WoodSound~日綴記

山のこと、川のこと、森のこと、その他自然に関することをはじめ、森の音が日々の思いを綴ってみたいと思います

「しょうがない」はまずいけど

2007-07-07 | Opinion
実は久間防衛省大臣の言葉を、
全面的に否定することは出来ないと思っている。
もちろん「しょうがない」という発言は、
かなり不適切で思慮のない言葉である。
原爆で命を失った人々、そしてそのご家族の方々に対する言葉として、
閣僚の発言する言葉ではないと思う。

しかし、日本の起こした戦争が辿ってきた軌跡を考えた際に、
あのまま原爆というこの世に在ってはいけない、
モノが落とされなければどうなっていたかを想像すると・・・

先日、新潮新書、保阪正康著「あの戦争は何だったか」を興味深く読んだ。
それによると、
日本の軍人が徹底的に教え込まれた、
「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すことなかれ」
という教育はいかなる時にも、
捕虜になってはいけない、捕虜になるくらいなら自害せよという教えである。
これは日本の兵士のみならず、一般の人々にとっても、
強制力を持った教育であった。
オランダのハーグで決められた「戦時国際法」では、
きちんと捕虜の扱いを定めており、そこでは
「捕虜には食事を与えなければならない。
作業を課してもよいが、その作業が祖国のためにならないことであれば、
拒否する権利ある」というようなことが明確に定められている。
こんな条約の内容は日本人の上級将校の一部を除いて、
ほとんどが知らなかったのではないか。

結果、アッツ島やサイパン島、沖縄での玉砕が行われた。
沖縄での出来事は今、教科書から削除されようとして問題になっている。

大本営発表という下に、情報操作をされ続け、
最後の一人になっても戦えと教え込まれた日本人。

ひょっとすれば精神論ではアメリカは日本に負けていたかも知れない。
それは先ごろ公開された、
「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」を見て思った。
監督のC.イーストウッドは負けても勝っても戦争が残す
禍根は大きいということを言いたかったのかも知れないが・・・
私には二宮和也演じる日本兵の不敵な笑みが心に残った。

結果、原子爆弾という最終兵器が落とされ、
広島、長崎の何十万人という犠牲者が生じた。

これを「しょうがない」と言っては終わりだ。
唯一の被爆国として核の廃絶、
平和の希求をしていかなければならないし、
またその説得力を最も持っている国である。

しかし、もしこの惨禍がなかったなら・・・。
米軍が本土に上陸してそれこそ一億総玉砕という風になっていたかもしれない。
その後のロシアの参戦、シベリア抑留に至る経緯は、
もっと悲惨な結果を招いたのではないか。

久間氏を養護する積りも、安部政権を存続させようという気持ちもさらさらないが、
この辺りの現代史を国民がしっかり学んで欲しいという気持ちはある。
だから沖縄の集団自決が教科書から削除されるというのは憤りを感じる。
私達の世代も現代史はかなりおざなりにされてきた。
本当の戦争というものは分からないし、
知らずして生まれてきて幸せだとも思う。
それだけに、戦争のことはちゃんと知っておきたいし、
後世に伝える義務もある。

戦後レジームからの脱却というが、
この戦争から日本が学ぶべきことは学びつくしたという気がしない。
それどころか、過ちだった戦争のことは早く忘れて、
復興することだけに価値を見出してきた。

実は久間氏の発言はかの戦争を再考する良い機会だったのでは・・・と思う。
辞任することで蓋をされた感があるが、
もっと議論沸騰してもよいのではないか。

戦後レジームから脱却するためには、
内閣もマスコミも表面だけの言葉狩りをしているだけではダメだと感じた。
ただの老婆心だろうか?

2 コメント

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国民みな正しく歴史を学べ (トムノグ)
2007-07-11 19:09:37
近世の歴史を義務教育できちんと学べた国民はゼロでしょう。
私は昭和30年中盤から40年中盤までが義務教育期間ですが戦争等の歴史教育は全く受けていないといえます。後に大人になってから独学で学びそれでも不十分な知識です。
ですがまず道理は決まっているはずです。
認識はあとからでも補正できるのですが、国の方向をあずかる政治家や官僚は誤った言動は断じてあってはならず久間のような愚かな人間は国会議員を続ける資格はないですね。
戦争の経緯と結果と原爆というカタチを各論で議論すると変な話が出てくるのではないかと思います。
いづれにしても平和を希求するということが何より重要と皆わかっているはずです。
大事な話題ですね。


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トムノグさんへ (森の音)
2007-07-11 23:00:38
いつもあたたかいコメントありがとうございます。

この記事は歴史を学んで来なかった自らへの、
戒めでもあります。

実はこのエントリーを書いてから、
ものすごい悩んでいました。
原爆という想像を絶する体験をされた方、
それを他人事のように論じる私。
こんなことを言う資格は全くないような気がして、
この記事を消そうとも思いました。

でもこれに対する反論でも何でも、
甘んじて受けようと思いました。
書物や新聞から得た、
今の私の知識で論じられることは、
この程度のこと以上以下でもありません。
だから、本当のところはこんな記事を
書く資格がないのかもしれません。

かといって安易に戦後レジームから脱却するということは、
絶対にできないという憤りがあって。
私にはそれは戦争を忘れるということと同義に思えてなりません。

ここで私の紹介した新書や映画、
かわぐちかいじ氏の「ジパング」という漫画でも何でも、
きっかけは何でもかまいません。
少しでも多くの人が、
なぜ日本は戦争を始めてしまったのか、
なぜ原爆が落とされるまで戦争を止めなかったのかを、
考えていただける材料にしていただければ・・・
と思います。
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