ROLFING(ロルフィング) ~ 身体とつながるために

公式認定ロルファー田畑浩良が,Rolfing(ロルフィング)プラクティスを中心に紹介します。

Rolfingへの偏見と問題

2005年01月24日 | ロルフィング
かつてよく言われたことですが,Rolfingは,痛い,という評判がありました。しかし,それは過去のこととなりつつあります。なぜなら,痛みは,身体の統合には,必ずしも必要なものではないことがわかってきたからです。The Rolf Instituteのカリキュラムは,よりMovement的アプローチの導入そして,受け手の組織の反応性を重視する内容となってきています。実際に,痛みを伴わないワークによっても,身体は構造的統合を達成し,しかもその効果は持続性があることがわかっています。セッション自体が,安全に行われるように,マッサージテーブル上の無防備なクライアントに対して与える言動にも注意を払うように指導されます。心理的に介入したり,それを扱うのは,セラピーとなったり医療化してしまうことになり,クライアントに対するスピリチュアル アビューズ(霊的或いは精神的虐待)となる危険性が極めて高いからです。セッションが成功するには,クライアントが安全だと感じる空間を提供することと,いつでも与えている圧力やタッチが適切でない場合,それをフィードバックできる環境があるかどうかが,とても重要です。それは,ラポール(信頼関係)を築く,基盤ともなります。The Rolf Insittuteのカリキュラムは,これまでのさまざまな蓄積を生かし,それが生徒へ還元されています。ですから,生徒が正しくその内容を理解しているならば,Rolfingは,安全に不必要な痛みを伴わずに,受け手の身体を統合へと導くことが可能なのです。スクリーミングが聞こえるような,invasiveでpainfulなワークは,もはや過去のものです。
 ただ,ロルファーによって,Touchがハードな場合,身体の場所によって過敏に痛みを感じる場合もあります。そのような場合でも,ラポールが築かれた上で,身体が過度に痛みによって新たな緊張を生み出すような危険がないのであれば,それはそれでOKだと考えられます。
それ以外の場合,痛みは,プラクティショナーが組織の反応性を尊重しない,或いは感じ取れない”未熟な技術”から生まれます。
ですから,Rolfingが痛いものであるというのは,偏見です。そして,その偏見を生むようなワークが過去なされたことも事実です。ロルファーは,認定後も各種継続教育や,Basic 10の経験を積むことでTouchのクオリティを含むスキルを向上させていくことが可能です。

The Rolf Institute以外にもすぐれたトレーニングを提供している団体は存在しています。一方,短期の痛い?ロルフィング??の講習を受け,ロルファーでない”治療家”と称する一人の人物が,ロルフィングと心理療法というような内容のワークショップを開いていたこともあります。一度抗議したことがありますが,まず,その人のHP内で,”アイダロルフは小児科医だった”という記述(勿論なんの根拠もない嘘)を訂正しないことに加え,脅しめいた手紙を送ってきたことがあります。全くひどい例です。そのワークショップに出てしまった方々に返金すべきだと思います。
また,過去にRolfingを受けましたというクライアントがいらっしゃることがありますが,その中には,そのワークがRolfer以外からなされた,というケースも少なくはない。クライアントがそう認識しているということは,明らかにRolfingの商標権の侵害にあたるものです。Rolfer以外にもしっかりトレーニングや経験を積んで,それぞれの各種Structural Integrationをしている方がほとんどだと思います。
ただ,恐らくこれは,特定の一人のワーカーに当てはまるのですが,Rolfing(R)は,各種あるStructural Integrationsの一つなのに,まず,"Structural Integration"を自分の団体だけのものだと勘違いしているふしがあり,さらにどうしてもRolfing(R)とStructural Integrationを同じものとしたくてしょうがない方がいます。でも,米国で1979年に登録商標となったことは,とうにご存じだったはずだし,遅かれ早かれ日本でもそうなることは予想できたはずです。ワークにもご自分で自信があったし,正直実際いいワークもされていることは想像できるのですが,たぶん,ずっと自分のワークをRolfingと同じだという説明をそれまで多くの人たちにしてしまったことが,私はまずかった点だと思うんですよ。それをごまかすために策略するのは無駄な努力だと思います。これはその人たちだけの問題ではなく,過去ロルフィングの研修を開いたロルファーが,商標権への使用同意書の提出とそれに関わるメンバーシップの会費を毎年払っているにも関わらず,Rolfingという言葉の使用についてきちんとした説明のないまま,何の知識もない人たちに対して講習してしまったことにも原因があります。

アドバンスト ロルフィングは,Basic10シリーズとどう違いますか?

