WoodSound~日綴記

山のこと、川のこと、森のこと、その他自然に関することをはじめ、森の音が日々の思いを綴ってみたいと思います

大戸川賛歌

2008-11-15 | Opinion
滋賀県にある大戸川ダム建設の施策に、
その上下流地域を流れる府知事が反対を表明した。
これはなかなか画期的な出来事だと思う。

地方分権などと叫びながら、
給付金の所得制限を丸投げすることしか出来ない馬鹿な政府。
本当に大事な地方分権はこんなところにあるのではないか。
ダムが本当に必要かどうか、
また実際に税金を使われる府県の身になって見たとき、
住民と身近になって反対できる体制。
それが地方分権の持つ意義だと思う。

とは言いつつも、ダムの建設にはいろいろな利権、思惑が絡む。
一概にダム廃止を喜ぶ人ばかりではない。
ダムの底に沈むということで退去した住民も多いだろう。
ダムの工事を請け負うことで潤う、地元の建設会社もあるだろう。

しかし、ここは大局的な見方でダムの是非を考えて欲しい。

私的な思い出を述べたい。
10数年も前、私がフライフィッシングを始めた頃・・・
大戸川には管理釣場があった。
管理釣場というのは字のごとく、放流が管理されている釣り場のことで、
普通は川を区切った池のようなところでニジマスなどを放しているところ。
いわゆる釣堀のようなところである。

しかし、大戸川の管理釣場は川を
そのまま生かした自然の渓流約2キロほどの流れに、
40センチ以上のそれは美しいニジマスが定位するという
極めて自然渓流のような釣り場だった。
寒い中を毎週のごとく良く通った。
初心者なので、当然釣れなかったし、釣れないからこそ通う。
そして少しずつ腕を磨く。
道場のような場所だった。
冬の真っ只中、ネオプレーンのウエーダーを履いて
立ちこむ川はかなり冷たく、
小雪ちらつく中、ラインが出ないなぁ思えば、
ガイドが凍っていたということもしばしばあった。
私のニンフフィッシングはここで、切磋された。
8フィート6インチの4番ロッドがなかなか上手に扱えなくて、
苦渋の日々を過ごした。

一番下のプールには居残りのマスが、
岸際で小さなライズリングを繰りひろげ、
ダブルホールを駆使したロングキャストの練習をした。
もっともドライフライはミッジでも全く釣れなかったが・・・

初めてガサガサをしたのも大戸川の下流だった。
琵琶湖博物館の研究員を講師に招いて、
自然大学のフィールドワークでのことだった。
フナやヨシノボリやアユモドキ、
その他渓流釣りではなかなか見られない魚がいっぱい獲れた。
大戸川の自然河川としての包容力に接した思いだった。

そんな河川環境がダムによって破壊されようとしていた。
管理釣場はとうの昔になくなってしまっていた。
(と思っていたが、検索してみるとそうでもないらしい・・・)
しかしダムが出来るということで、どんな影響が出るのか・・・

先日、読んだ「宇奈月小学校フライ教室日記」。
黒部川ダムの排砂をしたとき。
ヘドロが川全体に流れ、一瞬にして黒部川の清らかな流れが変化した記述がある。
体験したわけではないが、いつも川を注意深く見守っている人々にとっては、
ダムとはそれほど川の状況を一変するものだということを教えてくれる。

今回の滋賀、京都、大阪の3府県の知事の、
下した英断に拍手を送りたいと思う。
そして、ダムを作ることは、何も土建会社を儲けさせることではなく、
本当に必要なことなのかと、
もう一度その恩恵をこうむる地域で議論したら良いと思う。
それからでも、決しておそくない。
そうして本当に必要だと地域の人々が判断したら、造れば良い。


真に必要なダムはきっとそんなにないはずである。

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (107)
2008-11-19 22:23:06
森の音さん、こんばんは。
大戸川はボクも懐かしい川なんです。初めてフライをやったのがあの川。雑誌などで取り上げられてメジャーになる前、気のいい酔っぱらいのお爺さんが管理人だった頃です。きっと森の音さんもそんな頃なんでしょうか。

