第45話「後宮の凶行」
前回のハラハラとしたところから始まるのよね。
…っていう事は、今回の物語の始まりは、ギュルシャーからか…。
血まみれの小型ナイフをもって、にやりと笑う。
「……救われたのよ。ヒュッレムから私のお妃さまを悲しませることはない」
って言っているけれど、気が付いて、ギュルシャー。
貴女の行為が、マヒデブランを悲しませて、困らせているっていう事を!!
ヒュッレムの部屋で、セリムの鳴き声を聞きつけて、寝台を確認しに来るエスマ。
掛布団はもう、血で真っ赤に染まっている。
それを目の当たりにしたエスマが泣きながら廊下で大声をあげて助けを求めている。
側女の1人が駆けつけて、どうしたのかと尋ねても気が動転して何も答えられない。
そうこうしていると、スンビュルも駆けつけ理由を尋ねる。
けれどもね、やっぱり動転しているエスマはやはり荒い息を繰り返しているだけ。
更に、髪をおろしたニギャールも慌ててやってきて、エスマの様子がおかしいのは、
部屋に何かが起こっているから? という考えになるのは、流石後宮女官長。
「宦官長、皇子様方が…」
というと、スンビュルも慌てて部屋へと向かうその直後に、ヒュッレムが何処からか
やって来て、泣き叫んでいるエスマに声をかける。
ギュルシャーはビックリしている。
つまり、
「え? ヒュッレムはここにいる。でも、誰かを刺したのは間違いない」って事だろうか。
目がすっごい左右に揺れているから、かなりの動揺を感じられるわね。
先に部屋に入ったニギャールとスンビュルは、寝台の真っ赤に染まっている布団を発見。
泣き続けているセリムをニギャールが抱きかかえ、その横にいる人物を確認すると…。
ギュルニハルだった。
ギュルニハルが…。
刺されたぁ~(ノД`)・゜・。
あの、天使が刺されたのよ~
おぉう
スンビュルの珍しい叫び声。
「ギュルニハーァル」
そう叫びたくなるのも分かるわ。だって、ワタクシも同じ気持ちだったもん。
スンビュルの叫び声を聞いたヒュッレムは急いで自室にもどり「何事なの?」と
先に入った2人に確認を取ろうと寝台に視線を送ると…。
グッタリと倒れているギュルニハルを発見。
「あぁ!! ギュルニハル!」
と、身体を震わせてその惨事に驚いている。
「何とかしてっ!」
ヒュッレムはスンビュルに詰め寄ると、ギュルニハルはすぐさまスンビュルに
抱きかかえられる。
「ギュルニハル、耐えて。助けるから」
そう言って治療院へと運ばれていった。
その時に漸くダイェがやってきた。(遅いよ、来るのがって思っちゃった)
既に興奮しているヒュッレムは、ダイェに怒鳴り散らす。
「私が狙われたのよ。全員起こしてちょうだい。…陛下も、母后さまもみんな、起こして」
泣き叫んでいる。こりゃ、もう手が付けられない。
けれど、ダイェは冷静にヒュッレムに伝える。
「大声を出さないでください」
そう頼んでも、今のヒュッレムには中々難しいだろうなぁ…。
「ギュルニハルが私の身代わりに…」
マヒデブランの命で何の騒ぎなのかを確認しに行ったギュルシャー。
人違いで殺人を犯してしまい呆然自失の体で部屋に戻り、マヒデブランに報告をする。
…んだけど、流石主。
その刺客が、ギュルシャー本人だとマヒデブランは見破るのよるね。
「私じゃありません」
って、もう泣き顔になっているギュルシャー。
これでは、私が犯人ですって言っているようなものだよ。
マヒデブランは更に問い詰める。
「何故動揺する?」
その質問に、遂にギュルシャーは白状する。
