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ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

002 リオの初陣

2012年07月22日 14時48分12秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 シノンの森をもう少しで抜けそうな所で、巨大な鳥、ガルウイングが襲いかかって来た。紫色の毛羽による突風と、空中に浮かび移動する事により、中々攻撃を当てる事が出来ない。
 先頭に立つハリードのお陰で、嘴(くちばし)と引っ掻き爪による直接攻撃を防いで貰ってはいるが、中々反撃に転じる事が出来ないまま時間だけが過ぎる。

「・・・っサラ、お前の影ぬいで奴の動きを封じる事は出来ないのか?!」
 
 ハリードが攻撃を防ぎつつ、後方支援している仲間に問い掛ける。

「無理よ、もう力が残って無い・・・!」  
 
 長弓を持ち、牽制する為に打ち込む事しか出来ない彼女の息使いが荒い。
 確かロマサガはWP(技ポイント)、JP(術ポイント)というパラメータが存在していたはず。使えないと言う事はWPが尽きたと言う事だ。

「エレン、お前は斧でトマホークが出せるか?」
「やってみるよ!」 

 エレン姉さまの渾身の力を込めた手斧が、ガルウイング目掛けて投げつけられる。斧によるブーメラン効果で、自らの手に返って来て反応を待つ。羽根に当たったは良いが致命傷にはならず、逆に怒らせたようだ。

「ギャアギャアッ!」 
「ぐっ! エレン、避けろ!!」
「なっ・・・? きゃあっ!」
「エレン!」 
「お姉ちゃん!」

 ハリードの斬撃を強健な翼で受け流し、狙いをエレン姉さまに定めたガルウイングが攻撃して来た。空高く舞い上がった高度からの体当たりは、人間にはひとたまりも無い―――って!?

「エレン姉さま!」

 本当の“死”では無いにしろ、気絶して倒れる姿を見て私の頭は沸騰する。

 美人な彼女を
 麗しい姉さまを
 一番好きなキャラをよくも!

「リオちゃん、駄目よ!」

 モニカ姫から離れ、彼らの持ち寄った道具袋の中を素早く漁る。途中ゴブリンから引ったくった棍棒をしっかりと持ち、私は二本足で地に奮い立つ。

 肉球が何だ。猫、舐めんじゃねーぞっ!

 決して速いとは言えない速度で、近付く私を目に留めた奴は自慢の翼で振り払う。
 豪速を纏った疾風と振り払いのせいで、体重の軽すぎる私は近くまで行けそうも無い。だったら――!!

「ハリード、私を背負って近くまで寄れる?」
 
 前衛で攻撃を防いでいた彼にお願いする。近くまで寄って、尚且つ無事に済めるのはこの中では彼しかいない!

「出来なくは無いが、お前がその棍棒で打ち込むのか?」
 
 うん!と返事する。女に、猫に二言は無いっ!
 ハリードの顔が一瞬呆気に取られて、暫く逡巡した後表情を引き締め直す。私の真剣な顔を見て、どうやら検討してくれると見た。

「何か策でもあるのか。・・・よし、分かった。サラとトーマスはエレンを守りつつ防御、これ以上攻撃を受けさせるな。ユリアンは一人で辛いかもしれんが奴の攻撃を俺達から逸らしてくれ」
「分かった!」
「俺も、出来るだけ援護するよ」
 
 ユリアンとトーマスの心強い返答を貰い、作戦は動く。
 
 ユリアンの巧みな陽動により、今度は奴の懐にまで近付くのが可能となった。今の私は、ハリードの広い背中におぶさっている。
 棍棒を手に持つ私は一見間抜けな光景とも取れるが、危険を冒してまで皆が協力してくれるんだ。失敗なんか出来ないし、したくも無い。

「行くぞ、リオ!」
「いつでもオッケ!!」 

 ハリードと猫による二人の連携攻撃を見よ!

 かぎ爪による攻撃をハリードの曲刀で弾き、怪鳥(ガルウイング)に少しづつ近付いて行く。ユリアンの誘導により、奴の意識が後衛の彼に半分は行っている。

 奴の攻撃範囲内に入った私達に気付いた怪鳥は、近付けさせない様にと私達に慌てて攻撃を開始した。奴の会心の一撃による嘴(くちばし)攻撃をハリードに防いで貰い、私はチャンスを伺う。

「・・・剣だけが取り柄だと思うな・・・よっ!!」

 曲刀で防ぎつつ睨みあいが続く中、彼が右足で怪鳥の腹を蹴り上げる。突然の痛みと驚きで、鳴き声を上げる怪鳥に隙が出来た。

「ギャアアアッ!!?」 
「今だ、行け! リオ―――!!!」

 敵は怪鳥、ガルウイング!

 両手から外れない様に、しっかりと両の手で握りしめた棍棒を奴の頭にお見舞いする為に。
 ハリードの頭に、泥が付いた毛むくじゃらの白い足で踏ん付けて、思い切り跳び上がった。
 喰らえ、リオ流 “脳天割り”!

 ポコォォォン!!

 小気味いい音が辺りに響き渡る。
 ・・・なんて間抜けな音なんだろう。猫の腕力ではこれが精一杯なのか。

「ギャ、ギャアアア???」

 振り下ろした“脳天割り”を喰らったガルウイングは、目を回して地に倒れ込む。
 確かこの殴打は、眠りを誘発したはず。案の定、一時的に奴は眠りについた。

「皆、今の内に宜しく!」
「良くやった、リオ!!」

 ハリードとユリアンによる連続攻撃を叩き込み、怪鳥は遂に地に伏せる。
 戦いにより騒がしかった深い木々に覆われた森は、いつもの静寂さが戻った様だ。 

「はぁ、助かったぁ。この森から出れないかと思ったよ」 
「やれやれだな。しかしシノンの森にあんな鳥は今まで見なかったんだが」

 博識のトーマスが頭を捻っている。
 眼鏡をクイッと押し上げて今までの記憶を掘り起こしているが、答えがどうしても出そうにないみたいだ。この時点で少しばかり知識を持っている人は、ここで答えを出すつもりは無いらしい。
 勿論私も答えを知っているが、ここで言って疑われても困る。
 エレン姉さまの回復をしてから私達七人は、ミカエルさんの居るロアーヌ平原へと歩き出した。


――――――――――

 リオの習得技 脳天割り 
 眠りの耐性の無い敵に当てると高確率で眠らせる事が出来る。力の強い敵、又はジェル系モンスターには棍棒による攻撃が効かない為、使い所を選ぶ。


001 シノンの森で

2012年07月22日 14時45分26秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 女神エリシュマイル、通称エリーちゃんに再び猫にされた私は森の中に居た。

 見渡すは一面の森だらけ。大木が視界を遮って、向こう側も何も見えない。
 朝なのに木漏れ日は今一つで、太陽もお目見え出来ない。
 先程まで雨が降っていたんだろうか、土が湿っぽくて歩きづらいったらない。
 雨と木々と泥の匂いが混ざり、あんまり嗅ぎたい匂いでもない。

 ・・・エリーちゃん、次会ったら覚えとけよ。

 彼女に何かの報復を考えていると、フと温かい腕を思い出す。
 ガウラは、彼は、寂しがっていないだろうか?姿を見せない私に嫌気がさして、魔族の世界のデルモントを出ないだろうか?

 悲しみが胸一杯に広がる。
 彼が居ないと過ごして行けないのは私の方。
 優しい心を利用して、守護獣なのを良い事にしがみ付き、ガウラの自由を奪い取る・・・彼の居る世界に戻ったとしても、もし傍に居てくれなかったら。その時私は―――?

「へへっ、ネガティブまっしぐらだ・・・」

 切り株にしゃがみ込み、涙を零す。
 どんなに考えても、この状況は覆らない。だったら、エリーちゃんの言う“ロマサガ3”の世界を楽しむしか無いじゃないか。

 ブルブルッと白い体を震わせて、気合いを入れる。すると、複数の足音が前方向から聞こえて来た。
 今の私は猫だから、少しばかり遠くの音も拾い取ることが出来るんだ。

「ここの森を抜けると、ロアーヌ侯が居る陣営に辿り着く。陣形はさっきと同じ、前衛に俺、ユリアン、エレン、トーマス、サラが後衛で防御しつつ攻撃。モニカ姫はサブメンバーだ」
「分かった。皆、気を引き締めて行くぞ!」 
「分かったよ」
「ああ」
「うん!」 
「皆さん、もう一踏ん張りです。頑張りましょう!」

 おおっ、もう主要メンバーが来ちゃったじゃないか!! こうしちゃいられない。是非とも仲間に加えて貰わないと。

 座っていた切り株から立ち上がり、男の人三人、女の人三人の計六人の元へと駆け出す。すると色黒の顔が特徴の、アジアンテイストを匂わせる目付きの悪い男の人が私の気配を一番に感じ取り、曲刀を構えて立ち塞がって来た。

「何者だ!」
「えっ、何か居たの?」
「全然気付かなかった・・・」
「俺も、全然気付かなかった」
「えっ、えっ、ええ!!」

 彼らから二メートル離れた所から思わず立ち上がり、武器は持っていないと示す為に、白い毛むくじゃらの腕を上にあげ、万歳の格好にして立ってみる事にした。警戒を緩める事無く、徐々に近付いて来る彼等に一言。 

「は、初めまして。あの、私の言葉が分かりますか?」
 
 初・人間との会話。さあ、ちゃんと通じるのかな?

「猫が・・・」
「喋った・・・?」

 もう一度、はっきりと喋った方が良いかな?
 こういうの、始めが肝心だし。良い印象を彼らに植え付けなくてはっ!

