蓼食う虫

東京に住む中年女の独り言。読書日記を中心に、あまから時評などもお送りします。

「群像」創刊60周年

2006-09-13 12:22:50 | Weblog

今月の「群像」は創刊60周年記念号。大御所から若手まで46篇もの短編が載っている。
1篇30枚ほどの分量なので次々と読めてしまうが、それだけに比べる比べる、さながら品評会。
しかし各人の温度差もあるのだろうが、ものすごく力の入っているのとそうでないものの差が歴然だった。

掲載された女性作家は(23/46篇てことはちょうど半数)現代を代表する方々だが、生年順で並べてみるとなかなか発見がある・・・

瀬戸内寂聴1922、河野多恵子1926、津村節子1928、原田康子1928、竹西寛子1929、大庭みな子1930、林京子1930、高橋たか子1932、村田喜代子1945、高樹のぶ子1946、津島祐子1947、稲葉真弓1950、桐野夏生1951、笙野頼子1956、川上弘美1958、中沢けい1959、多和田葉子1960、小川洋子1962、(藤野千夜1962、)絲山秋子1966、角田光代1967、金原ひとみ1983、島本理生1983

 最長老が寂聴さん(84歳)というのには納得がいくものの、1926-1932の昭和戦前派の次は戦中派がなく1945以降(戦後)へと飛んでいる。中沢けいが川上弘美よりも若く、桐野夏生が笙野頼子より年上なのに驚いてみたり、角田さん以降は金原ひとみまでブランクがあるのはなぜ?と思ってしまったり(もちろんいるにはいるけれど、この企画に入れるような書き手がいないということ?)。

 さて中身のほうだが、まだ途中だけれど印象に残ったのは、
 角田光代「父のボール」、川上弘美「姉妹」、河野多恵子「魔」、高橋たか子「遠い水、近い水」、金原ひとみ「デリラ」といったところか。
 「ロック母」で(図らずも)川端賞を取ってしまった角田光代の今度は父の話だ。こっちのほうが凄みがあっていい。
 わが多和田さんの「晴れたふたりの縞模様」はまだピンと来ない。ストーリーを追えない不可解さということで異彩を放っているが。

 それにしてもスタイルを確立している作家の作品は読んでいて安心感がある。このところ小説教室で下手な新人作家ばかり読まされていたので、存分に楽しんで読んでいる。また、短編というフィールドが彼女たちの個性をいっそう際立たせているのだと思う。短編って難しい。だから短編が上手いのってすごく格好いいことなのだ。
 欲を言えば、スタイルを確立した作家たちだけに目新しさがないかもしれない。これまでの経験でこのくらいは書けるワイ、といった感じの作品もある。読んでいて、「あヽこの人らしいなぁ」と思うだけに留まるものも少なくない。スリルに欠けるのである。
 けれどたった一冊、同じ土俵でこれだけ満開の個性たちを一覧できるのは女性文学史の重みというか、執念のつづれ織りというか、やっぱり凄いことなのだった。
 男子の部も錚々たるメンバーだが、読むのが後回しになり、どうも腰が重いのはなにかな?やっぱ男子だからかな。