PRESSMAN GOGO

オートバイスポーツ、トライアルを中心にディレクター生野涼介が日々の気がついた事、取材した時の思いなど、日常のブログです。

2018年全日本トライアル第2戦 近畿大会

2018-04-18 01:04:31 | トライアル
前日の昼は長袖だとちょっと暑いくらいの陽気だった、近畿大会会場湯浅トラアルパーク。




ところが、夜から日曜の朝にかけて突風と雨。
一晩明けた会場は、前日とは別の場所のようです。


パドックは5cmほどの泥の川でヌルヌル。


昨日までは涸れ沢だったSSDTのような沢登りも、完全に川になっています。

※土曜日、選手が下見する第6セクション

※日曜日の本番

気温もぐっと下がった過酷なスタートとなりましたが、スーパークラスの1ラップ目、第4セクションあたりから雨は止み始め、2ラップ目には青空と太陽まで。

まるで何日分ものビデオテープを100倍速で回しているような変わりようでしたが、優勝争いでもそんな激変が見られました。

第1戦関東大会では圧勝し、タイトル奪還へ最高のスタートを切った黒山健一選手。

でもその2週間後の東京モーターサイクルショーで、北海道大会不出場を宣言しました。
フランスで開催されるトライアル世界選手権、電動バイク部門にエントリーするためです。


開幕戦では12回目のチャンピオン獲得を宣言していた、黒山選手。
第2戦スタート前には「出る試合は全部勝ちます」と言うものの、それが実現したとしても小川友幸選手がずっと2位につけ北海道大会で優勝すると、タイトルには2ポイント手が届かないのです。


土曜日夕方開かれたヤマハのミーティングで黒山選手は「というわけで北海道大会では野崎選手に是非勝っていただかなくては」とチームメイトに期待を託します。
しかし野崎選手は「これが得意な菅生とかならまだいいですけど、北海道は僕も苦手で去年も大外しの5位ですし、小川選手は大得意だし・・・」と不安そう。


開幕戦では黒山選手に完敗した、ディフェンディング・チャンピオン小川友幸選手。
この時は左足首靭帯の怪我を、ガチガチに固めての出場だったとか。

それから1ヵ月。痛みは残るものの、すでにテーピングはとれた状態だとのこと。
JTR史上初となる6連覇に向けて、いよいよ本領発揮となるのでしょうか。

ところがその友幸選手、第1セクション、第2セクションで連続5点。

※L1S1の友幸選手

※L1S2の友幸選手

対する黒山選手は2連続クリーン。

これは開幕戦と同じ展開ではありませんか。友幸選手にとってスタート直後での10点差は、つらすぎます。

友幸選手は1ラップ目中盤の第6セクションの段階でなんと5位という、ありえない順位です。




L1S6までの順位と減点
 1位 野崎史高 減点2
 2位 黒山健一 10
 3位 柴田 暁 13
 4位 小川毅士 14
 5位 小川友幸 16

この段階で、トップの野崎史高選手。

開幕戦では「マシンを受け取ったのが1週間前だったので、試合で試し試しのライディングでした」と語っていましたが、今回はある程度マシンに慣れ、ミスは最小限。
絶好調について野崎選手のアシスタントは、「まだ始まったばかりだから。終わった時に1位じゃないと意味がない」と引き締めます。