「う、嘘じゃないですよっ! 猫だけど、喋れます!」 
「「「「「 嘘ォォォ!?? 」」」」」
「・・・」

 流暢に話す私の言葉に、六人もの二対の瞳が一斉に見開いた瞬間だった。


***

 森の中を徘徊している、地狼やゴブリン、妖精(ピクシー)を薙(な)ぎ払いつつ自己紹介をして貰っていた。

「俺はユリアン。ポニーテールの彼女が幼馴染のエレン、その妹がサラ、眼鏡を掛けたこいつは俺の友達トーマス、そんでこの御方はモニカ姫、こっちの色黒の目付きの悪いおっさんがハリードな!」 
「目付きが悪いは余計だ」
「よっ、よろしくお願いします! 私の名前はリオって言います」

 緑色の髪の毛が特徴の、長剣を手に持つ彼は友好的に喋ってくれる。ゲーム中でのユリアンの性格は、正義感に溢れる青年だ。私が猫でも疑う事無く喋ってくれるから安心する。

「私、猫が喋ってる所初めて見たよ。リオ・・・で良いのかい? 私の事はエレンで良いからね!」
 
 頭を擦ってくれるポニーテールの美人さん、エレン姉さま。
 あう。私、主人公達の中では一番好きで、何回も操作しつつ、常にメンバー入りを果たしていた彼女。憧れの人に喋りかけて貰えるなんて、リオ感激・・・!!

「お姉ちゃん、リオちゃん泣いてるよ? どうしたのかな」

 栗毛色でパーマ掛かった髪の毛が特徴の、一見頼りなさそうな女の子サラ。腕っ節が強く、且つ美人のエレン姉さまの妹はあんまりパッとしないんだよな。けど、この子が一番物語に関わってるのは知ってるし。

「この森は危険だから、リオは俺達と一緒に来るかい?」
「うん、是非お供させて下さい!!」

 眼鏡を掛けた紳士、トーマス。ゲーム中では彼をあんまり操作する事は無かったんだよね。特徴と言ったら・・・様々な地域の農業、商業、食料品と、果てはホテルまで幅広く買収するという重役が、彼には課せられていた筈だ。私はお金を稼ぐのを苦手としているので、彼を操作したのはたったの一度だけだった。

「こんな時に不謹慎かもしれないけれど、仲間が増えるのは嬉しいわ。一緒に行きましょう」

 ここには居ない、ロアーヌ侯国を統治する君主、ミカエルさんの妹モニカ姫。
 ゲーム画面では分からなかったけど、ローブから見える顔は少し憔悴して見えるがそんな事でこの人の美しさは揺るがない。・・・ユリアンが付いて行く気持ちが分かるかも。

「モニカ姫、あんたがリオを見てやってくれっ!・・・っと、よし。後はあの小道を通り抜けるだけだ」

 ユリアン達の先頭に立ち、襲い掛かる地狼を月に模した曲刀で一網打尽に切り捨てるハリード。ユリアンやエレン達が協力して倒す狼達を、彼の放つ斬撃一つで地に果てる。技量も体力も、ここにいるメンバー全員が束になっても彼には敵わないだろう。その証拠に、この世界では“トルネード”と大層な呼び名まである有名人だ。
 
 先頭を歩くハリードの背中を眺めながら一同、ケモノ道に足を踏み入れたその時。自分達に大きな影が出来た。

「な、何だあれ・・・」
「知らないよ。あんなデカイ鳥、見た事も無い」
「アレは・・・ガルウイングだ! 来るぞ、皆準備しろっ!!」

 私達の居る頭上を、何度も旋回して威嚇して来る怪鳥(ガルウイング)が、鋭い嘴(くちばし)と爪で襲い掛かって来た―――!!
 

ロマンシング獣記 プロローグ

2012年07月22日 14時39分26秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 白呪記の主人公リオが、ロマンシングサガ3を冒険する物語です。白呪記と微妙に繋がっています。本編には直接関わりの無い様にしますが、この二つの世界観を壊したくない人は見ない方が良いかもしれません。【※小説家になろう様のサイトから、自作小説を移動しました※】

 プロローグ

 私は寝ていた筈だ。
 守護獣ガウラと一緒に、少女趣味のフリルが付いたカーテンが特徴の、お姫様が使うだろう白い巨大な鏡台が設置された、クイーンサイズ程のある大きなベッドで。

 昨日一日は忙しく、ファインシャートという異世界から魔族の世界の眠れぬ町不夜城、“デルモント”へ慌ただしく移動していたんだ。
 移動した後は、デルモントを統治しているファランティ・・・あれ、名前忘れた。とにかく熊を連想させる巨体の魔王さんにお目通りした後、ガウラと一緒に客間を使わせてもらう事になったんだ。でも、目を覚ませば一面青色の世界。ベッドも無いし、勿論ガウラも居ない・・・

「リオ」 
「!!」

 陽光が差し込みつつある中、母なる海を思い出させる雰囲気に、前に一度会った女の人が後ろから近付いて来た。

「エリ、しゅ・・・?」

 自分のド忘れぶりに舌打ちしたい。私にとっては重要な人物の名前を、すぐに忘れてしまうのだから――って!!

「え、嘘。・・・私、猫じゃ無い――?」

 目を見開き、自分の手を凝視して顔を軽くペチペチ叩いてみせる。いや、今まで猫の体だったからそれに慣れてたというか。私の不可思議だという顔を見て、女神さまは麗しく微笑んでお喋りしてくれた。

「久し振り、リオ。元気にしてた?」
「久し振りって言う程じゃ無いでしょっ!あれから一週間も経って無いんじゃん・・・」
 ―――って、そんな事どうでも良いんだった。挨拶じゃ無くて、この人には聞きたい事があるんだから!
 
「あのっ「ねぇ、リオ。貴女にお願いしたい事があるんだけど、いい?」

 両手を後ろに回し、急に上目遣いして窺うように強請る女神さま。
 くそぅ。金髪な上に美人がそれやると、断れないの知ってて計算してるんじゃないの? だって、前まで猫にされて日常を謳歌・・・じゃなくって、強制的に異世界連れてこられた上に、自分の姿を猫に変えられたんじゃ“お願い”なんて聞けそうも無いでしょ。半分はこの人のせいでもあるのに!
 眉を顰めて口から唸り声が出る。半目で睨んでいると、女神さまは言いだした。

「リオ、ちょっとコッチ来て」

 白く透き通る様な柔らかな腕の中に、突如現れた本。表紙の文字はさっぱり読めない。軽く装飾された柄以外には、特徴も何も見当たらなくてどうしたら良いのか分からない。私に気軽く読ませようと、分厚い本を開いて二人で一緒に眺めた。

「・・・」
「この世界もすっごく楽しそう。ねぇ、ちょっと息抜きに此処(ここ)行ってみない?」

 巨大な魚が人を飲み込んで、周りに居る人をその巨体で踏み潰し水圧攻めに。
 巨躯な体と槍で人間をぶん回し、頭上から持ち上げた人間を完膚なきまでに叩き落とす。

 女の人が操る三頭の竜で、人間を熱・冷・雷のトリプル攻撃で息つく暇なく攻め立て。
 死神も真っ青の、良く磨かれている巨大な鎌(かま)で生者の即死を付け狙う、それを見せられて何処が楽しそうで息抜きになると?!

 本の中に居る人物やモンスターは今にも飛び出してきそうな勢いで、臨場感溢れる映像を見ている様な錯覚に陥らせてくれる。ゲームしてる分はそりゃ楽しいだろうが、実際行くとなると別問題でしょ?

「楽しそうだよね?ね?“ロマンシングサガ3”、リオ好きだもんね!」 

 ヤカマシイわ。それ以上喋ると、女神さまと云えどほっぺた引っ張るぞ。既にお願いでは無い。単に我儘に聴こえるのは私だけでは無いはずだ。

「実はぁー、リオに喜んで貰おうと思ってぇ、この本神様からぶん盗って来ちゃった!」
「それで、エリーちゃんは何をしたいのかな?」

 女神さまのイメージぶち壊しだ。何なの、ぶん盗って来たって。長い名前を略してエリーちゃんと言ってやったら、彼女は大きく目を見開いた。

「・・・リオ、思い出したの?」
「えっ、一体何の事?」
「・・・ううん、良いの。コッチの話!・・・それはさて置きリオ、貴女は人間だけど言葉が通じないのと、猫の姿だけど人間の言葉が理解出来て、尚且つ喋れる、どっちが良い?」

 何勝手に話し進めてんだこの女神さま。しかも究極の二択じゃないか。

「どうして猫の姿ばっかりなの! エリーちゃん、私を何だと思ってんの!」
「だってリオが変身する猫姿が可愛いから、ついそれで設定しちゃうの・・・」
「ついって・・・」 

 可愛いと言われて嫌な気分にはならないが、エリーちゃんだけは別。甘やかすと更につけ上がせるだけだ。助長するかもしれん! と、今後の事を危惧して彼女に近づき、今までの鬱憤を晴らそうと頬に手を伸ばしたその時――

「リオ、猫の姿で行ってらっしゃい♪ 因みに二足歩行、出来る様にしたからね!」
「わっ、わわ!!」
 
 凄い吸引力で本に引っ張られる! 
 せめて一回は女神さまであるエリーちゃんの頬っぺたを強く捩じってやりたかったのに。

「存分に楽しんで来てねっ。感想、待ってるから!」

 下半身が本に入ったまま、腕だけで精一杯上半身を支える。これって一種のホラー版、“てけてけ”に匹敵するんじゃ・・・!

