以前にも書きました(→犬のニキビダニ症)が、ニキビダニがからんだ皮膚病の場合、上の写真のように若い年齢(18ヵ月以下)で一部(顔や前肢が多い)だけの小さな病変として発症するケースがあります。
このような例では「病変も小さいし、たいしたことないだろう…」と、まずシンプルな薬だけを処方されることも多いかもしれません。
皮膚を詳しく検査すればニキビダニを発見できることが多いのですが、「軽症だし、あまり負担をかけるような検査をしたくないなぁ…」という思いから見逃してしまうこともあるでしょう(検査にはちょっとしたコツがあります)。
そもそもニキビダニとは、ほぼ100%いるはずなのに大抵は発症せず、発症していても、それなりにしっかりした検査で発見できないことがある不可思議な存在なのです。
そして、かゆがっているから…と免疫抑制系のステロイドやシクロスポリン、オクラシチニブなどを次々に使われ皮膚病変が全身的に拡大してしまうケースも時にあります。
(◎若くて免疫機能が未成熟であるか、年齢を重ね併発疾患などにより免疫機能が衰えると局所的に大発生するという病態なので、免疫抑制系の薬は基本的に…×)
10歳ほどのシーズーの症例写真を載せていたのですが、後にご家族が掲載反対とのことで違うニキビダニ症例の写真に変えています。
その子は他院にて治療していたのですが、2ヵ月以上経っても一向に改善しなかったとのことです。
シーズーは日本の高温多湿な気候が合わないようで(平均海抜4000m以上と富士山より高いチベット高原の犬種ラサ・アプソがルーツ)、アトピーやマラセチアによる皮膚炎・外耳炎が多い皮膚病の王様のような犬種です。
そのため時々このような状態に類する子はいますが…それにしてもひどい症例でした。
聞くところによると、テレビCMでお馴染みの高価な美味しいダニ予防薬?だけでなく、なぜか高価な分子標的薬――オクラシチニブ(アポキル)も処方されていたということです。
どちらも比較的新しい薬ですが…何かやつれて元気もなさそうでした(いくら最先端の薬を使っていても、組み合わせなどが悪ければダメなのです)。
新薬の真価は10年以上経たないとわからないということもありますし…当院は最先端とやらにこだわって本末転倒となることはしたくないため、より安全である古典的な飲み薬を使用することにしました。
すると2週間後には体重も増え、ニキビダニも死体だけしか確認できなくなりました。
そして同じ薬を3週間処方したのですが、その後は病院に来なくなってしまったのです。
「転院してきた例であるし、あれだけひどい症状だっだからそんなに簡単には改善しないよね…あまり効果がなかったのかなぁ?」…と思っていました。
…ところがその10ヵ月後、突然その子が来院しました。
今回も同じ皮膚病での来院だったのですが、全体的には見違えるように毛が生えています。
ニキビダニが原因の皮膚炎は、アトピー性皮膚炎などよりもこのように劇的に改善することが多いのです。
頚下や後肢、尾を中心に炎症と脱毛が再発していますが、それまでは改善していたから来院しなかったんですね。
皮膚の検査をしてみると、やはり活発に動くニキビダニがたくさんいました。
ニキビダニは、ダニ駆除薬をしっかりと投与しても完全にはいなくならず、内分泌疾患などもからんで発症することがあるため、定期的に再発してしまうことがあります。
ただでさえ、そういう皮膚病なので、しっかりした検査で陰性となってからも、一カ月くらいはダニ駆除薬を続けた方がいいので気をつけましょう!!