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河童ラーメン本舗

2005-05-07 10:33:25 | ラーメン店調査 (31~35点)
京阪神のラーメン屋の中ではかなりの有名店らしい。京阪神のラーメン屋を掲載したラーメン本にはほぼ必ずリストアップされている店である。親友Nがよく食べに行く店でもある。彼は千日前の店に通っているらしいのだが、時間の都合上そちらの店に向かう余裕がなかったので、新幹線のターミナル駅である新大阪駅の近くの店舗を訪れることにした。

場所は、メルパルクという建物と日本生命ビルの間の通りを少し先に進んだところ。が新大阪について全く土地勘がない私は、延々間違えた道を彷徨い歩いてしまい、店を探し当てるのに30分近くもかかってしまった。

店の前には、黒い壁に同じく黒地に白の文字で「河童ラーメン本舗」と書かれた看板が取り付けられている。首都圏で言えば「平大周味庵@大崎広小路」に似たようなスタイルを採用している。背脂ギタギタ系の店の間で流行っているスタイルなのだろうか。新大阪のターミナル近辺は休日の夕方時にもなれば人通りも疎らで、否応なく寂しい雰囲気を醸成させる。「河童ラーメン本舗」もそのようなちょっとしたゴーストタウンのような面持ちの街並に溶け込むように佇んでいた。

店内に入ると、比較的清潔感がある広いスペースに、無機的なテーブルが4つ(4人掛けテーブル)にカウンターが10席ほど。椅子は木製の安価な製品を使っており、カウンターのテーブルはステンレスか。なるべくお金をかけずに清潔感がある雰囲気を創出しようと努力しているようだ。この辺りが首都圏の最近オープンしたラーメン屋と京阪神のラーメン屋との違いか。全体的な傾向として、首都圏のニューオープン店は内装も凝りに凝るところがある。一方京阪神のそれは、清潔感を失わないよう最低限の注意は払うものの、内装には必要最小限のお金しかかけないようなところがあると思う。どちらにも一長一短があるのだろうけど。

フロアースタッフは若くて威勢がいい男性がひとり。店内は広めに作られているので見た目に少し寂しい感じがする。「神座」のスタッフの数と足して2で割ればちょうど良い按配になるのではなかろうか。

メニューはラーメンはシンプルに一種類のみであり、デフォルトのラーメンは600円。ネギラーメンは700円。チャーシューメンが800円。ネギチャーシューメンが900円である。博多トンコツ系の店でもないのに、替え玉をすることが可能だ。ひと玉200円。更にひと玉食べるのは苦しいが、もうちょっと食べたいという人向けに半人前の替え玉も行っているようだ。そちらは100円。大食漢にとっては有難いシステムだと言えよう。

このような背脂ギタギタ系の店では、麺は硬めで注文するのが定石なのであるが、初回だったこともあるので、ラーメンに味付煮玉子をトッピングして、ライスと一緒に戴いた。

オーダーしてからものの3分程度でラーメンが出てきた。ラーメン屋の平均をとれば結構早い方だと思う。まずはレンゲにスープを一口とって啜る。細心の注意を払って慎重にスープを舌の上で転がし、味を確かめる。とにかく旨味が非常に強いスープだ。親友Nの奥さんは「この店のラーメンの味はわからん」と仰ったそうだが、むしろある意味においてはとてもわかりやすい味だ。「おばあちゃんのぽたぽた焼」を彷彿とさせる味。とにかく甘みを伴った強烈な旨味がスゴイのだ。化学調味料だろうか。いったい何なんだ、この押しつけがましい味は・・・との暫定判断を下しかけたが、どうもこの旨味は、野菜から分泌される甘みが背脂の甘みと相俟って前面に押し出され過ぎていることによって生じているのではないかと結論付けるに至った。野菜を煮込むことによって出される甘みを背脂の甘みが相互補完的に押し上げてしまうことによって、不必要なまでに過度な甘みがスープ全体の締まりをなくし、ラーメン全体の味を台無しにしてしまうのだ。

と大変分析的に書いてはみたが、一言で言えばつまりは不味いのだ。はじめの2、3口はむしろ味に明確な主張があってそこそこ旨いと思うかも知れない。が、中盤以降になると味覚が麻痺し、単なる甘い汁を余儀なく啜らされているような感覚に陥るはずだ。私はカブトムシではない。

この店のコンセプトは、背脂ギタギタ系の醤油らーめんでありながら、アッサリした女性にも受けるラーメンを食べさせることにあるらしいのだが、ただひたすら甘いだけで、何らの奥行きもないスープを使ったラーメンは女性はもちろんのこと、男性にもまた受けはしないことを心得るべきである。

首都圏で言えば急速に味を落とした「元楽@蔵前」の元ラーメンが同様の事情によってラーメンづくりに失敗している。私見になるが、野菜を主力としてスープを組み立てる場合、極力背脂は使うべきではないと考える。

一方、麺はかなり細めの縮れが弱い麺を使用している。このような麺は大抵、スープが非常にコッテリしていて「あまりスープを麺に絡めさせたくはない」場合に用いられることが多い。そもそもが論理矛盾ではないか。コッテリに見えるけれどもアッサリしたラーメンを食べさせるというコンセプトであるにもかかわらず、スープがコッテリ系であることを前提として麺をチョイスしているのだから。客としては、別に見かけがコッテリ系に見えなくてもいいから、旨いラーメンを作ってほしいだけなのだ。

野菜を使うのであれば、背脂の量を落として、甘み以外の旨味成分を複合的に組み合わせたスープを造り、縮れが強い麺をパートナーとするのが適当なのではないか。例えば「ぺーぱん@吉野町」などはその手法によって見事に旨いラーメンを作ることに成功している。

ちなみに、具のチャーシューもお粗末。薄っぺらい脂身の少ない部分のみを使用しており、臭みは相当に強い。よってチャーシューメンを頼むことに全く意義を見出すことはできない。味付煮玉子は合格点か。ただし黄身の中央部分が生卵化してしまっており、スープに溶け出した場合スープの風味が激変する可能性が高い。この店の場合その現象がメリットとして働くのかも知れないが。

麺:7点、スープ:11点、具:2点、バランス:6点、将来性:6点の合計32点といったところだろう。


所在地:新大阪
本店:大阪市中央区千日前
実食日:04年1月

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