「フ、フギャアアアアッ!(エ、エリーちゃん!!)」

 前振りも無しに、猫の姿に変えられたもんだから腕で支え切れなくなった。
 本の中に吸い込まれると、その役目を引き受けたかの様にパタリときつく閉じられ、持ち主の腕の中に収まる。

「リオ、昔も貴女は私の事を“エリー”と呼んでくれたのよ?早く思い出してよ、いつまでこんな気持ちを味わわなければならないの・・・」

 私の――――
 それだけ呟くと光に包まれ、本と共にその場から姿が消える。
 彼女の悲痛な感情を、今は誰も知る事は出来なかった。




ラクトの母上陸 1

2012年02月24日 20時49分58秒 | 小説作業編集用カテゴリ

ラクトの母、上陸 (1)


 猫型の輪郭で形づくられた、肥沃広大なひょっこり猫島。
 バナナとリンゴといった果物が豊作で、らんらん畑には多色様々といったコスモスが咲き乱れた、素晴らしき理想郷。
 食欲を満たす甘い香りと一緒に花びらが咲き乱れ、ミツバチとモンシロ蝶は甘くて濃厚な蜜の味を堪能していた。
 
「ゆうびーん」
「ごくろうさまにょ」

 ひょっこり猫島にいる郵便屋の配達を受け持っている、ホクロウ族のハトルは獣人でもある。
 背中の白い羽と変幻自在のクチバシを持っていて、あとは人間を足したような少年だ。160センチ越えの身長で、ラクトをゆうに見下ろしている。

「よっ、ラクトねーさんは今日も丸い体に磨きがかかってるな、そら、受け取れ」
「雪うさぎだからしょうがないし、丸く磨いてるわけないにょ。口の悪いクソガキめっ」

 ラクト渾身の頭突きをジャンプして避けたハトルは、服のほこりを空中で払ったあと、斜め掛けの革製のカバンから白い封筒を雪うさぎラクトにひらりと手渡し、言うだけ言ってさっさと邸から離れていった。

「ふんふん? 差出人の名前がないにょ。いったい誰から・・・?」

 縦長い封筒の上部を小気味よくあける。そのあと、ラクトの絶叫が猫島に響いた。

 ***

「にょっ、にょっ、にょっ!」
「ラクト、何やってんの?」

 元人間の少女で、今は猫化を維持したままの純白の猫・リオは、素早い動きで掃除を始めたラクトを見やった。 
 いつもは念入りに隅まで掃除しないのに窓と床を拭き、ほこりをチェックしながら掃除をしている。とうぜん、いつもと様子が違うラクトの様子に疑問を持ち、傍まで寄って話しかけた。

「掃除にょ・・・もうすぐ私のマミーが来るんだよ! とうとうひょっこり猫島を探り当てやがった!」
「(マ、マミー?)ニャンと! ラクトのお母さんが。は、初めてじゃない? わたし、変じゃない?」

 毛繕いし、白くてふわふわした猫の体をくるりと一回転させる。
 ラクトによく見えるように、首を傾けたり腰のくびれを強調して、そわそわしながらおすましをした。

「だいじょうぶ、ただの猫にょ!」

 ラクトの丸い手を、笑顔とともにグッと突き出す。
 すると猫のリオの毛並みがぶあっと逆立ち、次の瞬間には険しい目付きになった。

「ただの猫! せめて愛らしい猫と表現してくれたら良いのに」
「お願いだからガウラ連れてデートに行っててよぉ。あんた達がいたら話が余計におかしくなるにょ」

 リオと言い争っている時、床板を激しく歩く音が近づいてきた。髪に水を滴らせたガウラが、風呂掃除のスポンジを持ったまま扉を開けて立っている。
 
「今、でえとという単語が聴こえた。リオ、今すぐでえとしてくれっ」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ガウラ・・・って、水! 水が毛並みに垂れて来るぅ。ニャオォッ」

 スポンジを床にほおり投げたガウラは、嫌がるリオに頬ずりしたまま悦に入っている。
 その隙をついて、リンゴとビスケット、ミネラルウォーター入りのペットボトルと猫じゃらしをバスケットに詰め、雪うさぎラクトは二人をデートに送り出した。

「奴らが出てる間に話を終わらせないと・・・にょ!」

 ピンポーン

 玄関からインターホンの音がする。
 震える体を叱咤して、ラクトは急いで訪問者を迎え出た。




真夏の夜の夢③

2011年08月15日 10時03分36秒 | 小説作業編集用カテゴリ



 真夏の夜の夢 ③


「私を喚(よ)んだ? ラクト」 

 にょ、呼びましたとも! 
 このままではガウラに冷凍蚊にされてしまうにょ。恥を忍んで言わせて貰います、マジ助けて

「ダメ」

 え

「私をほったらかしにした罰よ。そうねぇ、以前にも地獄に行った事があるんだし、もう一度逝ってみたら?」

 どうして私が地獄へ行くにょ
 酷いよ、ルビリアニャちゃん

「私の気も知らないで批判なんて、よくもそんな事が言えるわね。可愛さ余って憎さ百倍って、この事を言うのかしら」

 ル、ルビリアニャちゃん?

「…まぁ、半死になったようなもんだし、そろそろ許してあげようかな」

 うっ、うっ、ギャグなお話のハズなのに、どうしてこんな涙もろくなってるにょ
 お目めから、お水が止まらんにょ…

「…ラクト、私の血を飲んでみる?」

 にょ?

「ニャ、ニャアァ…ルビリアナさん、この蚊はラクトなの? 一体どうしてそんな事に…」
「おい、ルビリアナ。何でこの蚊がラクトなんだ。一人で話を進めるんじゃない」
「この蚊は正真正銘、雪ウサギラクトよ。この蚊から、ラクトの波動を感じる」

 は、波動てそりゃまたどこのジャンルのお話…って、大げさでも何でも、ルビリアニャちゃんが分かってるからそうなんかなぁ

「実は、こっそりラクトの部屋にデルモントの世界の蚊を一匹忍ばせたのよ。ラクトの血を吸ったらどうなるか、ちょっと見てみたくてw」

 にょ~~~!
 ルビリアニャちゃんが仕組んだにょ? やっぱり酷いにょ!

「でも大丈夫よ。我が魔族の世界・デルモントに生息する蚊なら、クロウ家の当主で上級魔族でもある私の血が勝るはず。毒の耐性もあるし、ラクトに血を吸われても体が変わるなんて事はないから」
「おい、リオはさっき吸われたぞ。大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫よ。それにこの蚊は…まぁ、それはさておき、雹土の監獄(グラウンドサークル)を解除してくれない? これではラクトに近づけないわ」
「…分かった」

 ピシ、ピシ…パキィィィン…



 ……っ、うっうっ

「さ、早く私の腕の血を吸って」

 分かったにょ 
 では、頂きます…










******



「にょ! はっはっ、こ、怖かったにょ…」

 猫型のベッドの上で目を覚ます。
 ミンミンゼミが鳴き、白いレースのカーテンからはオレンジ色が溢れだしていた。時は夕刻を告げている。

「……悪い夢だったにょ、本当に怖かったぁ。ゾンビに追いかけられるより怖かったにょ」
「長いお昼寝ね、ラクト」
「あ、ルビリアニャちゃん…」

 自室の入り口で、黒い翼を広げたルビリアナが佇んでいた。
 今日の服装はセーラー服に似せたワンピースを着ている。

「ガウラが晩御飯出来たって。私も頂いていくわ♪」
「そ、そう。ね、ルビリアニャちゃん…」
「ん?」



 ベッドの上に腰かけ、雪ウサギラクトを膝の上に乗せるルビリアナ。
 頭を撫でてくれる彼女は、いつもと変わらずに優しく接してくれる。

「何でもないにょ…さ、ご飯食べよう」
「変なラクトね。じゃぁ、行きましょうか」

 一階のリビングルームに入ると、木材使用のテーブルには猫のリオが座っていた。
 皆で一緒に食べれるように、ガウラが赤ちゃん用の椅子を改造したのである。リオの丁度良い高さでもある。
 それぞれの指定席に座ると、丁度良いタイミングでガウラがお鍋を持ってきた。

「このスープ、リオやラクトも好きだったよな。いっぱい作ったから飲んでくれ」
「ニャオォ~ンw さっすがガウラ。いっただっきまーす」
「頂きます、にょ…?」
 
 ガウラがお鍋の蓋を取って中が見えた。中身は真っ赤な色をした、トマトスープだった。
 匂いも文句なし、カリスマレベルの出来にリオは大喜び。それぞれのお皿に盛り、皆が口付けた。

「リオ用のはこっちな」
「ちょっと薄味にしてくれたのかぁ。面倒だったでしょ?」
「リオが飲み食いする食べ物なんだ。厭わぬ事など万に一つもないさ」
「凄く美味しいわね…あら、ラクトは飲まないの?」
「にょ、あ、赤いスープはちょっと…うぇっぷ…」 

 口元に手を当てて、吐き出しそうな雪うさぎラクト。
 ガウラはそれを見て憤怒したが、リオとルビリアナに抑えられて落ち着いていた。だが、それ以上は追及しないらしい。何故なら、彼らは先ほどの珍事を目の当たりにしていたからだ。

(夢の中で蚊になって、リオやルビリアニャちゃんの血を吸ってたなんて皆に言えないしなぁ…)

「このトマトスープと私の血、どっちが美味しいのかしらね」
「!」
「気絶するほど美味だったのかしら、私の血は」
 
 ラクトの口元に付いたスープを指で拭き、そのままペロリと舐めて妖艶に微笑むルビリアナ。
 紫色の瞳が爛々と輝きに満ち、瞬き一つ出来ぬまま唾を飲み込んでしまった。 
 私の表情を面白げに眺めながら、彼女はスープの変わりにパンを差し出して食卓を共にする。
 

 嗚呼、彼女はどこまで私を翻弄するのだろう。 
 
 離されたと見せかけて、自由と勘違いした蝶は、自らの足で再び蜘蛛の元へ向かうのだ。

 蜘蛛が獲物を離すその時まで。

 異常な執着と共に今生を過ごす事となる。
 
 



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++++

あとがき

あれ、これギャグ…ギャ…グ…?
途中から怖くなってしまった。。ラクトが考える小説ってこんなもんです;



真夏の夜の夢②

2011年08月07日 21時26分37秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 …にょ? なんだか、いつもと違うのは何でにょ。
 エル○、くまの○ーさん、特大化してませんか。





 む、この景色は…私の家の階段ではないか。てか、フワフワ飛んでるみたいってこれ夢じゃね? ちょっくら下まで行ってみよう!

