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高橋冨士信 fj鷹@gmail.com

ものつくり職人と研究者・技術者の差

2016年05月03日 | 地球/宇宙
当方の父親は鋳物屋の職人の頭であった。
塩を舐めながらの大変な重労働であったと思う。

銅や鉛の合金を溶鉱炉の中で重油バーナ加熱で白黄色に高温融解したものを
手作業で汲んで、土の型の中に流し込んで、製品化して生活を営んでいた。

父親の口癖は、
当方が学生の頃、週に1回くらい手の指爪を切っていると、
「手の爪が伸びるのは、ものつくりの仕事をしていない証拠だ」といい、
自分の指先を「見てみろ」と、よく当方に見せたものであった。

確かに父親は爪など切る必要もなかった。
土と金属と加工機材との格闘の仕事の中で、いつも爪はすり減ってしまっていた。

対照的に当時の当方の指の爪はよく伸びてしまい、
「ペンだこ」だけが固く大きくなっていた。

ものつくり職人と研究者・技術者の差は手の爪とペンだこを見れば
区別の着く時代であった。生産現場でも最近は「キーボードたこ」だろうか。

大正生まれの父親には、
現在の日本や先進各国のような、ものつくり製造業従事者の
人口比率が10%台になることは予想もできなっかったことだろう。

直接ものを作らず、代わりに頭脳とキーボード・鉛筆を使うサービス型産業で
食って行ける時代になるとは、父親には予想できなかったであろう。

「おやじの背中をみて男子は育つ」というが、
そのためには時代の変化があまりにも速すぎたと思う。

頭脳とキーボードそしてネットワークによる仕事・業種・業態の変化は著しい。

ものつくり父親世代は自分が作ってきたもののうち自慢できるものを残している。
その手作業・力技の成果物の素晴らしさは永遠の命をもっているかのようである。

一方、頭脳産業も成果を形に残せることもあるが、激しい国際的競争の中で、
電子ファイルまたは紙としてクラウドの中に埋もれてゆくものが大半であろう。

テレビ番組などで現在でも「ものつくり」の熟練技をみせることがあるが、
その事自体が、希少価値であることを自ずから示しているようである。

それでもまだ日本は製造業従事者比率が10%台の上の方である。
しかし新興国・途上国の追い上げは避けようもない。

日本の若者たちが大好きな百均の店に置いてあるものは、
こうした低賃金途上国の労働者の成果物である。

苦しいところであるが、強いて結論付ければ、
レガシーなものつくりとネットワーク技術のハイブリッド化に
一層の磨きをかけることがIoT時代の日本の製造業の存在価値なのかもしれない。

しかしIPv6やLinuxなどIoT時代の必須ICT/ネットワーク基盤技術への熱意は、
90年代の日本にあったような凄まじさが消失している。

成田空港へ戻ってくると、どっと生ぬるさに押し戻される時代の雰囲気のなかで
90年代までのあの熱気を覚えている世代が、たとえ嫌がられようとも、
熱気再興を図るしかないだろう。

それが今の父親が子供達に見せるべき背中であろうと思う。
手の指爪を切りながらでも仕方があるまい。

まずはGNSSにおいて日本の存在意義を示し一矢を報いることが必須である。




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