野崎選手はその後、あれ?という5点も取って減点を増やしますが、1ラップ目終了時点で19点。

※L1S11 アシスタントも巻き込むすってんころりんの、野崎史高

エンストやギリギリアウトのタイムオーバーに見舞われた黒山選手を抑え、同点クリーン差ながら1位での折り返しです。

※L1S6 エンスト5点の黒山選手


※L1S11 タイムオーバーの判定に驚く黒山選手

このままでは味方のはずの野崎選手が敵にまわり「出る試合は全部勝つ」が崩れてしまう黒山選手。


巻き返しを狙うも、2ラップ目第6セクションではハンドルから手がすっぽ抜け、マグネットキルスイッチが飛んでしまう5点。


野崎選手との差はこれで4点に広がってしまいます。


試合は2ラップ目終盤の第8セクション。ここは多くの選手が転倒している難セクションです。

※岡村将敏選手


※藤原慎也選手


※吉良祐哉選手


※野本佳章選手


※氏川政哉選手


※斎藤晶夫選手


※柴田暁選手


※小川毅士選手

野崎選手も5点となりますが、ここから第10、第11も失敗で大きくリズムを崩してしまいます。


黒山選手はここをクリーンで、ようやく野崎選手を逆転しました。


そして小川友幸選手。
1ラップ目終了時点では3位にまで戻すも、まだまだ本来の走りではありませんでした。


ところが友幸選手、2ラップ目に突然神が降りてきたようなライディングに変貌します。
第1からクリーンを続け、


第8も0点。


この時点で野崎選手を逆転し、黒山選手が1点だった第9も0点でついにトップ同点にまで追いつきます。




結局2ラップ目第1から第10までをオールクリーン。
黒山選手が2点をとった最終第11も1点で抜け、ついに逆転トップに踊りでたのです。




SSを前の順位と減点は、以下の通り。友幸選手は黒山選手を1点リードです。
 1位 小川友幸 29
 2位 黒山健一 30
 3位 野崎史高 39

残る2つのSSはかなりの難度。5点も相次ぎます。

※SS1 藤原慎也選手


※砂田真彦選手


※小川毅士選手


※SS2 砂田真彦選手

しかしトップ3人は共にクリーンで通過して、このままの順位と減点で試合は幕を閉じました。


優勝は、小川友幸選手。


とにかく2ラップ目の小川友幸選手の走りと、それによる大逆転に尽きるレースでした。


優勝 小川友幸 29c13

2位 黒山健一 30c12
  「出る試合はすべて勝つ」が目の前で逃げてしまった黒山選手。
 ゴール後はしばらく車から出てこられませんでした。

3位 野崎史高 39c9


4位 柴田 暁 69c5
 今回IASは10セクションを2ラップ+2SSという設定。
 全体にトライ数が少なく、耐久戦では腕上がりなどが出てしまう柴田選手には有利だったのかも?
 同じく10セクション2ラップ+2SSだった昨年の北海道大会2位入賞に迫る好成績です。



5位 小川毅士 82c1
6位 斎藤晶夫 90c1


7位 野本佳章 91c0
 斎藤選手と野本選手は、昨年から6位を争う好敵手。
 今回はSSで斎藤選手が野本選手を逆転してニッコリでした。

※勝負を分けた、SS2での野本選手の2点足着き


※クリーンした斎藤選手。

 でも負けた野本選手も「楽しかった!」と本心から笑うところが、この2人の闘いのイイトコロです。



8位 氏川政哉 97c0
9位 藤原慎也 99c1
10位 砂田真彦 102c0
-----以下SS不出走-----
11位 久岡孝二 93c0
12位 岡村将敏 94c0
13位 吉良祐哉 96c0
14位 磯谷 玲 98c0
15位 平田貴裕 98c0
リタイア 平田雅裕

さて昨年初めてこの会場で開催され、様々な問題が露呈してしまった近畿大会。
しかし今年はその検証と反省、対策をやったようです。

昨年一番の問題だったのは、選手が走る度に岩がゴロゴロ観客エリアに落ちて危険、というセクションがいくつもあったこと。
今年はそのエリアを使わないセクション配置に変わっていました。
観客も遠くまで行く必要ななくなり、助かります。
観客の安全を守るエンクロージャーテープも、昨年よりしっかり張られています。

そしてこちらは、なんとメディア用テント。

世界選手権ではメディアセンターがあるのは当たり前ですがJTRでは史上初めてで、これはすごい。
特に今回のような雨の大会では、機材置き場として非常に助かりました。


ちなみにわたくし、数年前の雨の近畿大会で、係員に断って屋根のある場所に三脚を置かせてもらいました。
ところが別の役員から「誰に断ったんだ。オレは聞いてないぞ。勝手なことしやがって、謝るまでここを離さん」というとんでもないパワハラにあったことがあります。三脚はテープでぐるぐる巻きに縛られ使えない状態。
MFJのレギュレーションには当然このような罰則規定はなく、従ってこれは法律的に言うと「威力業務妨害」となります。
MFJの問題点はまさにここで、長らくやっている人が自分だけの勝手な感情論で全てを判断してしまうこと。
今回の大会主催者の一番のご苦労も、その「オレ様のルール」を「MFJのレギュレーション」に戻すことだったそうです。
でも「オレ様」を廃して法に沿った運営にするためには、それを理解できない人、既得権が奪われると思った人が敵になったりもしたそうな。
今回はポリシーを持って大会運営に臨んだ主催者の頑張りが、それなりの形になっていたと感じられました。