2004年12月01日 | ロルフィング
基本的には,最初にロルフィングを受ける場合は,基本10シリーズを受けることをお薦めします。その後にさらに深いレベルに働きかけ,さらなる統合状態を追究するのが,アドバンストシリーズです。基本10シリーズ後に再調整するPost 10セッションの意味とは考え方が異なります。これを行うアドバンスト ロルファーは,ロルフィングを最低3年実践し,継続教育の単位(CE credit)を取得できるワークショップに参加し,必要単位数を満たした上で,アドバンストトレーニングに参加,修了したロルファーのことです。それまでの10シリーズの積み重ねから,その時受け手の身体がどんな変化を求めているかを把握し,制限部位特異的に働きかけることもしていきます(制限部位特異的なアプローチはBasic 10の場合はほとんど用いられません)。アドバンストロルファーの多くは,基本10シリーズの流れに沿ってロルフィングすることもしますが,むしろ受け手に応じて,オーダーメイドな組み立てをしていきます。
基本10シリーズは,それ自体完成された系ですので,これを受けることには大きな意味があります。焦って効率性を求めるあまり,少ない回数でアドバンスシリーズでまとめるより,丁寧に基本10シリーズを受け,そのプロセスの中で身体の変化を見守るのも長い人生の中で1度くらいあってもいいような気がします。ただ,優れたロルファーから受けるアドバンストセッションは,時に大きな変容を伴う印象深いセッションもあります。特にアドバンストセッションは,ロルファー側のスキルが大きく影響するのは確かです。スキルのあまいアドバンストセッションよりも,丁寧にワークしてくれる公認ロルファーからの基本10シリーズの方が間違いなくすばらしい体験になるでしょう。

RolfingとStructural Integrationの関係は? (その1)

2004年11月28日 | ロルフィング
Structural Integrationというのは,アイダロルフ博士の考えを基盤に考えられた身体の構造に焦点を当てたワークの一般総称です。その中にもいくつかの種類が存在します。
ロルフ博士が,自分の確立した技法に対して最初に付けた名称が,Structural Integrationですが,現在では,The Rolf Institute of Structural Integrationとは無関係に独自にロルファーがStructural Integrationを教え初め,それぞれの団体が,独自の名称をつけて教えています。例として,Heller workやKinesis Myofascial Integration などがあります。Rolfingとは,米国Rolf Instituteが公式認定したRolfing practitionerが行う,Structural Integrationのことで,正式名称はRolfing Structural Integrationです。Rolfingは,登録商標化され,他の団体のpractitionerが行うワークと差別化され,法的にも保護されています。つまり,Rolfingという名称を使うことが許されているのはロルファーだけということになります。
 問題となるのは,公式認定ロルファーが築いてきたRolfingに対する信用度を利用して,紛らわしい宣伝をする行為,つまり商標権の侵害です。これは,明らかに違法行為ですし,正規のRolfingをこれから多くの時間とお金をかけて習得しようとするロルファー候補生や,新しいロルファーがクライアントを立ち上げる支障や雑音になる可能性も高く,厳しく監視されるべき問題です。本部であるThe Rolf Instituteでは,膨大な時間とエネルギーを割いて,商標権の保護に努めています。例えば,ロルファー以外のプラクティショナーのサイトのメタタグに,Rolfingという言葉が入力されていれば,訂正を求める勧告を逐一出し,従わない場合は,訴訟手段に訴えることが行われてきました。ここ日本においても,公式認定ロルファー以外のプラクティショナーからワークを受けた方が,自分はRolfingを受けたことがあると名言するケースを非常に多く耳にします。それは,明らかにそのプラクティショナーが,商標権を侵害して,正しい説明や宣伝をしていない証拠です。これは,プラクティショナーの品性や倫理が問われる問題です。ロルファーとしての生き方がいわばそのワークそのものに反映します。紛らわしい説明をするような人間に対して,受け手は身体を預け,信頼できるでしょうか?自分のワークに対する誇りと人間としての品性があれば,出身校のワーク名をそのまま名乗り,そのワークの名称と自分の名前だけを看板に仕事をするはずではないでしょうか?幸い,日本にも公式認定ロルファーによって構成されるロルフィング協会が設立されました。協会の業務の一つに,Rolfing(呼称=ロルフィング)の商標権の管理があります。これにより,必要に応じて,適切な表現がなされていない場合に対する勧告や訴訟を協会が担うこととなります。適切な監視がなされることは,今後の日本でのRolfingの発展に大きなプラスになると期待しています。

