微妙すぎて結局、ロザリンドは追放か、死刑を宣告されます。」

は「そこで追放を選ぶというか、逃げ出すわけですね。」

り「そうです。このとき、シーリアも自分の父親には愛想がつきたと仲良しのロザリンドと一緒に家を出ます。家っていうか、屋敷ですけど(笑)それで、女二人では危険がともなうということで、一応は男の家来である道化も連れていくんですが、ロザリンドは男装してシーリアとは兄妹という設定で旅をするわけです。」

は「なるほど~男装して旅をするというのはそういう事情なんですね。」

り「そして一行はロザリンドの父である元公爵が現在住んでいるというアーデンの森へ到着します。そこでなぜか選挙ポスター並にアチコチに貼られまくった自分へのラブレターを見つけます。」

は「なんですか、それは。」

り「本当に「なんですか、それは」なんですけど。話を少し戻すと、実はロザリンドの追放が決まる前に公爵の元で相撲大会があります。」

は「え?大相撲???日本の?!」

り「違います、レスリングです。なんで大相撲なんですか中世ヨーロッパで!」

は「だって、じゃあなんで相撲大会って言うんですか、普通にレスリング大会って言ってくださいよ。それか格闘技大会とか」

り「だって、小田島さんや福田さんの訳が相撲大会になってるんですもん。翻訳家に言ってくださいよ。でも小田島さんや福田さんの訳が世に出てウン十年。いい加減どこかで誰かがレスリング大会って直せばいいものを、いまだに相撲大会で通ってるんですよね・・・なんでだろう、おもしろいから?」

は「「相撲大会」って言葉だけですか?実際に演劇の中でもしこ踏んだりしてるんですか」

り「だったら笑えるよね、中性ヨーロッパで(笑)でも実際の舞台では私、この話を見たことがないんで、わからないんだよね~やっぱ、DVD探して見ないとダメね」

は「そうですねぇ、で、相撲大会がなんでしたっけ?」

り「あ、その相撲大会で優勝した男とロザリンドは恋に落ちるんですけど、その男もまたもう1人の主人公なのでいろいろ背負っているドラマがあります。ちょっと長くなるのでこのはなしはまた来週ということで」

       (~ここまで2008年6月18日放送分より抜粋)


は「では、シェイクスピアの「お気に召すまま」について、今週もお話をしていきましょうか」

り「先週は、ヒロイン・ロザリンドの境遇と相撲大会で出会った若者と恋に落ちたという話までしましたので、今日はそのロザリンドが恋した相手オーランドーの視点から話を進めたいと思います。」

は「そのオーランドーがもうひとりの主役なんですね」

り「そうです。オーランドーはロザリンドの父親が公爵だった頃にとても気に入っていた臣下の息子なんですが、この物語ではすでにオーランドーの父親は亡くなっていて、長男のオリバーがオーランドーの保護者になっています。」

は「ところがその長男に不当な扱いを受けていて、不満に思っているんですね?」

り「お、さすがにラジオドラマを収録した後だけに、わかってますねぇ。その不満を兄にかけあってもケンカになるばかり・・・そこでオーランドーは父の遺産に頼らず、自分自身の力で出世しようと、相撲大会に出るわけです。」

は「そこでロザリンドと恋に落ちると」

り「そうなんですよ。オーランドーは好きな人はできるし、相撲大会では優勝してしまうしで、一見、人生最良のときを迎えたかに思われます、だがしかし!」

は「そうは問屋がおろさないんですね」

り「もちろんです。ロザリンドはとうとう公爵から追放を言い渡され、オーランドーもまた、兄から危険人物として、命を狙われるハメになるわけです。
もうね、ダメなんですよ、能ある鷹は爪を隠さないと!オーランドーはですね、俺って賢いだろ、オレって強いだろ!とアピールしすぎなんです。だから兄に疎まれて命を狙われるんです。」

は「あ~」

り「うつけもののふりをして世間を欺いた初期の織田信長とかね、シェイクスピアでいえばハムレットみたいにね、オーランドーもちょっとダメっ子のふりをすればよかったのに・・・」

は「あ~」

り「まぁそれで命を狙われる羽目になったオーランドーを助けるのが、爺やのアダムです。アダムはホントに使用人の鑑のような忠誠ぶりで、自分が長い間貯めた給料をオーランドーに差出して、その金で逃げましょうと申し出るわけです。その代わり、自分もお供して、身の回りのお世話をさせていただきますっていう・・・どこまでいい人なんでしょうかアダム。金くれて世話焼いてもらって・・・もうすごい御身分ですオーランドー。」         

は「アダムいい人過ぎですね。」

り「その後、ふたりは森に迷って飢え死にしそうになるんですが、そこでロザリンドの父親一行に助けられるんです。運命ですねぇ。で、オーランドーもなかなかイイ奴で、アダムより先に食事にありつけるチャンスがあったのに、まずはアダムに食べさせてからでないと・・・と自分が食事するチャンスを自分ですてるようなまねをするんですね。」

