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新進亭

2005-05-07 11:13:17 | ラーメン店調査 (36~40点)
19歳から20歳までの1年間を通じて最も好きだったラーメン店である。当時は必ずしも計画的にラーメン屋を食べ歩いていたわけではなく、いくつかのラーメン屋の中でお気に入りとなった店をリピートしていたわけであるが、いくらお金がなくても、この店のラーメンだけは食べたいといつも考えていた店、それが「新進亭」である。

もちろん、過去のノスタルジーに耽溺することなく現在のラーメン屋の味を客観的かつ冷静に評価するのが、我がラーメン課に課せられた使命であることは申し上げるまでもない。「新進亭」には20歳に上京してから以降も、あまりにもその味が忘れられなかったため、今でも定期的に通い続けている。京都は伝統的にコッテリ系のラーメンを好む土地柄であるが、この店はそのような土地柄においては、例外とも言えるコッテリでもアッサリでもないキチンとしたラーメンを真面目に作る店。

特に味噌ラーメンの旨さは現在でもなお京阪神有数の高い実力を保持しており、とりわけ「新進亭」独自のメニューである「白みそラーメン」は、「むつみ屋」の白味噌ラーメンの追随など許しはしないほどの出来映えである。

現在の日本ラーメン界において、味噌ラーメンの人気は必ずしも高くはない。それは味噌という独特のクセを伴った「ジャパニーズ・スープ」の中に麺を入れるという発想が、未だに完全な市民権を得てはいないところに起因するものと思われる。味噌ラーメン=味噌+麺といったイメージだ。

当時の私もその例外ではなく、味噌ラーメンに対してはキワモノだといった感覚をどうしても拭うことができなかったのであるが、この店の「白味噌ラーメン」を食べてからそのような意識は皆無となった。味噌ラーメンは、味噌に麺を投入するものでは決してないことを気付かせてくれた貴重な一品である。

当時の新進亭の「白味噌ラーメン」は、そうと言われなければ味噌であると判らないほどに、複雑玄妙な白味噌スープが重厚感を保ちつつも、穏やかに舌に迫り来る絶品であり、その類い希な出来のスープに合わせる麺も、ストレートに近いコシのある中太麺であり、当時の私にとってはとても文句をつけられるような代物ではなかった。白味噌スープの中に隠し味として混ぜ込まれているミンチの食感も絶妙で、ミンチと白味噌スープと麺とを同時に啜り上げれば、得も言われぬ三位一体の至福の境地に到達したものだ。この当時の「新進亭」の「白味噌ラーメン」の味を超える店は、現在の「純連」くらいのものである。と私は今でも信じて疑わない。

が、このような「新進亭」の味が、数年前に支店を出店してから以降、徐々に痩せてきているのではないかという強い懸念がある。「新進亭」は今でも京都の人気店のひとつとして数えられている、いやむしろ、昔よりも今の方が人気店として認知されるようになっていると思うが、まずは麺。昔使用していた中太麺よりもやや細い縮れ麺を使用しているのではないか。しかも、わずかではあるが麺に雑味があったような気がした。白味噌のような繊細さを旨とするスープに雑味のある麺を合わせては折角のスープの持ち味が台無しだ。

さらにスープの味が明らかに痩せてしまっているのではないか。かつては、穏やかではあるが豊潤に膨らんでいたスープが薄くなってしまっており、明らかに物足りなくなってしまっている。スープの味そのものは、むしろわかりやすくはなっているのだが、わかりやすいことと旨いこととはイコールではない。

他方、肉ミンチを除く昔の「新進亭」の唯一の泣き所であった具の凡庸さについては、特に変わってはいない。麺とスープのクオリティが抜群だったからこそ、具の凡庸さが気になることもなかったのだが、今のクオリティにまで麺とスープが落ちてくると、やはり具の凡庸さが目につき始める。他の人間にとっては、単なる1ラーメン店の凋落の歴史に過ぎないのであろうが、「新進亭」の味の低下は、私にとっては想い出の店をひとつ失うことにも繋がりかねない事態である。

麺:9点、スープ:13点、具:3点、バランス:7点、将来性:7点の計39点。

依然として、京阪神のラーメン屋の中では相当に高いレベルにはあると思うが、これでは首都圏レベルでは並のラーメン屋に毛が生えた程度のグレードに過ぎないことになる。昔のレベルであれば麺:12点(+3)、スープ:17点(+4)、バランス:8点(+1)には到達していたと思われるだけに極めて残念である。より一層の奮起を期待したい。


所在地:京都市中京区
支店:京都市左京区一乗寺
実食日:04年1月

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