シロウト考えなんですけど、大戸川のあのダム予定の流れに、そもそもダムなんて巨大なシロモノが要るのか?と疑問なんです。百年とかに一度の洪水に備えることももちろん大事ですけど、その答えがなにがなんでもダムというのではあまりに硬直しすぎた思考でお粗末すぎます。源流域の山の植生とか川の蛇行具合とかを考慮して、溢水時の流域のショックアブソーバー的なものを整備するとか、そういうクロスオーバーな議論が今こそ必要なんじゃないかと。
それらのノウハウがないなら創ればいい。
(アメリカではすでに始まっているそうです)

土建業界とそこに癒着した官僚・政治屋どもも、いつまでもコンクリ一辺倒ではなく、そういうノウハウを蓄積していくところが最終的に生き残っていくのだという視点に立って、おつむの構造を改革すべきだろうと思うのです。

まあ、総理がそもそもコンクリ屋のオヤジですからねぇ・・・orz
返信する
107さまへ (森の音)
2008-11-19 23:10:02
107さんが初めてフライをされた川とは・・・
きっと思い出が一杯あるのでしょうね。

私もフライ覚えたての、
最も集中していた頃に、よく通いました。
ホントになかなか釣れなくて、
悔しくて悔しくて・・・

百年に一度の洪水に備えるって、
物凄く説得力がないと思いませんか?
仮にダムを造っても最近は、
その下流で一時間に何十ミリとかいう、
ゲリラ豪雨が降ったら意味ないのでは・・・
こと気象に関しては何が起こるか
予測不能な時代のはず。

おっしゃるようにダム一辺倒ではなく、
周辺の保水力を高めるなど、
もっといろいろな方法を考えるべきですよね。

かといってもし洪水が起きたら誰の責任?
というところから逃げたくて、
とりあえずダムを造っとこうというのが、
役人の本音だと思います。

二府の知事はともかく、
環境学者である滋賀県の知事さんには、
結構期待しているのですが。

ふしゅう(腐臭)ただよう総理には、
政治やる前に、
もっと日本語の勉強をしてもらいたいものです。
返信する
Unknown (honmura)
2009-05-08 20:01:47
読んでいただいて感謝です。
出平のヘドロは、おかしな気持ちにさえさせられました。川というのはあんなにも簡単に風景を変えるのかと思いました。
人の営為の惨さをしった瞬間ですね。
同時に、多くの人々の関心のうちにないことに驚きました。だから、ちゃんと教育の現場で、目の前にあるものの姿に向き合わせておかなくてはと思ったのです。
この間まで二酸化炭素だ、温暖化だと言っていた人々が、高速道路でずっとずっと遠くまで走っていく。そのあまりに現金なふるまいに、底のない環境教育の危うさとその気分を感じさせられます。
返信する
honmuraさまへ (森の音)
2009-05-09 08:03:27
こさらこそ拙ブログへの、
わざわざのご訪問ありがとうございます。

おっしゃるように、
この放埓極まる政策の果てに待っているものは、
一体何なのか思ってしまいます。

私の子供たちはニュースを見ていると
「怖いニュースは嫌だ」と言います。
確かに今9割がたは、
インフルエンザや温暖化、殺人など、
どれも大人でも目を背けたくものばかりで、
暗澹としたものです。
でもやはりそこを見てもらわないと、
始まりませんよね。

せっかく環境問題に
皆が興味を持ち出したのですから、
消費拡大ばかりでなく、
もっとコンパクトな生活にダウンサイズしていく。
できるだけ消費しないで、
あるものは全うするまで使う。
などと考えるのが、
まともな思考経路だと思うのですが・・・

我々世代に課せられた使命は大変かつ大きいですね。
返信する

コメントを投稿