働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

パワハラ・セクハラなどハラスメント対策の議論内容

2018年10月17日 | パワハラ防止
本日(2018年10年17日)労働政策審議会の第8回雇用環境・均等分科会が開催されますが、9月25日に開催された第6回雇用環境・均等分科会に引き続きパワハラ・セクハラなどハラスメント対策が議論されます。

第8回雇用環境・均等分科会の準備資料によれば、第6回雇用環境・均等分科会では次のような意見が労働者代表委員・使用者代表委員・公益委員から出されて、パワハラ、セクハラ、またカスタマーハラスメントなどのハラスメン対策等について議論されています。

追記:2018年10月17日に中央労働委員会講堂で開催された厚生労働省・労働政策審議会の第8回雇用環境・均等分科会を傍聴しました。

第8回分科会でも第6回分科会同様、使用者委員は法規制よりも検討会報告(パワハラ概念3要件)に基づくパワハラ防止ガイドライン(法令に根拠のない指針)に固執し、労働者委員もまたILO総会に基づくハラスメント禁止法かで激しく対立しました。

使用者委員は同じ事を繰り返しただけですが、労働者委員は様々な観点から懸命に説明し、最後に労働者委員は今(ハラスメント禁止法に)取り組まなければ、「将来に禍根を残す」と強く訴えました。

第8回分科会には労働者委員5名、使用者委員5名(内1名代理)が出席しましたが、学識者の公益委員は奥宮会長と川田委員2名が出席し、他の公益委員は欠席しました。奥宮会長は議事進行に徹して意見を述べなかったので、意見を公益委員は川田委員1名になっていました。

労使の意見が対立した場合には公益委員(学識者)の意見が尊重されることになると思いますが、学識者の川田公益委員は、EU諸国などはパワーハラスメント(和製英語)より広い定義のモラルハラスメント禁止法であること、また(ハラスメント禁止規定が)法制化されると民法の不法行為の特別法となり、民事の賠償請求や行政の指導の根拠規定となるだろうと、労働者委員の主張を後押しするものとなりました。(2018年10月19日に追記)

第6回 労働政策審議会 雇用環境・均等分科会で出た主な意見(第8回 資料1)

1 パワーハラスメント防止対策について
(1)パワーハラスメントの定義について
定義を修正してあらゆるハラスメントを対象に含むようにすべき。
・「パワー」や「優位性」という単語があると、上司や先輩等からに限られると受け止められるおそれがある。
・2012年の円卓会議のパワーハラスメントの定義は「同じ職場で働く者に対して」となっているが、同じ職場で働く者に限定すべきでない。
典型例として示されている6類型について、セクシュアルハラスメントやモラルハラスメント、経済的なハラスメント等も加えてハラスメント全般をカバーできるようにすべき。
・「優位性」は不要という意見があったが、知識や経験などで優位な人からのハラスメントも含めていて、部下等も含まれる。こうした検討会の議論を踏まえた議論をすべき。
・「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」はあくまで専門家の検討会であり、労政審で改めて議論すべき。
・「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書のパ ワーハラスメントの定義は、労使も参加した検討会で決まったものであるため、検討会のものを踏襲すべき。
・パワーハラスメントの定義は検討会の定義で問題ない。問題は「業務の適正な範囲」をどう解釈して具体的な例を示していけるか。より踏み込んだ形で定義すべき。「平均的な労働者の感じ方」はどんなものかも議論すべき。検討会では、「被害者が加害者であった」という事例の紹介もあり、そうした議論もすべき。
今まで議論してきた内容を少し修正すれば、ハラスメント全般を含めることができる。それは今までの議論の内容もふまえたものと考えている。
検討会のパワーハラスメントの定義はそれなりに納得できるものだと思う。ただ、性差別、人種差別、などの差別が含まれるケースについて、どこまでをハラスメントとして考えるか難しい。ILO条約案でもジェンダーに基づくハラスメントは特出しされている。

