先日、ある中国人の知り合いから、
「友禅染めに大変に興味がある。
教えて欲しい。」
と言われ、
「紙の上に簡単な真似事しか出来ないが、
それでもいいですか。」
ときいたところ、
「まさに、その疑似体験こそがしたい」 というので
色紙の上に、 顔彩や白抜き剤を用いて
遊びで ざっくり描いてみました。
モチーフは、受講生本人が
インターネット検索して 選んだものです。
これは偶然ですが、
琳派をおもわせる、垣に蔦をからませた朝顔でした。
筆の選び方や、運筆などを教えて、
濃淡のあざやかな朝顔を描いてもらいました。
この中国人の受講生ですが、
大手コンピューター会社での超多忙な勤務の合間に
時々日本にやって来て、
無心に絵筆を走らせたり、
新しいことに挑戦したりする リフレッシュの この時間を
とても大切にしているのだそうです。
(↑ 受講生がご自分の娯しみのために模写を作った友禅染もどきの完成作品の一部分。
ステンシルや型紙などはいっさい用いないで、手描きでアウトラインをとっていく方法をする。
これも紙本ならでは。ごく一般の画仙色紙。)
そして、いざ作品が完成してみますと
ご本人は御満悦で、
「さっそく家に飾りたい」と
喜んで帰りました。
私自身は、まったく染色はいたしませんが、
あと後で振り返ってみて、
本職の染色家の方こそ、もっとこのような体験レッスンを開いて
活躍して頂きたいと 思いました。
本来の染色になりますと、
布を蒸したりですとか、設備も大変で場所もお金もかかりますので、
習っても継続できないという方も 多くいらっしゃると思います。
本当はもっと創作活動がしたいのに、 と 内心は
平凡な毎日の時の経つのも
惜しく思われるような、
そんな方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、紙の上に描くというわけです。
最初は、そんなに面白みのある提案に聞こえないかもしれませんが、
これで案外、色紙上に描けたりして、飾りやすく贈りやすく、
染色ほどは 手間もお金もかからないで
創作したい心も満たせて、
わるくはないものだと言えるでしょう。
***
受講生が娯楽のためとはいえ、
どなたかのデザインだと思うので、
この記事も載せようか載せまいか
考えましたが、
またこれも別のどなたかの創作のヒントになれば良いと考えて、
僭越ながら 載せさせて頂きました。
***
伝統絵画を教えていると、
全くの未経験者の方達のほうが、
時として 教え方のアイデアが豊かです。
こちらが思いもかけないような、
「これで良いんですか?」と いうような体裁で
いいから一度教えてみてくれと
やって来ます。
まさに床板が割れて、タケノコが突き出してきたようなきもち。
これも、伝統絵画をする醍醐味、面白味のひとつかな、と
近頃では
思えてきております。
琳派墨絵クラブ