ROLFING(ロルフィング) ~ 身体とつながるために

公式認定ロルファー田畑浩良が,Rolfing(ロルフィング)プラクティスを中心に紹介します。

Rolfingは痛くないと効かないの?

2005年02月01日 | ロルフィングについての質問
 確かに古典的なRolfing (R)はかなり痛みを伴うものが主流だったようです。アドバンストロルフィングインストラクターのJan Saltunは,かつてのアプローチをダブルダイレクトと表現しています。組織の反応性を考慮することなく,変化を強要するこの種のアプローチは,柔軟結合組織に部分的なよじれや歪みをかえって生じさせ,過剰なストレスを生むことになります。ロルファーによってもハードタッチなスタイルの人もいるし,受け手の身体の状態によっても異なります。しかし,少なくとも現在のRolf Instituteのカリキュラムでは,受け手の組織や神経系の反応性を重視していますので,痛みを強要することはありません。したがって,プラクティショナーが,トレーニングの内容を正しく理解し,実践している限り,受け手であるあなたのフィードバック(強すぎる,とか,痛い等の)は,尊重されるはずです。ですから,圧力が強すぎたり,セッション中に痛みや不快を感じた場合は,躊躇せず,必ずロルファーに知らせて下さい。圧力や速度を調節しますし,我慢は禁物です。そうした,上下関係ではなく,対等な関係こそが,受け手にとってのセルフケアの第一歩ですし,ロルフィングのプロセスにとって重要なのです。本当に感じていることをフィードバックしてくれるからこそ,ロルファーも受け手を信頼し,思い切ったワークが可能になるのです。私は場所と必要に応じて,痛いとまではいかないが,ぎりぎりの線でワークすることもあります。その場合受け手の状態をモニターしながら進めますが,やはりフィードバックすべきときには,してほしいのです。

では,痛くないからといって,効果がその分減ってしまうことはないのか?もちろん十分な圧力はときに必要ですが,むしろ,私の経験では,痛みが強いと,身体が抵抗するモードに切り替わって,さまざまな場所に緊張度を上げてしまう等弊害も多く,痛みを伴なわない方が効率的に変化を引き出せるようです。抵抗を大きく感じる箇所に執着するより,別の受け入れ可能な箇所からアプローチすると,それが望ましい準備になることも多々あります。まず,組織の反応性に逆らわなければ,強烈な痛みが起きることは,めったにありません(関節炎など特別な疾患をかかえている場合など例外はあります)。制限の程度により,深く圧力を加える必要がある場合もありますが,クライアントの方とコミュニケートしながら,慎重に進めます。実際にIntention(起こしうる変化とその場所を明確に捉える)さえしっかりしていれば,Gentleなタッチで変化が確実に起きるという事実は,ロルフィング前後の写真が示す通りです。ただし,セッション後に起る身体変化に続く様々な変化は,とてもDrasticなため,それを受け入れる準備と適応する余力のエネルギーが必要です。ですから,セッション中の痛みで消耗し,感覚を麻痺させるのは無意味です。信じがたいことに,身体に痛みをわざわざ想起させ,心理的ものと結びつけるたぐいのワークショップもあるそうですが,それは,身体の精妙なシステムを考慮しない,サディスティックな行為にしか思えません。


受け手によっては,かなりの物理的な圧力を加えて,痛みが少し伴うくらいでないと物足りないという方もいます。私(田畑)はそういう要望には答える気もありませんし,痛すぎるワークは統合する本質とはなんの関係もないものどころか,むしろマイナスに働く危険性もあります。ただし,セッション直後,変化したバランスをとるために,一過的に痛みを感じることがあります。永年持っていた偏頭痛などの痛みが一過的に蘇ることもまれにあるようです。

痛みは,変化にとって必須ではないというのが私のスタンスです。

ロルフィングに痛みはつきものといった偏見が,ロルフィングに興味をもった人が,受ける機会を逃してしまったとしたら,それは残念なことです。その情報が,”使える生きたもの”で,信頼性があるかどうか?を見極めることも大切です。

Massage Magazineには以下のようなコメントが載っています。

 Today the Rolfing method is practiced more effectively with a broad range of gentle touch qualities and pressures that span a spectrum from feather-light to very deep. When performed with the right sensitivity, even deep and heavy pressure need not painful.                  (Russell Stolzoff, Massage Magazine, Nov/Dec, pp 34, 1997

また,以下The Rolf Instituteの公式ページからの引用です。

Q; DOES ROLFING HURT?

A; When most people think of Rolfing, one of the first words that come to their mind is pain. Often, this perception is based on anecdotal accounts of sessions performed during Rolfing's infancy, when it tended to be often a less subtle and more intense discipline, frequently linked to popular emotionally intense types of therapies in the late 1960's and early 70's. Part of this reputation can be attributed to an often-quoted complaint of Dr. Rolf during her training classes that her students failed to work deep enough. Apparently, many assumed that what she meant was that they needed to work harder and deeper. However, we now realize that deep work is not necessarily synonymous with physical intensity.
(以下文章が続きますが,http://www.rolf.org/about/faq/q6.htmを参照ください)



2005年現在,日本で活躍する公式認定ロルファーも30名となりました。ロルフィングは”深部マッサージ”という適切でない表現もなされていました。現在多くの公式認定ロルファーによる情報が発信される機会も増え,Rolfingという”巨大な象”を多面的に捉える機会が増えているのは喜ばしいことです。