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ACアダプタが壊れて、昨夜からPCが使えませんでした。これまで何個アダプタを駄目にしてるんだ自分……使い方が乱暴なのか、それ自体に問題があるのか……
幸い近くにMac専門店があるから何とかなったけれど、単価も高いんだし、少し考えなくちゃですね。
さて、海賊ものと言えば、真っ先に名前が上がるのが、ロバート・ルイス・スティーブンソンによる児童文学の古典『宝島』。
それを原作として、東京ムービー製作、日本テレビ系列で1978年に放送されたのが、このアニメ『宝島』です。
放送時間帯が日曜夜『サザエさん』の裏だったため、視聴率は振わなかった反面、熱狂的ファンも多く、30年前の作品ながら、今なおこれこそが「マイベストアニメ」だと支持する声の絶えることはありません。
そして私自身にとっても、これはいつまでも最愛のアニメ作品であり続けています。
このお正月、全26話を一気に観て、その思いを再確認しました。
演出・出崎統、作画監督・杉野昭夫、美術監督・小林七郎、撮影監督・高橋宏固──この作品を作り出した人たちの名前を列挙するだけで、今も胸が高鳴るほどです。
もちろん、作詞・岩谷時子、作曲・羽田健太郎、歌・町田よしとによるオープニングテーマにも、今なお心震わされます。羽田さんのお名前を知ったのは、この作品によるもので、訃報に接した時には本当に残念でなりませんでした。
声の出演がまた素晴らしい。
ジョン・シルバー:若山弦蔵
ジム・ホーキンス:清水マリ
ビリー・ボイド:黒沢良
リブシー先生:家弓家正
トレローニさん:滝口順平
スモレット船長:江角英明
グレイ:野島昭生
オウムのフリント:北村弘一
ベン・ガン:肝付兼太
パピー:神谷明
ハンター:水島裕
ジョイス:石丸博也
『鉄腕アトム』でお馴染みの清水さんを中心に、洋画吹替えの大御所を配し、神谷さん水島さん石丸さんという、ロボットアニメのヒーロー役などで活躍していた当時の「若手人気声優」さんたちが脇に回るという、何とも贅沢な布陣でした。野島さんを知ったのも、この時が最初でしたっけ。
当時のテレビアニメでは一人の声優さんが何役も演じることが当たり前でしたが、この作品では珍しく一人一役が守られていました。例外がオウムのフリント役の北村さんで、その他にもトレローニさんの執事レッドルース爺さんや、インチキ預言者(?)アブラハム等、複数の「人間」役を演じています。
そして、何と言っても若山弦蔵さん!この人を得たことで、シルバーというキャラクターに、どれほど生きた「人間」としての深みが与えられたことか。私にとって若山さんは、ショーン・コネリーではなく永遠に「ジョン・シルバー」です。
それにしても、再見して改めて思ったけれど、一応子供向け番組だというのに、これほどオッサンしか出て来ないアニメもありませんね。
まあ原作でも、女性の登場人物はジムの母くらいしかいない訳ですが、それじゃあんまりだと思ったのか、アニメにはジムのガールフレンドのリリーというオリジナルキャラクター、そして原作では噂のみのシルバー妻が、ちょっとだけ出て来ます。
作品自体については、もう何を言っていいか……語れと言われれば何日でも語れますよ。
東京の地上波では、その後一度も再放送されなかったので、観直すのは実に30年ぶりだった訳ですが、それでも、あのシーンもこの台詞も記憶の中にあるそのままだったことに驚きました。それだけ強く心に焼き付いていたんですね。
作画や演出も、当時のテレビアニメの技術や技法の極限を行くものでした。いま観ると「古い」と感じられる演出もあり、同じマッドハウス作品でも、表面的な「綺麗さ」や技術はその後どんどん進歩して行きましたが、全体的な完成度の高さに於いて、今なおこれは群を抜いていると思います。
ストーリーの流れは原作に添いながら、そこに様々な肉付けがされていて、その一例が「グレイ」というキャラクターの扱いです。
一応原作にも登場する人物ですが、ほぼオリジナル・キャラクターと言っていい描かれ方で、当初はモブに紛れていたのが、後半になって出番もどんどん増え、なぜか顔まで二枚目化し、或る意味シルバーと対比されるキャラクターになって行ったのですから。
無口なナイフ投げ名人、実は仲間思いの心優しい男──『荒野の七人』のジェイムス・コバーンと言うより、寧ろその元キャラクターである『七人の侍』の久蔵(宮口精二)に近い感じで、今なお女性ファンの人気をシルバーと二分しております(笑)。
そして、アニメ版脚色の最も重要な点は、他でもない海賊ジョン・シルバーとジムの心の交流、それを通じてのジムの成長を丁寧に描いたということです。
実は、シルバーというキャラクター自体については、巷で言われるほど原作からかけ離れているとは思いません。
原作シルバーも、それまでの児童文学にはなかった「悪人だけど魅力的」なキャラクター、勧善懲悪の枠組みを逸脱する人物として描かれていた訳で、それを現代(30年前ですが)の子供向けアニメの中で描けばああなるということです。
そしてそれは少年ジムの目を通した時、「大人の男」の完成されたモデルケース(あえて「理想像」とは言いません)として、観る者の前に提示されることになります。
改めて『宝島』全体を観ると、このシルバーというのは本当に「ワルいやつ」です。あくまでも自分の欲望に忠実で、宝がほしければ奪うし、邪魔者は殺すし、ジムに優しくしたければ優しくするし、そのすべてに於いて、誰にも文句は言わせない。信じるのは自分だけ。体力も意志の力も、そして優しさも残酷さも人一倍。更に頭は切れる、口はうまい。どうにも始末に負えない男です。
ジムにとっては、守ってくれたかと思うと裏切られ、騙され、また優しくされることの繰り返しでしたが、そこで傷つき立ち止まったままではいられません。実際自分の命がかかっている以上、どうしても闘って乗り越えるしかないのです。
シルバーこそがジムにとっての「海」であり、立ち向かうべき「大人の世界」そのものでした。
そして「ジムとシルバー」の物語に真のクライマックスが訪れるのは、宝が発見された後の25話と後日談の26話に於いてです。殆どオリジナル展開となったこの最終2話があったからこそ、アニメ『宝島』は、歴史的傑作として「伝説」たり得たのだと思います。
DVDセットはテレビシリーズ26話が7巻に収められ、1987年製作のダイジェスト劇場版が1巻の、全8巻です。でも、うちにあるものとはジャケットデザイン(イラスト)が違いますね。こちらの方が新バージョンということでしょうか。
劇場版のアテレコは声優さんを一部変更、シルバーが羽佐間道夫さん、ジムは野沢雅子さんで収録し直されました。
私自身にはまだこれを観る勇気(?)はありませんが、今年のお正月に Tokyo MX で放映されたこの劇場版によって新たにファンとなった人もいると聞くと、やはり嬉しいです。