「ガウラァ、ラクトここにも居なかったね」
「そうだな、ご飯食べたら後で一緒に探すか」
「ありがとガウラッ、大好き! じゃあ、頂きまっす♪」

 美味しそうな匂い。あぁ、私もお腹ぺこぺこにょ。
 よっしゃ、私もご飯にありつくぞ…って事であの白い体にw これも夢なんだし、いっただっきまーす!!
 
 カプ!
 チュー、チューw

 …おー、マイウー! 
 とろけるような血の味にょ。喉ごしも良い、最高…!
 え、最高? 美味? もっと飲んでみたいって、私、何を言ってるにょ? 

「…うぅ」
「リオ?」
「か、痒い…」
「大丈夫か、リオッ」

 ぎゃっ、何、このデカい手は!!
 ガウラ、危ないじゃん。私がここに居るのにぃ!

「リオ、どこが痒いんだ」
「お、お腹…」
「どれ…あぁ、本当だ。赤く膨れてきた。でもダニではないな…きっと蚊に刺されたんだろう」

 え、蚊? 蚊って、あの蚊だよね? 
 どこ、どこに居るにょ? 昨日退治したと思ったのに…

「ウニャアァァァ…!」
「リオ、頼むから掻き毟るな、肌が傷付く…そうだ、これを使ってくれ」

 あ、あれは…ルビリアニャちゃんがくれた鉱物にょ。治癒回復を促進する、優れ物のアクアマリンだったような…ガウラの氷を司る魔法で、鉱物自体を冷やしてるんだね。リオのお腹の赤く膨れた個所がみるみる内に治ってるにょ! 即効でリオの痒みを引かせるなんて、さすが守護獣と言われるだけあるにょ。

「ガウラ…ありがと…」
「ちょっと持っててくれ、大丈夫だ、蚊はオレが退治するから――」
「う、うん」

 ほぉ、ガウラ頼もしいにょ…って、もし今の吸血行為が私の所為なら…私が退治されるんじゃ――!

「……そこか」
「ガウラ、頑張って!」

 はぁ? …蚊だよ、蚊をもう見つけたの?
 ガウラの動体視力ってどうなってんの、てか、元々こいつは野生の獣だったにょ。だから視力自体は良かっ――

「そこを動くんじゃないぞ、一撃で仕留めてやる」
「ガッ、ガウラ凄いね! 私もドキドキしてきた」
「惚れ直してくれると嬉しい…さぁ、行くぞ」

 あんたら何アホな事言ってるにょ。
 てか、氷と包丁を同時にぶつけてくるってどうよ?
 蚊だよ? てか、私いつまで蚊なの。夢なら覚めて――ッ

「チッ、耳障りだ…弱い犬は黙って地に伏せろ、雹土の監獄・グラウンドサークルッ!」

 ギャアアアアアッ、上から雹が降ってきた! 
 当たるにょ、当たってしまうにょ! このままでは私がお陀仏になっちゃうにょ!!
 ヒエェェッ、今度は地面からツララが出て来やがった! てめっ、マジで私を潰す気にょ?

「悪いな、リオとオレの平穏の為に逝ってくれ」
「ニャ、蚊は嫌い…」
「リオ、大丈夫だ。あのサークル内からは出られない様にしてるから」

 ガ~ウ~ラ~、覚えておけにょ!
 てめっ、私をこんな所にっ、閉じ込めてっ、この先どうすんだにょっ、おバカめっ!
 うわーん、助けて、ルビリアニャちゃ~~ん!!

「私を喚んだ? ラクト♪」

 !


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真夏の夜の夢①

2011年08月07日 18時00分10秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 真夏の蒸し暑い夜。
 ひょっこり猫島の雪ウサギラクト家にて猫型ベッドで就寝中に、耳障りな羽音が聴こえた。

 プーン…
「う…」

 プーン、プーン…
「うぅん…このっ、このっ」

 短い手で体中をはたき回すが、倒れる気配のない彼奴(きゃつ)。
 まだ血を吸い足りないのか、己の体の周りをうろついてくる。体力がなくなった隙を狙って、更なる食事にありつこうというのか。すでに二か所ほど血を吸われた頬と腕は、ぷくりと赤く膨れて熱を持つ。
 我慢出来ない痒さまで伴って、脳みそが沸点にまで達したその時、口から零れたのは侮蔑を含んだ嘲笑(あざわら)い。くまの○ーさんとエル○、猫のリオ似なぬいぐるみが窓辺にちょこんと並ぶ、ファンシーな部屋に不気味に木霊した。

「あっはっはっ、私の血を食事に選ぶなんてマヌケな蚊にょ。そんなマヌケな蚊には、あれがお似合いにょ!」

 怒髪天ならぬ、雪ウサギのお耳が天高くそそり立った時――ボリボリと頬を掻きながら、流星の如き素早さで一階の洗面所まで駆け下りていった。
 洗面台の下に取り付けられた収納庫から取り出したのは、蚊を抹殺する蚊取り線香。専用の台とライターを手に持ち、雪ウサギラクトは階段をびょんびょんと駆け登った。

 ジュボッ!

 自分の部屋に入るなり、ライターを手に持つ。アルミ製の台に乗せてうずまき型の蚊取り線香に火を点けた。
 今度こそ安らかな眠りを得られるだろう。そして、次の日の朝は奴がお陀仏になっているに違いない――ほくそ笑みながら、目蓋(まぶた)をゆるゆると閉じた。

***

【ラクト家二階、別室にて】

「コケッ、コケッ、コケコッコー!」

「ふあぁぁ、よく寝た…」
「リオ、まだ眠い…」
「ニャ、もう起きよう? 私、お腹減ったよぉ」
「よし、任せろ。リオにミルクと猫まっしぐらなご飯を用意するからな」 

 ガウラァと、甘えるような猫鳴き声で一鳴きすれば、守護獣ガウラは覚醒した。
 野性味溢れる琥珀色の瞳がリオを捕らえ、軽いキスと頬ずりをしばらく繰り返した後、木目調の洋服ダンスの取っ手にハンガーで引っかけられたエプロンを素早く装備、頭に三角巾まで括りつけた。
 別世界で作られた地上のテレビ番組やドラマを見て、主夫とやらを研究していたらしい。女が喜び、自慢したくなるような男性ぶりを愛しいリオに見せつける為だった。

 美形な青年が白いフリフリのエプロンを惜しげもなくさらし、主夫と化す守護獣ガウラ。今にも戦いに行きそうな面持ちで顔を引き締め、猫のリオを優しく抱き上げて寝室を後にする。向かった先はこの家の主で、自分たちの生みの親でもある雪ウサギラクトの部屋だった。
 
「おい、ラクト。朝だぞ。もう起きろ」
「ニャー、ラクトッ、朝だよ、起きてっ。一緒にガウラのご飯食べよう♪」
「リ、リオ…」
「ガウラが作ってくれたご飯は美味しいよっ」
「…ラクトに作るご飯は無いが、優しいリオがこう言ってるんだ。さっさと起きろ、雪団子」

 白い扉に猫の肉球まで再現したドアノブは、完全に雪ウサギラクトの趣味だった。
 異世界人であるリオを猫の姿にするほどの猫好き、その上ひょっこり猫島や猫型の家まで作る始末。呆れを通し、一撃でも喰らわそうとしたが、リオからの説得もあり共に居座る事にした――
 
「…起きないな、いつもならすぐに飛び起きるんだが?」
「ちょっと中を覗いてみようよ」

 びょんっと、猫のリオはドアノブ目掛けて飛びかかる。両手でガチャリと器用に開け、部屋のど真ん中まで移動した。猫型のベッドによじ登り、主不在のシーツと枕しか確認出来なかった。

「あれー? 居ないね」
「珍しいな、奴がオレ達より早起きするなんて」
「きっと、ラクトもお腹が減ってたんだよ。もう食べてるんじゃないかな」
「そうだな、奴はよく腹をすかせてるし、既に食べ終えてるかもしれない」
「ニャ、私達も一階に降りよう」

 二人はラクトの部屋のドアを開けたまま、一階まで下りて行った。


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銅の門②

2011年06月19日 09時28分31秒 | 小説作業編集用カテゴリ




「インディー○ーンズじゃないんだんからぁぁぁ~!」
「ニャオォォォ~(ギャァァァ~)!!」
「リオっ、しっかりオレに掴まってろ!」
「あらあら、いきなりな歓迎ねぇ☆」

