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(参考)
進歩党 憲法改正要綱 (二月十四日発表)
一、統治権行使の原則
一、天皇は臣民の輔翼に依り憲法の条規に従ひ統治権を行ふ 立法は帝国議会の協賛に由り、行政は内閣の輔弼を要し、司法は裁判所に之を託す 二、委任立法並に独立命令は之を廃止す 三、緊急勅令の制定は議会常置委員会の議を経るを要す 四、宣戦、媾和、同盟条約、立法事項又は重大事項を含む条約の締結は帝国議会の議を経るを要す 五、統帥大権、編成大権及非常大権に関する条項は之を削除す 六、戒厳の宣告は帝国議会の議を経るを要す 七、内閣、各省其の他重要なる官制は法律に拠る 八、教育の制度に関する重要なる事項は法律に拠る 九、栄典大権中爵位の授与は之を廃止す
二、臣民の権利義務
十、日本臣民不法に逮捕、監禁せられたりとするときは裁判所に対し呼出を求め弁明を聴取せられんことを請願することを得 十一、日本臣民は自己を犯罪人たらしむべき告白を強要せらるることなし 十二、住所の不可侵、信書の秘密、信教、言論、著作、印行、集会、結社の自由の制限の法律は公安保持の為め必要なる場合に限り之を制定することを得
三、帝国議会
十三、貴族院を廃止し参議院を置く 参議院は参議院法の定むる所に依り学識経験者及選挙に依る議員を以て之を組織す 十四、予算案及財政法案は衆議院に於て之を先議す 参議院は衆議院に於て削減せる予算案の復活を決議することを得ず 十五、衆議院に於て引続き二回通過したる法案は参議院の同意なくして成立したるものと看做さる 十六、衆議院は内閣及各国務大臣に対し不信任又は弾劾を決議することを得 十七、帝国議会の会期を五箇月とす 衆議院は会期の延長並に臨時議会の召集を求むることを得 十八、議会常置委員会を設く 常置委員会は議会閉会中緊急勅令の制定、臨時議会召集の請求緊急財政処分、予備金の支出、暫定予算、其の他緊急実施を要する重要事項を議決す此等の議決は次の帝国議会の承認を要す常置委員は衆議院議員任期満了及衆議院解散の場合に於ても新議会成立迄其の資格を存続す
四、国務大臣
十九、天皇内閣総理大臣を親任せんとするときは両院議長に諮問す 各国務大臣の親任は内閣総理大臣の奏薦に依る 内閣総理大臣及国務大臣を以て内閣を組織す 二十、内閣総理大臣及国務大臣は帝国議会に対し其の責に任ず 二十一、枢密院は之を廃止す
五、司法
二十二、大審院を最高裁判所とす大審院は法律又は命令が違憲又は違法なりやを審査するの権を有す 二十三、行政裁判所を廃止しその権限を裁判所の管轄に属せしむ
六、会計
二十四、総予算不成立の場合には前年度予算の月額範囲内に於て三箇月限り暫定予算を作成す、暫定予算は常置委員会の承認を要す 政府は三箇月の期間内に新予算の成立し得るやう帝国議会を召集することを要す 七、補則 二十五、各議院は各其の現在議員の三分の二以上の同意を以て憲法改正案を発議することを得 |
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資料と解説・第2章 近衛、政府の調査と民間案
2-12 各政党の憲法改正諸案
敗戦後、それまで非合法化されていた日本共産党が再建され、また、共産党を除く戦前の無産政党関係者により日本社会党が結成された。他方、保守政党では、非翼賛系議員を中心とした日本自由党と旧大日本政治会の多数を結集した日本進歩党が相次いで結成された。これら左右の各政党は、組織が整うにつれて、順次、独自の憲法改正草案を発表していった。
共産党の「新憲法の骨子」は、1945(昭和20)年11月8日の全国協議会で決議されたものである。なお、当日決議されたものは、掲出資料より1項目多く全7項目となっていた。翌年の6月29日に、条文化された憲法草案が発表されたが、その特徴は、天皇制を廃止して共和制を採用していること、自由権・生活権等が社会主義の原則に基づいて保障されていることである。
自由党は、同党の憲法改正特別調査会の浅井清慶大教授と金森徳次郎が中心となり、「憲法改正要綱」を作成し、1946(昭和21)年1月21日の総会で決定した。また進歩党は、2月14日の総務会で「憲法改正要綱」を決定した。両党の案は、天皇大権の廃止、制限や人権の拡張に関する条項があるものの、共和制を否定して、天皇の位置付けを統治権の「総攬者」もしくは統治権を「行ふ」ものとしており、総じて明治憲法の枠組みを堅持した保守的なものであった。
一方社会党は、民間の憲法研究会案の作成にも加わった高野岩三郎、森戸辰男等が起草委員となり、党内左右両派の妥協の産物という色合いが強い「憲法改正要綱」を、2月23日に発表した(掲出資料の表記は2月24日発表)。同要綱は、「主権は国家」にあるとし、統治権を分割、その大半を議会に、一部を天皇に帰属させることで、天皇制を存続するとともに、議会の権限を増大し、国民の生存権の保障や死刑制度の廃止等を打ち出した点に特色がある。
なお、共産党案以外の3点の掲出資料は、いずれも憲法問題調査委員会において配布された参考資料の一部である。
資料名 |
日本共産党の新憲法の骨子 |
年月日 |
昭和20年11月11日 |
資料番号 |
佐藤達夫文書 26(「政党その他の団体の憲法改正案」の内) |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
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注記 |
当該資料は、当時の憲法問題調査委員会において配布された資料ではなく、後年に憲法制定関連の資料の一つとして作成されたものと思われる。11月8日の全国協議会で決議されたものには、第4項として「民主議会の議員は人民に責任を負ふ、選挙者に対して報告をなさず、その他不誠実不正の行為があった者は即時辞めさせる」とある。以下第5項から第7項の部分は、本資料中の第4項から第6項に該当する。(1945年11月12日付『朝日新聞』) |
資料名 |
自由黨 憲法改正要綱 |
年月日 |
昭和21年1月21日 |
資料番号 |
入江俊郎文書 9(「憲法問題調査委員会関係」の内) |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
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注記 |
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資料名 |
進歩黨 憲法改正要綱 |
年月日 |
昭和21年2月14日 |
資料番号 |
入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内) |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
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注記 |
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資料名 |
社会黨 憲法改正要綱 |
年月日 |
昭和21年2月24日発表 |
資料番号 |
入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内) |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
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注記 |
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資料名 |
日本共産黨の日本人民共和國憲法(草案) |
年月日 |
1946年6月29日発表 |
資料番号 |
憲法調査会資料(西沢哲四郎旧蔵)42(「憲資・総第10号 帝国憲法改正諸案及び関係文書(二)-政党その他の憲法改正案」の内) |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
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注記 |
当該資料は、憲法調査会の資料として昭和32年に翻刻刊行されたもの。6月29日発表当時のものには、当該の表題は付されておらず、「日本共産党憲法草案」となっている。(1946年7月15日付『アカハタ』) |
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