「私はてっきりヒュッレムだと…」
そう聞くや否やマヒデブランは突き飛ばす。
「神罰が下るといい。よくも勝手なマネを。何をしてくれたのよ。
よくも。神よ、罰したまえ。どうか神罰を」
と言いながら、マヒデブランは命令を下してもいないのに
殺人を疑われる立場となってしまい、激怒したことで血がのぼってギュルシャーを折檻する。
これでもか、というくらい顔を叩いてマヒデブラン。
「…手を出すな、と言ったはず」
その言葉に、ギュルシャーは、「お妃さまのために…」と答えるが、また暴行が始まる。
「愚か者。もう終わりよ。お前のせいで首を斬られる。私の身が危ない」
この人は…。マヒデブランは…。
なんで、こんなにも自分勝手なんだろう、と思うワタクシ。
方法は間違っているけれど、ギュルシャーは貴女のためにやったこと。
それを。
「ここから出てって。顔も見たくない」
と追い出してしまう。
けれど、すこし冷静になったのか、直ぐに呼びもどすけれど、もう無理。
叩かれた事でフラフラなギュルシャーは階段を踏み外して落ちてしまうが、ちょうどそこへ宦官たちが歩いてきて、「階段から落ちた。治療院へ」と伝えると、2人の宦官はギュルシャーを運んで行った。
治療院って、遠いのね。
スンビュルに抱えられてきたギュルニハル。
側女の皆も心配で、ゾロゾロとついてきた。
……人望があるなぁ、ギュルニハルは。
スンビュルは、呪文のように呟きながら治療院へと向かっていく。
「ギュルニハル、死なないで。私が助けるから。死なせたりするもんですか」
あぁ…。
こんな事を言いながら、スンビュルはこんなにギュルニハルを運んでいるのよねぇ。
そんなにも気に入っていたとは…。
医女の手当を受けているギュルニハルをもう、ウルウルな瞳で見つめているだけのスンビュルは「死んだの?」と問うけれど、なかなか医女は答えてくれなくて…。
まぁ、それどころじゃないんだろうけど。
「…生きてます」
と、答えるのがやっとだったのかも。
「何としても救って」
ギュルニハルの治療している様を、何とも言えない表情をしているスンビュルを見て、
なんだか…ワタクシ誤解しそうになる。
「神よ、奪いたもうな」
私も、そう願いたい。
だって、天使だもん。
頑張れ、ギュルニハル。
後宮内が騒がしいのに気が付いた母后さま。ダイェを呼ぼうとした時に
その本人が報告の為にやってきた。
勿論、ちょっとお怒り気味な母后さま。
「夜中に、一体何の騒ぎ? 争いか何か?」
そう尋ねるが、ダイェはそれよりももっと深刻な事だと伝える。
「…ギュルニハルが刺されて、瀕死です。隣には、セリム皇子もおられました」
この報告に、母后さまは非常にビックリし、何時も以上に真剣な表情になりながら、
皇子の心配をすると、ダイェは、今は母親の許にいる、と伝えるとどこか少しホッとした
表情になっていた。
「ヒュッレム妃は、自分が狙われたと騒ぎ、皆が疑心暗鬼になっています」
と、最後まで報告を聞いて、母后さまは直ぐに参ろう、言って慌ててヒュッレムの許に行く。
流石、母后さま。
行動が素早いと思います。
「私を殺そうとしたのよ。…これは、私の血だったかも」
とセリムを抱っこしながら少しだけ落ち着きを取り戻したヒュッレムの許に、
母后さまがやって来る。
そして、ヒュッレムの寝台を見て息をのむそのタイミングでヒュッレムは母后さまに、
瞳をうるうるとさせ、漸く落ち着いたと思ったのにまた少し興奮しながら、話しかける。
「母后さま、殺人鬼は私を狙ってます」