(2)パワーハラスメントの防止対策について
来年、ILO条約が採択されるかもしれないことを考えると、ハラスメントを一体的に防ぐ一般法があれば、条約に批准できるのではないか。
・セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントがそれぞれの法律で規定されていることに意味がある。ハラスメントを一緒にまとめると、その意味を弱めてしまうのではないか。
・ガイドラインすらない現時点では、まずはガイドラインの策定と周知啓発が必要。パワーハラスメントは、指導との線引きが難しく、また、世代間・業種間で受け止め方が大きく違うことに留意すべき。
・ILO条約は来年もう一度議論される。また、現時点案は労働分野を超えた議論。この場では労働分野の範囲内で議論すべき。
ILOの議論は労働分野の議論と認識。労働政策審議会で議論すべき。
・ILOの動きも承知しているが、公労使が参加して10回にわたり検討会で議論してきた検討会の結論には重みがある。中小企業はマンパワー・ノウハウ・人材に乏しいという現状を踏まえて、パワーハラスメン ト対策を、実効性をもって進めるという観点も必要。
ILOの条約案や国際人権規約、女性差別撤廃条約の勧告を踏まえて、職場のハラスメント全般に関する禁止規定が必要。職場の定義に使用 者が提供する宿舎を含めるべき。
・ハラスメント行為の禁止と措置義務が必要。被害者、行為者が第三者の場合も含めるべき。通報制度や二次被害の防止等も実施すべき。企業内のハラスメント防止対策は、労働者が参加した場で議論すべきであり、安全衛生委員会等の活用を検討すべき。
・ 具体的な対策の内容は、指導との線引きをどうするかなどパワーハラスメントの定義によって異なるので、まずは定義を議論すべき。
・ 行為の禁止を明記する場合、労働者がその禁止に違反した場合に具体的にどうすることを想定しているのか。
・行為の違法性が明確になり、損害賠償請求の根拠となるものが必要。
・概算要求中の労働局相談強化、フリーダイヤルについて、二次被害防止のための研修等実施なども行うべき。また、それとは別に、行政から独立した専門の救済機関の設置を検討してはどうか。
・受け手によってパワーハラスメントかどうかが異なる。他のハラスメントは、暴力は刑法でなど、他の法律で対処できるので、切り分けて議論すべき。まずはガイドラインを制定し広く周知することが現実的。
・労働局の相談件数は、企業からの相談、労働者からの相談をわけて計算すべき。

(3)顧客等からの迷惑行為について
セクシュアルハラスメントと同様、ハラスメントについても、顧客や取引先から受けるものも含めるべき。ILO条約案は、加害者と被害者に顧客や取引先も含んでいる。
・カスタマーハラスメントについては、検討会において、労働法制で対処することは難しいという話もあった。それも踏まえて検討すべき。
・悪質クレームについて、介護労働者の7割がハラスメントを受けているなどデータがある。業種、業態の差について実態把握すべき。

2 セクシュアルハラスメント防止対策について
(1)行為の禁止について
被害者が労働局に相談しても、企業が措置義務を問われるのみで、セクシュアルハラスメントかどうか判定されない。民法の規定で判断することはハードルが高い。セクシュアルハラスメントを明確に禁止すべき。
行政指導を徹底するためにはセクシュアルハラスメントの禁止規定が必要。現状は、企業が措置義務をしていればそれ以上の指導ができない。
ILO条約の批准に向けて、セクシュアルハラスメントも行為者や被害者に第三者を含めるべき。また、職場の定義に寄宿舎も含めるべき。
・第三者を含めると企業でできることは限られる。規制を厳格にするなら、範囲を明確にすることが必要。範囲や対象を絞って議論すべき。
範囲や定義を狭めるのではなく、広い定義の中で厳格化すべき。

(2)被害者の救済について
職場の窓口に相談しても対応されないことが多いのではないか。被害者が更なる被害を受けることにないようにすべき。
・企業の相談窓口で不十分な場合は労働局が対応すべき。
・措置義務に第三者向けの通報窓口の設置を追加すべき。企業が相談窓口の設置や方針の明確化等を行っているかどうか、労働者がチェックできる場が必要。
・相談窓口における二次被害防止に関してはノウハウが不足していることから、ガイドライン等の作成も検討すべき。
ハラスメント被害者の休業、復職の権利を確保すべき。
・人事院規則の中では、SOJIやジェンダーもセクハラに含まれていることから、男女雇用機会均等法でも含めるべき。(厚生労働省ホームページ)

*労働者代表委員は2018年6月に開催されたILO総会採択に基づいてハラスメント全般禁止法を提言。ハラスメント全般禁止法の内容について労働者委員は文書を用意してないので傍聴していても不明確でしたが、6月8日に配信した日経のILO総会に関する記事から推測すると、労働者代表委員が提唱するハラスメント全般禁止法の内容は次のようになります。

暴力やハラスメントを精神的、性的、経済的危害を引き起こす許容しがたい一連の行為などと定義、被害対象者にはボランティアやインターン実習生も含み、加害者は雇用主や同僚だけでなく取引先や顧客も対象で、職場や通勤時間中、メールやチャットでの会話など幅広い場面で適応するハラスメント禁止法(日経の記事を一部修正および加筆)

*「検討会」とは「職場におけるパワーハラスメント防止対策に関する検討会」のことになり、2018年3月に報告書を公表しています。


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