ROLFING(ロルフィング) ~ 身体とつながるために

公式認定ロルファー田畑浩良が,Rolfing(ロルフィング)プラクティスを中心に紹介します。

身体を統合 ( Integration )するとはどういうことですか?

2005年03月07日 | ロルフィングについての質問
Integrationは,統合という意味ですが,調整という意味やカイロプラクティックでは同調させるというニュアンスも含まれるそうです。Rolfingの柱となるのは,Tissue differentiation(組織の個別化)とMovement Education(身体への動きの教育)の二つです。まず,身体のパーツがそれぞれ個別に自由に動くように,柔軟な結合組織に働きかけ,次にそれらが,つながりのあるノーマルな動きを入力していきます。自由度を向上させるために揉みほぐしたとしても,それぞれのパーツの全体においてあるべき位置,つまり重力との関係性を念頭に置いてのワークでなければ,効果は一時的となってしまいます。慢性的な緊張が生じている場所は,そこに問題があるというよりはむしろ他のパーツとの兼ね合いでその状態にならざるを得ないのです。Rolfingでは,単に筋膜をマッサージするわけではなく,身体が重力と闘わない調和された状態になることを妨げている”制限”を開放させていきます。統合には完結するタイミングがありますが,全体を見渡したときに,依然として影響を及ぼしている制限が取り残されていると,セッションのシリーズが完結しても問題が解決しないことになってしまいます。Advanced Rolfingの存在意義がここにあります。
また,Tissue differentiationの程度が,一律に低かったり,ばらつきがあって,自由度もあまり得られていない段階で完結すると,最終的にレベルの低い統合状態になってしまうでしょう。つまり,高度な統合状態のためには,Tissue differentiationが表層から深部にかけ,すみずみにまでいきわたっていていること,それを統合し完結する前に達成する必要があります。統合の前に,総合的に見渡す洞察が求められます。自由度が得られた状態で終えたとしても,身体にはそれ自身に調整する能力がありますから,ある程度は外から介入がなくても自律的に統合されます。しかし,ここでだめ押しで,よりマクロ的な視点から,パーツ同士が全体として機能的に動くためのMovement Educationを積極的にインプットすることで,受け手がよりエネルギーの浪費のない状態と動きを体得することになり,持続的にバランスを維持していくことにもつながっていくのです。
一連の過程を通して,身体がより機能する,”有機的”な存在への移行するのを”統合”といってもいいかもしれません。

Rolfingは痛くないと効かないの?

2005年02月01日 | ロルフィングについての質問
 確かに古典的なRolfing (R)はかなり痛みを伴うものが主流だったようです。アドバンストロルフィングインストラクターのJan Saltunは,かつてのアプローチをダブルダイレクトと表現しています。組織の反応性を考慮することなく,変化を強要するこの種のアプローチは,柔軟結合組織に部分的なよじれや歪みをかえって生じさせ,過剰なストレスを生むことになります。ロルファーによってもハードタッチなスタイルの人もいるし,受け手の身体の状態によっても異なります。しかし,少なくとも現在のRolf Instituteのカリキュラムでは,受け手の組織や神経系の反応性を重視していますので,痛みを強要することはありません。したがって,プラクティショナーが,トレーニングの内容を正しく理解し,実践している限り,受け手であるあなたのフィードバック(強すぎる,とか,痛い等の)は,尊重されるはずです。ですから,圧力が強すぎたり,セッション中に痛みや不快を感じた場合は,躊躇せず,必ずロルファーに知らせて下さい。圧力や速度を調節しますし,我慢は禁物です。そうした,上下関係ではなく,対等な関係こそが,受け手にとってのセルフケアの第一歩ですし,ロルフィングのプロセスにとって重要なのです。本当に感じていることをフィードバックしてくれるからこそ,ロルファーも受け手を信頼し,思い切ったワークが可能になるのです。私は場所と必要に応じて,痛いとまではいかないが,ぎりぎりの線でワークすることもあります。その場合受け手の状態をモニターしながら進めますが,やはりフィードバックすべきときには,してほしいのです。

では,痛くないからといって,効果がその分減ってしまうことはないのか?もちろん十分な圧力はときに必要ですが,むしろ,私の経験では,痛みが強いと,身体が抵抗するモードに切り替わって,さまざまな場所に緊張度を上げてしまう等弊害も多く,痛みを伴なわない方が効率的に変化を引き出せるようです。抵抗を大きく感じる箇所に執着するより,別の受け入れ可能な箇所からアプローチすると,それが望ましい準備になることも多々あります。まず,組織の反応性に逆らわなければ,強烈な痛みが起きることは,めったにありません(関節炎など特別な疾患をかかえている場合など例外はあります)。制限の程度により,深く圧力を加える必要がある場合もありますが,クライアントの方とコミュニケートしながら,慎重に進めます。実際にIntention(起こしうる変化とその場所を明確に捉える)さえしっかりしていれば,Gentleなタッチで変化が確実に起きるという事実は,ロルフィング前後の写真が示す通りです。ただし,セッション後に起る身体変化に続く様々な変化は,とてもDrasticなため,それを受け入れる準備と適応する余力のエネルギーが必要です。ですから,セッション中の痛みで消耗し,感覚を麻痺させるのは無意味です。信じがたいことに,身体に痛みをわざわざ想起させ,心理的ものと結びつけるたぐいのワークショップもあるそうですが,それは,身体の精妙なシステムを考慮しない,サディスティックな行為にしか思えません。


受け手によっては,かなりの物理的な圧力を加えて,痛みが少し伴うくらいでないと物足りないという方もいます。私(田畑)はそういう要望には答える気もありませんし,痛すぎるワークは統合する本質とはなんの関係もないものどころか,むしろマイナスに働く危険性もあります。ただし,セッション直後,変化したバランスをとるために,一過的に痛みを感じることがあります。永年持っていた偏頭痛などの痛みが一過的に蘇ることもまれにあるようです。