あなたが,日本でRolfing(ロルフィング)を受けたいのであれば,以下のRolf Instituteの公式サイトのリストに載っているロルファーにコンタクトしてみてください。

Rolfing practitioner(ロルファー)のリスト(日本)
PS. 上記の記述は,Rolfing以外のStructural Integrationを否定しているわけではありません。簡単にいうと,他人のフンドシを利用する姿勢にもかかわらず,意味不明の大義名分を振りかざして,開き直る行為自体が情けないと思うし,後々後悔することになるからです。

Rolfing(ロルフィング)の可能性 - 健康的な側面から

2004年11月24日 | ロルフィング
Rolfing(ロルフィング)を終了した後,通常呼吸や歩行などの日常の基本動作が,より楽に無理な力を必要とせずに行うことが可能になります。呼吸がより深くゆっくりとした周期になることによって,自律神経系へ作用することが予想されます。当たり前のことですが,呼吸は,吸うときに胸郭が3次元的に膨らみ,吐くときには無理なくしぼむことが効率的にガス交換することにつながります。ガス交換が効率的になることで,身体全体の代謝も促進されるでしょう。
引っかかりなく呼吸がスムーズになると当然エネルギーの節約にもつながりますし,胸郭の動きがより活発になることで,消化器系の内臓へのマッサージ効果も期待できます。実際に,基本シリーズの4~5セッションの後には,お通じがよくなったといわれる方が多くいらっしゃいます。
また,過緊張の傾向のある筋肉は,よりリラックスした状態への変化し,全体の筋緊張はよりバランスされ,慢性的な緊張からの解放もよく報告されています。さらに,重力により圧縮傾向のある脊柱は,圧縮が解かれ,上下方向へ解放され,適度なカーブが引き出されます。このことは,脊柱内の深部膜組織とその中を流れる脳脊髄液の体液循環にも,良好な影響を与えると考えられます。この脳脊髄液の非常にゆっくりした循環は,原初的な呼吸とも言われ,オステオパシーでも重要視され,このシステムの改善は,健康の極めて根底に関わる流れなのです。
こうした,一連の機能の改善への可能性を内包するロルフィングは,多くの可能性を秘めていると考えられます。

Rolfingのすばらしさ

2004年11月21日 | ロルフィング
Rolfing(ロルフィング)はする側にとって魅力ある仕事であるとともに,受け手にとっても興味深いプロセスです。
そのすばらしい点をいくつかあげたいと思います。
(1)受け手とロルファーとの対等な関係性
旧来の先生が患者に一方的に施す上下関係ではなく,常に双方が協力的に創り上げるシステムです。本拠地であるボルダーでまず驚いたのは,アイダロルフの側近だった大御所のインストラクターでさえ,みんなが崇めるわけでもなく,First nameをそのまま呼んでいることです。トレーニングのクラスでは,受け手であるクライアントが躊躇なく,ワークする側にフィードバックできるような安全な環境を作ることの重要性が説かれます。まず,日本の一般の治療体系の下では,施術中に多少痛かったとしても,それをがまんしたり,不満ととられるのが怖かったり,機嫌を損なわないように受け手側が常に遠慮がちな傾向があるように思います。一方,Rolferと受け手であるRolfEEとの関係は,常に対等で,仮にロルファーのタッチが強すぎて痛みを伴った場合,受け手に対して,まず謝り,圧力等を調整することが求められます。安全で信頼できる環境で初めて人間は,外界に対して開いていけるようになる,ということは自然なことなはずです。

(2)Basic Rolfing(ロルフィング)10シリーズの完成されたシステム
アイダロルフ博士の開発したBasic10シリーズ(10レシピ)は,非常に完成されたシステムです。AdvancedインストラクターのJan Sultanがいっているように,Basic10を何度も行うことによって,ロルファーはセッションを通じて理解を深め,ワークの質を向上させることができるSelf Study のシステムでもあります。つながりとは?統合するとは?それらを経験を通して学んでいくのです。同時に受け手の統合への変化を目の当たりにして,半信半疑なところから,筋膜をはじめとする結合組織が現実に構造を決めていることを体感するのです。また,その変化のためには無理矢理強く押すような必要が全く必要なく,的を得た場所に対する繊細なアプローチがどれほど深い体験と実質的な変化にもたらすかに気がついていきます。