洞窟内に響き渡る轟音。
うす暗闇の中で眼前に差し迫ってきたのは通路いっぱいまでありそうな特大の岩。
私達が居る下り坂を物凄い勢いで転がってくる。反射的に四人は一斉に駆けだした。

「ニャオッ、ニャオッ(そもそも、ラクトが怪しい線に引っ掛かるから悪いんだよっ)」
「ちょ、あんなとこに糸があるなんて私に分かるわけないじゃん! 幾ら生みの親でも想定外だってのっ」

びょんびょんと跳ねながら逃げるも、ラクトの逃げる速度が遅すぎるのでルビリアナに抱き上げられた。両手が使えなくなるので、こんな時の為にラクト用のナップサックを周到に準備していたらしい。赤い鞄の中におさまり、リオと口喧嘩していた。

「う~ん、逃げるのは性に合わないのよ…ね!」
「ル、ルビリアニャちゃん、何をする気にょ? 早く逃げないと…」
「ハァッ!!」

雪ウサギラクトを背おったまま、岩に立ち向かう。
上級魔族のルビリアナが、自身の腰に括りつけたメイスを目にも止まらぬ速さで岩を一点に突き出した。するとヒビが数か所入り、岩の速度も遅くなる。手応えを感じたルビリアナは素早く方向転換し、リオ達の元まで急いで進んだ。

「あともうちょっとじゃない☆ ほら、ガウラッ」
「そうだな、ラクト、リオを頼むっ!」
「え。もげっ! ぐるじぃにょ…」
「ニャオーー(ガウラァ!)」

ナップサックに入ったラクトを下敷きにして、リオを上から入れ込んだ。
赤い鞄からはみ出たリオに、頬を撫でて安心させてから岩の近くまで移動する。
腰には長剣、ズボンの太もも辺りのポケットには調理用の包丁とサバイバルナイフを二本、背中にはフライパンを装備したガウラ。サバイバルナイフを二本抜き、刀身に冷気を込めながらヒビの入った場所へ深く突き刺した。岩の威力にも負けず、主夫は真顔でこう告げる。

「オレの妻・リオに害なす奴は無機物でも許さない、砕けろ――ッ」
「ニャアァァーー!(まだ結婚してないよっ!)」

ナイフをつたい凍っていく岩。
全体が凍った後、岩は音を立ててパキンと細かく砕け散った。その瞬間、洞窟内は静まり返る。
戻ってきたガウラが満面の笑みでリオを抱き寄せながら、一同はさらに奥深く進む事にした。

***

「寝泊まり用のベッド…? ここは炭鉱用の洞窟だったのかなぁ」
「炭鉱用っていっても、さっきのトラップまがいは尋常ではなかったわ。侵入者を除外する為の仕掛けだと思うの」

ある一か所に来ると、ベッドやテーブルといった休憩所を見つけた。そこで四人は一息つく。
雪ウサギラクトはルビリアナの太ももの上に座り、リオとガウラも近くのベッドに腰掛けた。
そんなに古くはないらしい。ベッドのシーツはふかふかするし、食料棚には食べれそうな保存食が並べられている。
享楽に使うものだろうか、何枚ものカードが木製のテーブルの上に、乱雑に置かれていた。

「ニャ…?(ん?)」
「どうしたの、リオ」

頭にパラパラと土が落ちてきたらしい。リオは上下に頭を振り、それを見たガウラがほこりを取っていた。
崩れる心配は無いと願いたい。しかし振動が伝わってくるので、もしかすれば出口は近いかもと一同は休憩所を後にした。


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銅の門①

2011年06月18日 20時31分37秒 | 小説作業編集用カテゴリ


――ひょっこり猫島のラクト家にて――

「きええぇーー!」
「ぶふっ…! 凄い奇声だね、ラクトぉ~~」

腹を抱えて床にのたうち、転がり続ける白い猫のリオ。
金色の瞳からは涙がチョチョ切れ、口元はひきつき可愛さのカケラもない。
今日は一体どうしたのだと、両手を上下に振っている雪ウサギラクトに問いかけた。

「あー…最近冒険してないなと思ってね。つまんないから武芸でもしてた…」
「え、さっきの武芸だったの。てっきり肩叩きを極める為の動きかと思ってたのに」
「私の短い手と足じゃ肩叩きに見えるのか…ま、まぁ良いや、ところでリオ、この棍棒に見覚えは?」
「はわっ、こ、これは…!」

ジャンっと効果音でも付きそうな勢いで、雪ウサギラクトの丸い手に握られた物を見た。
違う世界で大活躍した生命の杖。頭部に女神らしき姿を象った、魔力が宿った杖。この杖がここにあると言う事は、もしやもしや…?

「私を誰だと思ってんの? これでもあんた達の(小説の)生みの親だからねー♪」
「ふ、ふーん。でもこれ持ってどうすんの?」
「ふっふっふ…、私も冒険したいと思ってこんなの用意してみました。にゃむにゃむ、わおっ」
「ぶふっ!」

ラクトの奇妙な呪文に笑いながら、その後静止した。なんと、三つの門がいつの間にか設置されてたからだ。
銅と銀に金の門――どの門も大きくて立派だ。しかも自分達よりも数百倍でかいのだから、ビビるしか他ない。

「嫌な予感がするんだけど! ラクトってば、また私をどっかに連れて行こうとしてない?」
「大丈夫、今回はガウラと私、ルビリアニャちゃんもメンバーとして連れてくからね!」
「ご、豪華メンバーだねぇ。でも大丈夫かなぁ」
「リオッ!!」

台所から慌ててやってきた守護獣ガウラ。
胸にハートマークを付けた白いエプロン姿は、既に主夫と化していた。
猫のリオを常に射止めて置きたいと強く願うあまり、最近は食べ物でも釣る様になったという。
食べ物がないと生物は生きられないのと同じように、リオにとってのガウラもそうであって欲しいと常々愚痴を零しているのを、耳にタコが出来るぐらい聞かされていた。

「今日も愛しいオレのリオ。この白い体がオレの目には眩い。その愛らしい姿で他のオスを誘わないように、オレがしっかり見張っておかないとな」
「ニャ、ニャに恥ずかしい事を言ってんの! もう、ガウラはいっつもこうなんだからぁ…」
「照れてるのか? そんなリオも可愛い…」

とろける様な眼差しを送り、猫のリオの喉をゴロゴロとさすり続ける事・約五分――バフォちゃんに抱き上げられた上級魔族のルビリアナお嬢さまがやって来た。クロウ家特有のダークゲートを使って、瞬時にテレポートしてきたようだ。床の魔法陣を消さぬまま、こちらに近づいてきた。

「こんにちは。リオちゃん、ガウラ、それにラクト☆ 」
「こ、こんにちは、ルビリアナさん…もげっ、ガッ、ガウラァ…」
「ふん、もっと遅くに来るものかと思ったが、今日は早かったんだな。特に期待はしていないが」
「ガウラ! お、おこんにちは、ルビリアニャちゃん。待ってたよ」
「うふふ、気にしないわ。以前の時と今の私も、性質はそんなに変わっていないもの――っと、今日はお招きありがとうね。さて、どの門にしましょうか。あ、バフォちゃん、また後で喚ぶかもしれないから、よろしくね♪」

猫のリオに頬ずりを止めぬまま、横目でチラ見して嫌味を吐くガウラ。
昔の凄惨な出来事を忘れちゃいまいとする態勢は、ひょっこり猫島に来てからも未だに崩さないらしい。それほどに彼の心を傷付けたのだから、生みの親としても心苦しくなった。

「…今日はラクトが楽しむ為の催しでしょ? 貴方達を裏切るような事はしないわ」
「オレは良い。リオを悲しませる様な事をしないと誓ってくれれば、今日の所は何も言わない」

今の時点では論議する事を止めたらしい。
疑惑に満ちた瞳を消して、ふやけた表情に戻したガウラは猫のリオに高速の頬ずりを再開していた。

「ニャ、ニャオー…ラクト、どの門に行くのか、早く決めてよ」
「そ、そうだね、じゃあ…銅の門に行ってみようか?」
「うふふ、どんな場所かしら。さあ、ラクト」
「うん! にゃむにゃむ、わおっ!」

銅の門が開かれる――
来たれ、勇気ある守人よ


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④ひょっこり猫で賽ノ河原編

2011年05月07日 09時34分27秒 | 小説作業編集用カテゴリ

「ラクトッ!」
「ル、ルビリアニャちゃん!」
 
漆黒の翼を広げて空中で佇む、上級魔族のルビリアナお嬢様。
今一番会いたかった自慢の娘。彼女が居れば百人力だ。

「行くわよ、地獄の業火で炒めた豆、とくと体で味わいなさい!」
「お、鬼は~外にょ!!」

ゴウッ!!

