菅首相が突然打ち出した方針転換。
先週様々な報道がなされ、政府から「医師が入院が必要、と判断したらもちろん入院出来る」と説明がなされました。
この政府説明はそもそもの前提が捻じ曲げられていると思います。
「重症者以外は自宅待機」
というのは、
「新規に陽性となった人をどう扱うか」
についての方針であり、
「症状の重い人を入院させるかどうか」
についての方針ではありません。
デルタ株で重症化の割合が高まったとはいえ、新型コロナは症状が出ない感染者が多いことに変わりありません。
一時は
「症状のない感染者はウイルス放出量が少ない」
(他人に感染させる確率は低い)
という話もありましたが、変異種の出現もあり現在は
「症状がなくてもウイルス放出量は減らない」
(有症状者と変わらない)
と考えられています。
そのため、
「症状があってもなくても隔離する」
というのが対策のスタンダードとなった経緯があり、日本も無症状者の隔離のためホテル借り上げなどを進めていました。
それが新規陽性者が増えすぎた、ということで
「無症状の人(どころか「重症者以外」)は自宅待機」
とした訳です。
これは「日本の対策の破たん」であり、単に
方針を転換しましたよ
という発表で済む話ではないのです。
本来であれば細かなデータや隔離施設の逼迫状況、そして医療体制の逼迫状況、さらにこれまでの第五波の新規陽性者の症状の統計などを交えて、
「こういう状態まで至ってしまったため、準備していた対策では対応出来なくなりました」
という説明が必要なはずです。
その説明は一切なく、「症状のある人はもちろん入院できる」などと話を捻じ曲げて誤魔化すなど、言語道断ではないでしょうか。
そもそも重症者の定義は
「人工呼吸器またはエクモを装着している人」
です。それ以外の人は入院できないのであれば、現在入院している人以外は入院てきないことになります。
「症状の重い人は重症でなくても入院できるのは当たり前」
というのは、それこそ当たり前の事を言っているだけです。今の定義では重症者は既に入院している人しかいないのですから。
こうして政府の補足説明は説明にすらなっていないのですが、「中等症でも入院できる」という当たり前過ぎる内容でなんとなく「まあ、大丈夫かな」という空気になっている様に感じます。
では、この方針転換で今後起こることは何か。
それは「新規陽性者は全員が一旦自宅待機」となることです。
39℃の熱があろうが、呼吸が苦しかろうが一旦は自宅待機。なぜなら症状が先行して先に入院して検査を受け陽性となった人以外は「医師の診断」をその場では受けられないから。
それでも苦しくて、救急車を呼んでも搬送先は見つからず、何十件も病院をたらい回しになるでしょう。
そんな人がたくさんいる中での「椅子取り合戦」に偶然勝てた人だけが初めて医師の診断を受けられます。
診断を受けられたとしても、病床とエクモや呼吸器に空きがなければ医師は
「入院させる」
という判断をとる事は出来ません。
入院出来ない以上、その患者は「中等症」てす。
そして「医師の判断」で入院させないとなれば自宅待機。
これこそが政府が補足説明で言った、
「医師が必要と判断すれば中等症でも入院できる」
という内容の裏に隠された責任転嫁だと思います。
ようはベッドも機器も足りず、対応ができないのです。
その中で入院する人を選ばなければならない。
では誰が選ぶのか?
それを「選ぶのは現場の医師の判断」と公式に決めてしまったわけです。
政策の破綻による方針転換をしれっと発表して、対策の不備についてやり過ごし、「命の選別」の問題まで自分達の責任を回避すること。
政府の狙いはそこにあると、私には思えます。
状況が悪くなったら、「自宅待機しなさい」の一言で全てが済まされてしまう。
今回の政府発表を受け入れてしまったら、「政府は新型コロナ対策は何もしなくて良い」と認めるのと同義だと思います。
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