蓼食う虫

東京に住む中年女の独り言。読書日記を中心に、あまから時評などもお送りします。

ボルドーの多和田葉子

2006-05-24 20:09:02 | Weblog

 多和田葉子はいま、仏・ボルドーにいるらしい。
 公式HPhttp://www.tawada.de/ を見ると、
 日々の多くを旅先で暮らしているのだなぁと感じる。

 エッセイに、
 揺れる汽車の中で書くことが多く、それが当たり前のようになっていると書いてあった。
 4月の対談でも、芭蕉の「月日は百代の過客にして・・・」の一節を取り上げていた。
 (話は逸れるが、たしか「月日」というのは日本人の発想で、<月と太陽>と直訳するとドイツ人には全然わからないという話だったと思う)
 彼女の発言に時々、芭蕉の句がでてくる。芭蕉に惹かれているのかもしれない。
 
 多和田葉子は、定着することを捨て、あえてそのような暮らし方を選んでいる。
 そもそも定着(定住)とは何なのか。私たちの「あるべき」「本来の」場というものを信用していないのだ。

 旅(移動)しつづけることによって見えてくるものがある。
 AとBを結ぶ線上を飛び回るイメージだ。飛び回るうちに、自明と思われたAとBも次第にずれていく。旅によって揺さぶりをかけるのだ。

 時間に追われて生活していると、読書や、まして小説を書く時間など確保するのはなかなか難しい。
 でもそんなことは言ってられない。
 
 どこにいても、書けますよ! 書こうという意志があればネ!
 
 そんな声が聞こえる気がする。