巨大なフライパンを振りかざして、鬼の周囲に勢いよく豆が落ちて行く。
顔や腕、背中に当たり、熱さと痛みに耐えきれずに鬼は棍棒を落としていた。
今の内だと雪江ちゃんと一緒に石を積み上げ、ルビリアナちゃんには雪江ちゃんが作っている石の山へ鬼が近づけない様にと豆をまいて貰った。そして遂に――

「わ、わぁ、出来たよ、初めて出来た!」
「良かったね。雪江ちゃん!」

石の山は綺麗に三角を形作り、最後まで完成させた。
すると、雪江ちゃんの体は白く光り始める。

「ラクトうさぎさんとお姉ちゃんのおかげだね。私、今度こそちゃんと眠れる…」
「ゆ、雪江ちゃん…」
「泣かないで。私は、うさぎさんとお姉ちゃんに会えて嬉しかったよ。本当だよ」

私と手を合わせた雪江ちゃんの手が透けて行く。
これで良かったんだ、だけど、涙が止まらない。

「あ、お父さんとお母さんだ!」
「にょ?」

和式寝まきを着た女の人と男の人だ。どちらもまだ若くして逝ったのだろうか。
二人とも頬笑みながらこちらへ会釈して、雪江ちゃんを黄金に輝く天へと導いた。

「……」
「ラクト?」
「私はひょっこり猫島では死ねない。そして上級魔族のルビリアニャちゃんやリオ、ガウラもどっちか言ったら長寿だよね。そう考えたら私は幸せなのかもしれないにょ」
「ふふっ、まだまだ退屈せずにはいられないってね☆」
「そうだね…さぁ、私たちも閻魔さんにこの豆を持ってひょっこり猫島に帰ろうか!」
「え、まだダメよ」
「にょ?」
「もうしばらくここに居て、成仏できない魂を救ってやって欲しいって。閻魔さまからの依頼よん☆」
「うーん、豆だけ閻魔さんに渡せば良いのでは? もしかしてそれもバイトに入ってるにょ?」
「時給500円…ゴホンッ、それと極上の調味料を数種類渡すって!」
「今500円って聞こえたけど、極上の調味料かぁ。ちょっと気になるにょ」
「ねっ、そうと決まれば行きましょうか、次なる魂の元へ――」
「もう、ルビリアニャちゃんはいつも強引なんだから」
「ふふっ、だからラクトって大好きよ」

永遠に続く地獄などない。
打ち震える孤独と闇に呑まれそうになりながらも、それでも必死で這いつくばれるのは…大切な誰かを想う気持ちが勝る時だ。生前の大切な記憶と、確かに愛されたあの瞬間だけは、宝石よりも光り輝くはずなのだから。


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③ひょっこり猫で賽ノ河原編

2011年05月07日 09時23分37秒 | 小説作業編集用カテゴリ

鬼の嫌いな物をルビリアナちゃんに作って貰ってるうちに、二回目に作った石の山は半分くらいまで積み上がった。
彼女が戻ってくるまでまだ時間が掛かるかもしれないので、休憩して雪江ちゃんと喋っていた。

「ね、雪江ちゃん、ここには長くいるのかな?」
「分からないよ、考えた事もなかったかな」
「そ、そう。ケーキとか食べた事ある? 三角形の形をして甘くて美味しいの」
「? さつまいもなら、ほんの少し食べさせてもらえたかなぁ」

地獄には時間の概念が無いのか、その事に触れられても分からないらしい。現実世界で換算するともしかすれば五十年、百年は経っていてもおかしくないのだ。
気の遠くなるような悠久の中、この子は石を積み続けていた。そう思うと胸の奥から虚しさ・切なさが込み上げて来て、この子の前で涙だけは流すまいと必死に笑顔を繕った。

「…、あー、雪江ちゃんに猫島にあるヤシの実のジュースとか、特製のジャンボケーキとか食べさせたいなぁ」
「じゅーす? けえき? うさぎさんのいる所って面白そうね。良いなぁ、あたしもそんな所に行ってみたかった…」
「ひょっこり猫島は、雪江ちゃんみたいな可愛い子を歓迎するにょ!」
「えへへ、ありがとううさぎさん」
「私の名前はラクトっていうにょ。出来れば名前、覚えてね」
「うん、分かった。ラクトうさぎさん」

胸に抱き込まれ、しばし互いの抱擁にひと時のあたたかさを感じる。
この子の本当の幸せは、ここにはなくて別の世界にある。早くここから連れ出さねば!

***

「あとちょっとだね…」
「でもこれ以上積み上げるとさっきの鬼が来ちゃうにょ…あっ!」

ズシン…ズシン…
地面とお腹に深く響くような地響きを感じた。
さっきよりもまだ完成に近づいてないのに石の山を崩されたら、また一からやり直さなければならない。
この河原にある石は丸い形に近いモノが多くて、土台を作るにも一苦労する。崩されたら同じ石を探すのは至難の技な上に、幾らなんでも時間が掛かり過ぎてしまう。だから成仏出来ない魂が増えて行くんだ。

「き、来たにょ…」
「うさぎさん、怖いよぉー」
「雪江ちゃんは石を積み上げてて! こっちは私が何とかするにょ!」

巨鬼(キョキ)ではなかろうか。正直、顔も怖すぎて直視出来ない。それでも棍棒を振り回されて、石の山を崩されるのを指をくわえて見ていろとでも言うのか…否、それだけは阻止しないと!

「お、鬼さん、あんたの相手はこっちにょ!」

すると棍棒がこちら目掛けて振り下ろされた。
当てるつもりはないのか、今のは完全に大きくはずされたようだ。もしかして威嚇された?

「あんたの時代は終わったにょ。もう多くの魂を解放して! 閻魔さんの依頼なんだから――!」

ゴッ!

今度は地面を叩き割るような攻撃を仕掛けてきた。小さな石が粉々に粉砕されている。
危なかった――もう少し横へずれてなかったら、私は潰れたカエルの様になっていただろう。

「ラクトカエルなんて嫌にょ…あっ!」
「あ、あ…」

私から対象を変えた鬼は、雪江ちゃんが積み上げている石の山。また非情な行いは繰り返されるのか。後少しで石の山は完成するのに!

「止めて――!!」
「ラクトッ!」

頭突きでも繰り出そうと体を前に出した時、頭上から女の子の声がした。バイトだと言って私を賽ノ河原に連れて来た張本人、上級魔族のルビリアナお嬢様だった。


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②ひょっこり猫で賽ノ河原編

2011年05月07日 09時14分13秒 | 小説作業編集用カテゴリ


賽ノ河原――親より先に死に、現世を旅立つと落とされると云われる地獄の名所の一つ。
太陽は見えず、常にどんよりとした世界で永遠とも呼ばれる時間をここで過ごす。石を高く積むまでは、決して許される事はない…

「ねっ、私も手伝うよ」
「え、うさぎさんが? ありがとう…」

河原の前で懸命に石を積み上げていた少女の名は雪江(ユキエ)という。白い着物を着たおかっぱの女の子だ。彼女の事を知りたかったので色んな事を聞いてみた。

「あの、どうして雪江ちゃんはここに居る事になったの?」
「んー、病気だよ。家ではお薬買う余裕なんてなかったし、ご飯が食べれなくて。気付いたらここにいたの」
「栄養失調か…今は大丈夫なの?」
「うん。お腹は減ってないかなぁ」
「そっか…」

少女の小さな手と、雪ウサギの丸い手が交互に石を積み上げて行く。頂点までもうちょっとだ。すると大きな足音が、耳に聴こえた。

「あ、あ…」
「にょーーっ!」

ごつくて太い足が目の視界いっぱいに映し出された時――大きな音だけが響いて石の山は崩された。

「うあ、うあーーーーーーーん!」
「ゆ、雪江ちゃん、こ、このぉー!!」

巨体の足めがけて勢いよく噛みついてやった。しかし振り落とされて、石だらけの地面にゴロゴロと転げ落ちる。地面にぶつけられた衝撃で体中が痛くてどうしようもなかったが、雪江ちゃんの悲しみと比べたら痛みなど無いに等しかった。

「うぅ~~…」
「そこまでよ、ラクト」
「ル、ルビリアニャちゃん!」
「この鬼はここの番人でもあるのよ。この賽ノ河原を託された鬼。この世界ではこいつに歯向かってはダメ」
「そんな…ルビリアニャちゃんでも?」
「私が介入しても良いのはラクトをここへ連れてくる事と、鬼の目をかいくぐりながら子供達と石の山を築きあげてくれと、閻魔さまからのお達しなの」
「…私?」
 
きょとんとして彼女を見上げた。すると、抱き上げて汚れた所を拭ってくれる。その間に、棍棒を持った巨体の鬼は大きな足音を響かせながら私達から離れて行った。

「地獄でのルールを変えたくないそうよ。番人でもある鬼達をないがしろにもしたくないって。でも年々成仏出来ない魂が増えて行くから、違った意味での助っ人が欲しかったみたい」
「ふ、ふーん?」
「私では無理なのよ。本当に怒ったら彼らを粉々にしちゃうから。閻魔さまに叱られちゃう☆」

うふふ、と花のように笑うルビリアナちゃん。
無理なのよー、と言いながら紫色の瞳を澱ませている。気に入らない相手には容赦がなくて身内には優しいのだ。敵にはなりたくないのである。

「うーん、でもどうやって鬼の目をかいくぐって作れば良い? さっきは後少しって時にあの鬼はやって来たよ」
「そうねぇ…ラクトは鬼の苦手な物って何か知らない?」
「え、苦手な物? そんなのあったかな…」

あ! と声を上げる。
そうだ、あったじゃないか、鬼が苦手だと言われてるモノ。

「まぁ、そんなので良いのかしら。でも時間稼ぎには良いかもしれないわね」
「良いかな、ルビリアニャちゃん?」
「任せて、作ってくるわ」

ルビリアナちゃんにある物を頼むと、黒い翼を広げて飛び立ってしまった。
大丈夫、今度はきっと上手くいく。そんな確信があった――

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①ひょっこり猫で賽の河原編 

2011年05月06日 17時01分26秒 | 小説作業編集用カテゴリ
*注意*
このお話はフィクションです。





季節は常夏。
中天にある太陽は照り返し、蒸し暑い熱気がひょっこり猫島を覆いつくす。
コバルトブルーの海にはヤシの実が豊かにつらなり、穏やかな波の音と潮風が耳に心地良く響く。

「アイスー、アイスはいらんかねー……」
「ラクトッ、私ソフトクリームッ」
「オレはソーダアイス」
「はいよ、2つ合わせて200円ね」

どうも、雪ウサギラクトです。
最近ひょっこり猫の看板娘のリオを差し置いて、主人公に格上げしました。そんな時は嫌な予感しかしないのですが、ひょっこり猫島ではそんなに物騒な事は起こらないので、杞憂に終わると思って日々過ごしてます。

「ラクト、私にも何かちょうだい」
「おっ、ルビリアニャちゃん! これなんかどう、木苺の甘酸っぱいソフトクリームは?」
「それを頂くわ。あ、おつりはいらないから」

と、ダイヤの首飾りを二つも手に押しつけてきた。
一体この気前の良さはなんだろうね。何かが起こる前触れだろうか。

「ね、ラクト。アイス売りも良いけど、もっと羽振りの良いバイトがあるわよ☆ やってみる?」
「え、自給300円よりも高いバイト? 何それ、教えてちょーだい!」

私の働きぶりでは300円が丁度良いと言われ、アイス売りに転じていたが…オーナーのルビリアナちゃんがおススメするバイトとは一体?

