昨夜、多和田葉子を囲むシンポジウムを聞きに行った。
有名な学者先生(男)たちに囲まれた多和田さんはさながらアイドル。
新刊『アメリカ 非道の大陸』の感想や、翻訳文学のことなど。
どの先生も多和田作品を褒めちぎっていたが(最長老の先生がひとり何か言いたげだったが)、日本では大体どこでもこういう感じで賞賛の嵐、褒められる視点も大体同じなので、読者の私はいささかお腹いっぱいいっぱい。
誰でも褒められたら嬉しいものだが、欧米ではいざ知らず、日本に来ると(批判的な視線が皆無で)いつもいつも絶賛の嵐な多和田さんは、かえって居心地悪くないんだろうか、などとふと思ってしまう天邪鬼な私。
もう一冊(いや、今月末にさらに短編集が1冊だから今秋は計3冊)、詩集が刊行されている。
以前、このブログでも抜粋を載せた詩で、「ユリイカ」に1年にわたって連載された『傘の死体とわたしの妻』が本になったのだ。
日本では多和田葉子の初の詩集だという。
1冊にまとまったのを改めて読んでみて、ひとり声を上げての大笑い。
実に楽しく、勢いがあって、なかなか力強い現代詩だ。
詩を説明するなんて身もふたもないが、あえてどんな詩かと言うと・・・
童(わらべ=われ=女)と人妻が不倫の果てに「結婚」して「新婚旅行」に京都へ行ったり、ゲイのカップルから精子をもらって人工受精を試したり、果てに子供が生まれて、保育園にいったりして・・・というような話(だと思う、たぶん)。
あまりに面白いからその一部分、
ゲイカップルから精子をもらい、いざ人工受精!シーン(と思う)のさわりを抜粋させてもらいます。
『傘の死体とわたしの妻』(2006.10月思潮社刊)
9.手作り人工受精 より
セイシを いちご顔に 黒く ぶちぶち
セッション かさね
ふち ぶっ たたき
ジャム あきびん太鼓
おとこ と おとこ の ねっとり
と 白く たれ とと
ありがトム
おおきニール
精子のガラス瓶詰めリボンかけ
ははは、、、 ゲイは身をたすくだよ と
まだまだおしゃべりしたそうな
男背中を二枚 外に押し出し
またね
がっちゃん思いドア
妻と二人 寝室になった
(88-89頁)
・・・と、これはほんのさわり、全125頁にわたる長~い詩です。
声に出して読むと楽しいよ♪