(3)完成されたシステムにも関わらず,ロルファーが多様でユニークなスタイルを構築できる
ロルファーのスタイルは,多様です。人が異なると全く印象が異なるほどです。考えてみると,ワークするということは,人格がそのまま反映します。Rolfing(ロルフィング)は,決まったことを全部の人に行うようなルーチンなものではありません。部位ごとに傾向を把握し,それに応じたアプローチを考えていきます。さらに,どこから始めるか?どのようにはたらきかけるか?どんな圧力で?どんな方向で?どのような順番で?などなど,進め方は個人に任されています。受け手の自発的な変化が起こるのをただ見守ることもあります。する側がせっかちだったり,何かいいと信じることを押しつけようとするタイプだったりすると,それがそのままワークに反映して,受け手は何か尊重されていない感覚になるかもしれません。或いは,ロルファーに手助けしたいという熱意がなければ,手を抜いた形で結果がでないかもしれません。結局は,ワークにはその人そのものがでてしまうのです。

(4)可能性の広がりと持続性
Rolfing(ロルフィング)には可能性があります。治療ではないものの,原因不明の耳鳴りがなくなったり,肩をもまれても解消しなかった肩こりが腰が変わることで改善したり,むち打ちに由来する慢性的な痛みが軽減したり,とにかくたくさんの事例があります。その効果を過剰に期待するのは,Rolfing(ロルフィング)の主旨に反しますが,いろいろ試してうまくいかなかったとしたら,Rolfing(ロルフィング)をやってみる価値はあるでしょう。結合組織に生じた制限が影響すると考えられるものに対しては有効な手段となります。さらに,それが一過的ではなく,持続するところがRolfing(ロルフィング)のユニークなところです。Let's try !

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Rolfing(ロルフィング)とは?

2004年11月19日 | ロルフィング
 Rolfing(ロルフィング)は、生化学者であるアイダ ロルフ博士(1896~1979)によって確立された身体の再教育法で,そのテクニックとプロセスを指します。アイダは、50年間にわたって、人間がより効率的に機能するためにはどうしたらよいかを研究し,そのためのバランスのとれた身体を創りだす技法を開発しました。彼女は、身体の筋膜組織(Fascia)に手技で働きかけることにより、各パーツが重力に対して,より適した配置に調整されると、肉体的或いは感情的な傷(トラウマ)から解放され、肉体が機能的になるだけでなく、感情的、心理的そして精神的にも調和への変化 ,つまり統合が起きることを見つけました。彼女の卓越した着眼点は,重力との関係性の重要視し,関係性の改善のためには,結合組織とりわけ筋膜が身体の構造(姿やかたち)を決めていることに気がついたことです。なんらかの原因により萎縮してしまった筋膜や靱帯は,適度な張力を回復するように手技により調整することが可能なのです。 

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Rolfing(ロルフィング)の位置づけ

2004年11月19日 | ロルフィング
身体の状態をより快適にしたり,身体を通して,自己を探求しようというときに,いろんなやり方があります。具合が悪ければ,お医者さんのところにいくけど,いくまでもない,或いはいってもどうにもならないとき,いわゆる西洋医学的アプローチとは別のやり方を探すことになります。ホメオパシーや東洋医学的な漢方も役立つやり方です。さらに手技を用いて行うカイロプラクティックを受ける人もいるでしょう。それらは,いずれも治療的なアプローチですが,別の観点から,手技を用いて,身体を教育的に働きかけるやり方があります。それを西洋ではソマティックプラクティスと呼んでいます。単に身体の調子をよくしたいという目的以外に,自己を身体を通じて探求したいとか,身体ともっとつながりたいとか,いろんな意味で自分を統合したとか,受ける人によってその目的は多岐に渡ります。ソマティックプラクティスの中にもいろいろあるのですが,Structural Integrationと呼ばれる手法があります。アイダロルフ博士のアイディアを引用したメソッドで,10を超える団体がそれを教えています。このうち,アイダロルフ博士が,存命中に設立され最期まで教鞭をふるった教育機関が,米国のコロラド州にあるRolf Instituteです。ここで養成されたプラクティショナーは,公式認定ロルファー(Certified Rolfer)と呼ばれ,彼らの行う10シリーズを基本としたプラクティスが,Rolfing(ロルフィング)Structural Integrationなのです。

Rolf Instituteの公式サイト


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