「その前にはい、これ」
「?」
「誓約書よ」
「せいやく…ちょ、どこへ連れて行く気にょ?」

だんだん雲行きが怪しくなってきた…とんでもない事をさせられるのは勘弁してほしい。

「やーね、ラクトの手印をポンと押すだけで、すぐにお金持ちになれるかもしれないのよ? 後でやりたかったなんて言われてもさせないわよ?」
「むむむぅ…そんな事言われてもねぇ…」
「もちろん私が案内するし、サポートするわよ。ラクトには怪我をさせないから♪」
「けっ、けっ、怪我って…やっぱり危険が伴う場所なんじゃん!」
「押すの、押さないの? どっち?」

ルビリアナちゃんの脅しにより、誓約書とやらにぐりぐり手印を押し付けた。
指はないから、丸っこい形の印である。

「行ってらっしゃい、ラクトー!」
「リオは任せた。心置きなく行って来い」
「リオとガウラは今回お留守番かぁ。まぁ頑張るよ」
「リオちゃん、ガウラ、またね☆ …クロウ家の名の許に門よ開け、ダークゲート!」

 
********

「こ、ここは…」
「賽の河原よ」
「にょーーっ! ニャンてとこにやるんだよ。ひどいよ、ルビリアニャちゃん!」
「あそこ見て…」
「?」

地面にたくさんある石を掴んでは崩れないように、ただ一心に積み上げる子供達。
私の知ってる記憶ではどこまで積めば許されるのかなんて、分からなかった。

「もしかして今回のバイトって」
「そう、子供達と一緒に石を積んで欲しいのよ。依頼人は閻魔さまからね」
「閻魔さまって…あの舌を引っこ抜く…?」

頭がクラクラしそうになって倒れたくなってきた。
しかしお耳をギュッとつねられ、「にょーっ!」と奇声を上げて意識を復活させる。
もうここまで来たらやるだけだと鷹を括るしかなかった。

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ひょっこり猫島にてとある事件

2011年01月14日 18時21分24秒 | 小説作業編集用カテゴリ
 
(警告**残虐な表現があります。気にする方は読む事をおススメしません。R15相当~※※)
 













 


「おらおら、金目のモノをさっさと出しな!」
「にょ~、いきなり現れてあんた誰にょっ?」
「ひぃっ、ラクトォ~~」
 海に囲まれた猫小島にある、とある猫型のお屋敷にて惨劇は起きた。
 セールスお断りのチラシを玄関のポスト部分に貼り付け、注意書きを無視して強引に扉を押し開く一人の男の姿があった。
 男は包丁を向け、顔が見えない様にヘルメットをかぶり、簡易な黒いジャンパー・ズボンを着用している。
「金目のモノなんて家にはないにょ、ゲフッ、大人しくするし、抵抗もしないからリオだけには暴力はっ、振るわないでっ……ゲフン!」
「うあぁーん、やめっ、止めてよぉ、ラクトが死んじゃうっ」
 雪うさぎのかぶりモノを被ったラクト、元人間・リオの二人は人質ならぬ物質となってしまった。
 人権とは何か・動物愛護とは何ぞやと問いかけたくなりそうな扱いを、雪うさぎラクトだけが受けつつも金目のモノを物色し出す。猫のリオには勿論暴力を振うなと、男には釘を差した。
 何故かと問われると――
 リオに怪我をさせると、三倍どころか百倍にして返す守護獣のガウラがいるからだ。
 リオラブな彼に言わせると、リオに害を与える奴は万死に値すると豪語する。
 イケメン兄ちゃん風な顔が邪悪な顔になり、リオに仇なす敵を嬲り痛ぶらせ虚無へと帰す。
 人間に進化を遂げても以前と変わらぬ猛々しき力と、守護獣の儀式にも成功し、更なる魔力を身に付けリオに忠誠を誓ったファインシャート大陸の知識ある魔獣。
 泥棒に対し、もう少し控え目にしてほしいと願うのは、相手を血祭りに上げる事を予想してしまった親心からだ。けっしてガウラを庇護するからじゃない。胸糞悪くなるので、相手に死んでほしくないだけだ。
「おらおらっ!」
「ゲフン、ゲフンッ、ほぎゃ~~!!」
「ラクト~~、うわぁぁん、もう止めてよぉ」 
 あぁほら、リオが泣きだしそうな声を出してるじゃないか。
 ひょっこり猫島はファインシャートの世界……ディッセント大国よりも小さいが、めちゃくちゃ小さい程でもない。
 スーパーである『レット・クロウ店』まではかなり離れてるが、リオの声がガウラに聴こえないなんて事は必ずしもないのだ。離れてるからこそ守護獣はより鋭敏に、主の危機を感じ取る事が出来る。愛の成せる技だとKYガウラは力説していた。
「ラクトは猫島では死なないけど、もう止めてよ……ッ」
「ばかっ、リオ、前に出ちゃダメッ」
「ギャッ!!」
 小さな体が宙を舞う。
 蹴られた白い猫はボトリと地面に横たわった。
 お腹を蹴られたのだろうか、背中を丸めたまま動かない。
「リオッ、リオッ!!」
「この変てこな家から、いかにも金持ってそうなお嬢様が出て来たのを目撃したんだがな。見間違えたか……」
「お嬢様ってルビリアニャちゃんの事? 彼女は私の娘なのに」
「ほぉ、そのルビなんとかってお嬢さんの場所へ連れて行けよ」
「!」
 どうやら自分で墓穴を掘ってしまったらしい。泥棒に彼女の存在をにおわせてしまった。
 彼女目当てだなんて、よけいに案内出来ない。そんなを事すると、彼女はどう反撃に転じるか親の私でも分からないのだ。私を虐めてたら、次の瞬間は甘く可愛がる。Sっ毛にも程がある上級魔族なんだ。 
「……それを聞いてどうするつもりにょ?」
「金目の物が無いときたら人身売買だろ。お前と喋る猫、若い女ならオークションで金持ち共に高く売れるさ。愛玩動物としてもな」
「止めといた方が良いよ、リオもだけど、ルビリアニャちゃんだけはあんたの手には負えないからね」 
「あーん、関係ねぇだろうが。まだ痛い目にあいたいのか?」
「娘を売るくらいなら、自分が痛い目にあった方がマシだっての……!」
「チッ! 戯言はあの世で言えよ、じゃあな」
 私の体目掛けて包丁が振り下ろされる。
 ――あぁ、死ぬ。
 いや、死ねない体なら三枚におろされてすり潰されるだけだ。ついでに証拠隠滅として海に流され――
「ぶっ????」
「ラクト、ここからはオレがやる――」
「ガッ、ガウラッ!!」
「な、なんだよ、てめぇ!」
 ヒーローならぬ、守護獣ガウラがおたまで包丁を跳ね避け、金属同士が激しくぶつかった。
 にんじんやお肉、りんごにバナナが宙を舞い、泥棒の視界を遮っている。買い物籠ごと泥棒にぶつけられていたので中の物が全部ひっくり返っていた。
 その際、白いレシートの紙がラクトのおでこにヒラヒラと貼りつき、口を引きつらせながら徴収した事は神のみぞ知る。
「リオの悲痛な声が聴こえた。「ガウラ、助けてって」。蛆虫は駆除しないと」
「蛆虫だとっ? ふざけんなよ!」
「ふざける? オレの女を泣かせ、あまつ蹴りを喰らわせたお前には似合いの名だ」
「蹴り入れてるなんざ、何でそんな事てめぇに分かんだよ!」
「ラクトを見れば分かる。こいつの丸い体にはお前の足跡が沢山ついてるだろ。ああ、リオのお腹にも付いてるな――」
 床にぐったりと横たわる白い猫を愛しげに抱き寄せ、リオを頼むと私にお願いしてきた。
 KYガウラは、リオがらみになるとプライドをかなぐり捨てるらしい。滅多に見れないお願いを見て、私の内心は複雑だった。
「一人増えたってなんて事ねぇよ。始末するだけだ!」
「聞くに堪えん、耳触りだ。弱い犬は黙って地に伏せろ……雹土の監獄・グラウンドサークル!」
 泥棒の立つ位置に魔方陣らしき光が出現。
 その場から動けない泥棒の頭上から、真下へ勢いよく雹が落ちて来た。だんだん落下速度が速くなる。
 泥棒の着てるジャンバーが破け、ところどころから血が覗いていた。 
「アアァァァァッ!!!!」
「まず腕の一本、いや足も貰うか」
「ガウラッ! ちょっとまっ……」
 まず包丁を持つ右手に狙いを定め、大きなツララが落下した。
 男の腕がゴトリと床に落ちる。
「……!! うああぁぁ、オレの腕がぁぁ!!!!」
「ふんっ、お前が死なない様に、サークル内を氷点下まで下げてやってるんだ。感謝しろよ。それにリオが受けた痛みは、まだまだこんなもんじゃないしな?」
 肩から大きく切断された腕からは、吹き出した血飛沫が瞬時に凍っていた。
 身も凍えるような寒さと巨大ツララの攻撃によって、意識を失う事や死ぬ事など決して許さない。
 簡単に死なせるものかと眼力だけは鋭く、極悪に笑っているガウラの視線。次は泥棒の足へと向かっていた。
「なっ、もう良いだろ、降参だ! 俺をここから出してくれ、でないと本当に死んじまう!!」
「リオも止めてくれと、お前に懇願したんじゃないのか」
「……ッ、それは」
「弱いモノを甚振るって、きっとこんな気持ちなんだろうな。さぞかし気持ち良かったんじゃないのか?」
 二発目、ツララは下から出現。泥棒の足の甲を貫き、声にならない悲鳴を聴いた。
 居た堪れなくなった私はガウラの傍まで寄り、止めろと頭突きしていた。
「ぐっ……、ラクト?」
「ガウラ、もう止めなよ。いくら何でもやりすぎにょ!」
「ラクト、止めないでくれ。リオを蹴ったコイツを蛆虫以下の存在にさせたいんだ」
「蛆虫以下ってあのねぇ、」
「ふふっ、ガウラとは気が合いそうねぇ☆ 私もそう思ってたのよ」
「ルビリアニャちゃん? いつからそこに??」
 雪うさぎラクトの発言を遮り、甘く可愛い見知った声が耳に届いた。
 ドアが半壊し、玄関から入って来たのは黒山羊・バフォメットのバフォちゃんに抱きかかえられた上級魔族のルビリアナお嬢様だった。
 ワインレッド色に赤いリボンと、今日の服装も女の子らしいフリフリのワンピースを着ている。
 バフォちゃんの口許にキスをしてから自ら下に降りて、雪ウサギラクトに向かって歩いて来た。
「ガウラと一緒に来てたの。ゴメンネ、真っ先に出て来なくて。今度、また美味しいモノをあげるから許してよ、ラクト!」
 温かい手の平が頭を撫でてくれる。いつだってそうだ、彼女はリオの次に、私にも優しくしてくれる。これはひょっこり猫島に来てからの私達の仲と言っても良い。ルビリアナちゃんは大分性格が丸くなった……
「ゴホンッ、……で? こいつは私をどうするって?」 
 ……ハズなんだけど。
 無機質な靴の音が冷たく響く。ある意味、死刑宣告かと思ってしまった。
 口数の少なくなった男は、力なく項垂れている。
 ガウラの作りだしたサークルに彼女は近づき、漆黒の翼がこれでもかと大きく開いていた。 
「私を人間共の闇市場に売って、成金共のオモチャに成り下がれと? そんな悪い口は縫いつけちゃおうか?」
「グルルル……」
「あんっ、バフォちゃん、分かったわよぉ、ここではやらなーい……というわけで、自分トコで殺っちゃうね☆」
 良いよね、ガウラ? とこちら側を振り返るルビリアナ。
 澱んだ紫色の瞳を久々に見て、私とガウラもブルリと震えた。
 この瞳を見ると、自分がいかにちっぽけな存在かと思い知る。慈悲とやらが存在するのか、生みの親として少し問い正しくなった。
 
