以前、職場の老人介護施設に入居されているK藤さんのお話を書きました。
巨峰飴が大好きだったK藤さんが、いつの間にかご自分が好きだった飴のことを忘れてしまったお話です。
その出来事が12月初め頃だったのですが、それからのK藤さんは・・・
1階の売店に向かうために、4階の居室からエレベーターに乗るのですが、1階に到着した頃には「なんでここにいるのか分からへん」と言われるようになりました。
また、1階で行ったり来たりされている姿を見かける回数も増え、お声をかけると「部屋が分からんのや」と言われたり・・・
使用済みの紙パンツをどうしたら良いかわからなくなり、丸めて廊下に置いてみたり・・・
冷蔵庫にいっぱい入っている缶ドリンクを、また新しく自販機で買おうとしていたり・・・
この1カ月で、ずいぶん様子が変わってこられました。
それは本人自身も感じておられるようで
「頭がアホになってきた」
「何が何かわからん」
「どうしたらいいんや」と言われ、見ていても辛くなります。
そんな中・・・先日のお昼休み中
介護職員I藤さんとK藤さんとの会話を耳にしました。
I藤さんは、小柄でふんわり優しい雰囲気の70歳近いパート職員さんです。
K藤さんが繰り返す「頭がアホになってきて・・・」という、少し自虐的な言葉に対して
「アホになってきたわけちゃうよ。みんな誰でも年とったら物忘れするようになるねんよ。
何にも不安に思わなくていい。何かわからなくなったら、いつでもここ(フロアの職員詰め所)に来てくれたらいいんよ。
私がいない時でも、誰かがいて教えてくれるからね。何回でも聞いてくれたらいいからね。安心してねー」
と優しく話されていて、少し離れた所でお弁当を食べていた私まで、なんだか胸がいっぱいになり涙が出てきました。
K藤さんも「I藤さんがいてくれて良かった。ありがとう」と何度も言われて、お部屋に戻っていかれました。
自分で自分が信じられず、不安でいっぱいになった時に、こんな風に言ってもらえたら、どんなにホッとするだろう・・・
私は介護系の資格は一つもない事務職員なので、職員さんから学ぶことが多く、本当に良い職場に巡り合えたと思うのです。
私の職場は老人介護施設なので、感染症対策にはとても気を使っています。
手指消毒やマスク着用の基本的な対策に加え、職員個人の会食制限はもちろん(飲み会禁止、黙食の徹底など)外出自粛も続いています。
高齢者の感染は命に関わってきますからね・・・
おかげで、これまで入居者さんはもちろん、職員の感染や濃厚接触者になったという話すら入ってきませんでした。
ところが、今回の第六波はちょっと様子が違います。
感染までは無いのですが、職員自身や家族が濃厚接触者に該当したという事例が、私の施設や関連施設で毎日のように発生しています。
今のところ、そこからコロナを発症した事例はなく、PCR検査も陰性ではあるのですが・・・問題は自粛で仕事を休まざるを得ないことです。
世間で問題視されていることが、とうとう私の職場でも現実的になってきたわけです。
定期的に行われていた感染症会議も、ここ最近は「緊急」かつ「頻繁」になってきて
内容も「いかに感染を防ぐか」から「職員数減少への対応策」に変わってきました。
個人的には、世間一般での濃厚接触者への対応については「そこまで必要?」と思っていますが…
高齢者施設では致し方ないところもありますからね〜😥
先週からは、入居者さんのワクチン接種3回目が始まっています。
「濃厚接触者で休まざるをえない職員」
VS
「ワクチン3回目の免疫」
の落とし所が、職場の課題になりそうです。
T田さん(女性)は、私が働く介護施設の入居者さんです。
杖をついて歩いていますが、性格はシャッキシャキ、江戸っ子のような人です(関西人だけど😅)
言いたいことはそのまま発言するタイプで、いつも廊下で会うと、介護職員に対する不平不満を訴えてきます。
とはいえ、なんというか・・・心底そう思っているというよりは、親しみを込めて憎まれ口をたたいているような・・・そんな感じなので、なんとなく憎めないお人なのです☺️
そんなチャッキリT田さんですが…
最近、様子が豹変する時が増えてきました。
施設の内側の玄関扉は、暗証番号を入力しないと開かないようになっているのですが、他の来客に紛れて、扉が開いた隙をついて外に出ようとしてしまうのです。
以前は、非常階段からの脱出も試みていたようです💦
そしてそんな時は、決まって「お母さんに会いに行く」と言われます。
T田さん自身がご高齢なので、お母さんはもういらっしゃいません。
それでも、廊下で会った時に立ち話をすると
「お母さんに会いに行きたい」
「私はここから出たいんやけど、お母さんが、あんたはここにいてと言うから我慢してるんや」
「お母さんがそう言うから仕方ないねん」
と目に涙を浮かべながら悲しそうに言われるので、話を聞いている私も、思わず涙ぐんでしまいます。
「T田さん、ひとりで外に出たら危ないですよ。事故にでもあったら大変!お母さんも心配されるから、一緒にお部屋に戻りましょうか」と言うと、
素直に「そうやな、戻ろうか」と答えてくれますが、またしばらくしたら、杖と鞄を手にお部屋から出てこられたりします。
憎まれ口をたたく時のチャキチャキT田さんと、お母さんを求めて外出したがるT田さん。
同じ人なのに、時によって全然違う人のようです。
T田さんを見ていると、何歳になっても「お母さん」という存在は大きいんだな・・・と感じます。
私の職場の介護施設では、週に1回、多目的フロアで売店が開かれます🍬
「開かれます」と言いましたが、私ともう一人の先輩が、商品の仕入れ、在庫管理、値札付け、販売の売店業務すべてを担当しているので、実質、私たちが「開いています」な感じです。
さて、その売店ですが・・・
お元気な入居者さんは、ご自分一人や施設内の仲良しさんとワイワイ言いながら集まって来たり、
介助が必要な方は、施設職員と一緒にやって来ます。
中でも、毎回大量のお菓子を購入されるのが、K藤さん(男性)です。
毎回「ここはカートはないの?」と聞いてこられるので、その度に「ごめんなさい~。無いんです~」という会話がお約束のように交わされます😅
それほど大量のお菓子を購入されるわけですね(笑)
おかきやらビスコやらチョコレートやら、色んなお菓子を購入されるK藤さんですが、特に、中に巨峰エキスが入った「なま巨峰飴」がお気に入り!
しばらくの間は毎週「もう巨峰飴ないの?」「また仕入れといて」と言っておられました。
私たちも、K藤さんの為に、その商品を多めに仕入れるようにしていたのですが・・・
ある日、K藤さんの買い物の中に巨峰飴が無かったので、レジで「K藤さん!今日は巨峰飴ありますよ~」と言うと
「なんやそれ?知らん‼︎」とK藤さん・・・
どうやら、ご自分が巨峰飴に夢中だったことを忘れてしまったようでした💦
その翌週も、やはり巨峰飴の存在は忘れてしまったようでしたが、売店自体は変わらずお好きなようで…
大量にお菓子を購入した翌日にはもう、一日に何回も、職員と顔を合わせる度に
「次の売店はいつですか?」
「何時からですか?」
と同じ質問を繰り返しておられます😆
私がこの施設で仕事を始めてから、まだ4か月目ですが・・・入居者さんのご様子は、確実に目に見えて変化していることを感じる毎日なのです。