しかし、どっしりと構えた母后さまは、狼狽えているヒュッレムに対して安心させてから、
ニギャールに状況を説明させる。
「私とお妃さまは浴場におり、戻るとギュルニハルが瀕死の状態でした」
淡々と答えるニギャールに母后さまは、今は本人の前で言ってはイケナイ言葉を口にする。
「死んだのか?」
その言葉を聞いたヒュッレムの表情は、悲しみに満ちて泣き出してしまう。
「泣くな。子どもたちと私の部屋へ。
…ダイェ、容体の確認を。マヒデブランとムスタファの様子も見て」
と、ここでもテキパキとダイェに指示をだしているところは、本当に母后様って頼りになるわね。
でも、ダイェあっちこっち動いて大変ね。
自分でちゃんと動いて、実際に見てくるんだなーとちょっと関心。
…ほら、部下とか沢山いそうなのに。
母后さまの命で、治療院へとやってきたダイェ。そこには、運んでから心配のあまりか
てこでも動かないスンビュルが立っている。
「神よ、娘を救いたまえ」
と、余りの酷い状態につぶやいたダイェ。
「……お妃さまの部屋に入るほど不敵な殺人鬼がいる。警戒を怠らず、側女達を守って」
と隣にいるスンビュルにどこか疲れたような様子で頼むダイェ。
その時に、治療院の扉が開いて、ギュルシャーが運ばれてきた。
ダイェが宦官に「どういった状態?」と尋ねると、宦官の1人が「階段から転落を」と答えるが…。
「転落? 殴られた痕よ。口も鼻も血だらけ」と、ギュルシャーの怪我の状態を見てつぶやく。
その状況を母后さまに知らせる為、1度部屋に戻るのだった。
あー、忙しい夜だよね。
頑張れ、ダイェ。
戻って空くに報告するのは、「ギュルニハルは生きている」という事。
その報告を聞いたヒュッレムは、またウルウルな瞳のままで、「ハァッ」と喜びのため息と、
笑顔を見せたら、ダイェも母后さまも、少しだけ表情が和らいだのよね。
やっぱり、心配だもの。
……なんだけどさぁ、ぬか喜びさせてはイカンってば、ダイェ。
「医師が手尽くしていますが、予断を許しません」
この言葉を聞いたヒュッレムはまたまた険しい顔に逆戻り。
あぁ、可哀想。(´;ω;`)ウゥゥ
母后さまは、もう1人の妃はどうしているかも心配でダイェに様子を聞くと、ダイェは淡々に
「騒ぎは知らないのか、休んでいます」と報告。
それに対しては「良かったわ…」と胸をなでおろしているが…。
果たして、本当にそうなのか。
粗方の状況が確認できたとして、母后さまは寝具を用意させ一晩を明かす。
明け方に、ニギャールはイブラヒムに報告をしているところから始まりました。
けれどさぁ…。その報告の仕方ってあるか? って思っちゃいましたね。
「ヒュッレム妃の仕業ではありません」って酷いセリフだと思うよ、ワタクシ。
イブラヒムは疑っていたのか、それとも全員を疑っているのか。
「いつ、浴場に?」
と質問をしていると、ニギャールが、
「陛下がお帰りのあと、子守を頼まれたギュルニハルは、セリム皇子を抱いて寝たようです。
ヒュッレム妃と私は、非常事態とも知らずに浴場で雑談をしました。
ヒュッレム妃は狼狽えて、殺されるとおびえていた」
と、一連の流れの報告をニギャールがしているけれど、スンビュルがその場にいないのは
何故なんだろう…とワタクシは思うのね。
こういうのって、スンビュルが報告するのが当然なのでは…?
そう思っていると、まだイブラヒムの質問は続くのよねー。
先に到着しているのは、スンビュルなのに。
女官長の方が気配りとかが、細かいのかな? だから、聞くのか?
