という訳で、先日US版DVDを入手した『The Prestige』(邦題『イリュージョンVS』→その後『プレステージ』に変更されてホッとしました)、ネタバレなし感想をちょっとだけ書きます。
原作についての感想も当ブログ内のどこかにありますので、ご興味があればご覧下さい。
まず、既に海外公開時から言われているように脚本(脚色)がいい。書いたのはクリストファー・ノーラン監督の弟で、ずっとコンビを組んでいるジョナサン・ノーラン。
クリストファー・プリーストの原作『奇術師』は、二人のマジシャン同士の、彼らの子孫をも巻き込んで続く終わりなき闘争──と見えたものが、こちらの「読み」を外して、どんどんトンデモない方向へと展開して行き、呆然とするような結末を迎える訳ですが、映画は現代パートを潔くカットし、まさにその「二人のマジシャンの終わりなき闘争」に絞って、SF風味も交えた一編のミステリとして構成されています。
メイントリック自体は原作通りですが、そこに到るまでの話の持って行き方が巧いと思いました。
トレイラーに見るボーデンの「アブラカダブラ」は、特に原作を知らない人だったら、そういうことか!と膝を打つこと請け合いです。
という訳で、原作も現在映画宣伝用の帯を付けて、書店で平積みされていますが、この作品については、映画を先に観ることを強くお奨めします。その方が絶対楽しめるし、二度三度と観直したくなることでしょう。
但し、決して愉快な映画ではないです。
主人公たちの争いは、原作ではどこか楽しげにも見えましたが、映画はより悲痛で陰惨なものになっています。
演じるヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベイルの演技は共に素晴らしいものでした。脚本・演出の良さもありますが、二人の演技も、登場人物たちやそのトリックに原作以上の深みとリアリティをもたらしています。また、原作以上の役割を与えられている(と言うか、原作の幾つかの役をまとめた感じか?)サー・マイケル・ケインのカッターも、またニコラ・テスラ=デイヴィッド・ボウイも良かったです。
主演二人の内、多くの人が賞賛するのはベイルの方でしょうが、私はあえてジャックマンを褒めておきます。
あの「天才」クリスチャン・ベイルを向こうに回して、よくあれだけ出来たものだ、と言いたくなるのは身贔屓かも知れません。しかし、以前ロバート・ダウニーJr. が賞賛したという或るシーンは、なるほどと納得できるものでした。
何にしても、愛と死と憎悪が渦巻く(このフレーズの元ネタが判った人は、心の友とお呼びしたい)ストーリイや彼らの関係も、必要以上に大仰でなくクールに抑制された演技、また演出で表現されていました。
決して互いに相容れることはなく、しかし逃れることも出来ない執着の行き着く先は──
Are You Watching Closely……?
おまけにルーツの役は誰なのか?などという話まで・・・いや、あれはアレです・・・あんまりうまかったんで気が付かなかった?とか。(旦那は気が付きませんでした)一度見ただけでは見逃す場面がちらほらありました。
この映画、時間軸は行ったり来たりするし(それも眩惑のため?)、プロットも複雑で、確かに流して観ていたら「ええっ!?」と思うことが多いですよね。
何度か見直して伏線の確認をしたくなります。
でもルーツはどう見たってアレでしょう(笑)。或る意味儲け役だと思います。
19世紀の話なのに、SF風味って…?と疑問でしたが、謎が解けました。
エンジャ(確かにアンジャと発音されてましたね)は分かりやすいけど、ボーデンは何考えてるかわからない所がムカつきました(笑)
見る側はまんまとクリスチャンに騙されてるような気がしますねえ。
映画館が見るのが益々楽しみになって来ました!
ついにご覧になりましたか!
本当にボーデンは何考えてるかわからなくて、でも実はその「何考えてるかわからない」所こそがポイントと言うか、既にボーデン=クリスチャンの術中にはまっていると言うか……
隅々まできっちり構築された神業演技と言い、全くクリスチャンはいろんな意味で憎たらしいです(笑)。
でもヒュー=アンジャも、そんな彼に翻弄され、様々なものを奪われて(なんかすごい表現ですが)、妄執のとりこになって行くさまには鬼気迫るものがありました。
劇場で観るのが楽しみです