 ***


「……ニャ?」
「リオ、リオ、やっと起きた」
「ん、ガウラ、私……はっ、そうだ、ラクトはっ??」 
 真っ先にガウラに抱き寄せられたリオは、視線だけを漂わせて私の姿を確認していた。金の瞳が大きく見開き、涙がポロポロと零れ落ちている。
「ニャ、ニャ、ラクトが、ラクトが蹴られ続けて、ホントに死んじゃうかと……うっ、うっ、無事で良かった、良かったよぉ~~」
「リオぉー」
「私、私、ラクトがひょっこり猫島では死なないって分かってても、どうにも出来なくって……!」
「よ、よしよし、私はこの通りだよ。てか、私は皆から蹴られまくられてるから、蹴りで死ぬ事は断じてないよ」
「それはそれで不憫だね、ラクトぉ~~」
 白い猫と守護獣に同情の目を向けられうんざりする。
 蹴られ続けているのは、ルビリアナちゃんのお仕置きが発動した時だけだ。
 前回はひょっこり猫島を放ったままにしてたから、彼女のお屋敷で折檻を受け続けたのだ。あれは今でも思い出したくない。
「ねっ、明日はルビリアニャちゃんが、美味しいモノを持ってきてくれるって。何だろうねぇ?」
「ニャ、ケーキとかデザートが良いなぁ」 
「オレはリオの喜ぶ物なら何でも良い」
 食べ物の事を考えてふと思い出した。どうして、リオの首元にあるピリマウムは発動しなかったのかと。いつもなら彼女を守るために、白い魔方陣が出現されるのに。
「そういえば、何でだろう??」
「ニャンとも探り甲斐があるね、もしかしてエリーちゃん(女神)がらみかなぁ」
「ふん、リオを守る事が出来ない女神など、大した力はないんだな」
 三人で絞った文殊の知恵でも、答えなんか出なかった。
 ファインシャートの女神・エリーちゃんとも、いつか会えたら良いなと思いながら三人は猫型のベッドで就寝した。そうして、怒涛の一日が過ぎる――
 
***
 
「ギョエ――――!!!!」
「フギャ――――!!!!」
「やはり気が合うなどとは嘘だな。ルビリアナの方が悪趣味だ。オレの趣味が疑われるし、何よりリオが嫌がる……」
「うふふ、そうかしら? ねぇ、バフォちゃん?」
「グルルル……」
 にこやかな顔をして土鍋を持ってきた上級魔族のルビリアナちゃんとバフォちゃん。
 彼女の今日の衣装は、ひょっこり猫島で売ってる可愛いワンピース。清純かつ可愛い天使を思わせた。……鍋の中さえ見えなければ!
「昨日の人間の目玉をスープにしたのよ。どうかしら?」 
「「×△□○@~~~~!!!!!」」  
「耳や鼻は流石に汚いからね。家畜にもあげる事が出来なかったわ」
「お願い、それ以上はもう言わないで。せめてオブラードに包んで下さいにょ~~」
 泣きながらお願いすると分かったと頷かれて、鍋をバフォちゃんに返してもらった。目の視界に入れて欲しくないので、さっさと屋敷まで運んでもらう。
「ラクトを甚振っていいのは私だけよ、ねぇ、ラクト?」
「な、何にょ、その理不尽な言葉は??」
「誰にも壊させないし、殺させない。パンナロット様に誓うわ」
「はぁ? 今日のわけが分からないルビリアニャちゃんも怖いにょ……」
「ニャ、あの時怒ってたのはガウラだけじゃないって事だよ、ラクトは馬鹿だなぁ~」
 
 ルビリアナちゃんの膝の上で甘えさせられ、今日もひょっこり猫島は平和に過ぎる。
 
 海鳥は鳴き、スズメはさえずり、暖かい太陽は猫島の住民を柔らかく包み込む。

 しばらくまったり過ごしたいと、雪うさぎと白い猫は擦り寄り、今日も良い夢を見る。


【後書き】
 ギャグにするつもりだったのに何故にシリアスになったのか。
 不思議な話となりました。
 
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誇り高き華

2011年01月04日 23時40分53秒 | 小説作業編集用カテゴリ


傍に居るのが苦痛で仕方無かった
でも離れる事を許されなくて いつもバフォちゃんの傍に居てた気がする
ねぇ、私はいつしかあなたを愛せる様になるかしら
互いの時を自分の中で満たしたいと思えるほど あなたを激しく欲する日が来る?

言葉はない
でも態度で示してくれる
見かけは怖いけど 優しさ溢れるあなたをいつしか私は好きになっていた

闇の中で生まれた私
闇の精霊の眷属として召喚された黒山羊のバフォちゃん
血で繋がれた盟約の元 あなたは私を主として受け入れ従者になった

絆がほしい
あなただけの私を見てくれるように
そうしたら 他の何も目に入らないほど私しかうつさなくなる

リオちゃんを手に入れ 
白精霊に献上し 
太陽の主導権を我が世界に
魔族の世界デルモントに栄光あれと

そしたらね
今度はバフォちゃんと日向ぼっこや 星を眺めるんだ 
ソルトス殿下やデルモント国王 モモチやマルル・コパパも呼んでお月見なんかもいいな

ねぇ あなたとしたい事がいっぱいあるんだよ
嫌いになんかならないから もっと抱きしめてたくさんのキスが欲しい
それは私の力の糧となり 守りたいモノを信じる揺るぎ無い信念となるのだから

世界がどんなに私を排除しようとも
我がデルモントに大いなる祝福を



【後書き】

 ラクガキしてたらルビリアナちゃんの独白が勝手に出て来ました(爆)
 どうしていつもラクガキからなのか…大いに悩む今日この頃です。
 ちなみに下のラクガキは色無しです。
 
 色ありの方は載せない方が良かったかも。
 雑な仕上がりになりました(反省)