痛みは,変化にとって必須ではないというのが私のスタンスです。

ロルフィングに痛みはつきものといった偏見が,ロルフィングに興味をもった人が,受ける機会を逃してしまったとしたら,それは残念なことです。その情報が,”使える生きたもの”で,信頼性があるかどうか?を見極めることも大切です。

Massage Magazineには以下のようなコメントが載っています。

 Today the Rolfing method is practiced more effectively with a broad range of gentle touch qualities and pressures that span a spectrum from feather-light to very deep. When performed with the right sensitivity, even deep and heavy pressure need not painful.                  (Russell Stolzoff, Massage Magazine, Nov/Dec, pp 34, 1997

また,以下The Rolf Instituteの公式ページからの引用です。

Q; DOES ROLFING HURT?

A; When most people think of Rolfing, one of the first words that come to their mind is pain. Often, this perception is based on anecdotal accounts of sessions performed during Rolfing's infancy, when it tended to be often a less subtle and more intense discipline, frequently linked to popular emotionally intense types of therapies in the late 1960's and early 70's. Part of this reputation can be attributed to an often-quoted complaint of Dr. Rolf during her training classes that her students failed to work deep enough. Apparently, many assumed that what she meant was that they needed to work harder and deeper. However, we now realize that deep work is not necessarily synonymous with physical intensity.
(以下文章が続きますが,http://www.rolf.org/about/faq/q6.htmを参照ください)



2005年現在,日本で活躍する公式認定ロルファーも30名となりました。ロルフィングは”深部マッサージ”という適切でない表現もなされていました。現在多くの公式認定ロルファーによる情報が発信される機会も増え,Rolfingという”巨大な象”を多面的に捉える機会が増えているのは喜ばしいことです。

ロルフィング終了後,元の状態に戻ることはないのですか?

2004年11月27日 | ロルフィングについての質問
ロルフィングの10回のセッションが終わった後,一旦つながりのある統合された状態になると,身体に対して,バランスを自覚する能力も高まります。力みや緊張に対しても敏感になり,それが無自覚的に慢性的な緊張になる前に気づきやすくなります。つまり,自分で修正する力が養われます。
さらに,重力に対して,エネルギーのロスがより少なく,立つことや,無理のないスムーズな動きが可能になります。それは,パフォーマンスを職業としている人々のみならず,日々の生活での動作においても,エネルギーレベルを高く保つことに役立ちます。この感覚と効果については,一般に年単位で維持されるといわれています。
創始者アイダロルフ博士の言葉を引用すると,それは,車を大衆車フォードから高級車ジャグワに身体を乗り換えたようなものです。ジャグワの乗り心地を知ってしまえば,乗り換えてからの時間にかかわらず,誰もフォードにまた乗リ変えようとは思わないものです。
ロルフィングは,一過的な効果を目指すのではなく,持続可能性(sustainability)を重視した統合的アプローチです。

あるクライアントはこんな感想を述べておられます。
" (ロルフィングを)受けてみたら、そもそも無理な姿勢ができなくなるとか、一度まっすぐな感覚を意識的に体験すれば、物差しができるから修正が容易だとか、そういうことが持続性を保証するらしいと体験的に理解できました。つまり,一旦,バランスのとれた感覚を体感すると,そこから外れた時に,それを自覚できます。統合されてない状態では,それを自覚するのは不可能です。

実際にこちらでBasic 10シリーズを受けて約一年後にアドバンストシリーズを受けるためにいらしたクライアントの写真を照らし併せると,バランスがほぼ保持され,元の状態に戻っていないことが確認されています。
基本の7回のセッションで身体の主要なほとんどの部位に働きかけ,組織を個別化させた後,それらがつながりをもつように残りの3セッションでまとめるのには,意味があり10回が最低必要なことを何度もロルファーは経験するのです。

受け手がより身体に意識を向けることも大切ですが,身体自体は,より快適な状態を体験するとそれを維持し,さらに満足のいく状態を求めようとする ”生きた” 有機的な存在であるように思えてきます。

ロルフィングを終了したが,効果を感じられませんでした。どうしたらいいですか?

2004年11月24日 | ロルフィングについての質問
ロルフィングの効果が実感として感じられない場合,以下のような可能性が考えられます。

(1)10シリーズでは働きかけられなかった場所に主要な制限が存在する
(2)受けたタイミングでは受け手側が変化することがむづかしかった。
(3)ロルファーとの相性が適切でなかった。
(4)ロルフィングはうまくいっているが効果がでるのに時間がかかる場合もある。

等です。

(1)の場合,さらに追加でセッションするのは有効だと考えられます。ただし,ロルファー側が主要な制限を見極める力と,その制限を見つけるヒントを受け手側から出す必要があります(過去に強い衝撃を受けた等)。
(2),(3)の場合は,回数を重ねたとしても解決できません。
(1)(3)のコンビネーションですと,ロルファーを変えてみる必要があると思います。
(2)はまれですが,そういうこともあるようです。例えば,精神的に非常につらいことが重なっている時。アドバンストレーニングの時のクラスメートが,初回はほとんど変化しなかったのに対し,2回目は,Basic 10を同様に同じクライアントに行った結果,めざましい変化があったという経験をシェアしてくれました。
(4)のケースもまれにあります。可能性として,長期に渡って,ステロイド等の薬剤を服用していたクライアントで,変化がとてもゆっくりで,約半年たってから,身体が非常に軽く慢性的な痛みも顕著に軽減していたという方がいらっしゃいました。kの場合,ロルフィング終了直後であれば,変化の実感は感じにくいかもしれません。