「目撃者は?」
「おりません」
「怪しい者に心当たりはないか?」
…ここで、ちょっと考えた素振りを見せた上での返答。
「分かりません。アイシェも刺殺でした。我々の中に殺人鬼が紛れています」
って、ニギャールが答えた内容が気に入らないのか、それとも忌々しいと感じたのかな、
イブラヒムがちっちゃく舌打ちをしたのよね。
…チッって。
チッって、ナニー
そして、宙を見てはポツリと一言。
「困ったものだ」
そして、ふと思ったのか、イブラヒムは「陛下はご存知なのか?」と問うと、ちょーっと顔が曇りましたね、ニギャールさん。
「昨夜は、母后さまの命で、ご伝達はせず」
と聞くと、数回頷いただけ。そして、信じられない言葉を言うのよね。
「もう行け。この件は私が調べる」
いや、いいのよ。調べるのは。
だけどさ、イブラヒムは部下の報告に対してさ、もう少し労いの言葉をかけたりしないのかっ? とワタクシ感じたのですが。
もう行け、の前に。
少なくとも、ご苦労だった、ってなんで先にこういう言葉がでないかなー。
こんな上司チョー嫌だ。ヽ(`Д´)ノプンプン
一方、夜が明けた母后さまのお部屋では、スンビュルとダイェが説教をくらっていましたね。
あぁ、だからイブラヒムの方にはスンビュルがいないのか…。
「後宮の監督者たる者、人殺しが皇子の寝室に侵入した折、どこにいた? 役立たずめ」
と、ダイェに向かって激を飛ばすけど…。母后さま、そりはいきなり無茶苦茶ですぅ~。
けれども、ダイェはグッと堪えてこう言う。
「お許しください。犯人は見つけます」
ついで、スンビュルも。
「母后さま、必ずこの手で処罰いたします」
余程、ギュルニハルを刺した犯人が憎かったのか、と思いましたワタクシ。
母后さまは、スンビュルの言葉に対して、「それが偽りなら、私がお前を処罰する」
と、言い放った時のスンビュルの表情ったら。
ぴくっと反応したかと思えば、気になる点が1つあったようで、早速報告する。
「母后さま、1つご報告が」と言った時の隣にいたダイェの表情がまるで
「余計な事を言うな」とでも言わんばかりの顔つきでスンビュルを見つめる。
それを見返したスンビュルだが、母后さまが「言いなさい」と言った事で、話し始める。
「昨夜、ギュルシャーも治療院に。顔が傷だらけです。ダイェ女官長もご覧に」
スンビュルが報告している時に、ダイェは思わず上目遣いをして母后さまを見つめていた。
この時の彼女の心境はどうだったのかな~~。
母后さまは、「まことか」とダイェに確認を取っている時にも神妙な顔つきでいたので、言いたくなかったのに…。そんな感じなんだろうか。
「本当です。様子を見に来てから階段から転落を。落ち方が悪くひどい状態です」
ダイェからの言葉で母后さまはひとつため息をついてから、「マヒデブランを呼びなさい」と伝えると、隣にいたスンビュルを見ては、「お呼びします」と答えた時。
血相を変えてやってきた皇女ハティジェがやってきた。
「母上、何事ですか?」
ハティジェは、どこからどういった情報が入ったのかな。その娘の姿をみて、思わず本音を漏らす母后さま。
「あぁ、ハティジェ。…もうさんざんよ」
本当、ワタクシもそう思う。
母后さまに呼ばれたマヒデブラン。どことなく、様子がおかしい事に気が付いていた。
「ギュルニハルの容体は深刻だと伺っています」と、目を伏せながら話しをしていると、
ハティジェはすかさずに言う。
「ギュルシャーもよ」
この言葉に、マヒデブランは顔を上げて始めて2人を視界にとどめたところが、「私、知ってます。私も関与しています~」と言っているようで、2人からして、もう怪しさ満点ですね。
「…騒ぎの様子を見に行かせたんです。ぼんやりして足がもつれたようです」
説明を聞いている2人の視線は、すっごーい冷たい。やはり相当疑っているようですね~。
「マヒデブラン、今回の件にそなたの関与はない?」
母后さまが聞いてくると、少しワナワナとしているマヒデブラン。
「母后さま、まさか私の仕業だと? 人を殺めるなど。ハティジェさま」
そう答えるマヒデブランに、やはり冷たい2人の態度。そして、ハティジェは更に募った。
「可能性すら考えたくない」
と、表情がもう、冷たいとしか言いようがないよー。
「私もよ。何か知っていることがあれば、話しなさい」
と、母后さままでもが疑ってかかる。今までのような擁護は感じられない。
まるで、その姿は対ヒュッレム用のもの、とずっと思っていただけに、マヒデブランにまでそういう態度をとるとはワタクシ、全然思いもしませんでした。
「息子に誓って何も知りません」
母后さまにそう伝えるも信じて貰えない状況に、母后さまの部屋に入る前から目が真っ赤だったのが、更に真っ赤になっている。
「そう願いたいが、偽りなら私でもお前を救えない」
そうキッパリと言うと、マヒデブランは意気消沈したようになってしまう。
「側女の無事を祈ろう」
と言って、マヒデブランとの話は終わったようだった。
頑張れ、母后さま。
今回の回はとても長い感想になってしまいましたので、
この続きはー後編ーへ続きます。
良かったら、最後までお付き合いください。