は「いい話ですね。」

り「もう、アダムとオーランドーの関係にはほのぼのとした温かさがありますよ。」

は「なんでラジオドラマじゃあ ああなんです。」

り「ねぇ(笑)もう、すごい殺伐とした関係ですよね・・・おかしいなぁ」

は「来週から、この「お気に召すまま」のパロディラジオドラマを放送する予定なんですが、このへん、エピソードはちゃんと本筋どおり追ってるはずなのに、印象はかなり違いますよね。」

り「まぁ、私の書く登場人物は私の性格とか、考え方がかなり反映されますからね・・・そんなイイ奴おらんだろ~チッチキチーみたいな発想がこの脚本にでちゃったのかもしれません」

は「それで、あの殺伐とした関係に・・・(笑)」

り「ま、その後、公爵のもとから逃走してきたロザリンドと、これまた逃走してきたオーランドーの二人が森で出会って・・・という話になっていきますが、もう・・・ココからが面白いので後は見てのお楽しみって感じにしたいところですが・・・ま、それでは講座になりませんし、ラジオドラマもありますので、見所だけ今後もお話していこうかと思います。」

               (~2008年6月25日放送分より抜粋)

【過去の上演記録】 2008年1月 超訳「冬物語」

2010年06月28日 | 楠美津香・シェイクスピア
楠美津香ひとりシェイクスピア5度目の士別公演。
クライマックスは今までにない明かりと幕をうまく使った演出で、美津香さんの超訳シリーズ随一の幻想的な場面になっていました。
この作品では羊飼いのでてくる国を士別にしてくれたり、よさこいチームがでてきたりご当地サービスネタで私たちを喜ばせてくれました。

「15分でわかる超訳シェイクスピア講座」では『お正月だよ!3時間生放送SPラジオドラマ「冬相撲語り」』を強行放送。
生ラジオドラマですよ。ライブでラジオドラマ…!いや~なんて大博打(笑)
まぁ、なんとかなるものですな。


以下、「超訳・冬物語」チラシ裏テキストを作品紹介に代えて再録しておきます。




  *  *  *  *  *  *  *  *  *

「楠美津香のひとりシェイクスピア」 それは難解と思われがちなシェイクスピアを講談・コント・芝居・そのほかあらゆる芸を駆使し、格調低くクレイジーに、しかし原作には忠実に演じきるという大胆不敵なひとり芝居である。
 すでに士別では数作品を上演してきているので御存知の方も多いだろうが、多くの登場人物を巧みに演じわけ、芝居と芝居の間に講談調の語り口で当時の時代背景や価値観を解説してくれたり、登場人物たちにツッコミをいれたりと大変楽しめる内容となっている。

 さて、今回の作品はシェイクスピアの作品の中でもロマンス劇に分類される「冬物語」。
己の猜疑心から多くの悲劇を生み、愛するものを失くしたシシリア王が16年にも及ぶ悔恨の歳月を経て最終的に赦される物語である。そこまでに至る奇跡的な人間ドラマは運命のいたずらか、はたまた神の意思による予定調和か。随所にシェイクスピアというよりもギリシア神話のような印象を受ける設定が見られるが、兎にも角にも関係者が再会して、その奇跡にただただ驚愕し、和解、そして誰もが幸福になるというハッピーエンドはまさにロマンス劇と呼ぶにふさわしい内容である。

 前回の楠さんの「超訳オセロー」では、これまでの超訳シリーズの「原作に忠実」というスタンスから一歩踏み出し、ラストに楠さんオリジナルのイアーゴーのワンシーンをおまけしていた。その内容は罪を逃れるためひたすら狡猾な言い訳を並べて生き延びようとするイアーゴーの独白であった。そう、イアーゴーの罪を知る証人はすべて死んでしまった。イアーゴーは言う、自分で死ぬ奴はバカだ!死人に口なし、おれは自分に都合のいい嘘を並べ立て、きっと罪を逃れて幸せに生きてやると。生きていてこそなんぼだと。
 楠さんの演じるイアーゴーは圧倒的なまでの悪人である。しかしその生命力には人をひきつける力強さがある。
そういえば楠さんは「ロミオとジュリエット」でもラストに自殺を図る二人に対し、死ぬなばか!と派手なツッコミを入れていた。
 生きることを簡単に諦めない、諦めてはならない、楠美津香の舞台にはそんな「生きる」ことに対する強いメッセージが根底に秘められている気がしてならない。
 「冬物語」でも前半でこの上ない悲劇に見舞われた登場人物には生きる希望をなくしてしまう者もいる。
しかし絶望の中でも生きてこそ、幸福の瞬間を迎えられるのだと、この芝居を見て感じてもらいたい。