ただまだ不十分なところも。
たとえば第2セクションでは、エンクロージャーエリアがレディースライダーの移動コースになっています。

狭いエンクロージャーエリアにはプレス、トライ待ちの選手、アシスタントがひしめき合っています。
ここをレディースが通ろうとすると、観客席は一杯だし一段上なので逃げ道はセクションの中しかないけど、特にトライ中だと入るわけには行きません。
レディースは5人しかいないから目をつぶれ、と妥協するのか、それとも基本を例外なくきちんと守った方がよかったのか。
個人的には出来ない理由を上げて「しょうがない」と妥協していては、未来は開けないと思う次第であります。

こちらは2ラップ目第7セクションをトライした直後の、平田雅裕選手。
第1戦での手首骨折を押しての出場でしたが、今度は足をやってしまったよう。



平田雅裕選手は、このままリタイア。
これはスーパークラスの数が増えすぎて、新昇格のライダーにはセクションが危険な状態になっていることが原因と思われ、近畿特有の問題ではないかもしれません。
でも他にも骨折クラスの怪我人が出ていますし、国際B級では7名ものリタイアを記録。
※IBでは失格がなんと5名も出ていますが、これは原因を調べられませんでした。
天気が過酷だったことを差し引いても、セクションレベルは見直す余地があったのではないかと思われます。


またいつものこととはいえ残念ながら、相変わらず判定ミスも見られました。
これは運営方針とかではなく個人の資質なのでどうしようもないかもしれませんが、オブザーバーさん、とにかくもっとしっかり見よう!

1ラップ目第6セクションの、野崎選手。

後輪がマーカーを倒していますが、判定はクリーン。

2ラップ目第9セクションの野本選手。

前輪で杭を倒していますが、判定は3点です。

一番大きかったのは、2ラップ目の第11セクション。
友幸選手の判定は1点になっていますが、本当は2回足着きの2点です。

※1回目の足着き


※2回目の足着き

もしここで正しく2点がとられていても友幸選手はクリーン差で黒山選手を下し優勝でしたが、完全同点でのSSでは違う結果となったかもしれません。
文字通り人生を賭けたトライを続ける選手たちに負けない魂のジャッジを、来年以降は期待したいと思います。
大丈夫、近畿の雨は上がりました。今年検証と反省が出来た近畿ブロックなら、きっと出来る!


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IBのリタイアと失格 (生野涼介)
2018-04-21 08:04:52
上記レポートでも触れた、IBの異常なリタイアと失格の多さ。
その原因を、この大会に出場したIBライダー、水野大册選手がFacebookで報告してくれていました。

要は、第2セクションから第3へのコースが非常にきつく、スタックや転倒で通過にとんでもない時間がかかったとのこと。さらに試合中にそのコースが変更になり、体力、マシン損傷などを負いながらも頑張って通過した選手が不利になったとも。

僕はIASしか取材出来なかったしコースは走っていないので見ていませんが、確かにIASにも「コースがなまじじゃないですよ」と言っている選手がいました。
ブログで問題提起したレディースがエンクロージャーエリアを通過する導線も、レディースは第2セクションを走らず第3に行くからでした。
第2が無かったのはその後のコースはレディースには無理、という判断があったのかもしれませんが、IASだって選手は走れてもアシスタントは無理。
選手ではないライダーに、SSDT時代を引きずる過酷なコースを走らせる意味は何なのでしょう。

またそのコースが競技中に変更されたのなら、これはもう競技として成立していません。MFJは多大な犠牲を払って参加した選手たちに、謝罪と賠償をしなければなりません。
MFJのトライアルとは何を目指しているのか、どうあるべきなのか、早急に考えなおす必要があるでしょう。
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